ケイケイの映画日記
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2010年03月21日(日) 「噂のモーガン夫妻」




ラブコメキングのヒュー・グラントと、「SATC」のキャリー役で、一躍全米イチのファッション・リーダーに躍り出た、サラ・ジェシカ・パーカー共演のロマンチック・コメディ。緩くてまったりしているけど、すれ違う夫婦の気持ちにリアリティがあって、既婚者が観ると、味わい深いもんがある作品です。監督はマーク・ローレンス。

ニューヨークに住むポール(ヒュー・グラント)とメリル(サラ・ジェシカ・パーカー)夫妻。夫は敏腕弁護士で妻は大きな物件ばかり扱う不動産会社社長のセレブ夫妻ですが、ポールの浮気で現在別居三か月。寄りを戻したいポールは、何とかメリルと話し合う場を設けたのですが、何とその後殺人事件に遭遇。二人は犯人を目撃します。警察により「証人保護プログラム」が適用され、二人はワイオミングのレイという片田舎へ送られてしまいます。彼らを自宅で保護し世話をしてくれるのは、保安官のクレイ(サム・エリオット)とエマ(メアリー・スティーンバージェン)の熟年夫妻。二人の温かい人柄と、大らかな土地柄に影響された二人に、次第に心の変化が生じてきます。

まったりしているんですが、テンポはなかなかよろしいです。二人がセレブカップルだというのもちゃんと筋に絡んでいるし、小ネタの笑いが随所でヒットし、始終笑えます。大都会NY式の洗練された「良識」を持ちこむメリルが、超ド田舎ワイオミングの泥臭い習慣に一蹴されるシーンなんか、とっても愉快。民主党支持者は、ワイオミングじゃ住めないみたいよ。

熊に襲われたりのドタバタコメディ風味も出しながら、しかしお話は夫婦の危機の確信へと進みます。とある事で焦燥感に駆られたメリルと、それにげんなりしてしまい浮気してしまったポール。これは両方に同情出来ます。どういう家庭を持ちたいか?という、夫婦のアイデンティティにも関わる問題ですもん。傷ついた自分の自尊心を守りたいため、お互いちゃんと話し合いも喧嘩もしなかったんだね。クレイ宅で夜中に白熱の大夫婦喧嘩する二人に、「殺人鬼を預かった時の方がましだった」と、ため息交じりに寝床で言うクレイに大爆笑。このテイストでオトすユーモアも、全部ヒット。脚本と演出が上手く噛み合っています。

NYの喧騒と多忙さから解放された二人は、次第にのんびり大らかなレイの土地柄に馴染んで行きます。この辺はありきたりな都会人の変貌ですが、レイの人々がキャラ立ちの良いチャーミングな人ばっかりなので、こちらも納得。町の数少ない娯楽場のビンゴ会場でビンゴしたくらいで、抱きあって喜ぶ二人。自分達の収入から思えば微々たるもんのはず。都会では味わえない、人としての原理的な喜びを得るに従って、二人は次第に歩み寄って行きます。

このまま大丈夫そうだと思わせといて、この後また二転三転。メリルにも秘密があって、そのことで今度は立場が逆転。この時の夫婦の反応が、男らしい妻と女々しい夫なのが、妙に生々しくて感慨深かったです。でもラストは予想通りのハッピーエンド。特に最後は顔が自然にほころんでしまうようなオチで、とても後味が良く幸せな気分になりました。

ヒュー様はセレブな職業に英国紳士らしい皮肉屋、しかし女性が好きで優しくてと、いつもながらの彼に、都会じゃ辣腕でも田舎じゃ全く使えない男ぶりが笑わせます。ひ弱さまでがチャーミングに見えるのはさすがヒュー様ですが、私が超気になったのは、容姿の劣化ぶり。ハッキリ言ってすごく老けてました。心配だわ。彼には一生ラブコメキングでいて欲しいのですが、生き残る為には、ちょっと方向転換を視野に入れてもいいかも。

サラも良かったです。マシュー・ブロデリクと結婚した時は、小粒なカップルで良い意味でお似合いだと思いましたが、ホップステップで瞬く間に夫を追い越したサラ。今じゃエスコートされても人の良さだけが取り柄のような夫、夫婦生活を維持しているだけで、彼女の株が上がろうというものです。日本では受けにくい顔立ちですが、演技などトータルバランスを加味すると、40代では一番輝かしいコメディエンヌだと思います。

この二人を引きたてつつ、自分達も存在感マックスと言うベテランバイプレーヤぶりを見せた、エリオットをスティンバージェンもお見事でした。特にスティーンバージェンは、私が大好きな女優さんで、どんな役柄にも女性としての豊かさを吹き込む人です。出演シーンもたっぷりあって、個人的にはそれが一番嬉しかったです。薪割りシーン、上手でした。「フレンズ」(大昔のフランス映画の方)のアニセー・アルビナが薪を割るシーンを思い出しちゃった。

くらたまが、「夫にこんなもんプレゼントされたら、私はキレます!」と、チラシに書いてましたが、私はキレないけど、氷の彫刻も自分の名前のついた星も、確かにヤダな。エマが嬉しかったという牛は、もっといや。
亡くなった母は、父の浮気が発覚する度、宝石を買わせていましが、「事情があって鑑定書がつけられませんが、その分お買い得ですよ・・・」と囁かれ、復讐込みで喜んでころこんで大きなダイヤを買っていましたが、ある時鑑定に出してみたら、全部二級品以下だったというおまけ付き。私の夫は婚約の時以来、宝石を買ってくれた事はないけれど、その代わり浮気もしたことがありません。その方が幸せってもんです。でも宝石買うお金がないから、浮気しないのかしら?


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