Niseko-Rossy Pi-Pikoe Review
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2005年11月30日(水) 吉増剛造の朗読CD『石狩シーツ』はリリースしなおすべきだ

こないだ平井庸一と高円寺の南口でコーラを飲みながらオフ会したとき。

ぼくがお土産で持参したのは吉増剛造の朗読CD『石狩シーツ』(1995)。頂上的名盤である。
お、ググったら作曲家・鈴木治行さんのこんな秀逸なレビュが。


で、わたしはあがた森魚でノスタルジック効果音エフェクトに親和性が高いので気にしていなかったのであるが、
平井さんは開口一番、「朗読のバックのサウンドがじゃまですね」、と、断じた。

言えてる。

朗読のみに音源をリミックスしてリリースしなおすべきだ。


2005年11月29日(火) 「寒山拾得〜編集CDRを愉しむ耳老人の会」

空中音楽日誌のあやちゃんより
「音楽ライター/編集CDR収集・研究家のロヴァ耳日記@練馬区平和台の多田雅範さん」と名付けていただいた。>
編集CDR収集・研究家。いい響き。女の子に名付けられるというのもうれしい。

いやいやすばらしい選曲。
編集CDRを愉しむ耳老人の会。耳老人!とは今ヒラメいた。お、いいぞ、この感じ。
耳老人の定義は、寒山拾得のように音楽とたわむれるということじゃ。Musicircusとも同義である。

「寒山拾得〜編集CDRを愉しむ耳老人の会」。
おお。自然発生的に。わしが会員番号1ばん。師匠が2ばん。あやちゃんが3ばん。Nishi9raさんが4ばん。けいまくんが5ばん。ピノコちゃんが6ばん。平井庸一さんが7ばん。

編集CDRからわたしの中でヒットした年間ベスト10には表彰状なんか出したりして。あ、表彰状のデザインも浮かんだー!

ちなみに編集CDRは他人を歓ばせるために作成することは禁じられている。自分がこう聴きたい、こう選曲したらこんなんなった、という実験精神が優先する。自己中心快楽主義的に作成する。そして、それを他者は、憑依するごとく、変身してしまうように、聴くのである。これは一般的な水準でのコミュニケーションとは異なる経験だろう。聴くものは、作成者が意図しなかった無意識までも受信してしまうのである。

音楽の本質はライブである。それは自明である。
そして、だけどわたしはCDが好きだ。CDジャケが好きだ。レア盤が好きだ。曲順の魔法はポールマッカートニーから教わった。

・・・未聴の編集CDRが7まいもあるんだけど・・・

それはそうとして。
わたしの自己紹介はこのようなものになる。
musicircus主宰。編集CDR収集・研究家。ロヴァ耳日記@練馬区平和台。「Jazz Tokyo」ライター。「寒山拾得〜編集CDRを愉しむ耳老人の会」。元ECMファンクラブ会長。

すげーインチキなジジイだな。よくいるんだよー、やたら名刺に怪しい肩書きをたくさん印刷して歩いているオッサンが。あー、やだやだ。


2005年11月28日(月) レミオロメン。「粉雪」。むかつく。

レミオロメン。「粉雪」。むかつく。

「こなーーーゆきぃー、ねえ・・・」。ひとむかし前なら、こんな旋律、プロなら恥ずかしくて作れなかったものだと思う。
一発ギャグ芸人の跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)を見る思いがする。

それに、声がいまいち好きになれない。ミスチル桜井がレミオロメンのカバーに走る、というのならちょっと聴いてみたい。

レミオロメンのアルバムを聴いていたら、ふと耳にしたB’zの楽曲に「あ、いいじゃん」と思ってしまった。理由はわからない。
レミオロメンによって、B’zを生まれてはじめて許容できる耳に変容したようである。
レミオロメンのどの曲のアレンジもコンビニちっくなテイストのまとまり感で小林武史の本気度はこもっていない。小林武史のSalyuへのプロデュースは素晴らしいと思う。マイラバはどうするのよ、と、余計な心配したくなるくらいにいい。

「こなーーーゆきぃー」

今日もまた有線でかかってる。1時間おきにかかってる。うざい。河口湖で人口雪を降らせて3千人を洗脳してていいのか。
大声はりあげて叫ぶ単語かよ、「粉雪」って。ばかか、おまえ。「なごり雪」とか「虹と雪のバラード」に申し訳ないと思わないのか。


2005年11月27日(日) 【Mr.Children DOME TURE 2005 “I♥U” 11/27(SUN)in東京ドーム】

【Mr.Children DOME TURE 2005 “I♥U” 11/27(SUN)in東京ドーム】
01. LOVEはじめました 02. Dance Dance Dance 03. ニシエヒガシエ 04. 跳べ 05. innocent world
06. 言わせてみてぇもんだ 07. くるみ 08. CANDY 09. 靴ひも 10. 隔たり 11. ファスナー
12. Monster 13. CENTER OF UNIVERSE 14. ランニングハイ 15. (弾き語り)抱きしめたい 16. ラララ
17. overture〜蘇生 18. Worlds end 19. Hallelujah 20. and I love you
アンコール
22. 未来 23. 僕らの音 24. 潜水

昨年のシフクノオトツアーでわたくし的には感動のピークでありましたもので。新譜『I♥U』もほとんど聴いてないのである。
だってよ、HERO、掌、くるみ、タガタメ、血の管あたりまで来てしまったら、よお、恋をして父親となったまでの一連のオトコの人生展開、無事完結、視界良好、異状なし、で、桜井和寿が歌う“物語りとしてのポップザウルス”はいいかげん一段落しているものである。
「Worlds End」「I Love You」も、いわば「蘇生」「Hallelujah」の亜種であって、自明のように照れも恥もなく、コンサートでは続けて楽しんで演奏しているのでございます。わたくし的には、フレーズごと混ぜて歌うようなアクロバットをしていただかないとご納得いただけません。

あとね。『I♥U』のエンディングを演出する「隔たり」つう曲。旋律はいいのだけど好きになれない。子どもを作ろうという彼女のサインに応じるぼく、の、歌。男女の子どもを作る合意といったものは、言語が介在する場所が契機となるものじゃないだろうと思う。人生を生き延びるすべは、偶然性を肯定するちから、偶発に委ねる寛容といったものに求められると確信するものである。「ファスナー」「ランニングハイ」ではエッチだけしてあとはさようならだったりするオトコであり、同時に「隔たり」も歌うオトコであり、・・・となれば、子どもを作るという行為は、人生において愛という物語りにおいて“制御可能な行為”であると、オンナは使いわけでオッケーなのだという、さらに言うと選別されるべき人間を見ているという、そういう態度を打ち出しているということになる。

この「隔たり」「ファスナー」「ランニングハイ」をコンサートで並べて演奏する、と、プログラムする桜井にあまり共感ができない。この制御なしの不健康さは、MCでつい「ちんこ、うんこ」と口走って失笑をかう態度につながっている。ファンは桜井くんのこのおちゃめを許してはならない。実際、桜井くんは営業スマイルで「今日のライブはほんとうに楽しかった、ありがとう!」とお仕事で言うことに倦怠している。

Jポップ史で見てみよう。「隔たり」というテーマを楽曲にしてしまったアーティストは、これまで居ない、というのも事実である。
・・・14さいの息子がこの曲を編集CDRに堂々と入れてきたあたりは、やはり世代の感覚の差なのであろうか。

ふと思う。『シフクノオト』以降の詩情のなさ、希薄さ、旋律への寄りかかり、は、バンドの停滞を示している感じがする。

わたしが観たいミスチルのライブは下記のようなものである。これをロヴァ耳選定ミスチルベストCDR2枚組としてここに発表する。
・・・まあね、「風」と「PADDLE」にこだわってます。>ミスチルのサイトで「風」の副題表記が間違ったままなのをいいかげん直せよな。

01. 風 〜the wind knows how I feel〜 02. PADDLE 03. Tomorrow Never Knows
04. 手紙 05. ありふれたLove Story 〜男女問題はいつも面倒だ〜 06. Worlds End
07. Drawing 08. 花言葉 09. I’ll Be (live version) 10. 光の射す方へ
11. Dance Dance Dance 12. 花 –Mement Mori- 13. ロードムービー 

14. Not Found 15. 君が好き 16. overture 〜 蘇生 17. ゆりかごのある丘から
18. 名もなき詩 19. 車の中でかくれてキスをしよう 20. いつの日にか二人で
21. 口笛 22. くるみ 23. Love is Blindness 24. Brandnew my lover
25. Borelo 26. Everything (It’s You) 27. HERO 28. Lord, I Miss You

この選曲、たまらないでしょ?曲のつながりに意味があるんだ。
ラストがデビューアルバムの1曲目につながる走馬灯。
この2枚組CDRに、さらにアンコールのように映画のエンドロールのように1曲だけ追加するとすれば、「旅人」。


2005年11月26日(土) 編集CDR『The Boots Are Made For Walking』 Jazz Guitarist Hrai 2005.11

ギタリスト平井庸一さんによる編集CDR。
コアな欧州系ジャズが並びます。ジャック・ブルースのジャズファン必聴名盤『Things We Like』がCD化されてるのね。マストアイテム。

編集CDR『The Boots Are Made For Walking』 Jazz Guitarist Hrai 2005.11
01. Lennie's Scene
02. All The Things You Are / Connie Crothers piano, Joe Solomon bass, Roger Mancuso drums

03. Once Upon A Time (Surman)
04. The Yolk (Taylor) / Alan Skidmore Quintet from” Once Upon A Time”
Alan Skidmore tenor sax, Kenny Wheeler flugelhorn, John Taylor piano, Harry Miller bass, Tony Oxley drums
05. The Boots Are Made For Walking
06. Michelle / Gordon Beck Quartet from”Experiments With Pops”
Gordon Beck piano, Jeff Clyne bass, Johnny McLaughlin guitars, Tony Oxley drums このメンツで限定1000枚。2001年復刻。
07. Sam Enchanted Dick Medley: Sam's Sack/Rill's Thrills [Medley] / Jack Bruce
08. The Dark Prince / John Mclaughlin
09. Ce sont les noms des mots
10. Gees (for craig) / BIG SATAN : Tom Rainey-drums / Marc Ducret-guitars / Tim Berne-alto saxophone “Souls, Saved Hear”(Thirsty Ear) . Produced and remixed by David Torn.
11. Major Nelson / The Claudia Quintet from”Semi Formal”


2005年11月25日(金) 編集CDR 『 Boom Boom 』 2005.11

ハナレグミの「そして僕は途方に暮れる」にフォーカスがあたるように構成。坂本真綾が効いている。

編集CDR 『 Boom Boom 』 2005.11
01. アトム登場 / 大野松雄
02. 幸せのカノン / さねよしいさこ 1990
03. Send In The Clowns / Bobo Stenson Trio 2005 ( w/ Anders Jormin, Paul Motian )
04. La Mar (the ocean) / The Beautiful Girls 2003 http://www.thebeautifulgirls.com/disco.htm
05. そして僕は途方に暮れる / ハナレグミ 2005
06. カヌー / 奥田民生 1997
07. Hibiscus / Joëlle Léandre, Mat Maneri, Christophe Marguet, Joel Ryan 『Four Flowers』(CD LR 396 - LEO RECORDS) 2004
08. 虹と雪のバラード 札幌オリンピックテーマソング / トワエモア 1971
09. フロッギー・デイ
10. 東32丁目317番地 / 高柳昌行セカンドコンセプト 高柳昌行g, 弘勢憲二p,el-p, 井野信義b, 山崎泰弘ds 1980
11. 332221222 / Don Ellis Orchestra 『Live At Monterey!』 1966
12. Red Hot / ELLEGARDEN 2005
13. 夜明けのオクターブ / 坂本真綾 2000
14. Boom Boom / Atomic 『Bikini Tapes』3CDbox 2005


2005年11月24日(木) 編集CDR 『 POP STAR 』 2005.11

わたしのCDR作成は、手術台の上でこうもり傘とハサミを出会わすぐらいのアンドレ・ブルトンだなどと断じては浅いのでありまして、ブルトンは密教の曼荼羅のカケラをもってシュールレアリスムという商標を登録した商売人にすぎないわけで、歌謡ステージでキャブスと平井堅とセシルテイラーを出会わせたいのも正解、しかして、楽曲同士が反応しあうことを聴きとれるかどうか、が、真の狙いなのであります。

「聴こえ」の変容を。

編集CDR 『 POP STAR 』 2005.11
01. Baader Meinhof / Cabaret Voltaire 1979
02. Death of an Interior Decorator / Death Cab For Cutie 2003
03. POP STAR / 平井堅 2005
04. 生まれ来る子供たちのために / Bank Band 2005
05. 映画「日本開放戦線・三里塚」 作曲:眞鍋理一郎 1970
06. Now’s The Time / 渋谷毅・武田和命クヮルテット(w/川端民生・藤井信雄) Rec:1985 2005
07. 映画「ゴジラ対ヘドラ」 /唄・麻里圭子 作曲・眞鍋理一郎 1971
08. 体温 / hitomi 1999
09. Bemsha Swing / Cecil Taylor Quartet 1956
Cecil Taylor p, Steve Lacy ss, Buell Neidlinger b, Dennis Carles ds
10. Crazy / Bill Frisell 2005 Bill Frisell g, Viktor Krauss b, Kenny Wolleson ds
11. 恋のマイアヒDRAGOSTEA DIN TEI / オゾン O-ZONE 2005
12. 新日本紀行 (TV original)
13. 年齢・歯車 / 高田渡 1971
14. トーキング自動車レースブルース / 友部正人 1973
15. ウェーベルン 交響曲 第一楽章
16. ウェーベルン 交響曲 第二楽章

いい流れだねえ。マイアヒをどう入れたか。うん。新日本紀行はTV放映のオリジナルヴァージョン。5曲目の打楽器のようなベースの掻き鳴らしがフリージャズを越えてしまっているのが聴きどころ。


2005年11月23日(水) 奥田民生の「カヌー」 〜 キース・ジャレットの持続音

奥田民生の「カヌー」。

ほとんど同じ音のまわりを持続させる旋律の驚異。奥田民生はやっぱりすごい。

ふと、連想するのは。

キース・ジャレットの『サンベア・コンサート』LP10枚組の札幌パート。Sapporo, November 18, 1976。
この10枚組の大団円(だいだんえん。今まで、だいえんだん、と思ってたー。そんなに結婚したいのかー。もうこりごりだー。)である。

ジャレットは日本ツアーの最後になる札幌公演のエンディングで、一音の連打に縛られ続けるのである。
すべてのコンサートの最期に、必然のように一音に収束してゆく音楽の磁場。
鳴り響いている空間のフェイズがすっと変わって、時間のない虚空で階段に導かれるような痙攣状態に生命力を賭けているジャレットの指。

そして。

それが、この世のものとは思えない美しさ、なのである。

この痙攣するような連打の美しさ。
一音だけで、これだけ胸が詰まる、あこがれの彼女との動かない持続の痙攣のあいだにとどまるような、演奏は他にはない。
美神キースの頂点を、わたしはここに視る。


2005年11月22日(火) アマゾン、きらーい 〜 ジャレットの鬼神化

アマゾン、きらーい。

ダッシュで注文したミドリカワ書房のCD、まだ来ない。

ほかにも、般若心経やウォーン・マーシュやキャンディやデスキャブフォーキューティーや奥田民生のCDも注文していたせいなのか。

ダッシュで注文したのに到着がおそくて、うまく愛し合えなかったCD、
SINGER SONGERのシングル「初花凜々」とアルバム『ばらいろポップ』があるのよ。いっしょにいくのよ、と、あれだけちかったのに。
「きっと飛魚のアーチをくぐって宝島に着いた頃、あなたのお姫様は誰かと腰を振ってるわ」

うええん。(泣く)

こっこのHP。花に囲まれて顔だけ。この画像の意味するところって、棺(ひつぎ)ではないですか。怖ええ。>

一線を超えた芸術家は、鬼神の世界と同化する、というのは、文化人類学的な常識です。

そ、そいえば、ジャレットの公演の事件は、これはこれで行かなくて良かったと思えるのですが。

それよりも、チラシの写真に注目。この笑み。ほとんどエクソシスト。ジャレットは美神と称されるピアニストから、鬼になっていた。
一線を超えた芸術家は、鬼神の世界と同化する、というのは、文化人類学的な常識ですな。
この鍛え上げられた肉体と突き詰めた精神の果てのお姿は精神病院の病棟にいらっしゃる方々にも多くお見受けされるところです。
なに言い始めるかどう動き始めるかわかんない怖さ。
ジャレットのピアニズムの境地と通低するものがございます。
オーネットの来日アジ「遂にJAZZ史上最強の神“GOD”がやってくる」は、すでにジャレットは来日公演してましたー。ざんねん。
それにしても怖ええー!


2005年11月21日(月) 平井玄著『ミッキーマウスのプロレタリア宣言』(太田出版) 〜 『スピリチュアル・ユニティ』

911以降に読みたかったのはこういう本だったのだ。

(ふふふ。でも、ぼくはへいき。ぼくは藤枝静男のお茶碗になっているから。いつも高野山の参道をぼくは歩いているから。)

NHKブックスの『マルチチュード〜<帝国>時代の戦争と民主主義』上下刊は、言語的な事後承諾めいた確認ができるのに対して、平井玄の『ミッキーマウスのプロレタリア宣言』は、たとえばぼくがうろつきまわっている平和台や銀座7丁目や池袋警察署や葛西臨海公園や新宿花園神社や吉祥寺ロンロンなどで見慣れてしまった風景から抑圧的なもの、それは概念とか文化とか、を、削いでくれる。ぼくがあるいている足の感触から麻痺を解いて皮膚をあらわにしてくれる。

この本が真っ赤なのは。「お金は血液なのだ」という認識であるように思えてならない。

わたしがECMコレクターをしながら、一方で先鋭的なロックに対抗できる同時代的なジャズを希求していた26さいのとき。
アイラーの『スピリチュアル・ユニティ』に出会った。
『スピリチュアル・ユニティ』をアイラーの代表作のひとつに挙げる言説はどこにもなかったように思う。
ECMの緒作からゲイリー・ピーコックの西洋と禅を止揚するようなベース感覚に気づいていたので、アイラーの初期にピーコックがトリオで演奏していることに興味を持った。
あまりもの異様な、聴く者の脆弱さをせせら笑うような演奏に、目の前が真っ黒になった。
音楽を聴いて、視界が真っ黒になったことはこの時だけである。

アイラーの本質が、ファンキーなものであったりヴードゥー的なるものであったりするを理解するのはずっとあとである。

それから10年後。音楽評論家の山口孝さんにジャズと即興について、銘器パラゴンから実際にレスターヤングや内田光子やディレク・ベイリーや菊地雅章やルイ・アームストロングやジャンゴ・ベイツや小沢健二やスティーブ・レイシーの音を全身で受け止めながらのトークセッションというより感覚の伝授をいただいた際に、ルイ・アームストロングのホット・ファイブとともに挙げられたのが『スピリチュアル・ユニティ』だった。

さらに、マンフレット・アイヒャーの自伝的なテキストでは、ECMレーベルを駆動する要因に『スピリチュアル・ユニティ』のようなものを録りたい、もっと理想的なレコーディングで叶えたいというものがあったことにも、まさに精神的なユニティを感じたものである。ヤン・ガルバレクの最初のレコーディングにアイラーのガイストが現れているのは、ただの影響・因果関係ではない。

平井玄の、この『ミッキーマウスのプロレタリア宣言』の最終章に言及され、鳴り響く音楽は『スピリチュアル・ユニティ』である。
お金は血液である、という寓意と、『スピリチュアル・ユニティ』のアイラーの叫び、と、アントニオ・ネグリの言説、と。

(ふふふ。でも、ぼくはへいき。ぼくは藤枝静男のお茶碗になっているから。いつも高野山の参道をぼくは歩いているから。)


2005年11月20日(日) オーネット・コールマン来日ニュースにまじぎれ。

「遂にJAZZ史上最強の神“GOD”がやってくる」んだそうだ。
オーネット・コールマン、75さい。
86年のライブアンダーザスカイのときはプライムタイムの編成で、まだ54さいだし、カッコよかったけど、ねえ。
Ornette Coleman, drummer Denardo Coleman and bassist Tony Falanga & bassist Greg Cohen
息子のタイコと、ベーシスト2名というカルテットのようです。この編成とメンツ。
さらに山下洋輔のソロパフォーマンスというオマケつき。

オーネット・コールマンはプライム・タイムという延命まで、です。厳密に言うと『トーン・ダイアリング』が『ヴァージン・ビューティ』(名盤)を更新できなかった時点で、すでに停止していたと判断されます。
山下洋輔は時代の熱気を象徴しただけのイカモノにすぎません。

観る価値のないものを抱き合わせして最上級の賛辞を付けて販売するという、あねはもびっくりな文化偽装イベントと言えるだろう・・・、
・・・て、それがフリージャズらしいと言われれば。
これで通用すると値踏まれた音楽ファンたち。チケット買う方々のアンテナのなさは、ホワイトバンドしているガキなみだと思う。ジャズを聴き始めた竹下通りの歩行者に「アメリカの自由なジャズの神様が来日するのです。日本の神様もピアノを弾きます。」と誘うのよ。

・・・・

ますます意味のわからないジャズファンが増えるわ。でも、75さいのオーネットコールマンて観てみたいかも。


2005年11月19日(土) hitomiは路線変更すべきである

エイベックスavexのイベントDVDを鑑賞する。

島谷ひとみは、どんなにエロっぽく表現しても本質に貞操を宿している声なので現在の路線は正しいと言える。

いっぽうhitomiは、見るからにエロ野獣な肢体であるもので、その声がまた松田聖子以来の“声に超音波を含有している”存在である。したがって、歌はまじめなボーイッシュなスタイルに展開すべきアーティストである。

「LOVE 2000」「キミにKISS」「体温」の路線を継続しなかったのは誤りである。


2005年11月18日(金) ECMが菊池雅章に長期コミットメント

こ、これは大ニュースである。
「ECMが菊池雅章に長期コミットメント」>
NY在住のピアニスト菊地雅章に対するECMの長期コミットメントが成立した。今後、菊地はマンフレイト・アイヒャーをプロデューサーとしてさまざまなプロジェクトを展開していく予定だが、ECMからのデヴュ−作は菊地が自宅ロフトで制作してきたピアノ・ソロ「at home project」で、来春にも発売される。なお、菊地は、来月帰国、KOプロジェクトのパートナ―、サックスのグレッグ・オズビーと『Beyond All』ツアーを行う。

このところのECM新譜でエンリコ・ラヴァの『Tati』やボボステンソン・トリオの『グッバイ』がやたらにいい要因は、タイコがポール・モチアンであることと、いずれもニューヨークのアヴァタースタジオでの録音であったことである。
わしは「アイヒャーECMはふたたびニューヨークに触手を伸ばしはじめたな、これは何かの予感か・・・」と鑑賞しておったものじゃが。
80年前後にECMはニューヨークのジャズに手を伸ばそうとしていた。デヴィッド・バーンやジョン・ハッセル、ルーリードのバックバンドとつながるエブリマンバンドなどロックの方向にも。そして、これらの新しい方向性を担ったECMのニューヨークスタッフはECMに造反しノンサッチレーベルを興したのであった。そしてアイヒャーECMは84年に、アルヴォ・ペルト『タブラ・ラサ』でクラシックマーケットに特化したECMニューシリーズを発足させる。ECMニューシリーズのその後の成功は周知のとおりである。

ECMのハウスドラマーとして復帰しつつあるように見えるポール・モチアンであるが、ポール・モチアンはWinter & Winterレーベルと専属契約しているように認知していたが、このところの同レーベルの精彩のなさを鑑みると、ポール・モチアンの自己のバンドは次作はECMから・・・

97年ごろだったか、当時わたしは群馬県太田市で無職生活をしていたのであるが、館林市「西の洞」で菊地雅章が4夜連続ピアノソロライブを演った。昼間はずっと寝てばかりいて、毎晩「おいかあちゃん、プーさんのライブに行くから5せんえんくれ」と通い続けたわたしもどうかと思うが。「プーがプーを聴きにゆくのかい?、いい身分だねえ、はいはい」と4夜連続5せんえん支給に応じたエクスワイフも今かんがえるとえらいな。

ライブの前にプーさんと話したのだった。
「こないだ出たファーストミーティング、すごいですね」「ああ、あれはすごいよね、よくとれてたよね」「あんな演奏、キセキですよ」「マイルスだってすごいことできたのはあの率だからな!」と嬉しそうな笑顔で応じてくれた。
「ECMに録音とかしないんですか?」「むかしオッファーはあったけどねー」

わたしの推測では、アイヒャーは菊地に対してオスロのスタジオで録音することをオファーしたのだと思う。さらに飛行機代は自前で来い、ぐらいの条件を出したのではないかとも思う。

アイヒャーはポールモチアンの価値を強く見出し、モチアンの強力なプーさんへの説得があったり、今年オズビーとプーさんのKOプロジェクトを実現させた55Recordsのオーナーの見識もあり、こういう事態へと進展したのではないだろうか。プーさんならアイヒャーに対して「ジャレットにモチアンとやらせてみろや」ぐらいのことを言ってくれることだろう。ジャレットファンにとっても朗報である。

宮崎駿もプーさんを主人公にしたアニメを作るべきだ。見た目はすでにおじいちゃん。でも、そのピアノには獰猛で繊細な少年の心が宿っている。ジャレットもメルドーもそこから先には道はない。プーさんのピアノに全世界が驚愕する。はげた妖怪アファナシエフも希望をみいだす。ヘミング魔女も脇役で登場。ピアノの国の女王アルゲリッチがプーさんに微笑みかける。王国の執事は舘野泉。執事補佐が高橋悠治と渋谷毅。

ドキュメンタリータッチの美と感動の妖怪アニメ。ピアノの国の少年”プー”。

館林「西の洞」でのライブは温かい観客たちのオーラとプーさんのリラックスしたゆとりとシャイなサービスで、それはそれはえがたいものでありましたとさ。


2005年11月17日(木) 『虹と雪のバラード 札幌オリンピックテーマソング / トワエモア』

ジャック・ニッチェに焦点をあてた編集CDRを聴きました。『ペット・サウンズ』が聴こえるのですけど。

「虹と雪のバラード」を聴いたら、当時の札幌の風景、
建築されてゆく住宅地やマンションの工事の音、まだ舗装されていないでこぼこした砂利道をバスが日差しの中を走ってゆく。
じいちゃんが静かに風景を見ながら歓声をあげた。
日露戦争のあとに大阪から自転車で単身で北海道へ出て樺太まで行って稼ぎを求めて生き延びたじいちゃんが
4番目の子ども、次女の新婚家庭に訪問するのに、孫のぼくがついていった。

「あふれる旗 叫び そして唄」という部分は、フリッパーズ・ギターの「ドルフィン・ソング」のこと。ぼくにとって。

『虹と雪のバラード 札幌オリンピックテーマソング / トワエモア』 河邨文一郎作詞・村井邦彦作曲 1971

虹の地平を 歩み出て 影たちが近づく 手をとりあって
町ができる 美しい町が あふれる旗 叫び そして唄
ぼくらは呼ぶ あふれる夢に あの星たちの あいだに
眠っている 北の空に きみの名を呼ぶ オリンピックと

雪の炎 ゆらめいて 影たちが飛び去る ナイフのように
空がのこる まっ青な空が あれは夢? ちから? それとも恋
ぼくらは書く いのちのかぎり いま太陽の 真下に
生れかわる サッポロの地に きみの名を書く オリンピックと
生れかわる サッポロの地に きみの名を書く オリンピックと


2005年11月16日(水) 『ティネカ・ポスマ/フォー・ザ・リズム』

『ティネカ・ポスマ/フォー・ザ・リズム』を買おう。
リーブマンとクリス・ポッターに師事したショーターっぽさがいいかんじ。いや、これはいい!
お、ライブをするようです>
無料動画は>


2005年11月15日(火) 編集CDR『2005年秋Requiem』・N響がウィーンで奏でた武満徹の「鳥は星形の庭に降りる」

あやちゃんから編集CDR8枚組ボックスが届く。ううう、こんなマニアな女の子はみたことがない。そそそ、それに『2005年秋Requiem』を聴いてみたら素晴らしすぎる。じゅじゅじゅ10曲目の「特撮 feat. 三芝理 (p) and Narasaki (vo,g)」、これにはひと聴き惚れした。買う!

編集CDR『2005年秋Requiem』
1. 同志はたおれぬ / 篠田昌巳(as) as Compostela
2. Mary / Yann Tiersen feat. Elizabeth Fraser(vo)
3. 小さなもの / 羅針盤
4. Fly Variation / Aoki Takamasa + Tujiko Noriko
5. ばらの花 / くるり
6. All is Quiet / 板谷博(tb) as Guilty Physic
7. Requiem / Lennie Tristano (solo)
8. 道標 / 航
9. La Pasionaria / Charlie Haden as Liberation Music Orchestra
10. アザナエル / 特撮 feat. 三芝理 (p) and Narasaki (vo,g)
11. もくまおう / Cocco
12. 会えない人(月) / 羅針盤 feat.China (ds)
13. Over the Rainbow / Guilty Physic

わたしは19のときからカセット交換をしていた。音楽友だちしかいなかったので、38人にまでなった。ひとりひとりをレーベルのように見立てて「Is That Cat?レーベルの新譜到着!」「DXZ carrier レーベル新譜作成中!」とか。

DVD『ハウルの動く城』とロングピース1カートンとグレイトフル・デッドのファーストとセカンドとミスターイトウのアメリカンソフトクッキーと森永ガトーショコラと高柳昌行の『クール・ジョ・ジョ』とボボ・ステンソン・トリオのECM新譜を捕獲する。

内田樹さんが言っていたように宮崎駿のアニメは空中浮遊シーンにひたすら同化して気持ちよくなるのであって、ストーリーは副次的なもの。

デス・キャブ・フォー・キューティやケイト・ブッシュの新譜も出てるんだよな・・・。



日曜日にNHKで放映していた、N響のウィーン公演で奏でた武満徹の「鳥は星形の庭に降りる」。
ウィーン楽友協会大ホールでは、武満の響きは生命を得ていなかったように思う。
これはN響の団員が緊張していたとか、指揮のアシュケナージとの相性の問題とか、ホールの音響環境とか空気の温度や湿度が関与していたわけではない。
ヨーロッパ文明のガイストがそのようにしか聴いていなかったのである。
観客席にいたのは聴衆である。その聴衆は、言語とか文化とか記憶とか影響とか、ヨーロッパの先人たちの培ってきた精神といったものと共鳴しつつ現在を生きている。生かされていると言ってもよい。
音楽は、聴衆や土地や歴史に反応する。
聴衆が音楽を聴くのではない。音楽が聴衆を聴くのである。

まじめに本質的なことである。

音楽はライブである。武満徹が観客席にいただけで、音楽は武満の意図に沿って鳴ってもいた。そういうものである。


2005年11月14日(月) 親父よ、19日くるそうだな。

『親父よ、19日くるそうだな。新しく焼いたCDをあげよう。その代わりに、そのときに買って欲しい曲がある。
サザーランド「サイレントムービー」、SALYU、が欲しい。あと、ついでに携帯も欲しい。
追伸:ジュディマリの「LOVER SOUL」よかったろ。』

おまえな、いくら学年トップでもこのような日本語を使っているようじゃ東大はむりだ。父が添削指導をほどこす。

『お父様。19日にいらっしゃるそうですね。その節には、またわたくしが作成した編集CDRをお耳にしていただき、さらなるご指導をお願いいたします。耳の修行のためにお父様に買っていただきたいCDがございます。よろしいでしょうか。またケータイにつきましては、わたしはまだ中学生でもありますし、お父様と血がつながっていることを鑑みれば、せいぜいエロサイトでコーフンしまくったり、出会い系サイトで女子高生から「おねえさんがやさしくしてあげる」と返信をもらい、よろこびいさんで会ってみたら自分の母親より年増なオバサンがあらわれたり、ヒゲそりあととスネ毛のあるセーラー服姿のオカマだったり、ロクな使い方ができないに決まっておりますゆえ、高校生になってからにしたいと思います。』

・・・


2005年11月13日(日) おざけんファンは『渋谷毅・武田和命クヮルテット/オールド・フォークス』を聴かなければね。

小沢健二の童話「うさぎ!」を批評的に読むひとはおおいのかもしれない。

おざけんファンは『渋谷毅・武田和命クヮルテット/オールド・フォークス』を聴かなければね。
言うまでもなく『球体の奏でる音楽』でおざけんとトリオを組んだ渋谷毅(ピアノ)、川端民生(ベース)。

“せいめいのねつ”というのは、こういう演奏のこと。

強烈な演奏でも、技巧的なものでも、歴史に残るジャズでもない。
この空気があり、瞬間ごとの時間を味わいあう交歓、今日のこの場を共有していること。
ほのぼのとした幸福感に浸るような能天気なオジサンたちではない。

仕事を終えてかじかんだ手の3日前の切り傷のかさぶたをさすりながらこぶしにちからを入れてみるかんじ。とか。

人生の見え方を変える一枚だと思う。ジャズだから言葉は入っていないので、うまくたどりつくように遠足に出かけるような気持ちで聴いてね。


2005年11月07日(月) ニコライ・ドミートリエフに捧ぐ ドム・フェスティバル・イン・ジャパン 11月17・18・19日

昨年4月に亡くなったモスクワの DOM Cultural Centre の芸術監督/Long Arms Records の主催者である Nikolai Dmitriev 氏への追悼フェスティバルが11月に東京・江古田Buddyで行なわれるとのこと。

詳細はこのHPがくわしいです>

北海道スラブ研究会(!)というのがあって2001年にドミートリエフさんは「現代ロシアの音楽状況」という講演を行なっていると!
これをテキスト化してほしいぞ。

うむむ、この3日間は東京にいないので行けない・・・。

いまジャズを聴くとすると、アケタズディスクのこいつが聴きたい。『渋谷毅・武田和命クヮルテット/オールド・フォークス』。川端民生がベースだぞ。86年録音。たぶん家宝レベルの演奏内容な気がする・・・。おれ、そういうカンは異常にスルドイもん。


2005年11月06日(日) 平井堅の「POP STAR」。ミドリカワ書房。(追加)

平井堅の「POP STAR」には、窒息への誘惑がうごめいている。ノンブレスでできるだけ長く歌い切りたい欲望を募らせる。恋心と相似して。
こういう曲を作るところに、これからの変化が楽しみ。単に声がいいバラード歌いではない。
「ひーとみーをとーじてーきーみをーおもーうよー、そーれだけでーいいいー」「だったら未練たらたら歌ってんじゃねえ!」と罵倒したことが彼に変化をもたらしたのかもしれん。
ぜんぜん話は変わるけど、平井堅と織田裕二でエグザイルの「EXIT」をカバーしてくれ。おまいらのほうがぜったい上手いぞこの歌。

ミドリカワ書房は、北海道上川郡上川町出身なんだってぞー。同じ北海道中央部の空の下だー。
名前; 緑川伸一
出身地; 北海道上川郡上川町
生年月日; 1978.12.6
血液型; A
身長; 171cm 体重; 56kg
入場テーマ曲; 浜田省吾「J.BOY」
ライバル; 自分
得意技; キーロック
好きな食べ物; サンドイッチ
好きな言葉; 緒川たまき
理想の男; 三沢光晴
趣味; つめ切り、散歩

おいらもまねして書いてみる。
ロヴァ耳日記@練馬平和台
名前; 多田雅範
出身地; 北海道空知郡砂川町
生年月日; 1961.7.16
血液型; O
身長; 172cm 体重; 72kg
入場テーマ曲; 小沢健二「天使たちのシーン」、坂本真綾「Feel Myself」、あがた森魚「雪ヶ谷日記」
ライバル; 空海
得意技; ディスクユニオン 
好きな食べ物; たまごごはん 
好きな言葉; ハルカリ、かなみけいまこいいちろうきよね、有馬記念、アンセーニュダングル、小谷美紗子
理想の男; 野中広務、ジョー・マネリ、広澤寅造、マルチェロ・マストロヤンニ、エドワード・ヴェサラ 
趣味; 池上温泉、編集CDR作り 


2005年11月05日(土) 平井堅の「POP STAR」。ミドリカワ書房。

平井堅の「POP STAR」。ミドリカワ書房の「顔2005」「それぞれに真実がある」。うわーん、心の耳に鳴りまくってますー。ぜったい買うー!
アジカン、トラジハイジのファンタスティポ並みの心奪われ具合。

平井堅の作詞作曲、亀田誠治のアレンジ、互いに肩のちからがすっと落ちている相性の良さに、平井堅の歌いたい気持ちが乗っかっている。
作詞・作曲・アレンジ・気持ちがどれも突出しないでいて、それが成功している。
さらに、PVでの平井堅の動きと表情!が加わり、これはまさにフレディー・マキュリーの色気でありオーラであり、大成功に導いている。
ジャケットのラクダの首のくびれは、プリンスのLovesexyにおける花弁と同様の効果を出している。

ミドリカワ書房の、ママと別れたってオマエはパパの子どもだからなー、なんて歌、半泣き半笑いの心情を鮮やかに切り取っている。
未婚の同僚には「オンナなんてどれだっていいんだよ、おかあさんの資質で見ろ、子どもはね親のそれまでの人生をぜーんぶ肯定してしまうすげえちからがあるんだ」と、人生の三大楽しみ「子どもとの入浴」「中古CD屋での発掘」「編集CDR作り」を説きながら仕事をするわたし。

正月に鳥取まで車で行ってきたけどあれは楽しかった。9月に高野山に行ってきたけどあれも楽しかった。
思い出はどんどん嬉しくなってゆくんだ。風呂の中で思い出がときどき顔を出してぼくを育てていく気がする。

だから一緒に旅行をした友だちとは人生のたびじをずっと続けようと思う、そういう時間をあじわう、じっとした待ち時間のような沈黙。
また出かけよう。

内田樹さんと春日武彦さんの対談著書『健全な肉体に狂気は宿る 生きづらさの正体』(角川書店)、これだっけ?読みたいの。
車の中から見つかりました。「自分探し」禁止!なんだってよ。だってわかりあえるわけなんてないじゃん。ちがう彗星の軌道なんだし。

ついでに3年前に作った編集CDRが傷だらけになってでてきて(乗るひとがみんな踏みつけてしまうんだ!)(かたずけないわたしがわるい)
椎名林檎と草野マサムネが歌う「灰色の瞳」や、ドリカムのうれしいたのしいだいすきや、ジムホールのライブインベルリンや、ブラッドメルドーのラーゴや、おざけんのさよならなんて言えないよや、フリッパズギターのカメラカメラカメラのギターポップヴァージョンや、小坂明子の「あなた」や、エリカパドゥや、由紀さおりや、木村弓。

新鮮で耳にしみる。耳がまぶしい。外は雨。


2005年11月04日(金) 小沢健二の「うさぎ!」(追加)

きのうのつづき。
『こどもと昔話25号』小澤俊夫編・小澤昔話研究所刊、なんだけど、小沢健二のお母さんも書いているのですね。家族誌みたいですてきだ。
父親である俊夫さんの文章、巻頭ではガン闘病の回顧録なのだけど小澤征爾と小沢健二が「弟」「次男」として登場しているんだよ。
俊夫さんの別稿でドイツの強制収容所についてのエッセイがある。
俊夫さんは左翼の見解を示している。
俊夫さんの父親小澤開作のことをおざけんはヘイヘイヘイに出たとき「おじいちゃんは右翼の大物で」と話していた。

俊夫とうちゃんと開作じいちゃんと、どちらも間違ってはいない。時間や場所や人のつながりといった状況のフェイズがちがうから、さ。
おざけんが書きはじめた童話「うさぎ!」は、ふたりから受け継いだバトンを次の世代に渡したがっている作品と感じる。

おざけん、父親になってるな。

そいえば、ぼくの父親も俊夫という名前でバリバリの左翼だ。
かなりおじいちゃんになっているけど、「祝津温泉て行ったある?」「丸駒温泉に行ったことある?」「定山渓温泉に行ったことある?」ときくと、「(労働)組合の決起集会で行った」「組合の45年の春闘で行った」「組合のオルグで行った」と、組合活動ばなしだけは鮮明である。そうか、組合活動って、温泉をめぐることなんだな。おれも温泉めぐりではまけないが。


2005年11月03日(木) 小沢健二の「うさぎ!」

小沢健二の新しい活字を目にする。

『こどもと昔話25号』小澤俊夫編・小澤昔話研究所刊・829円・ISBN4-902875-00-4
小沢健二の「うさぎ!」という10ページほどの連載童話が始まった。

さすが「天使たちのシ―ン」を作ったひとだな、と、思った。
浦沢直樹の『モンスター』でヨハンが幼少時に読んだと設定された童話、は、これではないのか?
なるほどおざけんはヨハンだったか。ありうる。
どこかネグリ+ハートのマルチチュードという概念を照射している童話ではないだろうか。

奴隷売買の独占企業 Royal African Trading Company があった場所と、現在のニュー・ヨーク株式市場は同じブロックにある。

いずれにしても。
音楽ファンとして、東芝EMIを経済的に支援してしまう行為を避けて、創造的な活動をし始めたおざけんはただしい。
わたしたちは東芝EMIのCDを買わないという決意で音楽を聴き続けるのだ。中村一義、移籍しろ。ウタダとユーミンはもういい。


2005年11月02日(水) 「You Know My Name (Look Up The Number) / The Beatles」 1970

親友が体調を崩していたので、「おいしゃ、わかった、このわしが空中放射にて祈念のオーラを送り続けるけん、もう治ったも同然。いやいやいや、もう治った、3日後には完治しておる、何も言うな、くわっ!くわっ!」と、ロヴァ耳読者1名様限定「痛いの痛いの飛んでけオーラ」をこの1ヶ月というものパソコンを立ち上げるたびに念じておったのだが。いや、まじに。

さらに悪化してしまっている事態を知る・・・。

「ただなんかと付き合ってっからそうなるんだよ、あいつと付き合ってるやつでしあわせなやつはいないんだぞ、ひとりもいないんだぞ」と天使が耳元でささやいているんじゃないかと思うと気まずくて申し訳なくて電話ができない。

わたしと付き合ってるやつでしあわせなやつはいないんだぞ、ひとりもいないんだぞ、って、そりゃ、言い過ぎだろ。
「いいえ、ほんとうでございます」とエクスワイフが書き込むだろう、これがブログならば。
子どもたちも並んでやってきて「ほんとにー!」「ほんとうだ!」「まじほんま!」「ほんとうだよ!」と声をそろえるのだろうか。

やばい。じっと手をみてしまった。ありうる。

はじまりのきっかけはこうだ。
わたしは中学2年生(札幌市立東栄中学校)のときにジョージハリスンに似た成績学年トップの浅野くんに「おい、浅野!イエスタディのつく曲で、世界でいちばんいい曲はカーペンターズのオンリー・イエスタディとイエスタディ・ワンス・モアと、どーっちだ!」と挑発的にクイズにしたら、
「ただあ、そりゃおめー、ビートルズのイエスタディだべよ」と想定外のこたえが返ってきたときに始まった。
あの(ぼくはなんでも知ってるよ)という浅野くんの笑みに、ぼくは永遠の出遅れを感じたのだ。世界が壊れるくらいにあせったのだ、おれは。

「なになに?ビートルズ?なにそれ、聴いたことない・・・」
「ほんじゃ放送室に行って聴くべ」
「・・・うん」
「これがイエスタディ、どう?こっちのほうがいい曲じゃないか?」
「う・・・。かもしれない・・・。で、でも・・・。」
「じゃ、これがレット・イット・ビー。どう?」
「な、なに!浅野くん、ビ、ビートルズって、こ、こんな曲ばかり歌ってんの?」(注:いきなりくん付けになってる)
「そ。ビートルズのレット・イット・ビー。サイコーだよ」
「ビートルズのLP?シングルじゃないの?」(“Let It Be”をきちんと発音する浅野くんを“LP”としか聴き取らないわたしだった)
「うん、シングルもあるよ、レット・イット・ビーという」
「え?ビートルズのLPというシングルがあるの?」
「は?なに言ってんだよ、LPはシングルじゃないよ、シングルはEPだよ」
「よし、ビートルズのEPというシングルだな!」
「は?何言ってるんだ、正確に言うとLPというLPもあるし、LPというシングルもあるよ」(と、わたしには聞こえた)
「へ?わかんないよ!ちゃんと教えろよ、ビートルズのLPというシングルがあるんだろ!おれをバカにしてんじゃねー!」
「なにいきなり怒ってるんだよ!」
「もういい。おれはビートルズのLPを買うぞ!」
「勝手にしろ!」

というわけで、わたしは下校後、すかさず母親からこずかいを奪取し、「ビートルズのLPというシングルをくれ!」と電気屋のおねえさんを困惑させた。美人なおねえさんだった。わたしは思わず「エルピー!エルピー!イエー、エルピー!という歌なんだよ!おねえさん!」と歌ってしまった。おねえさんはニコッと笑って「これね!わたしもビートルズ、好きよ」とシングル盤を出してくれた。
・・・そうか、この時のおねえさんの笑顔が、わたしのその後のCD屋おねえさんとへの過剰要求(愛情を含む)へとつながっていたものか・・・

で、「Let It Be」のシングルを購入して意気揚々と帰宅したわしは、B面「You Know My Name (Look Up The Number)」を聴いて愕然とする。

な、なにこれ?・・・これがビートルズの音楽なの?
・・・しんけんにたのしそうだけどふざけているとしかおもえん・・・

・・・この曲を心の底から「Let It Be」よりも聴きたくなる日なんて来るはずない!

・・・いや、来ないという可能性はゼロではない・・・

・・・もしかしたら、いつの日か、そういう日が来てしまうのかもしれない・・・

・・・きっと来るに違いない・・・いや、必ず来るのだ、これはぼくへのビートルズからの挑戦なんだ・・・

・・・その日が来るために、ビートルズを全曲踏破し、それで足りなければ、この世に鳴る音楽をすべて聴きまくらなければならないのだー!・・・

30年後、わたしはふとビートルズのパストマスターズのCDを聴いていた。
「You Know My Name (Look Up The Number)」と30年ぶりに遭遇。
あの時、ターンテーブルで回っていたシングル盤のみぞを愕然として見つめることしかできなかったわたしがまざまざとよみがえってきて、ところが耳が歓喜の奮えでぴくぴくしているのである。

そうか、ついにその日が来たのだ。

今回編集CDR『heaven』にこの曲を選曲した理由は上記のとおりである。みなのもの、こころしてきくべし、「ぶへっ!」(注)

(つづく)

注:「You Know My Name (Look Up The Number)」のエンディングでジョン(たぶん)が、むせんで痰を吐き捨てるように発音する部分。


2005年11月01日(火) あのな。夜逃げではない。

空港に着陸するときには、眉間の中でカミソリが動くような激痛が起こり、涙はながれ、ついうめいてしまう。
・・・これはタタリではないのか・・・。

わ、わかりました、もう年頃の長女へ渡す編集CDRに藤本美貴を入れたりしません。
もう、中古屋のおねえさんに「このCDの査定はモンダイだ!これの価値がわかっておるのかね」とからんだりしません。
もう、コンサートの休憩時間にへんな拍手をした見るからにオタクっぽい輩のむなぐらをつかんだりはしません。

医者の友人に話すと、副鼻腔の前頭洞において真空頭痛を起こしているだけだ、という。

たまごかけごはん


朝日新聞社の『一冊の本』で佐藤優さんが、小泉首相のファシズムが完成するのに足りないものを述べているが。
佐藤優さんは『SAPIO』でも連載を持っている怪人である。
内田樹さんと佐藤優さんを対談させてみてほしいぞ。


Niseko-Rossy Pi-Pikoe |編集CDR寒山拾得交換会musicircus

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