ケイケイの映画日記
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2012年03月23日(金) 「昼下がり、ローマの恋」




青年編、中年編、熟年編と、三話で作られたオムニパスの恋愛映画。それぞれに味わい深さがあり、とても気に入りました。登場する美女たちは、皆一様に心寂しく訳ありです。そんな心の底を隠して、ゴージャスに振舞う彼女たちの深情けに、女性の私も共感したり同情したり、とても魅せられました。やっぱりイタリアっていいな!監督はジョヴァンニ・ベロネージ。

青年編。婚約者サラがいながら、出張先で魅惑の美女ミコラと一夜を共にしてしまう弁護士ロベルトのお話。出世して金儲けして有名になって・・・と、人生の目標は立身出世の弁護士君ですが、聡明で美しいフィアンセはマリッジブルーの真っ最中。さてどうなる?なのですが、まぁ落ち着くところに落ち着きます。

三話の中で一番平凡ですが、ミコラとサラの造形と対比に技ありで、二人ともとってもチャーミング。金髪美女のニコラは、奔放な可愛い悪女ですが、彼女の隠された顔に思いを馳せると、なるほどなぁと納得。対する聡明美女のサラの、婚約者に見栄を張らずに、正直に心模様を吐露する素直さにも思わず感激。あっちいったりこっち行ったり、濃い顔のリカルド・スカマルチョが演じている割には、イマイチ陰薄いロベルトですが、美女二人の引き立て役として、これでいいかな?正直あの町が、ロベルトの人生観を変えるほど素晴らしい町には思えなかったけど、何だか気分がいいので良しとしよう。

中年編。キャスターのファビオ(カルロ・ヴェルドーネ)はニュース番組の花形キャスターとしての地位を築き、家庭に置いては妻と可愛い娘に囲まれ、人生順風満帆、のはずが、そうとは知らず精神病を患っているセクシー美女エリアナと、たった一度寝てしまってから、人生が急降下していきます。

いっくらでもホラー自立てにも悲劇にも出来るんですが、これが抱腹絶倒の面白さ!ファビオ役のカルロはもう還暦くらいの人なんですが、未だ油ギッシュで勢力絶倫風の容貌です。喜劇的な演技が非常に上手く、ギョッとしたり二枚目ぶったりの間合いがとっても良いの。直後で必ず笑いが起こります。三話目で非常に可哀想なプロットで、いっぱい殴られるシーンが出てくるんですが、場内爆笑の渦。殴られてるのに〜〜。好きだわ、この人。もう本当に憎めない男性です。奥さんも許してあげたらいいのに。私なら一発殴って水に流すけどなぁ。エリアナの病気が活発な時と収まった時の落差には、とても切なくなりました。

熟年編。リタイアしてアメリカからイタリアに移住した大学教授のエイドリアン(ロバート・デ・ニーロ)。心臓の移植手術を6年前にしています。アパートの管理人と男やもめ同士仲が良いです。ある日パリから管理人の娘ビオラ(モニカ・ベルッチ)が帰ってきます。彼女は何だか訳ありの様子で・・・。

デ・ニーロの何と素敵な事よ。包容力と知性を兼ね備え、人生を達観した老いまで魅力につけています。最近の作品では、怪優っぽい役柄か、彼でなくてもいいような役柄ばっかりなので、もうロマンス物は望めないのかと思っていたのに、どっこいイタリア映画で蘇るとは。

こんな素敵な熟年ですもの、近所のオバチャンに強烈にモーションかけられるのですが、必死で逃げる。心臓のため、セックスはこの六年控えているんですね。円満だった奥さんとも、手術がきっかけで別れてしまったと言います。これもセックスでしょう。欧米では男女は死ぬまで現役が当たり前みたいなので、日本のように、二人で枯れて行かないのでしょう。おまけに子供のいない夫婦だったので、子供の親同士としても生きられなかったのでしょうね。そこまでして身を労わるのは、これは人様から貰った心臓、大事に生命を真っ当したいエイドリアンの決意を感じます。

だから!その決意を翻させるのは、ザ・イタリアの宝石モニカ・ベルッチくらいの美女でなければ。47歳にして美貌に一切陰りのないモニカも、ロバートの前では少女のように愛らしいのですね。昨今年の差婚が流行りですが、過去に傷のある女性を包み込むには、エイドリアンくらいの年輪が必要ではないかと思うのです。あれやこれや絶対絶命の出来事をくぐり抜け、過ぎてしまえば、人生に四面楚歌はないと思えるには、年齢が必要なのです。「私は追いかけられる値打ちのある女じゃないわ」「この新しい心臓が、君を愛すると決めた」「毎朝目覚めたとき、この顔を一番最初に見たい」。ぐっとくる素敵なセリフでした。

そんなエイドリアンに、神様はとても素敵なプレゼントをしてくれます。人並みの経験はそれなりにしているはずの彼の、初めての経験です。人生老いても何があるか、わかりませんぞ。このまま老いて行くはずだったエイドリアンの心に、生きる希望を沸かせたのは「恋」でありました。三話の中で一番好きです。

全てのお話が、年齢相応の哀歓に満ちています。しかし哀愁はあれども、どれも湿っぽさはなく、どんなピンチも笑いに変えてしまう明るさには、ほとほと感心しました。食べて飲んで恋をして、どれも人生を豊かにすることなんだと実感出来ます。映画友達の方が教えてくれた、「観たあと幸せな気分になる」を、読んで下さった方に贈ります。


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