ケイケイの映画日記
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2008年04月23日(水) 「王妃の紋章」




う〜ん、さすが中国四千年。色んな意味で、「ものすごい」と評判の作品を、22日になんばパークスで観てきました。キンキンキラキラ、帰りの電車の中でも、まだ目がチカチカしておりました。美術に膨大なお金がかかっている割には、内容が薄いと聞きましたが、まぁこれくらいなら、許容範囲かな?もちろん文句もあるんですがね。でもスクリーンで観る価値充分の見応えでした。「王妃の紋章」って、こういう意味だったのかぁ。監督は北京オリンピックのオープニングの演出を担当するチャン・イーモウ。

絶対的な権力を誇る国王(チョウ・ユンファ)。しかし王妃(コン・リー)との仲は冷え切り、あろうことか、前夫人の息子である長男(リィウ・イエ)と王妃は不義の仲です。そんな二人を無邪気を装いながら見つめる三男(チン・ジュンジェ)。そんな時、武芸に長けた二男(ジェイ・チョウ)が僻地の赴任地から戻ってきます。次男を溺愛する王妃は、次男を国王にと画策します。

まずはビジュアルから。ところどころCGを用いながらも、今時ではなかなか観られぬ絢爛たる人海戦術で、宮廷の様子を描きます。下っ端の下女から、高級官僚に至るまで、その衣装の豪華さや、目を見張ります。調度品も彫りものや細工が素晴らしく、こちらも目を見張ります。贅沢の限りを尽くしたその暮らしぶりは、本当にすんご〜〜〜い!と感嘆。そしてユンファとコン・リーという、当代一の中国の大物俳優二人が、この絢爛たる世界感に、全然霞まないのがまたすごい。最後の最後まで、この豪華な様子はペースダウンせず突っ走ります。

中国映画らしく、クン・フーあり剣ありです。そして大がかりな戦いの様子。内容が「壮大な夫婦げんか」と聞いていたので、アクションは頭になく意外だったため、私は普通に楽しめました。

で、ドラマ部分です。不義密通あり、家庭内下剋上あり、過去の秘密あり、「ほにゃらら」ありと、愛と欲望と憎悪が限りなく渦巻いています。「ほにゃらら」なんてね、「秘密のあの人」登場時に、私なんか速効わかったんですが、ラスト近くで隣のご婦人が、「まぁ、『ほにゃらら』だったのね!」と、軽く叫ばれたので、他の方はわからんかったのかしらん?

王が王妃にした仕打ちは、あれは不義密通を知ったからでしょう。王妃が長男を誘惑したのは、蜜月の王と長男の間を嫉妬したから。それは王が自分が生んだ王子たちより、長男を可愛がるのを見て、前夫人の面影を追い続ける、王に対する妻としての哀しみだと感じました。王妃の病である「虚寒症」って、いわゆる血の道かな?ということは、更年期障害かもですね。ホルモンバランスのくずれは、段々女として下り坂になっていく自分を自覚させられ、より一層哀しみを増大させたのかも。

次男への溺愛ぶりも理解出来ます。そりゃ自分の産んだ子を、国王にしたいでしょう。素養だって長男よりあるのは明白だしね。この辺までは全然OK。

しかし王は、何故こんな血も涙もない冷血漢になってしまったのか、その辺を全然描いていないので、「秘密のあの人」に対してのチグハグな対応に謎というか、ツッコミたくなってしまいます。それ以外でも、本当にひどい男ですよ。何故こんな男になってしまったのか、背景を描かないと。いくらユンファが貫禄と押し出しのきいた男っぷりを見せてくれても、薄味な造形は否めません。

コン・リーは、王・長男・次男に対し、妻・女・母と、それぞれ微妙に表情からしぐさまで変え、さすがの演技ぶり。あんな豪華な衣装と役柄に霞まない抜群の存在感で、本当に彼女しか出来ない役だなと思いました。

三男の行動もそう。いきなりなんやねんと、びっくり。別に三男をひがますような親ではなかったけどなぁ。息子が三人もいりゃ、あんなもんでしょ。王と王妃の態度も解せません。三男の扱いは強引過ぎで、無理にこの役は、作らなくても良かったと思います。余談ですがこの子ね、エディソン・チャンに似てるんですよ。時節柄本人は嬉しくないでしょうが。

この辺のことが不満なのにで、ギリシャ神話的悲劇ではなく、東海テレビの昼メロ的ドロドロの印象の方が残りました。

でもそれ以上に私がツッコミたくなったのは、長男役のリィウ・イエ。個人的に全然魅力が感じられず、あのコン・リーが不覚にも愛してしまう人には思えません。なんつーかね、漫才コンビで言ったら、超抜きんでているボケ役の横で、ただ合いの手を入れるだけのふつつかな相方みたいな感じというか。とにかく存在感が薄いのです。その点、一見容姿は平凡ですが、次男役のジェイ・チョウは、なかなか凛々しくて良かったです。

国王と言っても、家庭は家庭。その始まりは夫婦のはず。その夫婦間のことをおろそかにしては、いくら他で懸命に補っても手から水はこぼれてしまいます。家内安全・家庭の平和は夫婦和合から。壮大かつ豪華絢爛なこのお話から学んだのは、平凡な庶民にも通じる教訓でした。


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