ケイケイの映画日記
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2007年04月26日(木) 「ロッキー・ザ・ファイナル」


「ロッキー」世代の男性を感涙させているこの作品、本日観てまいりました。予告編で挨拶しているスタローンにほだされての鑑賞ですが、もういっぱい泣いちゃった。映画と音楽の、切っても切れない関係も再認識させてくれる作品です。

今はフィラデルフィアで、小さなイタリア料理レストランを営んでいるロッキー・バルボア。元チャンプの彼は、店で客の求めに応じ、昔の対戦の様子を語っていました。平穏な毎日ですが最愛の妻エイドアンは既に亡く、一人息子ロバート(マイロ・ヴィンティミリア)とは疎遠。彼の心は穴が空いたようです。そんなある日、現チャンピオン・ディクソン(アントニオ・ターヴァー)と昔の彼をシュミレーションで戦う様子がテレビに流れ、ロッキーの闘争心に再び火が点きます。

私はこのシリーズは、最初と2をテレビで観て、後は未見です。もちろん「ロッキー」は好きですが、それほど思い入れのある作品ではありません。なのにオープニングに例のテーマソングが流れ、スクリーンにでかでかと、「ROCKY BALBOA 」 の文字が浮かぶと、どうしてかとっても気分が高揚するのです。これは30年以上、このテーマソングがいかに大衆に親しまれ、あらゆる「燃える」場面で耳馴染んだかということでしょう。

エイドリアンの死に打ちひしがれ、まだ受け入れられないロッキー。ただの長年連れ添った妻を失っただけではない、二人の馴れ初めからを知っている観客は、絶対しんみりするはずです。しんみりしているところに、あの場所あの場面、若き日のロッキーとエイドリアンの姿が挿入され、しんみりが倍層で胸が痛くなってきます。

息子ロバートは、いつも偉大な父と比べられ葛藤がありました。親子関係は組み合わせによって微妙に変化し、ただただ溢れる愛情をお互い注げば良い「東京タワー」のような母と息子とは違い、父と息子というのは、基本形はハードボイルドなんじゃないかと思います。父親が息子に望むのは、母親のようにあるがままの子供を受け入れるのではなく、自分を超える人間に成って欲しいと思うものでしょう。偉大な父を持つと、そこから逃げたくなるのも当然。この辺は演じるヴィンティミリアも好演で繊細に描いています。親父に説教されて、すぐに心を入れ替える様子はちょっと早すぎるけど、エイドリアンが育てた子ですもの、きっと素直な良い子なんです。

若い世代の葛藤は、強すぎて人気がないディクソンも描かれます。尊大な彼が老トレーナーに諭される場面は、良い風景として心に残ります。これがないと、いやな野郎で終わってしまいます。

ディクソンとのエキジビジョン試合が決まり、トレーニング風景が映されます。あの美術館でのランニングもあり、必死にスタローンがトレーニングする姿に、やっぱり涙が流れる私。おかげで還暦のスタローンの体は見事こんなに。



新しい恋の始まりを予感させる女性が出てきますが、彼女はエイドリアンが結びつけたような女性。ディクソンとの試合の時に、「お守りに店から持ってきたの」というのは、エイドリアンの写真。この行き届きまくったあの演出この演出に、ほとんど心を弄ばれているような気分になる私。

ディクソンとの試合の様子は大変見応えがあります。手加減はあるでしょうが、画像のように本当に打ち合っています(ディクソン役のターヴァーは、前ライトヘビー級チャンプ)。筋書きは予想通り。そんなわけないじゃん!なんですが、もうどうだっていいのだ、そんなこと。ロッキーの全てを賭けて戦う様子に泣きながら見入る私。

ロッキーは過去に栄光もあり、店も繁盛、人々からも未だに「あのロッキー・バルボア」として人気があり、何も不足のない人生に思えます。この復活劇は、エイドリアンを亡くした寂しさをまぎらわすためのものなのでしょうか?私は違うと思います。

ロッキー・バルボアは、シルベスター・スタローンなんです。

ボクサーに復活し、現役チャンプと試合する老兵ロッキーは、世間の笑いものになります。それはこの作品の製作を聞いて、何を今更と嘲笑されたスタローンと同じです。下積みの貧しい時代があった、成功した、人生のピークを迎えた、下降した、そしてまた小さく復活。ロッキーの人生はスタローンの人生とぴったり重なります。人生に遣り残したことがあるというのではなく、まだまだ燃え尽きない自分がいるのでしょう。ロバートは父に「心は年を取らないということを、見せてやって」と言いますが、スタローンはもう一度自分の原点であるロッキーになることで、それを実証してみせたのではないでしょうか?この作品も観る前はラジー賞一番候補だったのが、ふたを開ければ大好評です。ただの懐古趣味に浸るのではなく、人はいつまでも未来に向かって歩けるのだと、実感出来る作品です。

タリア・シャイヤは、幽霊でもいいから出たかったそうですが、こんなに作中で存在感がいっぱいなんですもの、許してくれるでしょう。ポーリー役のロバート・ヤングも相変わらず良い味で健在です。スタローン渾身のこの作品、観る方も熱い心を受け取り若返りましょう。


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