ケイケイの映画日記
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2008年05月22日(木) 「ハンティング・パーティ」




火曜日に観てきました。実は見損ねている「つぐない」を観るはずだったんですが、時間がずれこみ1時50分は無理っぽい。しかし火曜日はテアトル梅田の会員はポイント倍押しの日。ワタクシ只今8ポイントで、それを足すと10ポイントになり、次回はタダ。なので火曜日は、絶対テアトル梅田に行かなければならなかったのです。
そんな訳で、ボーダーだったこの作品を、2時30分から観てきました。これが結構面白かったのだな。

サイモン(リチャード・ギア)とダック(テレンス・ハワード)は、戦場ジャーナリストとして、賞も取るなど活躍していました。しかしボスニア紛争の生中継中、怒りにかまけたサイモンのレポートは大失敗。それ以降コンビは解散し、今はサイモンは行方知れず、ダックは現場を離れNYで安定した仕事を任されています。数年後、ボスニアで仕事をしていたダックに、特ダネを持ってサイモンが現れます。この特ダネに再起を賭けるサイモンの熱意にほだされ、同行するダック。新米プロデューサーのベン(ジェシー・アイゼンバーグ)も加わり、三人の道中が始まります。

三人の道中は軽快でコミカル、そして軽薄。道中は道中でも珍道中の類です。うっそー、マジですか?そんなアホな、な展開が続出。普通の飲食店の店主に銃で威嚇されるわ、CIAに間違われるわ、危機一髪の時には天の助けがあるわで、脚本は面白いけどご都合主義がありまくりです。と言いたいとこなんですが、あな恐ろしや、これ実話なんですって

最初に「まさかと思う部分が真実です」とテロップが流れるので、最初から実話とわかって観るのですが、いやーほんとにね、事実は小説より奇なりです。ジャーナリストが特ダネを目指して突っ走る実話が、何故軽薄かというと、正義のため社会のためというより、私利私欲でお三人さんとも突っ走るからです。

サイモンはお金と、あることの(隠すほどのもんでもないが)復讐のため。ダックは命がけの現場のスリルが忘れ難く舞い戻り、ベンは自分を小馬鹿にする局副社長の父親を見返すためと、全然正義など関係ないのですね。

冒頭ダックが銃弾が飛び交う戦場の仕事で、エクスタシーを感じていたという独白があり(もっと直接的に訳してましたが、淑女が○○なんて書けませんわよ。戸田なっちゃんは訳されてましたが)、彼の本心は死と隣り合わせの戦場が懐かしいとわかります。うわ〜〜、出た〜〜、と思う私。常々私の10才年上の親友が言うのですが、「男はみんな何かクセがあるねん」。

クセとはひとクセと言う意味です。それがあれば、何もかも捨ててもいいほど、熱中したりいれ込んだりするものが、男ならみんな必ず一つはあるという意味です。「王妃の紋章」「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」など、女っけまるでなしで、ストイックに自分の欲望を追求する強烈な男たちと、根っこの部分ではダックも同じなのでしょうね。いやいつでも降りられるのに、降りないサイモンやベンも同じなんでしょう。

こういうのを続け様に見せられると、「私と○○(←好きなの入れて)と、どっちが大事なのよ!」と金切り声を上げたところで、とっても不毛なことだわね、と感じます。こういうの、男に備わった本能なんですかね。赤ちゃんがおっぱい見たら、必ず吸いつくみたいな(比喩が違うか?)。

しかし、しかしですね、もう辞めといたらいいのにと思うのに、そのひとクセが瓢箪から駒、ジャーナリストの正義感を燃えたぎらせるきっかけとなるのですから、面白い。男っちゅーのはある程度自由に泳がせんと、ええ仕事できないんですね。これを観ると、「私と○○と!(以下省略)」は、もう言わないでおこと思います。だって結婚したり付き合ったりするっていうのは、そのひとクセにかかる時間を捨ててもいいほど、「私」が大事だからですよね?比べられるもんじゃありませんて。

そんな軽妙な部分だけではなく、ちゃんとマスコミは上っ面しか報道しないこと、大事なことは裏側にあると、ダックに語らせています。そして大物政治犯を通じて、世の中悪の流通が、わんさかはびこっているのだと、改めて知らせてもくれます。追う者と追われる者は、実は裏で繋がっているのですって。う〜ん、だからあの人も、まだ捕まらないのね、と言う風にきちんと描いていて、社会派作品としても手堅く、決して面白おかしくだけではありません。

キャスティングがとっても良かったです。女がしくじりの始まりで、その女絡みで復活するなんて、ギア様しか出来ない役です。来年還暦で異性関係で哀愁を漂わせる役柄で違和感ないなんて、ギア様しかいませんて。ハワードは三人の中では、一番普通の良識ある役柄です。そんな彼から私の感想が生まれたのは、ひとえに彼の好演あってのものです。アイゼンバーグは、二枚目の線は多分無理っぽいので、こういうコミカルな脇役で結果を出せば、投角を表わすかも?

エンディングで、どこが真実かどこが脚色か教えてくれるので、お見逃しなく。一層うっそー、ありえへん!と思う事間違いなしです。すぐ終わっちゃいそうなので、お時間があれば観て下さい。




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