ケイケイの映画日記
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2004年10月18日(月) 「ゲート・トゥ・ヘヴン」

ドイツ映画です。久しぶりに九条のシネ・ヌーヴォで観てきました。ヌーヴォは、今まで旧作の特集上映ばかりだったので、新作はお初。びっくりするほど人は少なく4人で観ました。他はシルバーの方ばっかり!でもお年を召した方が、たった4人しか観ない映画に足を運んでいらっしゃるのは、何だか嬉しいです。全部で10カ国ほどの俳優さんが出ていて、国際色豊か。ドイツが舞台なのに、よくあるように全編英語を喋るのはちょっと惜しいですが、全体に楽しい作品でした。

フランクフルト空港で掃除婦として働くインド人のニーシャは、いつかスチュワーデスになる夢を持っています。夫の暴力に耐えかねドイツに逃げてきましたが、故国に残した3歳の息子が気がかりです。ロシアから来たアレクセイは、密入国者です。賄賂を渡して密入国の手助けをしてもらったダックに、これからの住まいになる空港の地下迷宮に案内されます。そこには先輩密入国者が3人。ダックは彼らに職を紹介しますが、上前はピンはね。先輩達は自分たちは奴隷と言います。そんな彼がニーシャに一目惚れします。

奴隷と言いながら、この密入国者たちの生活が明るく楽しそうなのです。ご飯は機内食の残りをもらい、仕事はベルトコンベアーに荷物と一緒に乗り込み目的地まで。危なそうな天上の窓ガラス拭きも、恋のときめきに上手に使われ、果ては宴会までやっちゃいます。底辺で働く彼らの絆は深く、運命共同体的な一体感が感じられ、こんな生活、ちょっとやってみたいなと思うほど。

密入国者が題材だと、どうしても惨めで暗いものになりがちですが、後で出てくるニーシャの息子に対しても、お役所仕事で冷たく接する審査官が出てきますが、それもニーシャの息子の愛らしさとユーモアで、冷酷さより滑稽さを全面に出し、それらがこの訳ありの人々のバイタリティーと映り、観る者に親近感と愛情を抱かせます。

インド映画さながら、ニーシャの夢を表現する場面で、ダンスと歌が披露されますが、これまたとても楽しいです。こういう楽しい場面の連続の中に、捕まると悲惨な結果が待っているシーンが挿入されると、ずっと厳しい場面ばかり見せられるより、ずっとハッとしたり胸に迫るものがありました。

全体の2/3まで絶好調なのですが、密入国させるニーシャの息子が、手違いで収容所行きとなったところから、失速が始まります。絵空事でないリアルな密入国の現実が浮きぼりになり、同じトーンで話を進めるには無理があり、ややドタバタで収集をつけようとするきらいがありました。特に職権乱用でニーシャに色目を使うノヴァクの存在など、途中まですごくいい感じなのに、ラスト近く、彼がニーシャに本当の愛を感じている場面を挿入するのに、ニーシャのアレクセイとの間で揺れる女心が描かれていません。あくまで駆け引きの相手に終始しているので、不安定な彼女の立場を考えれば、ノヴァクに心が揺れて当然ですから、ちょっと不自然でした。

しかしそれ以外は、大笑いする作品ではないですが、クスクスニコニコ、本当に楽しく心が和む作品です。監督は「ツバル」のファイト・ヘルマー。気になりながらも、「ツバル」は未見。今日レイトでヌーヴォで上映中の「ツバル」の予告編を観ましたが、すっごく面白そう!あぁ、でもレイト・・・。


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