ケイケイの映画日記
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2004年12月16日(木) 「僕の彼女を紹介します」

この手の映画を観て好きだと思うと、あぁ私はプライド低く映画を観ていて良かったと、確認します。人様よりたくさん映画を観ていて、こんな感想文のサイトを立ち上げていると、どうしてもプチ評論家気取りになりがちです。絶対素人の感想文だと肝に銘じておこうと思っていますが、そんなに気を張らなくてもいいみたい。だってこんなに雑で出来の悪い作品に、2回も泣いて、愛せてしまうのですから。

女子高で教師をしているミョンウ(チャン・ヒョク)は、引ったくり犯を追いかけている時、熱血だけど早とちりの婦人警官ギョンジン(チョン・ジヒョン)に、痛めつけられてまくって誤認逮捕されてしまいます。謝りもしないギョンジンに、ミョンウは憤慨しますが相手にもされません。後日非行防止の夜間パトロールで、再び出会った二人は、今回もギョンジンの早とちりから、てんやわんやの騒動に。しかしこれが縁で、二人は付き合うようになり・・・

この作品を観るのを正直ためらっていました。予告編を見る限り、あまり魅力が感じられませんでした。クァク・ジェヨン監督、チョン・ジヒョン主演の前作「猟奇的な彼女」は、強引なプロットながら、若さのエネルギーと初々しい主演二人の愛らしさに、最後まで楽しく観られました。ジヒョンばかりに注目が集まりましたが、相手役・チャ・テヒョンの男らしいのではなく、甘酸っぱい「男の子」らしさにとても好感を持っていた私は、チャン・ヒョクでは、トウが立って新鮮味がなく、イマイチ感がぬぐえませんでした。

それがヒョクが中々良かったのです。善良な小市民っぽい雰囲気、少々気弱だが愛する女性を守りたい、理解したいという、男性としての誠実さも上手く表現できていました。

それに対して、「猟奇的な彼女」を彷彿させるというか、そのまんま大人になった役なので、安全パイだと思っていたジヒョンに、魅力が不足していました。これは脚本のまずさなのですが、前作の場合は、自分よがりの正義感を爆発させても、学生のプライベートな事柄なので、笑ってすませられますが、今回は社会人が仕事上でそれを発揮しています。ちょっとこれで笑えといわれても、あまりにもギョンジンのキャラクターが幼稚すぎます。演じるジヒョンも、今回は腫れぼったい目がいやに目立ち、あまり美しくは見えませんでした。相変わらずスタイルはいいので、これは撮り方のアングルが悪いのでしょうか?

撮影といえば、ジヒョンを中心にして、グルグル周りが回転する撮り方が始終出てくるのですが、これがいただけません。嬉しい時、楽しい時、哀しい時、切ないとき、全部このショットです。これではあまりに工夫がありません。

前回の劇中劇同様、今回も指きり伝説のような、コスプレ物の劇中劇がありますが、これもダメ。韓国人が西洋人の衣装を身にまとい、お姫様はともかく、ハンサムと言えない男性のタイツ姿の王子様は、まるで学芸会です。せっかく韓国にも李王朝があるのですから、「スキャンダル」ばりに自国のコスプレを見せても良かったと思います。

後半、ある民間人の誤射がキーポイントとなり、切ないメロドラマが展開されます。この事件の元となったのはギョンジン。普通なら巡査の民間人誤射など、警察全体を揺るがず大事件で、本人は元より上司の首も危なかろうというもの。しかしその後、いきなり彼女が刑事に昇進しているのでびっくり!そして凄腕スナイパーの如く拳銃の腕前がすごいのです。それを表現するのに、カーチェイスしている車をし止めるシーンが挿入されていますが、これがもう・・・。漏れたガソリンに引火した車が、爆発しているのを背に一人決めポーズでたたずむギョンジン。もう脱力・・・。そんなシーンを入れないで、ここは刑事になるため、必死だったギョンジンの姿を入れるんでしょーが!

その他もプロットのつながりが悪く、いきなり展開するので???がつきますし、強引そのもの。音楽もオールディズ、クラシック、Xジャパン、ボブ・ディランなど、統一感が全然。どの分野でも、そのシーンにあった曲があるはずで、思いつきだけで曲を選んでいるようです。

ここまで読んだ方、観る気失くしますよね?でもこの作品から私は、上に書いたことを全部不問にしてもいいほど、もう一度あの人に会いたい、いっしょにに過ごしたいという、人を愛する気持ちの美しさや切なさに、思い切り涙しました。それも過去を忘れられないという、人を愛するという誰もが持つ感情で、転じて人間の強さまでも感じてしまいました。薄氷を踏みながら歩いていて、冷たい湖に落ちてしまったような感情、薄皮をむくように、曇っていた心に光明が差す表現など、非常に上手いです。

今年日本中を席巻した韓国映画ですが、民族性なのかこの作品と同じく、人の感情のひだを、過剰なまでに煽る作品が多いです。しかしそれが幅広い層に受け入れられたということは、人付き合いの中での、カジュアルで薄い心の行きかいに寂しさを感じ、もっと本音でぶつかりたい、そういう方も多かったからではないか?左右前後、年齢の幅のあるたくさんの女性観客の涙する姿に、ふとそんなことを思いました。

ある種ハッピーエンドで終わるラストも清清しく、ラブコメ・メロドラマ・ガンアクションとてんこ盛りのストーリーも、見方によればお正月のおせち料理かもしれません。但しこの作品を好きな人も、私のように出来が悪いのは重々承知の人ばかり。これは作家性以前の問題だと思います。ポン・ジュノのように、知性があり洗練された若手監督が出てきている韓国、うかうかしていると置いていかれてしまいます。クォク監督、次回作に期待しています!「猟奇的な彼女」ファンの方には、ラストに嬉しいプレゼントあり。ジヒョンにゲロを吐かれたおじさんが、今回も特別出演?しています。前半で出てきますので、お見逃しなく。


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