ケイケイの映画日記
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2004年10月14日(木) 「CODE46」

ずっと伸ばし伸ばしになっていたこの作品を、今日テアトル梅田で観てきました。テアトルは一人で観る事が多かったのですが、最近はずっと友人達と一緒。今日も15年来の母友と観てきました。現在二十歳の長男同士が幼稚園で一緒になって以来、主婦としての山あり谷ありの時期を共に過ごし、語り合った大切なお友達です。早めに待ち合わせて、サンマルク・カフェでお茶をしました。一人の時はさっさと観てさっさと帰りますが、誰かと一緒だとこういう楽しみもあります。

今回はネタバレありです。
パペルと言う通行証明がないと、滞在も旅行も出来ない近未来、偽造パペルの捜査のため上海に入ったウィリアム(ティム・ロビンス)は、すぐ犯人がパペルの審査・製造を行うスフィンク社に勤めるマリアだと見つけますが、彼女に魅かれた彼は、会社に虚偽の申告をします。彼女も彼を運命の人と、一目見て感じます。一夜を共にする二人。同じ遺伝子同士の恋愛や結婚は禁じられた法律・CODE46に抵触するとも知らずに。

私はサマンサ・モートンが好きです。小柄でボリュームのある身体ですが、印象は華奢。ですが母性を感じさせます。微笑んでも陰りがあり、はかなさと切なさを感じさせますが、愛しい思いも抱かせます。この作品を観ていると、監督のウィンターボトムも、私と同じ思いを彼女に抱いているのかと感じました。

ティム・ロビンスも素敵です。今年は「ミスティック・リバー」の彼を観て、その大きな体から存在感を消し、役になり切る演技に感心しましたが、この作品では、大人の落ち着きと愛する者たちに対しての包容力を感じさせ、とても素敵です。

ですが、作品はこの二人の魅力で、成り立っている部分が多いように感じます。ウィリアムは既婚で6歳くらいの男児の父です。マリアが彼の母と共通の遺伝子を持つため、生みの母を知らない彼が、何故一目で魅かれたのか一応説明がつきます。しかし政府の要職につき、安全な中と呼ばれる世界しか知らず、順風満帆な生活をしていたはずの彼が、一夜限りならともかく、何故仕事も家庭も捨て、あてのないマリアとの逃避行を望んだのか説明不足です。

既婚者で円満な家庭に恵まれていても、他の異性に魅かれることは理解出来ます。しかしそれだけで家庭を捨てられるでしょうか?本当に夫婦の間が破綻してしまった時、子はかすがいにはなりませんが、そこまでいっていない仲で、離婚を躊躇させるのは、やはり子供の存在です。何度も彼が子供を愛してる描写が出てきます。私はマリアが母の遺伝子を持つことが重要なキーワードと感じたので、(名前もマリアは偶然ではないと思います)良き家庭人の部分を強調すると、ちぐはぐな感じがし疑問を感じました。

マリアもお金のためと語られますが、何故大きな危険を犯してパペルの偽造に手を染めているか疑問。貯めたお金を何に使うか夢を語るわけでなく、長い間無法地帯の「外」と呼ばれる世界の住人で辛酸をなめた彼女が、どうして一部特権階級のように認められた「中」の住人になれたかも説明なし。これではモートンに魅力を感じても、マリアには感情移入出来ません。

マリアが拘留されたのも、ウィリアムとの子を妊娠し、CODE46に触れたためであり、子の中絶と子供の父親の記憶の消去のためですが、偽造の重要参考人であることには変わりなく、監視もなく自由行動を取れるのも変です。事故により逃避行に終止符が打たれたウィリアムは、仕事のため相手の心が読み取れる”共鳴ウィルス”を飲んでいたため、その作用が起こした罪となり、マリアの記憶を消去されただけでおとがめなしで、元の生活に戻る事も、過剰に切なさを盛り上げようとする気がして、たったそれだけ?と違和感がありました。

ただ法に触れたと言って、国が人の記憶を簡単に操作する怖さ、マリアが二度とウィリアムに思い出してもらえない哀しさを抱え生きていく切なさ、ウィリアムの妻が、自分と息子を捨てて他の女性と逃げた夫が、その記憶を忘れ去っているのに、自分は記憶を持って生きていかねばならい辛さは感じます。そして操作する側の人々も、ウィリアムのような立場になるかもしれない、法には国は存在するが、人は存在しない不思議さと滑稽さも感じます。

近未来の一部の特権階級の「中」の様子と、荒れ果てて過去に一気に遡ったような人も見捨てられた「外」の対比は、今の世にも見られる世界感で、考えさせられます。

遺伝子、「中」と「外」、人の記憶など、魅力的なキーワードがあちこちにあるのに、全体に印象が散漫で消化不良のような印象が残りました。


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