ケイケイの映画日記
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2013年10月09日(水) 「パッション」




えぇ〜と、微妙(笑)。前半は女同士のドロドロを描く昼メロ@デ・パルマ版か?と思わせて、後半のサスペンスからは往年のデ・パルマ節が炸裂。しかし集大成とか真骨頂と呼ぶには遠く、もはや伝説の芸風をセルフパロディしているかのようです。監督はブライアン・デ・パルマ。

広告代理店に勤めるイザベル(ノオミ・ラパス)は、やり手の重役クリスティーン(レイチェル・マクアダムス)の直属の部下。切れ者で美しい彼女に憧れています。しかしイザベルのアイディアをクリスティーンは横取りし、自分の手柄とします。逆襲するイザベルは、恋人ダーク(ポール・アンダーソン)との仲も裂かれ、同僚たちの前でクリスティーンから恥ずかしめを受けます。神経を病み精神科に通うようになるイザベル。そんなある日、クリスティーンが殺害され、イザベルに容疑がかけられます。

まぁ〜前半の女同士のバトルのお安い事。やり手の設定のクリスティーンですが、男との逢瀬のために大事な会議はすっぽかすは、部下の手柄は横取りするは、自作自演で脅迫状を送るは、可愛い顔してビッチな事この上なし。そして精力絶倫。こんなシーンばかりで、どうやって出世してきたんだろう?「あの薄らハゲはうちの客よ。今夜落とせたら、あなたにあげるわ」って、パーティー会場でイザベルに告げますが、あんたキャバクラ嬢か?美貌を武器の寝技と、狡猾な部下のアイディア横取りだけで出世出来るほど、世の中甘くないと思うけど。もうちょっと「デキル」部分も演出しないとね。

対するイザベルは知性は感じるものの、容姿は見劣りコツコツ努力型の人。アシスタントのダニ(カロリーネ・ヘルフルト)は、そんな彼女に恋心を抱いていますが、肝心のイザベルはクリスティーンにその方面でも手玉に取られています。

お安い女のドロドロの怨念続出を、それなりに楽しめるのは、レイチェルの頑張りでした。男も女も手玉に取る肉食女を演じるには、ちょっと小粒じゃないか?と思っていましたが、なんのなんの。ゴージャスで下品で、女の嫌らしさ満開なのに、とってもチャーミング。惜しむらくは肉食女の設定なのに、思わせぶりなだけで、官能性は足りないと思いました。てか監督、エロスを感じさせるのは不得意ですよね?

ノオミもよく踏ん張っていましたが、あの不細工に見えるショットの羅列は、わざとなのか?ファックシーンで、チラッと微乳も見せますが、これでは見せても、有り難みが薄いでしょ?う〜ん謎。しかしお下劣なクリスティーンの虐めに耐える様子は、観客の同情を引くに充分。いつ反撃に出るのか、期待させます。

後半は悪夢にガバっと目覚める様子、二分割の長回し、果ては夢オチか?で、観客を煙に巻く手法など、往年の監督の郷愁を感じる芸風が炸裂。しかしこれが、完全犯罪には程通い稚拙な設定で、手に汗握ると言うより、お安いご都合主義を強く感じます。仮面の小道具も上手く使えていません。元々サスペンスでも、辻褄合わせにはあんまり興味ないタイプの監督だったけど、それ以外の演出が超面白いので、許してしんぜようと言う気になったもんですが、今回はスカスカで、とっても微妙でした。

とは言え、観ている間はそれなりに面白く飽きさせないのは、さすが。私はやっぱりデ・パルマは好きなんだと思います。調べると、監督ももう73なんですね。円熟味を感じさせるはずの60代での作品が少なく、華々しかった80年代の頃から思うと、尻すぼみ感は否めません。今回は昔馴染みのファン相手に、元アイドルの歌謡ショーを見せられたような気分でした。次回は是非、集大成的なサスペンスをお願いしたく思います。


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