ケイケイの映画日記
目次過去未来


2010年01月13日(水) 「ティンカー・ベルと月の石」(吹替え版)

昨日観てきました。とめさんから松竹系のチケットをいただいて、板尾の「脱獄王」を観ようと喜んでいたんですが、「脱獄王」は16日からでチケットは15日まで。そこでミノさんから意外と大人もイケるという推薦を受けていたこの作品をチョイス。易しくお子様向けに友情のなんたるかを描いているようで、実は引率のママさんたちに向けた、深〜く含蓄のある描写が随所にあり、なかなか内容も充実した秀作でした。

もの作り妖精のティンカー・ベルは、8年に一度の秋の祭典で一番重要な、「月の石」を置く杖の制作を、女王から依頼されます。張り切るティンクに協力したいと、親友のテレンスは何くれとなく面倒をみますが、度が過ぎ喧嘩に。カッとしたティンクは、不注意から大事な月の石を粉々にしてしまいます。月の石がなければ、妖精たちが飛ぶのに必要な「妖精の粉」が作れず、一大事です。自分の不始末を誰にも相談できないティンクは、願い事を聞いてくれる鏡を探しに、旅に出る事にします。

CGアニメですが、色彩がとてもカラフル。それも強い色味はアクセントくらいで、ほとんどがパステルカラー中心で、綺麗です。画の美しさも、ターゲットである幼稚園児からローティーンの女子向けに、メルヘンチックでとても綺麗です。雄大に空を飛ぶ気球や、危機また危機の場面も織り込み、飽きさせる事はありません。妖精の粉や女王のドレスなど、光りものの処理も上品で夢があります。画に関しては100点満点、私はいい歳こいて少女趣味なので、眼福でございました。

ストーリーはお子様には簡単明瞭に、友情の大切さを説いています。ありがとう、ごめんなさいが言えること。相手の立場に立って友達を思いやる事。そして協力すれば力も知恵も倍になること。ターゲット年齢の子供たちは素直なので、すっと心に入っていくと思います。

で、引率のお母さん向けには随所に細かな深読み的描写が盛りだくさんです。まずは親友と言う括りですが、ティンクとテレンスは男女なので、恋人同士、夫婦にも置き換えられます。ティンクは才能豊かで明るくチャーミングなのですが、少々疳癪持ちなのがウィークポイント。今回も自分のしでかした不始末に対して、あちこちで「あなたのせいよ!」と、相手のせいにしてしまいます。

しかしこれがちゃんとティンクに感情移入出来るようにしてあるんですね。テレンスは良い子ですが、確かに過剰に世話を焼きウザいです。私がティンクでもイラっときます。しかし善意なので上手く断れない。最後には疳癪を起して喧嘩。もう最悪です。ティンクがダメだったのは、素直に自分の気持ちを相手に伝えられなかったからだと、瞬時に観客に理解させる巧みさです。そして短気は損気。自分にもあてはまるよなぁと、観ていて反省する人は、私も含めて多いはず。でっかいコンパスを蹴っ飛ばしたあげくの結果は、一度や二度は、誰だって経験あるはずです。

お互い仲直りしたいのに、意地の張り合いをしてしまう二人。コミュニュケーションで一番重要なのは、プライドよりも素直な心なのだと感じます。ティンクが反省したのは「あなたのせいよ!」を連発して、不幸のつるべ打ちにあって、やっと自分の非を悟るところなど、妖精とは思えぬ人間臭さ。絶対絶命、四面楚歌のティンクに、私自身の似たような経験が蘇り、思わず手を差し伸べてあげたくなります。

そんな彼女に誰が手を差し伸べてくれたのか、ピンチはチャンス、失敗は成功の母なのだということ、形のあるものはいつか壊れるけれど、内面のしっかりした心の強さ優しさは壊れる事はないなどが、感じ取れるようになっています。どれもこれも「自分が変われば相手(環境)も変わる」という、普遍的なことが基礎となって描かれています。

もうひとつ特筆すべきは、テレンスが人生相談をした「ふくろうさん」の存在です。ただただ「ほう〜〜」と鳴くだけで、テレンスの話に傾聴しただけ。同意もアドバイスも一切無し。じっくり話を聞いてもらったテレンスは、自分でじっくり答えを出します。「ありがとう、ふくろうさん。ふくろうさんが森で一番賢いと言うのは本当ですね」の言葉を残します。う〜ん、深い!

昨今のディズニー仕様で、妖精たちは様々な人種が入り混じり、どの国の子も楽しめるようになっています。ティンクもすこぶるつきの美貌には描かず、甘さのないキュートさを前面に出しているのは、今の時代に合わせているのでしょう。細部に気を配った優秀な作品で、大人目線子供目線どちらからでも楽しめます。もうじき終映ですので、DVD化の折にはお子さんのおられる方には特に、是非ともご覧いただきたい作品です。


ケイケイ |MAILHomePage