ケイケイの映画日記
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2004年10月20日(水) 「恋の門」

おもっしろーい!!この作品を観た心斎橋シネマ・ドゥは、10/24をもって閉館になります。小さな劇場なので、最終上映で入れないと困るので前倒しで観たのですが、「何でこの作品がシネマ・ドゥの最後の作品?」と思ったものですが、こんなマニアックな楽しい作品が最後なんて、さすがシネマ・ドゥ!

石で漫画を描く自称漫画芸術家の蒼木門(松田龍平)と、昼はOL,実はコスプレ命の同人誌漫画家・証恋乃(酒井若菜)の、出会いから成就までをオタッキーに描いた作品です。

恋乃を演じる酒井若菜が素晴らしい!コスプレしながらの演技は全く照れがなく、根性の入ったオタクぶりで、「好きな物に没頭出来る幸せ」がすごい勢いで伝わり、例えそれが世間から色眼鏡で見られようが、いいじゃないか、と応援したくなるほど。対する松田龍平は、半歩か一歩遅れ気味の受身の演技ですが、門の役柄自体がそんな感じですから、これも計算かと。

はちゃめちゃおバカギャグが満載なので見落としがちですが、原作のコミックがいいのか、脚本がいいのか、ストーリーがしっかりしていて、青春物の王道なのです。ふとしたとから出会う若い男女、徐々に高まる気持ち、相手を思う真心、恋の成就への障害、力のある親への反抗が、しっかり、それもイマドキ感を損なわず描かれています。

特に新人賞を取った方が恋乃の恋人になるという賭けを、門と門が世話になった漫画バーのマスター・毬藻田の間で交わされたと聞くや、恋乃の「私も書く。私が新人賞を取ったら、私の言うことを聞いてね。」宣言には感心。そりゃあそうです、そんな大事なこと、自分抜きで決められちゃたまりません。男性だけの自由にはさせない、自分の恋人は自分で決めると言う、見せ掛けでない力強さを感じました。その他、コスプレマニアの変だけど仲の良い両親を持つ恋乃は、同じ路線まっしぐら。片や水墨画のそれなりの地位の父を持つ門が、父の浮気現場を見て父を否定してしまい、水墨画を捨て、父との思い出のある、石に漫画を描くという創作にこだわる部分にも、親子の普遍的な正しい愛情の示し方、受け取り方が垣間見られ、作品をただのはちゃめちゃで終わらせません。

出演は他に、この作品を監督・脚本した毬藻田役の松尾スズキ、恋乃の両親に、平泉征・大竹しのぶ(コスプレス姿あり)、小島聖、塚本晋也、大竹まこと、チョイ出に三池崇史、市川染五郎、忌野清志郎などなど、もう書ききれません。どこの出ているかお楽しみを。小島聖は、すごく綺麗になったのでびっくり!大人になって垢抜けていました。若菜ちゃんとともに、おっぱいの谷間で悩殺してくれます。

一つだけ気になったのは、阿部セイキなる役柄の人物。この人のモデルって、”アニソン界のアニキ”水木一郎のことじゃないでしょうか?だったら本人にやってもらえばいいのに。劇中で出てくるアニメの歌は、ちゃーんと影山ヒロノブ(元レイジーのミッシェルですよ)に歌ってもらってました。違うのかなぁ・・・

門、毬藻田、恋乃が一心不乱に寝食を忘れて、新人賞のため漫画を描くシーンは圧巻。ふらふらになりながらも「気持ちいい〜」のセリフが、ずしんとこちらにも伝わります。そうそう、体育会系の一心不乱は認められ易いですが、文科系の一心不乱は軽視されがち。オタクはもっと冷たい扱いを受けています。何も熱中するものがないより、こうして人生賭けるもんがあるって幸せでしょう!と思っていたら、エンドクレジットにでかでかと、「支援・文化庁」と出てきました。えっ?お上がオタクを支援?なかなか粋ですねぇ。


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