ケイケイの映画日記
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2012年10月14日(日) 「推理作家ポー 最期の5日間」

観たい映画というのは、公開後すぐ観ないといけない。何故なら、ちょっと時間が経つと評判が否応なしに目につき、見る気がなくなるから。それで「ハンガーゲーム」も「ボーン・レガシイ」もパスしてしまい、観る作品がなくなってしまった仕事休みの金曜日。もったいないじゃないか、と選んだのが金曜初日のこの作品。ポーの作品は子供の頃に読んだくらいで知らないけど、ミステリーは割合好きだし、15Rだし(そういう作品が好き)でチョイス。大阪市内のシネコンはどこでもやっていますが、これを見たら、TOHOのポイントが貯まるので、チケット屋で前売りゲットして、なんばTOHOで観てきました。長々書きましたが、初日に観てよかったわ。そうじゃなければ観なかった作品。
最後まで盛り上がりに欠けました。監督はジェームズ・マクティーブ。

数々の名作を書いてきたエドガー・アラン・ポー(ジョン・キューザック)。妻を亡くした失意から筆が折れてしまい、今はアルコール漬けで落ちぶれ果てています。その頃、猟奇的な母娘の殺人事件が起こり、刑事フィールズ(ルーク・エヴァンス)は、それがポーの作品の模倣と見抜きます。フィールズはポーに捜査の協力を要請します。その頃、ポーの恋人であるエミリー(アリス・イブ)の父親ハミルトン大尉(ブレンダン・グリースン)が主催する仮面舞踏会が開かれ、エミリーが誘拐されます。犯人はポーに対して、事件を元に新聞小説を書けば、エミリーにたどり着けると挑戦状を書いて寄越します。受けて立つポーでしたが・・・。

時代は19世紀半ばのアメリカ、ボルティモア。ゴシック調のミステリーを期待していました。冒頭こそ、禍々しく美しい出だしで、これは期待できるなと思いましたが、これ以降が盛り上がりません。きっとポーに精通する方は熱狂するのでしょうが、如何せん私はポーの門外漢。殺され方に彼の作品へのオマージュがあるのでしょうが、それがさっぱりわからない。猟奇的な殺害方法も、演出の仕方にインパクトがなく、薄い印象しか残りませんでした。ただの変態的ではなく品の良さは感じるので、尚更残念。思えば「セブン」は、本当に名作だったなぁ。

舞踏会や室内の様子、衣装など、美術が全部「それなり」の印象で、品は良いのですが格調高さは感じられず凡庸な印象です。

肝心のストーリーは、愛に殉じるポーの切なさを描くのか、ミステリーの謎解きに重きを置きたいのか、これも散漫な印象です。名士の令嬢エミリーとは年の差のあるカップルなようで、どこでどういう風に二人が惹かれあったのかが描かれていないので、妻の死から立ち上がるきっかけとなったのがエミリー、と言うポーの台詞が頼り。だから必死になって彼女を救おうとするポーにも、通り一遍の感情しか湧きません。ミステリーの方も、普通はあちこち伏線が張られていて、解決に向かう時、一気に謎解きが始まるはずが、あれではこじつけのようで、カタルシスがありません。私は書けなくなったポーが、自作自演で、作家としての最後の炎を燃やしたのかと想像していました。

キューザックは私は好きな人なんですが、個人的に髭が似合っていると思えず、落ちぶれ感よりコント風のおかしさを感じて、最後まで馴染めません。演技は安定してたんだけど。対する刑事役のルーク・エヴァンスは、いつもの色男ブリを封印して、切れ者の刑事役を凛々しく演じて二重丸。もしルークがポー役なら、うらぶれ落ちぶれても、目の煌きにポーの才気を感じさせたはずで、配役が逆だったら良かったのにと、ずーと思いながら観ていました。

まっ、盛り上がらずと言うか、ラストまで薄口の感じです。終わり方はカッコ良く決まってました。ポーの愛読者の方のご意見が聞いてみたいです。


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