ケイケイの映画日記
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2012年10月08日(月) 「アウトレイジ ビヨンド」

めちゃくちゃ気に入った「アウトレイジ」の続編。続編が作られるとは、北野監督も思っていなかったのでしょう、前作で刑務所で木村(中野英雄)に刺されて死んだと思われた大友(ビートたけし)が、まさかの復活。前作では冒頭からウハウハ大喜びしましたが、今回はそれなりに面白かった程度です。でも見ている間は、退屈はなかったです。監督は北野武。

山王組会長が加藤(三浦友和)に変わって5年。今は政治の世界にも力を持つ大組織になっています。外様の石原(加瀬亮)が若頭に着き、前会長のボディガードだった舟木(田中哲司)が重用され、古参の幹部たち(中尾彬、名高達郎、三石研)らには、不満が高まっていました。それを山王会の縮小に利用しようと、マル暴の刑事・片岡(小日向文世)は、幹部たちを焚き付け、関西一の巨大暴力団花菱会の会長(神山繁)や幹部(西田敏行・塩見三省)を引き合わせるも失敗。次の手として片岡は、やくざ組織からは死んだと思われていた大友(ビートたけし)を、超法規的に仮出所させます。

前作も結構豪華キャストでしたが、今回は上を行きます。花菱会武闘派の先鋒に高橋克典を配し、全編セリフ一切なしで登場場面も少しなど、本当に豪華な使い方。でもこれは案外儲け役で、彼の存在感を際立たたせていて、とってもカッコ良かったです。木村の子分のチンピラ役で、新井浩文&桐谷健太。ホントにただのチンピラ役で、絶賛売り出し中のこの子たちを使うなんてと、監督のブランド力を実感します。

ただ前作は相当な数の登場人物のキャラが全て際立っていて、悪い奴でもチャーミングさが楽しめたのですが、今回はそれがない。山王会幹部たちは似たりよったりのヘタレだし、前作では頭の切れる冷酷なインテリやくざぶりが素敵だった加瀬亮は、今回は弱い犬は吠える例えなんでしょうけど、キャンキャン吠えてばっかり。小日向文世も、刑事としての仕事も狡猾に遂行しながらの悪い奴だったのが、今回は卑劣な面ばかりが強調されて、面白いキャラじゃないです。西田・塩見コンビも違いがほとんどない。キャラを楽しむという点では、断然前作の方が上です。

中野英雄は義理人情を重んじる古風なやくざで、彼には共感出来るのですが、イマイチ魅力が薄いです。ん〜、これは私の好みの問題かしら?小日向文世の処世術に懐疑的で、傍観者を決め込む刑事・繁田(松重豊)は、観客の分身なんでしょう、これのキャラの設定は良かったです。ラストにも上手く繋がっていました。俳優ビートだけしは存在感はあるんですが、如何せん演技が下手。なので、峠を過ぎた自分の老いを素直に受け入れたい、でもそれができない老ヤクザ大友のもどかしい怒りが、上手く私には伝わってきませんでした。

大友が浮かぶには、サブキャラをもっと掘り下げた方が良かったかと思います。新井&桐谷コンビは、あれくらいの役振りではもったいない。彼らの役を膨らませたら良かったんじゃないかなぁ。多分前作のヒットで、急遽続編制作が決まったのでしょう。お金も大事だもの。それで脚本を練る時間がなかったのかしら?

殺し方は、今回はバンバン拳銃で大量死がメインでした。前作の石橋蓮司の歯医者の場面や、椎名桔平の殺され方みたいな、秀逸な暴力の「見せ方」は、私的にはなかったです。調書の場面など、ブラックにクスクス笑わせる描写は多々有り、それは流石に上手いと思いました。

不満は数々あり、前作のように手放しでは喜べませんが、、上に書いているように観ている間は飽きません。それこそ監督の技量なんでしょう。今回は久々に夫と観ましたが、周りを見渡せば男性客ばかりではなく、カップルの女性客もたくさんいました。このカテゴリーは最近はあまり見かけず、夫もケーブルテレビで時代劇かVシネ専門チャンネルばかり見ています。需要はあるんですから、これくらいのクオリティなら、掘り起こせるはずです。事実劇場は満員でした。

次も予定があるとか。今回韓国人フィクサーが大友の後見役として登場していましたが、大友は韓国人の通名によく使われる日本名です。自作では大友の出自が絡んでくるのかも?一般受けするヒット作も作って下さいね、監督。作家性を前面に押し出した作品と、上手く共存させて下さい。


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