ケイケイの映画日記
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2016年01月10日(日) 「クリムゾン・ピーク」




この作品の監督ギレルモ・デル・トロも大好きです。前作「パシフィック・リム」では、門外漢の怪獣映画で、まさかの感動・号泣で、やっぱりデル・トロすごい!を実感致しました。今回待望のゴシック・ホラーで、この面子、と言う事で、ウキウキ初日に観て参りましたが、うーん、めでたさも中くらい。個人的には、残念です。

20世紀初頭のNY。富豪の一人娘イーディス(ミア・ワシコウスカ)は、作家を目指しています。昔から幽霊が見える彼女は、幼くして亡くなった母の幽霊が「クリムゾーン・ピークに気をつけなさい」と言う言葉が、忘れられません。
社交的な事を嫌う彼女を父(ジム・ビーバー)や、幼馴染で彼女に恋するアラン(チャーリー・ハナム)は、心配しています。そんな時、自分の発明のパトロンになって欲しいと、父の元へ、イギリスの準男爵トーマス(トム・ヒドルストン)が現れ、イーディスと恋仲になった時、彼女の父が不慮の死を遂げます。悲しみに暮れ、遺産のたった一人の相続人となったイーディスは、トーマスと結婚。イギリスにあるトーマスのお屋敷で、トーマスの姉ルシール(ジェシカ・チャステイン)と三人の生活が始まります。しかし、生来の幽霊が見える力を持つイーディスは、この屋敷に不吉なものを感じるのです。

美術はとにかく圧巻です。トーマスのお城は、ほぼお化け屋敷か廃墟のような荒みようながら、抜けた高い天井から、ハラハラ雪が舞う様子や、傷んでいるのに高級そうな調度品など、昔はエレガントでさぞ格式高かったろうと感じさせます。そして今の禍々しい不吉さも。なので、普通は逃げ出すはずが、魅入られるような風情なのです。衣装も素敵。男女ともきちんと作り込んでいて、普段着・晴れ着の落差も、きちんと描き分けています。

他に良かったのは、ゴーストの造形。イーディスのお母さんが、既に骸骨姿だったのは、びっくり。ありゃ、実の娘でも怖いっすな。以降霞がかった幽霊たちは、イーディスを怖がらせるに充分(でも私は怖くない)。常に異形の人に心寄せるデル・トロですが、今回は骸骨になった亡霊の哀しみに、思い入れを込めたようです。

そして演者たちは皆好演。しかし好演過ぎてもぉ(笑)。ゴシックホラー仕立てのミステリーなのですが、伏線と言うか、思わせぶりなえさをあちこちばら撒いているのですが、拾われなくても、オチがわかっちゃう。トムは表情一つでイーディスへの感情の変遷がわかるし、ジェシカはずっと表情一つ変えないのに、この姉弟の秘密はあれだよと、すぐわかる。演技上手すぎるのも、考えもんだわ(笑)。

終盤疑問を一つずつ明かして行くのですが、まだあったのか・・・と(正直もったいぶるほどの事もない)、退屈。テンポが悪いです。もっと畳み掛けるように明かして行かなきゃ。

そしてあれですね、今のベッドシーンは、女優が脱がないで、男優のお尻を見せるのが流行りなのですか?(笑)。最近そんなの多いぞ。とっても素敵なトムなので、お尻見せてくれるのもいいんですが、ミアちゃん服を着たままって、不自然にもほどがある。あれなら昔風に、ベッドになだれ込む→明かり消える→そしてラブラブな朝、じゃダメなの?その方が男優のお尻より、品が良いと思うんだけど。

ミアは愛らしいけど地味な容姿、と言う特性を上手く活用できて、適役でした。彼女お得意のしかめっ面も、きちんと機能しています。ジェシカは、本当ならすごーく可哀想な役柄なんですが、人物の掘り下げが甘いので、同情が湧きません。本来なら監督が心寄せる人物は、ルシールだと思うのですが。ただただお芝居上手いなーと、思うのみ。トムは、最初の颯爽とした雰囲気より、気弱に妻と姉の間で苦悶する時の方が、魅力的です。姉から「子供の時から完璧(に美しい)」と言われるのも納得の、エレガントさでした。

懲りまくって高い完成度の撮影や美術に比べ、ストーリーや人物像が雑です。なので、ミスリードしたかった部分も、引っかからない。ツッコミはないけど驚きもない。これはホラーとしてもミステリーとしても、致命傷です。

思うに監督は、お屋敷やゴーストのビジュアルを先に思いついて、それありきで心血注いで、後でストーリーを適当に作ったんじゃないかと疑惑が起こる(笑)。それくらい美術面とストーリー展開にギャップがありました。

イーディスの名字がカッシングでね、カッシングと聞こえる度に、あの偉大な怪奇役者、ピーター・カッシングを思い出して、ニコニコしていました。これはカッシングに対しての、リスペクトだったのかな?ならやっぱり、この作品のカテゴリーは、「ホラー」ですね。


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