ケイケイの映画日記
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2013年08月01日(木) 「31年目の夫婦げんか」




いや〜、面白かった面白かった!こんなの観ていると、アメリカも日本も夫婦の間は同じよね〜と、世界に国境なしを感じます(いやホントに)。実はワタクシ、21歳になったばかりの時に結婚し、今年の冬で結婚丸31年。現在結婚31年目を進行中でしてね、この映画はとっても楽しみにしていたんです。私のように結婚歴が長い人が観ると、「わかるわ・・・」と、ため息漏れつつ、共感しまくる作品です。監督はデヴィッド・フランケル。

結婚31年目のアーノルド(トミー・リー・ジョーンズ)とケイ(メリル・ストリープ)夫妻。息子二人は自立し、夫婦ふたり暮らしです。惰性で暮らす夫婦生活に疑問を持ったケイは、アーノルドに内緒で、週4000ドルの夫婦で受けるカウンセリングに申込みます。最初は剣もほろろだったアーノルドですが、渋々ケイに付いて行くことに。カウンセラーはフェルド医師(スティーブ・カレル)。フェルドの質問に、次々本音を語りだす二人。フェルドは二人に課題を出しますが、それが新たな夫婦関係を築くきっかけとなります。

「夫婦げんか」と言う邦題になっていますが、要はこの5年くらい寝室も別で、セックスレスに悶々とする夫婦関係を、何とかしたいと妻は思っているわけです。私は映画を観ていて、欧米の人は生涯現役なのだと思っていたので、やっぱりセックスレスの悩みがあるのかぁ〜と、新たな発見です。

と言うとね、如何にもケイがスキモノみたいですが、逆にセックスには奥手の奥さんだと見たね。それなのにこの悩み、ここに深ーい妻心があるわけですよ。まぁ〜アーノルドと来たら、せっかく夫婦水入らず出かけてるのに、とにかく文句しか言わない。うちの夫と同じ!夫って、どうしてこの状況を楽しめないのかしら?私も二人で出かけると、夫の気分をアゲアゲにするため、どれほど苦心惨憺する事か。夕食後、アーノルドがテレビを観ながらうたた寝するところも、うちと一緒。うちなんか、そっとテレビを消すと、「なんで消すんや。気持ちよぉ寝てたのに」と目を覚ます。そう、テレビの音が子守唄なんですねぇ。本当にもぉ、夫って夫って夫って!

ケイによるとアーノルドは、結婚記念日に「妻が欲しがっていたから」と、湯沸かし器をプレゼントしたと言う唐変木ぶりも発揮します。カウンセリングに4000ドル使った妻が、「私が今まで何か好きなものにお金を使った?」と言うと、「冷蔵庫を買ったじゃないか」と仰る。唐変木の上に朴念仁と来たもんだ(笑)。ずっと夫唱婦随で来たようなこの夫婦、妻が老後に向い危機感満タンになるのは、私はとっても理解出来ました。

最近は夫婦が別室と言うのも多いそうです。これどうなのかなぁ?ケイの悩みは、夫が自分に触れてくれなくなったと言う事。これはうちは思い切りセーフ(笑)。夫曰く、「あんたが女やと言う事を忘れんように、”触ってやってる”」そう。うちは子供が小さいうちは川の字でしたが、自分で寝るようになってからはずっと隣同士です。そうすると、お互い触れ合う機会が頻繁なのですね。フェルドの出した第一関門を突破し、夫に抱かれながら迎えた朝のケイの笑顔が、嬉しさ満開でとても可愛い。

それほどセックス好きそうじゃないケイが、セックスと言う行為に拘るのは、肉体的な乾きより、体を通して、夫に自分の心を抱いて欲しかったんじゃないでしょうか?長年夫婦をやっていると、セックスは快楽と言うより、コミュニケーションツールになると思うんですね。この夫婦が頻繁に会話があったりハグしたり、挨拶ではない親愛のキスを重ねていたら、妻はセックスにはこだわらなかったと思いました。日本は欧米よりセックスレスの数は多いと思いますが、ここんところをクリアしている夫婦が多いのでしょう。ただ、セックスレスでダメになる熟年夫婦はあるけど、セックスがあってダメになる熟年夫婦は、少ないように思います。

名医か、はたまた詐欺師か?のフェルドの質問に、赤裸々に答える夫婦の言葉に、思わず聞き入ってしまったプロットがあります。妻はセックスを思い浮かべる時、夫と実際した事しか浮かばないそうで、これは私も同じです。セックスをしている夢も観た事がありますが、何故か相手はいつも夫。これはちょっと残念だなぁ(笑)。ところが朴念仁で唐変木のはずの夫は、近所の奥さんと3Pしたり、仕事場の机の下で、妻がオーラルセックスする事を妄想していたと言うのです。びっくりしました。男性の生理は、ある程度把握していると自分で思っていたんですが、そーですか、そーですか、勉強になりましたと言う感じです。私も夫に聞いてみよっと。

同僚に妻の変化を嘆いたアーノルドは、同僚から、「俺はそんな時、家から逃亡した。あの時花かアクセサリーでも妻に買っていれば、今頃ひとり暮らしはしていない」と言うアドバイスに従い、全然妻に似合わないピアスをプレゼントしたりします。一方こんなに寂しさが募るなら、一人で暮らした方がいいかも?と思いつめるケイ。へぇ〜、アメリカでも熟年になったら、夫は妻に捨てられるのが一番堪えるんだと、ちょっと感慨深かったです。

浮気もせず、一生懸命仕事をしてきたアーノルドは、この年代の男性のスタンダードでしょう。男性と言うのは、女性のように柔軟性に欠けるので、変化は好まないはず。おまけに鈍感(100回くらい言いたいわ)。だから妻は危機感満タンでも、「円満な夫婦に問題を起こそうとしている」なーんて、言えるんですね。でも唐変木で朴念仁のアーノルドは、自分なりにケイを心から(これは本当)愛しているし、根は誠実な良人です。その誠実さに惹かれたからこそ、ケイもアーノルドを伴侶に決めたのでしょう。ケイも愛しているからこその、危機感なのです。

観ていて感じたのですが、熟年で五年もご無沙と言うことで、アーノルドはケイだからダメだというのではなく(浮気もしてないし)、要するに「出来ない男性」になっていたんじゃないかなぁ?妻はそれをわからない。夫も言わない。と言うか、言えない。何も大金払ってカウンセリングしなくても、それほど険悪な夫婦じゃないんだし、話し合えば?と見えるかもしれません。でもね、夫婦二人きりなら、本音を隠して言い合いになって、喧嘩になりますよ。質問されるから、正直に答えるんだと思います。長年夫婦生活をしていても、ことセックスに関しては、デリケートなものだと思います。

とにかく名のある大俳優二人が、会話からセックスシーンまで、とにかく赤裸々でびっくり。しかも初々しいのなんの。二人共善良に生きてきたんだろうなぁ〜と、感じさせます。断ることも出来ただろうに、期待に応えた二人に好感が持てます。二人の実年齢が70前と65前後なんで、この年齢でもセックスレスを気にするか?と言う気になりますが(特にトミー・リーは、しわくちゃくちゃ)、役柄的には60前後と50半ばと思えば、全然納得出来ます。

ラスト、ケイが「愛するあなたとは、哀しい事に、二人で過ごす時間が残り少ない」と言うセリフが出て来て、思わず涙が出ました。そうなんだよなぁ。子供たちがやっと大人になり、自分たちの好きな事が出来ると思ったら、残り少ないんだよね。いくら寿命が延びても、健康でお金を稼げて、あちこち出かけられるのは、あと僅かなのです。このセリフが一番心に残りました。

夫婦とは二人で始まり、また二人に戻るもの。戻った時からが本当の夫婦かもなぁと、帰り道、今日の夕食は夫の好きなものをと、たくさん買いながら思っていました。必見!とまでは行きませんが、熟年夫婦で観るのも楽しいかも?の作品です。さぁ共感するのか、居た堪れなくなるのか、お楽しみに!


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