ケイケイの映画日記
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2007年10月29日(月) 「スターダスト」




これもスゴーく気に入った!この前の日曜日、久し振りに夫婦で観てきました。今週末からは観たい作品のラッシュなんで、私は何でも良かったので、夫にチョイスさせたところ、チケット売り場で急遽「ブレイブワン」から、こちらに変更しました。「ブレイブワン」は昨日観たけど、「スターダスト」で正解だった模様。夫いわく、「『ロード・オブ・ザ・リング』より良かったわ」だそう。そりゃ色々総合したら、圧倒的に「指輪」の方が勝っているんですがね、正直言うと私も「スターダスト」の方が好きな作品です。

昔々、イングランのはずれには、塀に囲まれた「ウォール村」がありました。塀の外の町は魔法の国の「ストームホールド」で、塀の外へは決して出ないのがしきたりになっています。トリスタン(チャーリー・コックス)は、愛しい娘ヴィクトリア(シエア・ミラー)に求婚するために必要な流れ星を探すため、父の力を借りて塀の外に飛び出します。巡り合った流れ星は、なんとイヴェイン(クレア・デーンズ)という美しい娘に変身していました。しかしイヴェインを狙うの者は他にもいました。瀕死のストームホールド国王(ピーター・オトゥール)の遺言で、国王になるために彼女が必要な三人の王子たちと、再び輝く若さを取り戻したいラミア(ミシェル・ファイファー)ら、三人の魔女でした。

完璧に「昔々、あるところに・・・」の御伽話です。オチも最初の方のナレーションでだいたい察しがつくのですが、起伏のあるストーリーが、最後まで退屈させずに見せてくれます。魔女たちが使う多彩な魔法は、記憶喪失だったり、人間を動物に変えたり、指一本で家を建てたり、人形を使って戦わせたりと、子どもの頃童話で読んだようなものが出てきます。それを平凡に感じさせるのではなく、あの時頭の中で空想したのは、これだったんだ!と、とっても愉快な気分させてくれます。そんな可愛い魔法ばかりではなく、ブラックな魔法やダイナミックな魔法も数々で、まずは魔女たちに堪能出来ます。

トリスタンは最初冴えない青年なのですが、イヴェインを連れて大冒険の旅に出るうち、たくさんの経験をして、思考も剣の腕もどんどん磨かれて、逞しく勇気ある素敵な青年に成長するのを、わかりやすく描いていて○。途中で出会う飛行船に乗る空賊?のキャプテン(ロバート・デ・ニーロ)に、直接ヴィジュアル面から剣の腕、男としての心得を伝授されるのをサクサク
小気味よく描けています。演じるコックスは誰もが好感の持てるタイプの青年で、変にハンサムではなく、普通の好青年なのがまた大変よろしいです。

登場人物は全て善か悪か二極しかないのが、わかり易いです。ストームホールド国王は、自ら兄弟たちを殺して、国王の座を手に入れますが、さすがはその息子たち。同じことを繰り返しますが、あまり残忍に感じないのは、殺されたらすぐ幽霊になって、画面に出てくるんです。その姿がなんともユーモラスで笑いを誘います。そして生前は骨肉の争いをしていたはずの彼らが、仏さんになったら、なんとも和やかに接しているのが、残酷さを薄めていて、とてもいい感じです。

最初クレアが星の役というのは、ミスキャストだと思っていました。彼女は手足が長く長身で面長、愛らしいというより知的なクールビューティの方だと思っていたからです。しかし彼女がとても良かった!勝ち気で素直なイヴェインは、空の上から人間たちの「愛する」という行動をたくさん観て学んでいます。そして自分が初めて感じた「愛」。その愛を表現するとき、イヴェインは元々は星なので、彼女の感情が高まると光を放ちますが、この姿はとても清らかです。人間も「輝く」という表現をされる時がありますが、それには清らかで純粋な、それを支える芯の強い心、そして品格というものも必要なのだと、数々の場面で流れ星イヴェインが教えてくれます。これがクレアを選んだ理由なのでしょう。

しかし何と言ってもこの作品の最大の功労者は、ファイファーとデ・ニーロです。二人の大ベテランが、何と愉快なことか。ファイファーはまるで自分のセルフパロディのような美に執着する魔女なのですが、若返ったのはいいものの、ひとつ魔法を使えばひとつ逆戻りする自分に嘆く姿が笑えます。ただ笑えるだけじゃなくて、女心は灰になるまでだと、つくづくと思わせてくれます。まだ後5年は充分美女でやっていけそうなファイファーが、一つ女の階段を降りたんですね。楽しんで老婆を演じている様子は、女に執着せずに堂々として見え、とっても爽快でした。デ・ニーロも凶悪なキャプテン、実は心優しい中年男を演じて、とっても楽しそう。言葉の重みや懐の深さと、「とある趣味」のギャップを楽しんで観られるのは、デ・ニーロが演じるからこそです。この二人の余裕の演技ぶりは、このやや平凡なファンタジーを大幅に格上げしたはずです。

お伽話らしい教訓もあり、きちんと道徳的にもかなう作りになっています。時間も二時間少しですし(ファンタジーは長いのが多くて私はいや)、良質の全年齢に対応する作品として、太鼓判でお勧めします。とっても気持の良い作品ですよ。


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