ケイケイの映画日記
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2014年07月10日(木) 「オール・ユー・ニード・イズ・キル」




トムちん主演、ダグ・ライマン(と記してある。いつからリーマン表記じゃなくなったの?)監督の近未来SF作品。原作は桜坂洋で、ラノベなんだとか。鑑賞後、原作を読んでいる三男に聞いてみると、難しい事は良い意味で適当にして、ダークな内面描写もカット。そのお蔭で、カラッとした娯楽作に仕上がり、映画的には成功していると思います。

近未来の地球。謎の生物ギタイの襲来により、人類は滅亡の危機となり、多国籍軍が立ち上がります。軍の広報担当のケイジ少佐(トム・クルーズ)は、イギリス軍司令官ブリガム曹長(ブレンダン・グリースン)の前線に出動せよとの命令を拒否、結果脱走兵として捉えられ、初年兵として軍隊に放り込まれ、次の日には出動。訓練経験のない彼は、あえなく死亡。しかし何故か目が覚めると、出動したその日になっている。かくして彼は、何度も何度も全線で死亡しては前日にループしていた折、軍隊のカリスマ的兵士リタ(エミリー・ブラント)が、「目が覚めたら私を探して」と言う言葉をケイジに託し、戦死します。彼女の言葉通り実行したケイジは、かつてリタもループを繰り返していたと聞かされます。

ループを繰り返すので、同じシーンが続出ですが、これが編集とカットが上手いので、イライラしません。テレビでCM前後で同じシーンがかぶり、早く進めんか!思うことがあるでしょう?あの感覚が皆無なのです。繫ぎ方が上手いので、あぁ次は別の方法を取ったんだなと、解り難い事がありません。輸血をするとループする力がなくなるので、中途半端に死に損なうと、リタが容赦なく「殺す」ので、その繰り返しなど、思わず吹き出してしまう程で、緊迫感にユーモアの混ぜ具合も上手いです。

ケイジは前線が怖くて敵前逃亡するチキンなヘタレであるわけですが、二日間を何度も繰り返す度に、どんどんスキルアップ。やがては地球を救うのは俺だ!的使命感も芽生え、訓練にも身が入る。いつもの颯爽としたトムちんが蘇り、ワタクシたちファンは一安心でございます。

ケイジは何度も同じシーンを繰り返しているので、同僚やリタ(彼女は輸血してループ力は失われている)に、どんどん親近感を持つのに、相手からはケイジは初めて出会う人です。この辺の孤独感は、原作では描いているらしいですが、映画ではリタへの仄かな好意として描かれ、まずまずです。

戦闘場面が2/3くらいでしょうか?「パシフィック・リム」を彷彿させるもんがあります。特にケイジと同じ連隊の人たちの行動なんか、泣かされます。彷彿はさせるけど、あちらはイェーガーと怪獣が主体ですが、こちらはトムちん主体ですので、その辺で満場一致と言う訳にはいかないかも?

実は私が一番興味津々だったのは、エミリー・ブラントがSF大作のヒロインで出演した事です。私は彼女が好きで、中堅としてキャリア充分の彼女が、何故今頃?とも思いましたが、ハリウッドと言うところは、これは大成すると見込んだ新進や中堅女優には、アクションもやらせたがります。アンジーしかり、シャーリーズ・セロンしかり、ジェニファー・ローレンスしかり。私が見込んでいたシャイリーン・ウッドリーも、「ダイバージェント」でアメリカでは人気沸騰になっているとか。充分色んな役をこなしているエミリーですが、もしかして、彼女にもそういう機運が回ってきたのか?逞しい女性兵士と、繊細な女性的な心情もきちんと出ていたし、今回合格点が出たと思います。何より大味なれど、この手の作品としては出来が上々なのは、彼女にきっと味方してくれるはずです。

まぁあんなにケイジ一人にループさせなくても、敵は地球防衛軍で倒せそうじゃん、と言う野暮を言うのはよそう。ラストも原作と違いますが、これも安心のトムちん印。後味が良いので良しとしましょう。大味で中身は薄いですが、充分楽しめる娯楽作です。


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