ケイケイの映画日記
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2005年08月12日(金) 「チーム★アメリカ / ワールドポリス」


木曜日観てきました。上映開始から一週間後でレイトになると早とちりし、あきらめかけた作品。本当は上映の梅田リーブルは会員なので、金曜日は1000円なのですが、ちょうど三男がその日からクラブがお盆休みで、鬼のいぬ間の木曜日鑑賞でした。会員なので300円引きですが、ご存知の方も多いと思いますが、私は一本単価850円くらいで観ています。だから1500円払うのはすごく観たいか、大博打気分の時くらいです。この作品の場合は後者。さてこの博打には、勝ったのか負けたのか・・・?

特殊部隊”チーム★アメリカ”は、今日も凶悪なテロを撲滅すべく、世界各地を飛び回っています。リーダーのスポットウッドは、ある国の独裁者が大量破壊兵器をアラブのテロリストに売りさばこうとしている情報をつかみ、ブロードウェイの俳優ゲイリーを、その演技力を買いチームにスカウトします。最初は及び腰だったゲイリーですが、本当の自由を勝ち取るという名の元、”チーム★アメリカ”に参加することを決めました。

私は未見ですが、世相を毒舌でばっさり切る(らしい)アニメ、「サウスパーク」の作者、レイ・パーカーとマット・ストーンのコンビによる、懐かしの「サンダーバード」風の人形劇です。人形たちが実に表情豊かで、その辺の大根役者なんか目じゃない演技力を披露してくれます。精巧なのは人形だけでなく、セットや爆撃シーンも作り物としての見応えがあり、堪能させてくれます。この辺は大満足でした。

題名からも判る通り、アメリカが世界の警察として平和を守る大義名分の下、彼らは仕事をしています。数人のテロリストを捕らえるため、世界各国の文化遺産を破壊しようが、静かな庶民の生活をかき乱そうが「あなたたちは僕たちが守る!」の能天気な厚顔無恥ぶりで、他国の迷惑もわからないアメリカをチャカしています。

この辺はなかなかブラックで良いですが、彼らの行動を非難する俳優たちが実名で出てくるのですが、ショーン・ペンやティム・ロビンス、アレック・ボールドウィンなど名うてのリベラル派まで、同じように思想のためには「目には目、歯には歯を」的な行動を取り、彼らもチャカしています。これってどういう意味?同じ穴のムジナ感より、ただの野次馬が外で煽っているだけの気がして、段々笑えなくなってきます。マイケル・ムーア(この作品にも人形でご出演)も強烈な笑いでブッシュ政権を皮肉っていますが、少なくとも彼の政治的スタンスはこちらにも充分伝わり、信念も感じますが、パーカー&ストーンは、おちょくりっ放しなだけで底が浅く、彼らの意見というものが感じられません。

それと描写が下品すぎ。人形劇の18禁て何なのさ?と思っていましたが、人形を使ってのファックシーンがこれがどーも・・・。あんな格好こんな格好、ちょっとしたポルノ並みでドギツ過ぎ。ゲロシーンも香港や韓国なんか目じゃないやり過ぎ感がいっぱい、男性が男性に忠誠を誓うためフェラを要求するなど、私の感覚ではブラックユーモアを軽く通り越して、嫌悪感が残りました。

北朝鮮の金正日首領さまも実名で登場しますが、彼に歌わす歌詞の内容が、人から理解されない孤立と孤独を歌うもので、登場人物の中で一番作り手がシンパシーを感じているように思えました。自分たちもハリウッドの末端で理解されずに生きているのさ、これでいいのさってことかな?チーム内で三角関係、四角関係も発生し、恋ありアクションあり友情ありで、充分ストーリーはハリウッド娯楽作の王道でした。これも皮肉?

感心したのは実名で登場したハリウッドの有名俳優たちです。歌の歌詞でバカにされまくったマイケル・ベイやベン・アフレックスなども、これほどコケにされながら、誰も訴えていないことです。ミロシュ・ホアマンの「ラリー・フリント」は、言論や表現の自由を守る、発信者側の怖いまでの信念を感じさせましたが、性的表現でおちょくられたのは神父さんだったはずで、こちらは表現する側ではないので、名誉毀損で訴えていました。ハリウッドの俳優さんや監督さんは、自分の仕事をよく認識していて、なかなか骨太のようで、男も女も上げたな感があります。当然北朝鮮では上映禁止。これも作り手は計算ずみだったんでしょうか?ならかなりしたたかです、この二人。


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