ケイケイの映画日記
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2005年04月15日(金) 「いぬのえいが」


昨日動物好きの友人と観てきました。終了直前だったので劇場は6人だけでしたが、全員泣いていたと思います。私は特別犬好きではない、というより正直動物は苦手。嫌いではなく怖いのです。だからながめる分には全然大丈夫だし、素直に可愛いと思うのですが、抱っこしたりするのは怖くって・・・。でも犬好きだけに好評の作品のように言われていますが、私のような者でも充分楽しめました。ただ一点を除いては。

オムニパス形式と聞いていたので、全編犬にまつわる全然違うお話かと思いきや、リレー形式でお話はつながれ、主役はノラ犬のポチ。ポチは柴犬で、元来柴犬は賢い犬と言われていますが、この作品のポチもその特性(?)をいかんなく発揮、うちの子供より賢いぞ、と感心することしきりです。そしてひとたび自分のご主人様と決めた相手に対する忠義心には、本当に胸が熱くなります。それはご主人様だけでなく、一宿一飯の恩義を受けた相手にも向けられます。新進気鋭の映像作家(犬童一心、黒田秀樹など7人)が集まって作った作品にしては、気をてらわずひねりもなく、真正面から人間と犬の愛情と信頼関係を描いていて好感が持てました。

軸のポチのお話以外には、ミュージカル仕立て、犬の恋、バウリンガルについてなどお笑いを交え、そして最後が画像の飼い主美佳ちゃんとマリモの幸せで切ない犬との共生を描く「ねぇマリモ」で締めくくられます。この「ねぇマリモ」は、ポチ以上に泣けて泣けて。友人は子供の頃犬を飼っていて、「ほんま、あの通りやで。」と肯いていました。

私は病院の受付という仕事柄、たくさんの方を接する機会がありますが、犬を飼っている方の「うちの子自慢」は微笑ましいものです。皆さん本当に家族として大切にしていらっしゃいます。口を揃えて「子育てと同じやで。大切にして愛情を注いでも、甘やかしたらあかんねん。」とのこと。この映画でも共に生き、人生を豊かにさせる対象として描かれても、「お犬様」はありませんでした。

だから最初書いた一点が残念で。その一点とは山田君の病気の扱いです。山田君は転地療養で転校してきた設定ですが、雨の中発作が起こった時にシューとスプレーしていたのは、「メプチンエアー」という気管支拡張剤です。これは簡単に言うとぜん息の発作止めで、ぜん息以外の疾患で使うことはありません。使い方も正しく一回だけシューと使っていました。私はただの受付兼診療助手なので、今日先生に確認しました。

そして救急車に運ばれた後、東京の病院へ移送される際看護婦さんが一言、「手術すれば治るから大丈夫よ」。???ぜん息に出術なんかあったかなぁ。これも今日先生に確認したところ、ぜん息で手術は自分は聞いた事がないとのこと。これはどう理解すればいいのか?辻褄が合わないとか演出が未熟だとかそういうことではなく、明らかに間違いな描き方です。どちらか一つだけ挿入すれば良かったのに。

この描写でぜん息の人が差別されたりするシーンではありませんが、ぜん息は珍しい疾患ではありません。過った認識が広まると患者さんの心理に微妙に影を落とすのではと、老婆心ながら危惧しています。病人の心理は本当に繊細なもの、健康な人のたかがこのくらいで計れるものではありません。仕事柄どうも気になって。これはやっぱり脚本が安易だと思います。その他は特別何もなくほのぼのした作品で気に入ったので、余計残念でした。私は素直に観て良かった作品でしたが、ちょこちょこ見かけるこの作品に嫌悪感を持つ方は、私が見つけた「安易さ」を、他のシーンで感じたのかもしれませんね。


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