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2004年12月31日(金) よいお年を

花田編集長でなくなってから、
『編集会議』を読まなくなりました。
そのかわりに『Coyote』という
おもしろい本が出て、助かりました。
『流行通信』はよほどお金がないとき以外は買いました。
社会人になってから、
雑に作ってあるものを読むのがむなしくなって、
『考える人』のすばらしさを再確認しました。
お洋服はなんだかんだ言ってすきなので、
『In Red』は知らず知らず集まってしまいました。

好きな人がデザイナーさんだったので、
いろいろ勉強しました。
本を買うと、アートディレクターと装丁をやった人を
調べるようになりました。
新しい楽しみでした。

ふとした風景の美しさに、何度か息をのみました。
谷中で見た路地と、
目白の坂から見下ろした夕焼けは
これからも忘れないと思います。
暮らすことの横には、いつも非日常があります。
それに気がつくかどうかは、自分次第なのだと知りました。

好きなことばかり書いて、
怒られたり誉められたり、
つまらないと言われたりつまらくても書けと言われたりしました。

こんな私を引きずって、
来年もぐだぐだと進んで行くつもりです。

紅白歌合戦が始まります。
森光子若いなあ。
みなさんよいお年を。



2004年12月30日(木) サンバ

マツケンサンバにクリスマスプレゼントを贈ったら、お礼の電話がかかってきた。セントジェームスの、緑と茶のボーダーTをあげた。太った、太った、といつも電話で言うので、T4とT5と迷った末にT5にした。本当はアウターが欲しいと言われたのだけれど、さすがにそんなお金はないです。

「服がこれしかないから、毎日毎日においがつくほど着てるよ」と言うので、「きもいからそんなに着なくていいよ。普通に洗ってよ。でも前みたいにコインランドリーに置き忘れたら呪うから」と脅しておいた。

イギリス取材のお土産に貴金属をもらえるはずだったのに、「CD買いすぎたらお金がなくなってね、ホテルまで歩いて帰ったの〜」と自分の不幸話で言い訳をされる。「イギリスっぽい指輪あげるね」とうやむやにされた。やれやれ。

彼は昔、クリストフ・ルメールやA.P.Cや、ヘルムート・ラングやコスチューム・ナショナルやコム・デ・ギャルソンを着ているかっこいいお兄さんだったのだが、今はすっかり汚い路上の人になってしまった。

ただ、私はけっこう汚い格好の男の人が嫌いではなくて、彼が昔の遺産であるルメールのコートに、壊れたコンバースを合わせていたりすると、とてもいいと思う。A.P.Cのオイルドジャケットが、すっかりオイルがはげてかさかさになってしまっているのも、なかなか趣があると勝手に認めている。髪の毛も、短く清潔に切りそろえているときより、ぼさぼさに伸びて(彼曰く)「かまぼこ」状態で頭に乗っているのが素敵だと思う。素敵だ、なんて書いてしまうなんて、つくづく、自分はだめだなあと反省する。

彼はサークルの幹事長だったので、初めて会ってからは5年以上経つ。彼は昔からずっと、ほかの女の子のことを考えているし、いつも電話はつながらないし、(心がもともとないので)死ぬまで心を開いてくれることはないだろう。それでも、私と彼はたぶんそれなりに仲がいい。優しいからわがままを言っても絶対に怒らないし、けんかをしたこともない。こちらが泣いたら「田中はかわいいね」と言ってくれたり、「ごめんねごめんね」と優しい言葉をかけてくれる。

人はどんどん変わっていくし、人と人の関係がどう変わるかなんて分からないなあといつも感じる。それを希望というのかは知らないが、私が信じていることだ。



2004年12月29日(水) 早く会いたいよ

前略 王子様



こんばんは。
何度も書いてしまってごめんなさい。

「何度も何度も連絡したい気持ちを
いかに押しとどめられるかが恋愛の極意だよ」と
この間の忘年会でも友人に言われました。

反省しています。

あなたに手紙を書き始めてから、
もう二年くらい経ちます。

毎日の生活の中で、泣いたり笑ったり、
心の中からあふれ出てきてどこにもぶつけられない思いを
何の遠慮もなく吐き出してきました。
今思いついたような些細でどうでもいいようななことも、
たくさん書いてしまったなあ。

ほかの文体や、表現では
書けなかったり、書きにくかったりしたことも、
便箋に向って筆をとると、するするっと
綴ることができました。

それはきっと、あなたの人柄によるところと感謝しています。

あなたは私の負の面、わがままも泣き言も、
受け入れてくれる気がしているんだ。
そんなことないよ、と怒られるかもしれないけれど、
私は勝手にそう感じるから、
安心しきって、好きなことを書けるのです。
どうもありがとう。

それと同時に、こうして一方的に気持ちを押し付けていることが、
結局は自己満足の代物に過ぎないのではないかという
無力感に、しばしば襲われます。

心情吐露は、私にとってはストレス解消になるかもしれないけれど
優しいあなたには
無意識の重荷となっているのではないかと思ってしまう。

浮遊するあなたはするりと私をかわして進んでいくけれど、
それも私への気遣いだったのではないかと考えることがあります。

……なんて、考えすぎですね。
考えすぎてつぶれてしまうほど、最近の私は弱くないのです。
虚無を噛み潰しながら、これからも書いていくからね。





さて、一年が終りますね。
今年はあなたに一度も会えませんでした。
年末にも放浪しているだなんて、まったく迷惑な話です。
(ぷんぷん。今度会ったときには、よほど優しくしてもらわなきゃ。)

どんな一年でしたか?

私はね、まあいいことも悪いこともありました。
人とけんかをしたり、笑いあったり、
ダメだしされたり、褒められたり、ぐつぐつ煮込むうちに
向き合えた瞬間も、
何度かあったように感じます。

今年うれしかったのは、「明るいね」「前向きだね」と
何人かのお友達に言ってもらえたこと。
自分では自分のことを考え込んでしまうほうだと思うし、
一緒にいる人にそれをぶちまける傾向にあることを自覚していただけに
意外な感想ではありましたが、同時にとても力づけられました。

物事のいい面を見ていきたいな、というのが最近思うことです。
今読んでいる、佐野眞一『だれが本を殺すのか』にあった、
映画評論家の淀川長治さんについて書かれているくだりが、
そんな私の気持ちに寄り添ってきました。

「淀川はたとえどんなに駄作と思われるような映画でも、
自分が紹介する以上、あるときはカメラワークを誉め、
あるときは照明を誉め、誉めるものがほとんどないような
映画の場合でも、通行人役の演技を誉めた。
淀川は誉めることによって、映画の世界が豊かに広がっていくことを
知ってもいたし、信じてもいた。」

斜に構えて偉そうに批判することはとても簡単です。
しかし、そういう作業に慣れてしまったら、きっと、
正面から向き合って楽しもうとする体力を、どんどんなくしていく気がして
ならないのです。

勉強すると、楽しくないことが世界を覆っていることを、
知らざるを得ません。
それでも、日々の楽しみを見つけたり、
会話の中で笑いあう工夫を忘れたくない。

根が暗くて心もないくせに人がどんどん集まってくる、
あなたのユニークさや明るさを、私は見習うつもりでいます。

……なんて、また真面目な話になっちゃった。




私の手紙は油断すると今日のように、
具体的事柄がひとつもない感情の動きだけを追ったものになりがちで、
その反省もしようと思ったのだけれどこれ以上長くするのも
読むあなたに失礼な気がするので
やめておきます。

もっと唯物的な人間(という言い方は間違ってる?)にならなくっちゃ。

来年の目標は、
早寝早起きと
読書量をテコ入れすること、
それから彼を作ることに決めました。

いつまでも帰ってこないと、
私の部屋に誰かが住んでいるかもしれないんだからね。

それではよいお年を。
早く会いたいよ。





かしこ

追伸 仕事はどう? 私のほうは反省だらけ。
   継続的努力が必要そうです。
   あなたの才能はみんなが認めているところです。
   これからもたゆまず書き続けてください。




2004年12月28日(火) 本好きへ100の質問

お休みで、いい機会なのでやってみました。
疲れたけど、楽しい。
ほかのもやってみようと思います。

引用先は、こちら。



001. 本が好きな理由を教えてください。

色々つらいことがあっても、「本の世界がある」と思うと楽になれるから。

002. 記憶に残っているなかで、最も幼い頃に読んだ本は?

『ペーターの上着』

003. はじめて自分のお小遣いで買った本を教えてください。また、その本を今でも持っていますか?

機動戦隊(?)スピルバンの本

004. 購読している雑誌はありますか?

『流行通信』『ku:nel』『天然生活』『In Red』『Coyote』『Arne』『考える人』

005. 贔屓にしているWEBマガジンはありますか?

本のメルマガ
http://www.aguni.com/hon/

チェチェンニュース
http://chechennews.org/chn/

006. 書籍関連のHPの、どんなところに注目しますか(書評や感想文等々)。

アマゾンの、ほかの人のリストは楽しく読んでいます。

007. 最近読んだ本のタイトルを教えてください。

佐野眞一『だれが「本」を殺すのか』(新潮文庫)

008. ベストセラーは読む方ですか?

文句を言いたくなったときは、その前に読むようにしています。
最近だと、『バカの壁』、『死の壁』は読みました。

009. 御贔屓は、どんなジャンルですか?

結果的にたくさん読んでいるのは、若手と言われる純文学作家のような気がします。

010. あなたは活字中毒ですか?(それはどんな症状としてあらわれていますか)

違います。
新聞も本も、根底では読むのが面倒くさいと思っている気がします。
そんなこと、普段は恥ずかしいから言わないけれど。
旅も同じで、旅をしている間中、帰ることばかりを考えているなあ。

ただ、かばんには常に本が入っていないとだめ。
時間がつぶせないので、すぐに買ってしまいます。

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011. 月に何冊くらい読みますか?

たぶん、4冊くらい。
本当はもっと読まないといけないのですが、
最近はすっかりマイペース。

012. あなたは本の奥付をちゃんとチェックしますか? するとしたら、その理由は?

必ずチェックします。大好き。
雑誌の場合は編集長、AD、デザイン事務所を調べるため。
友人に葛西薫を教えてもらった直後に、『ku:nel』のロゴを作ったのが
彼だと知ったときには興奮しました。

書籍の場合は、装丁や表紙の写真、イラストなどの作者を調べるため。
町田康『パンク侍〜』のスタイリストは北村道子さん!
そういう瞬間にわあ、と思う。

013. 文庫本の値段として「高い」と感じるのは幾らからですか?

1000円以上。講談社文芸文庫は高い。

014. 本は書店で買いますか、それとも図書館で借りますか。その理由は?

前者。大切な言葉はページを折ってでも覚えておきたいから。

015. あなたは「たくさん本を買うけど積ん読派」それとも「買った本はみんな目を通す派」のどちらでしょう?

積ん読を反省している派です。

016. 行き場に困ったとき、とりあえず書店に入ってしまう。そんなことはありますか?

行き場に困らずとも毎日入ります。
書店めぐりはライフワーク。これに勝る喜びはなし。
洋服屋さんめぐりで疲れた心を何度青山ブックセンターで癒したことか。
こんなこと、大きな声では言わないけれど。

017. 馴染みの書店・図書館に、なにかひとこと。

うちから一番近いあゆみブックス高田馬場店さまへ
あと二時間長く(午前1時まで)開けてください。

早稲田大学図書館さまへ
(地下にある)書庫に入るときのドキドキ感が大好きです。

018. あなたは蔵書をどれくらい持っていますか。

数えたことがないのですが、とても少ないと思うので恥ずかしいです。

019. 自分の本棚について、簡単に説明してください(“小説が多く実用書が少ない”等々)。

コミックが圧倒的に少ないので、いつも反省しています。
このお正月に『ポーの一族』を買おうとしたら、田舎の本屋にはなかった……

020. 本棚は整理整頓されていますか。

ある程度きれいですが、積ん読は自分をいさめるために
わざと(横向きに)「積んで」あります。

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021. 既に持っている本を、誤って買ってしまったことはありますか? その本のタイトルは。

ないですが、村上春樹『ノルウェイの森』は
誰かに貸してなくなったため2回買った。

022. 気に入った本は、自分の手元に置かないと気が済まない?

絶対にそう。何度も何度も開きます。

023. 本に関することで、悩んでいることは?

学術書を読む学力、知識、根気が不足している。

024. 速読派と熟読派、あなたはどちらに該当しますか。

遅読に劣等感を持っている派。

025. 本を読んでいて分からない言葉があったとき、意味を調べますか?

調べます。いい言葉だな、と思ったら、
日常生活でなるべく繰り返し使い、意味を体に覚えさせます。
昨年覚えた言葉は、「ペーソス」と「オーセンティック」。
(知らなくてすみません)

026. 本を読む場所で、お気に入りなのは?

電車の中。

027. あなたは今、めったに読むことのない分厚い本を前にしています。ところでこの本「すごくおもしろい」という、いつもは信頼できる情報を得たはずなのに、最初の部分がやたらにつまらない。そんなときどうしますか?

さらさらと斜め読みをし、読み終わったことにするというずるい手法を
しばしば使っているだめな私です。

028. 本を読むときに、同時になにかすることはありますか?(例:お茶を飲む、おやつを食べる、音楽をかける)

家だと、「カフェ的空間」を作って気取って読むかも。
ミルクティーを入れたり。

029. 読みかけの本にはさむ栞は、何を使っていますか?

本についてきたもの。

030. ブックフェアのグッズを新たに誕生させることになりました。あなたが「これなら欲しい」と思うグッズを考えてください。

単行本用ブックカバー。

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031. 無人島1冊だけ本を持っていけるとしたら、何を選びますか。

町田康『へらへらぼっちゃん』
笑って過ごせそうだから。

032. 今、最も欲しい本のタイトルをどうぞ。

『夜のピクニック』

033. 生涯の1冊、そんな存在の本はありますか? その本のタイトルは。

松尾スズキ『大人失格』
私を救ってくれた本です。

034. 何度も読み返してしまうような本はありますか? その本のタイトルは。

村上春樹『ノルウェイの森』、『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』

035. おきにいりの作家ベスト5と、理由をお願いします。

村上春樹:読んで何かを得、人と話し合うことで得、そこから考えることでさらに何かを得られる作家
町田康:斜に構えずに正面から笑わせてくる
斎藤美奈子:痛快
舞城王太郎:泣けるフレーズをわざと?っていう場所に出してくる
飯沢耕太郎:写真を分かりやすく書いてくれる人は少ないので

036. 好きなシリーズ物はありますか?

舞城王太郎の兄弟もの

037. 本を選ぶときのポイントを教えてください。

棚を見ていると気に入った本が分かってくるようになってきました。
それ以外では友人からの口コミ、新聞の書評。

038. 翻訳小説は、訳者にこだわる方ですか。

そうでもないけどミーハーなので、村上春樹訳、柴田元幸訳はは読みたくなる。

039. 信頼できる書評家は誰ですか?

山形浩生さんの朝日新聞での評は楽しみに読んでいます。

040. 絵本は好きですか? 好きな方は、好きな絵本のタイトルを教えてください。

そういう文化はいいなあと思うし
『Pooka』も買っていたのですが、絵本は持っていないです。
『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』は読んでみたい。


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041. 本は内容を先に読む方ですか、それとも、あとがきから読む方ですか?

内容が先。

042. 読みたいのに読めない本はありますか? その理由は。

辞書のように分厚い『帝国』。理由は……おどろおどろしいから。

043. ノンフィクション作品のおすすめを教えてください。

ちょうど読み終わった、『だれが「本」を殺すのか』。

044. あなたの好きな恋愛小説を教えてください。

『ノルウェイの森』

045. 泣けてしまった本を教えてください。

本で泣いたことは、ないかなあ。忘れてるだけかな。

046. 読んでいるだけで、アドレナリンが分泌されてくるような本は?
伝説の編集者、とかについて書いてあると
けっこう萌える。
あと、ロッキング・オンの雑誌は読んでいると熱くなる。

047. もう2度と読みたくない本は、ありますか?

そんなに嫌いな本はないと思う。

048. 良くも悪くも「やられた!」と思った本はありますか?

やられた! という感想は作り手としての感想だと思うので、
私はそこまで作り手の立場に立って本を見ていないのかもしれないなあ、
反省しなくっちゃ、とこの質問に答えながら思った。

049. 読む前と読後感が違っていた(食わず嫌いだった)本は?

川上弘美。
もっとゆるくてほんわか、かと思ったら意外にさばさばと
男らしく、媚がなくて好きだった。

050. 子供にプレゼントしたい本のタイトルを教えてください。

漫画だけれど、西原理恵子の『毎日かあさん』です。
でも、ここでいう「本」に漫画を入れていいのかよく分からない。

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051. お気に入りの出版社と、その理由を教えてください。

マガジンハウス:なんだかんだ言ってすごい
晶文社:こういう立ち位置がうらやましい
新潮社:第一志望だったので

052. それでは苦手な出版社は? その理由を教えてください。

考えたことがありません(笑:優等生)。

053. この本で読書感想文を書いた、という記憶に残っている本はありますか? あれば、そのタイトルは?

早乙女勝元『アウシュビッツからの手紙』
これで県代表になった。

054. 装丁が気に入っている本を教えてください。

みすず書房の装丁は全部好きです。

055. あなたは漫画が好きですか?

好きです、と言えるほど読めてないのでがんばります。

056. お気にいりの漫画家ベスト5と、好きな作品について教えてください。

高野文子『るきさん』
西原理恵子『毎日かあさん』
浦沢直樹『MONSTER』
井上雄彦『スラムダンク』
松本大洋『鉄コン筋クリート』

やっと5人……

057. サイン本を持っていますか?(タイトルと作家名は?)

『カンバセーションピース』
保阪和志

058. 持っているのを自慢したい。そんな本はありますか?

ないです。
古本マニアでもないので……。

059. 東・西・南・北……漢字を選んで、浮かんだ本のタイトルを書いてください(実在する書名に限ります)。

東:『アフターダーク』(村上春樹)
西:『国境の南、太陽の西』(村上春樹)
南:『TOKYO STYLE』(都築響一)
北:『旅をする木』(星野道夫)

060. 短編小説集を買ったら、全部読みますか? それとも、その中から気に入った作品しか読みませんか?

全部読むにきまってます!


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061. 憧れのキャラクターを教えてください。

松本大洋『ピンポン』のペコ

062. 印象的な女性キャラクターを教えてください。

『ノルウェイの森』のミドリかな。
春樹ばっかでごめんなさい。

063. 印象的な男性キャラクターを教えてください。

『ノルウェイの森』のワタナベくん。
ほんとに春樹ばっか。

064. 先生といえば?

『スプートニクの恋人』の「僕」。

065. 探偵といえば?

シャーロックホームズ。

066. ベストカップル、ベストコンビといえば?

『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』の
「僕」と「影」

067. 本に登場する場所で、行ってみたいと思うのは?

石田千のエッセイに出てくる場所は、
どこなのか分からないけれどとても行きたくなる。

068. 子供の出てくる作品といえば?

『キャッチャー・イン・ザ・ライ』

069. 動物の出てくる作品といえば?

町田康『猫にかまけて』

070. これまで出会った中で、もっとも感情移入できたキャラクターは?

魚喃きりこの漫画に出てくる人には感情移入しがち。
自分のそういう部分は嫌いだ。


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071. 本の登場人物になれるとしたら、誰(何)になりたいですか?

『黄色い本』の女の子になりたい。
漫画の人でいいのかな。

072. 夢中になった作家、現在進行形で夢中な作家の名前を教えてください。

町田康先生はまあおいといて、
石牟礼道子さんに夢中です。

073. 1日だけ作家になれるとしたら、誰になりますか。

だれかになりたいとかはないです。

074. 編集者になるとしたら、どの作家の担当になりたいですか?

町田康。
その日ために今を生きています。

075. 好きな作家に原稿を依頼するとしたら、どんな作品を希望しますか。作家名とジャンルを教えてください。

入社試験でこういうのいっぱい書いたから、
トラウマなので答えたくありません。うう。

076.「あの作家に、これだけは言いたい」……ひとことどうぞ!

石牟礼道子先生が、とにかく長生きしていただきたいと思っています。

077. 紙幣の肖像、私ならこの文豪を選ぶ!

中原中也はハンサムだからよいと思う。

078. 文章と作家のイメージが違っていた、そんなことはありますか? 

筒井康隆。

079. あなたにとって、詩人といえば。

金子みすず

080. 家族……この単語から連想した本のタイトルを書いてください(実在する書名に限ります)。

ジュンパ・ラヒリ『その名にちなんで』


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081. 本を捨てることに抵抗がありますか?

絶対に捨てられません。

082. これだけは許せない、そういう本の扱い方はありますか?

特になし。
ブックオフに売るとか、そういう答えを
導こうとしているのかしら。
それは「あり」だと思う。

083.“活字離れ”について、どう思いますか?

「活字離れ」以前を知らないし、
本を読むか読まないかなんて個人の自由だと思う。

084. 本を読まない人のことを、どう思いますか?

本を読むか読まないかで人を判断しないです。
好きな本の話をできる人は楽しいな、と思うけれど。

085. とりあえず、本を持っていないと落ち着かない。そんな癖がありますか?

まさにそうです。
かばんに一冊。ないとそわそわしてすぐに買ってしまう。

086. 世界中で、本の出版が禁止されたら、どうしますか?

生きていけない。
でも、だからって死ぬわけには行かないのでどうにか生きていくしかないんだろう。
そうしたら映画を観るかな。

087. 青空文庫を利用したことがありますか?

あります。

088. 電子図書館についてどう思いますか?

これも入社試験で嫌というほど聞かれたので、
トラウマで答えたくありません。
自分が試されている気分になる。

089. 将来的に、本という存在は無くなると思いますか?

なくならないと思う。

090. 本が無くても生きていけると思いますか?

なくなったらとてもとても困る。
つまらない。


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091. この人の薦める本なら読んでみたい、そう思う有名人を教えてください。

高橋源一郎
山形浩生

092. 映像化してほしい本はありますか?

そういう願望はあまりない。

093. テレビ化・映画化で成功したと思う作品を教えてください。

最近流行の松本清張作品。

094. 本の中に再現したいと思う(実際に再現した)場面はありますか?

村上春樹の料理は、『村上レシピ』を買って再現しました。

095. あなたにはどうしても読みたい本があります。その本は既に絶版・品切。さあ、どうしますか?

神保町で探す。桑原甲子雄の写真集はそうして見つけた。
本当に感動します。

096. 本という存在に対して、文句はありますか?

何も。

097. 心に残っている言葉・名台詞は?(原典も明記してください)

「人生に救いはないぜ、でも有効。技もある」(町田康『へらへらぼっちゃん』)
これが私の座右の銘です。

098. あなたにとって、本とおなじくらい蠱惑的なものは何ですか。

好きな人と話すことです。

099. 出版業界にひとことどうぞ。

もっとお金ください。

100. つまるところ、あなたにとって本とは。

恋人。
恋人がいなくても生きていけるのは、
まさに本があるからだと言えるので。



2004年12月27日(月) warabi

角ちんの新居で忘年会。猫のわらびと私に対する扱いのランクが明らかに前者>後者となっていることに気づいてしまう。猫になってのんだくれてえなあ。



2004年12月26日(日) 往来堂

本の虫ギョーカイでは有名だという、千駄木の往来堂書店に行ってみた。わくわくするお店で、しかもお兄さんがかっこよくて親切だった。お兄さんがかっこよくて親切だった。お兄さんがかっこよくて親切だった。

話題の、こうの史代『夕凪の街桜の国』(双葉社)が目立つところに出してあって、ああそうだと思い出して買いました。

ブックオフができるとかで問題になっているみたいだけれど、あんまり関係ない気がしたなあ。あと、伝説の往来堂と比べても、早稲田のあゆみブックスはやはりすばらしいということを個人的には確認できてとても満足でした。あゆみブックスの棚って、誰が作っているんだろう……。



夜は飲んだくれ。「理性を失いやがれ!」と友人に説教しながら飲んでいたら、自分が先に寝てしまいその後の記憶なし。



2004年12月25日(土) I'm a loser, baby.

前略王子様



メリークリスマス。
お元気ですか?

私は実家に帰っています。
家族3人でお鍋をして、ケーキを食べました。
今日は一日中、こたつでごろごろ眠っていました。
もうお正月気分です。

誕生日プレゼント、どうもありがとう。
ジャックパーセル、毎日はいているよ。
でもね、あなたの書いていたマルジェラのワイドパンツは、
1年位前に売ってしまったの。
あなたが不在の間にも、
いろいろなことが変わっているんですよ。
あなたばかりが変わって、
私はそのままとまっていると思うのは傲慢です。
こちらも生活しているんだからね。

今日はアレルギーが出て、
鼻がむずむずかゆかったので薬を飲みました。
そうしたら、とても体調がいいです。
明日は年末年始に読む本を
丸善に買いにいこうと思います。

私のクリスマスプレゼントはつきましたか?

本当はセーターをあげようと思ったのだけれど、
お金がなくて(えへへ)
セントジェームスのボーダーTシャツにしました。
似合うと思うよ。

店員さんの着こなしを見ていたら、
ボートネックの下にタートルを着ていました。
うまく重ね着をすると、暖かく冬を過ごせると思います。

寒くなって、最近は
あなたに会いたいと思います。
他愛のない会話でいいんだけど、
話せたら素敵だよね、と思います。

こういうことを平気で書くのは、
ずるいってまた言われるのかな。



最近、『犬猫』という映画を見ました。
いい映画でした。
いっしょに見た友達が、
「主人公は私にそっくりだ。負け犬だ」と言うのです。
ひどいよね。

私だって、色々なことに傷ついたり、
劣等感を持ったりするんですよ。

……愚痴になっちゃった。
そうそう、映画は「なんだ、よくあるほっこり生活系か」と
早とちりせずに、ぜひ、見てみてください。
(『海猫』ではないのでお間違えなく)



川上弘美のエッセイを読んでから、
今まで聞き流していた「生きていること自体が歓びだ」という
とても陳腐に聞こえる事実を見つめるようになりました。
町を歩いているときにも、
そういう気持ちがふっと湧き上がってくることがあります。
言葉で書いても、分からないかもしれないし
あなたはもうとっくに気がついているかもしれないけれど、
ふと、そう感じることがあるのです。

大学のゼミで詩を習ったとき、
「見る」ことと「観る」ことの違いを習いました。
後者は、心を使ってものを見つめることだ、と先生は言いました。
そういうものの見方をすることが、
すなわち、詩(Poetry)なのだと。
言葉にすると、なんてことはないけれど、
それはとても大切なことなのだ、そして難しいということを
感じています。

今日実家で、父親が荒川沿いを歩いたときの写真を見ていたときにも、
ふっと何か暖かいものが心に降りてきて、
不思議な気持ちになったのです。
私たちの周りには、
どれだけのすばらしい風景が潜んでいることでしょうか。
荒川の、小さな支流のちょぼちょぼという音の向こうを
「ざーっ」と音を立てて電車が通り過ぎる。
ただそれだけの数秒。

いつか、この満たされた気持ちを、
文章にして書けたら素敵だろうと思うのです。

そう、刻一刻と流れる時間の中で、
記録から次々とこぼれ落ち、忘れられていくこの感覚を。
今の私が書いても、筆力が足りなくて
みつをみたいです。
やれやれ。


かしこ



追伸
カレンダーは、『ARNE』についてきたものを使うつもりです。
今月号には、村上春樹の自宅が載ってるいるわよ。



2004年12月24日(金) 新宿通り

夜の8時半、データを届けに四ッ谷に行った。
帰り道、駅に向かって右の方にオレンジ色の光が見えた。
東京タワーだろうか。(そんなはずないのかな。)

横断歩道を待つ間、空を眺めると、
たくさんのビルの灯りが反射して、きらきら輝いていた。
会えない人の顔を思い出して、少し切なくなる。
信号が変わって歩き出す。

どうして離れている人のことを、
「今何してるのかな」と考えてしまうんだろう。
不在であることが、変わるわけでもないのに。

会社に戻ると、「マクロビオティック本」の
撮影で使ったという玄米ご飯が置いてあって、
お腹が空いていたからぱくぱく食べた。
「夕飯じゃないですよ。おやつですよ」と
言い訳をしたら笑われた。

最近買った膝掛けをまた腰に巻いて、原稿を書く。
あなたに会いたいと思う。



2004年12月21日(火) 冬至の手紙

SMさんへ


こんにちは。
メールどうもありがとう。

北海道は雪かー。寒そうだね〜。で、でもマスクはダメ!
ガールとしてだめよ。
といいつつ、私も先日風邪を引き
眼鏡にマスクで会社に行きましたが……

私の姿を見て、まわりのみんなが思いついたように
セコムの防犯システムについて話し始めたのには
少し腹が立ちました。



私は寒いのがとっても嫌いなので、
冬になると行動力が減退しています。
不機嫌になるんです(笑)。

職場からは
市ヶ谷→新宿→高田馬場という帰り道なので、
夏はけっこう新宿のお店を覗いてから帰ったり
していたのですが、
最近はめっきり……。

私はもともとお風呂が嫌いなのに(入るまで、ね)
冬はそれに拍車がかかって
ひとり、こたつでごねる時間が増えています。
やれやれ。

今日は冬至だから、柚子湯でお風呂に入る気持ちを
盛り立ててみようかな、と思っています。

何か、寒い冬を素敵に乗り切るコツやグッズがあったら
教えてください。
(なんだかNHKラジオのテーマみたいだ)



商店街火災のニュースを拝見し
驚いています。

SMさんのお宅の方ではなかったですか?
記者としてお忙しかったのかなあというのと、
お家の近くは大丈夫なのかなあというダブルで
心配していました。



そうそう、最近りかちゃんに会ったよ。
一緒に映画を見に行ったのですが、
彼女も(自覚していないと思うけれど)
かなりの変わり者で、いつも面白く観察しています。

りかちゃんと、SMさんがタッグを組んだら
最強っていう感じがする(笑)。

「負け犬」も楽しいんじゃない?と彼女は言っていました。
オリーブ少女っぽい芯の強さとか、
ひとりで生きていく楽しみの見つけ方を
見習いたいなあといつも思います。



> ▼インタビュー

> まず、予めその人について徹底的に調べておいて、原稿の7割は
> 話を聞く前に完成させておくこと。これによって余裕をもって話
> が聞けるし、より深い話を引き出すことができたりもする。原稿
> にも統一感が出る。
>
> 次に、自分の耳で聞いた印象的な言葉を書き留めておくこと。そ
> れを原稿のスパイスにする。
>
> それから、その人の核につながり、言葉に結び付くような面白い
> エピソードを1、2コ必ず入れる。うなってしまうような失敗談、
> 成功談などがあれば、それだけで面白い。


とてもいいことを聞きました。ありがとう。
特に一番目のこと。

私はいつも、印象的な言葉から
インスピレーションを得て全体を構成するという2番目の方法を
使っています。

私は普通に文章を書こうとすると、
とても感覚的で勢いだけのものになってしまうんですよね。
(日記を見てくれれば分かると思うけど)

それで、就職活動中も学生時代も乗り切ってしまったところがあり、
反省しています。

構成を意識した、
論理の通った文章を書けるようになりたいなあというのが
今の目標です。



> ▼報道と出版の仕事
>
> バナナさんは、報道を「事実を伝えること」出版の仕事を「物事を
> 自分で斬ること」って言うけど、私は報道の仕事にも出版の仕事
> にも両面があるのだと思います。
>
> 例えば、あくまで一例だけど、報道では「こういう事件がありま
> した」が前者、「DVの背景には育児負担があるのではないか」
> が後者。出版では「こういう商品が注目を集めています」が前者
> で、「村上春樹の本がなぜ人を魅了するか」が後者だったり。上
> 手い例えじゃないね…。

その通りだね。
実家でとっていた毎日新聞に、「記者の目」という連載があり、
私はそれが好きでした。

全国の記者が、自分の深く向き合ったトピックについて
自由に意見を書いているのですが、
長く取材を続けた、現場の人にしか分からない
当事者たちの事情や問題点が伝わってくるのです。

SMさんの日記を見ると、
その記事を読んだときと同じ気持ちになります。
ひとつひとつのことに、きちんとした態度で
接している気がするからです。

> 小さいニュースでも大きいニュースでも、人が知らないこと、知
> ることによって何かを得ることができる仕事をしたいと思ってい
> ます。そういう意味で、奈良の女児殺害事件での報道はひどい。
> 「写真に写っていたじゅうたんは奈良市内で販売されていたこと
> が分かった」とか「女児の髪は濡れていたことが分かった」とか、
> 取材合戦の結果なんだろうけど、あれほど無意味なことはない。
> そういう情報によって、誰が得をするんだろう。逆に、傷ついて
> いる人がきっといるはず。

私も会社に入ってから、
読者にとって何が有益か、というのを
作り手はけっこう考えているのだなあということに
少し感動しました。

先輩が入れてくれる赤字には、
どんな小さい記事でも「読者は……」という視点が
入ってたからです。

私は今、冠婚葬祭の事典(すごいでしょ!)という
実用書を作っているのですが、
けっこう楽しいです。

もちろん、芸術的な才で誰かを救うような
素晴らしいものが作れたら素敵なんでしょうけれど、
それがなかなか難しいときに、
誰かの役に立つっていう意味で、実用書作りは
やりがいがあるな、と思います。

トレンドを次々にキャッチして、
素敵なデザインで世に出す雑誌よりは、
私の(暗い)性格に合っているのかも、と
少し将来作りたいものが見えてきた気がしたり、
しなかったりしているところです。



> ▼アフターダーク
>
> 単行本は滅多に買わない(ましてや新書なんて)のに、先日、東
> 京に行った時に買いたい本がなくて思わず買ってしまいました。
> 巷では「期待外れ」と酷評されているみたいだけど、バナナさんは
> どう思った?私は感覚的な文章だなあという印象を受けました。
> 新しい表現方法で、なるほど、こういう書き方もするのかと。た
> だ、読みやすさという点ではイマイチなのかもしれない。まだ読
> み途中なので全体の感想は書けませんが、よかったらバナナさんの
> 書評をお願いします。

うう……とっくに読了しているのに
まともな感想が書けないっす。

私はこの本について、「知識人」の評を
新聞くらいでしか見ていないので
難しいことはよく分からないのですが
一般読者は、
いつもの村上節がなくて
ガッカリしているのではないでしょうか、と
超超一般的読者である私は思います。

独特のセンチメンタルな表現

セックス
「僕」

が、全部出てこなかったですよね。
でも、本当に難しいことはよく分からないので、
勉強し直してまた書きます。



■もろもろ

最近は、佐野眞一『だれが「本」を殺すのか』の文庫版を
読んでいます。
この業界にいて、『本コロ』を読んでいなかったなんて
もぐりですよね。

文庫版は、新刊時から大幅な
加筆修正があるみたいで
たのしみ。



あと、先日ディズニーシーに行きました。
うほほほ。
高校三年以来。
(私の大学4年間て……)
アトラクションはランドのほうが凝っていて、
お金かけてない感が否めなかったけれど、
ショーが良かったよ。
ディズニーのエンターテイメントってすごいね。




長々とすみません。
年末年始はがっつり本を買い込んで
実家に帰ろうと思います。

それでは、
メリークリスマスアンド 
ア ハッピーニューイヤー!

勉強不足な分野だらけであへあへ状態の私ですが、
今後ともよろしくお願いいたします。







2004年12月20日(月) きゃー!

ある夜、むきょ!!と節約に行き詰まり、買いたいものを全部買うことに決めた。貯金をどばっと下ろしてやってやったぜ。



・イルビゾンテの鞄
・レペットの黒のシューズ



びびって母に電話したら、「れいちゃんがかわいい服着てくれておかーさんうれしー」と言ってくれたのでまあいいよね。

イルビゾンテの鞄を見せつつ友人に「青山でデザイナーと打ち合わせ」って感じでしょ?と言ったら「高尾山で鳥を撮ってきます」って感じじゃん?と答えやがる。とほほ。



※補足

この冬はすこーーーーーしですがボーナスもらえることになりました。半分は貯金します……。ト○タの社員さんは全員、給料10ヶ月分+50万円もらえるそうです。そ、その50万円だけください。車いっこくらいつくるから。



2004年12月18日(土) 土曜日の夜

りかちゃんと川村さんと3人で、ニールヤングの撮った映画『グリーンデイル』を見に行く。二人ともとげがなく、それに良い意味で普通ではないから、一緒にいて楽しい。



りかちゃんに会うたび、私はなんだかんだと誰かに頼ろうとしている自分を心から恥じることになる。彼女はふらふらと浮遊しながら、自分の楽しいことを自然にやっている。今日は、イデーショップでサボテンを買った、と見せてくれた。飼っている犬、チャッピーの写真も見せてくれたので、「犬飼ったら終わりだよ、自分が負け犬になるよ!」と脅しておいた。



性格はみんな暗い方なので(私が多分一番明るい)23〜5歳のおとなが3人集まって「友達いないよね」と話し合ってしまった。



石牟礼道子の話をしたら、川村さんは「中上健二のおりゅうのおばだ」と言う。なるほど、と膝を打った。石牟礼道子は「大文字の」書き言葉からこぼれおちてしまった「小文字の」話し言葉を救済したのだ、という阿部謹也の話を要約して話したら、分かってもらえた。自分で話ながら、ふと、ボブ・ディランのことが頭に浮かんだ。ディランが歌うと、多くの黒人たちの歌声が分裂して聞こえてくるのだという話。



2004年12月17日(金) ロングシーズン



「バナナさんはねえ、いいものも悪いものも甘ちゃんなものも含めて、たゆまず書きつづけていることが芸なんだから、どんなものでも、書いてみせると、読んでるひとも、バナナさんも(バナナさんはしばらくたってから)満たされると思いますよ。」

久しぶりに頂いたメールに、こんなメッセージが書いてあった。私自身がしばらくたってから満たされるってどういうことだろう。



■仕事(としての自覚が足りない感想)

アルバイトさんをインタビューしている。飲食店やテレアポの会社に行って、決まった質問を投げかける。社長でも、やり手社員でもないただのバイトだ。やりがいや楽しいことが、みんなにあるわけではない。それでも、話を聞くのはとても楽しい。素直に疑問に思ったことを、すぐに尋ねるようにしている。そうすると、思いがけないひとことが返ってくることがある。

「今までで一番印象に残っているお客さんは?」居酒屋で働く女の子に聞いたら、1枚のアンケートの話をしてくれた。あるおじいさんが、「今日は私の65歳の誕生日でした。ありがとう」と、ひとこと書き残していった。それを読んでから、もっと親切にすればよかった、落ち度はなかっただろうか、と色々後悔したのだと。接客に対する考え方が、変わった瞬間だったという。

一瞬鳥肌が立った。

会社に帰ってすぐに、文章をあげた。書いている時、楽しくてしかたなかった。ほとんどの人が、ありがちな話だと読み飛ばす記事だろう。それでも、私には大切な1000ワードなのだ。



■金曜日の夜に

忘年会から急ぎ足で家に戻って、ヘッドフォンでベックを聞いた。寒い冬の夜、たったひとりの部屋の中で、自分の心の中に降りていくことの素晴らしさ。目の前に行き止まりの、袋小路しかないように思えるとき、心の中の無限大のスペースが、私に光をくれる。





2004年12月12日(日) 猫手

マツケンサンバから久しぶりに電話がかかってきた。いつものとおり泥酔状態。しらふの時に話したのはいつ以来だろう? 

来週から仕事でロンドンに行くと言う。就職する前はそういうかっこいい感じが嫌で嫌でしかたなかったけれど、多分仕事ってそういう華やかさでははかれないし、彼のような「心のない人」の価値観では、ロンドン出張がえらいとか、そういうことはまったくないんだろう。

「おいしい紅茶でも買ってくるよ」と言うので、「紅茶はいいから貴金属をが欲しい」と念を押しておいた。もう一年くらい言い続けている。こっちも服を買ってあげるといってずいぶん経ってしまった。クリスマスにセーターでもあげようと思う。

彼は面白いので好きだ。ほとんどくだらないことと下ネタしかしか言わない。今日は池上遼一の漫画の話をした。彼は貧乏なので、貸し漫画屋さんを愛用しているそうだ。「そんなに家賃が払えないならうちに住めばいいのに」と言ったら、「呪いが怖いから嫌だ」と拒否された。

彼と話した後に実家のコタツで眠ったら、夢を見た。「坊主にした」というのを私の脳が覚えていたのか、ものすごい変な、ザビエルみたいな脳天ハゲの髪型で登場する。眉毛もきっちり整えている。「これからも好きでいられるか不安……」と夢の中の私は思った。「サンバくんが歳とってデブになってハゲになったら、誰も君のことを相手にしなくなるよ。そうしたら私くらいしか、ご飯あげに行く人いないでしょ」というのが今のところの私の作戦である。(でもザビエルはかっこ悪かったなあ……)

1月の10日すぎになったら、ミュージックバドミントン(大学時代のサークル)で新年会しようよ、という話をする。あつしさんやともちんも呼ぼう、と言っていた。こういう話はとても楽しいので好きだ。



2004年12月11日(土) 一年

気まぐれおまけコーナーに「04年今年の10冊」を作成中です。一年を総括したりするのは好きです。後ろ向きなのかしら。というわけでいくつか。

■10大ニュース

・好きな人に好きだという(だめになる)
・生まれて初めて告白される
・社会人になる
・町田康さんを生で見る
・石牟礼道子さんを生で見る
・トム・ヨークさんを生で見る
・『エンドレスワルツ』に出会う
・高田馬場に住む
・直島に初めて行く(香川で王子様に会う)
・夏目坂のデニーズ、レッドピーマンなど思い出のお店がなくなる

■寝た映画(本当にすみません)

・『gelly』(ガス・ヴァン・サント監督)
・『霊長類』(フレデリック・ワイズマン映画祭)
・『エルミタージュ幻想』(アレクサンドル・ソクーロフ監督)
・『ヴァンダの部屋』(ペドロ・コスタ監督)

■泣いたり衝撃を受けたりしたもの

・RADIOHEADライブ
・『ハウルの動く城』
・『エンドレスワルツ』
・『六月の蛇』
・『毎日かあさん』
・町田康の顔の美しさ
・好きな人の顔の美しさ
・石牟礼道子の神々しさ
・谷中
・ジャック・アンリ・ラルティーグの写真展
・「僕を見ているもう一人の自分がいて、そいつの存在が大きくなればなるほど、いろんなことがうまくいかなくなるんだ」という話
・「人と会っても何も感じなかったけど、最近ようやく誰かと会って何かを得るっていう感覚が少し分かってきたよ」という話

■おいしかったごはん

・誕生日の鍋(実家)
・キッチン南海のカツカレー(神保町)
・なかにしのうどんすき(青山)
・七面鳥カフェのコーヒーと角煮(青山)
・香川のりんちゃんちで食べたすき焼き(高松)




2004年12月05日(日) 誕生日

卒論で忙しいのに、ちえこはわざわざ実家に来てくれた。
夜はテレビのない殺風景な部屋で、女の子同士のぐでぐで話をした。

「東京タワーの見える部屋に住みたいなあ、そのためには稼ぎのいい男を探さなきゃ」と言う。「新宿駅で、可哀想なかっこして待ってたら誰か来ないかな」と言う。

私は、「将来マツケンサンバ(仮称:前の彼、というにはもう遠すぎるので)が浮浪者になって、新宿の段ボールのお家に入ることになったらおにぎりを届に行くんだ。だから、そのついでにちえこにも、おにぎりあげるね」と言う。

「れいちゃんそれちがうよ、男に拾ってもらうのにそこに住んじゃだめじゃん」と彼女は言う。



他人の見えている世界と自分の見えている世界のズレが私はいつも気になって、誰と居てもこの人は今楽しいかな、私といて何か得ているかな、と考える。自分がとっても楽しいな、と思うときに相手が面倒だな、重いな、と思っていることが、今までの人生で何度か発覚してしまったりもした。(あーあ)

ちえこと居るときは、そういうことがない。なぜだろう。ずれている気がしないしずれていてもいいのだと思う。こういうことを思える相手がいるのだから多分、私は、ひとりじゃないんだろう。



浦和の女子校にいた三年間は、ほとんど勉強することもなしに、ミニスカートにルーズソックスで、『cutie』ばっかり読んでいた。だから、(というのはつまり勉強しなかったから)受験では何度も泣いたし日記に「死にたい、消えたい」と思春期じみたことを書いたりもした。

だけど不思議だ。あの時いっしょに教室の隅で、「数学5点だった!」と騒いでいた友人に、私は今でもこうして救われている。あの若くて青い苦しみの、1億倍くらい、色んなものをもらっている。



「れいちゃんこれで男を釣ってね。オネエ仕様だから」そう言って彼女は星がたくさん付いたブレスレットをくれた。お金がないね、っていう話を、小一時間した後だった。ひとりの部屋で、少し泣いた。




2004年12月04日(土) 石牟礼道子

『石牟礼道子全集・不知火』発刊記念シンポジウム 石牟礼道子の世界を早稲田の大隈小講堂で聴講してきた。

と、偉そうに書いたが、実はパネリストのひとりである町田康を見に行くのが目的だった。本当にお恥ずかしいことだが事前に著作を読むこともせず、「いしむれさんてだあれ?」という状態のまま当日を迎え、満員の席の前の報に陣取ったのも全て、町田先生を拝む目的でしたことだった。

それが、終わってみたら本当に凄い衝撃を受けて、早速『苦海浄土』を読もうという気になっている。このシンポジウムで語られた石牟礼作品の壮大さを知り、そして、それ(作品の壮大さ)に比してあまりにもこじんまり、「ちょこん」と壇上のソファに座り、消え入りそうな声で、しかしこの世のものとは思えない柔和な笑顔をたたえて話す作家を見る時、私は不思議なな感銘をうけずにはいられなかった。

話を聞きながら、丁寧にメモをとった。基調講演をした阿部謹也はじめパネリストたちの話す言葉は分かりやすく、理解しながら聞くことができた。だから、時間軸に沿ってこの4時間について語ることはたやすいはずであった。

それが、帰ってキーボードに向かったまま固まってしまう。出てこない。石牟礼道子の素晴らしさについて誰かに伝えたいと考えれば考えるほど、自分のことばのなさに愕然とする。

ああ、何も言えない、と思ってしまう。

ただ、最後にご本人が仏の笑顔で語ったことばが、普段私が考えていることとリンクしたのが嬉しくて、ここに書いておくことにする。

「ここまで色々な作品を書いてきて、今は自分を無にしたいというところに来ています。自分を無にして、ただ人々の声を書けたらいいなあ、なんて。うふふふふ」

権威も肩書きも地位もない人間が、いったい世の中をどんな風に感じて、生きてきたのか。新聞記事の「書きことば」からこぼれてしまった人々の歴史を、彼ら自身が発する「話しことば」で丹念に記録した作家、石牟礼道子。

日々暮らしている中で、記録からもれていくたくさんの感情やもどかしい気持ちを、我々は体で知っている。昨日の日記に書いた、角田光代の言う「微細なもの」とはまさにそのことではなかろうか。

やがて歴史として束ねられていく新聞記事の、たった数行の「書きことば」の向こうにいったいどれだけの省略された人生の一日、一瞬があるだろうか。石牟礼道子により、「救済された」歴史があると阿部謹也氏は書く。

石牟礼氏の顔から放たれる光はすごい。それは、人の苦しみを自分のものとして引き受け、もだえ苦しみながら、それでも虚無を排除して書き続けるの彼女の、圧倒的な強さそのものだ。町田康氏は、「石牟礼さんの声には根底に哀切がある、ギリギリな感じがする」と言った。

どうしたらあんな風になれるのだろうかと、壇上の小さな「おばあちゃん」を見ながら思った。



2004年12月03日(金) 角田光代

アサヒコムの「作家に聞こう」というインタビュー連載が、角田光代の回で、ここに面白い記事を見つけた。以下、ある読者からの質問と、それに対する作家の答えである。



以前、町田康さんとの対談(注:マガジンハウス『ウフ』にあるようです)で、正確な言葉は覚えていないのですが、ご自分の小説は商店街より先(例えば、歴史や国家)に届かないのでは、と危惧されていたことが印象に残っています。ぼくは個人的に“商店街の先”というものからして胡散臭いと思うものの、角田さんの危惧はその後、解消されたのでしょうか? あるいは今後、作家・角田光代像の大幅な変化があるとすれば、その触りだけでも予告してもらえると嬉しいです。(東京都・「バラバラ」さん)

あのとき、どうしたら町田さんの『パンク侍、斬られて候』みたいにぶっ飛んだものが書けるのかという話になって、私は商店街みたいなものしか書けないし、その商店街から抜け出せない気がする。そして、それが悩みでもある、と言ったんです。すると、町田さんは、商店街の品物のひとつをずっと見ていけば、微細なものがその先に通じているはずだ、というような意味のことをおっしゃったのですが、私は微細に近づくこともできない。実は、今も悩んではいるのですが、ちょっと解消しつつあるというか、開き直りつつあります。最近は、もし、歴史とか国家といった大きなものに触れるとしたら、商店街を通じて触れることもできるんじゃないか、と思うようになりました。

今後については、いつか今自分が歩いている目線より、もうちょっと高い位置から商店街を俯瞰したいな、と思っています。



2004年12月02日(木) 「醜悪なものの中にこそ、真実があるんだ」

セットしておいたラジオの音で、
毎朝7時半ごろ目が覚める。
寒いので、8時までふとんでごねる。
意を決して起きると、まずこたつの電源を入れる。
鍋に牛乳を入れてわかす。
会社に持っていく水筒の準備。
寒くなってからはココアが多い。
お風呂に入るのが面倒くさいので、またこたつでごねる。
水筒のあまりのココアを飲んで、余裕があるとパンを食べる。
新聞を読む。
本当はここで、始めから終わりまで
読まなきゃいけないんだよな、
そのためにはあと1時間早起きするべきだな、
みんなはいつ新聞を読んでいるんだろう、と
毎朝思う。
「ひと」と「天声人語」は楽しみなので最初に。

ごねたすえに、あわててお風呂に入る。
最近は服を買っていないので、
去年やおととしにかったものを使い回しだ。
ライトグレーのニットと、紺のプリーツスカートを
今日は着た。
タイツをはいてブーツを履いて、
寒いので今年はじめてマルジェラのコートを出した。
もうこれも4年目だ。
9時半に家を出る。

駅まで10分歩く。
途中にあるお茶屋さんの急須がいつも気になる。
この店に入ったことがない。

電車に乗って読書をする。
今はブックオフで買った鷲田清一『モードの迷宮』と
新しい装幀の春日武彦『幸福論』を気分で持つ。

寒い日の電車の中の空気は好きだ。
張りつめていて、コートを着た人々の品(ひん)が、
こもっている感じがするから。
晴れた日の総武線の景色は美しいので、
信濃町を過ぎたあたりで顔を上げる。

市ヶ谷のお堀ぞいを、釣りする人たちを
眺めながら歩く。
あえて信号を渡らずに、
ずっとお堀沿いを歩く。
法政大学のビルに日光が当たっていた。

会社帰りに水面は、
月に照らされて黒く光る。
信号も光る。
早く帰れた日は、駅前の文教堂に寄る。
寒くない時期は、新宿のブックファーストにも
よく寄った。
最近は寒いので足が向かない。
高田馬場に着いて、
あおい書店に寄る。
色々な本屋ができるけれど、私にとって一番助かるのは
開いているお店だ。

ごはんを炊いている間、
お菓子や肉まんをつまみながら味噌汁をつくる。
ラジオ深夜便をつける。
12時前に間に合うと、「ナイトエッセイ」が聞ける。
先日やっていた詩人長田弘の話は良かった。
たいてい、
ごはんと味噌汁と焼き魚
(冷凍しておいたやつ)を食べる。
納豆か、ごはんですよを一緒に出す。
夕飯を食べながら、また新聞の続き。
ここでも読み切らない日は、だめな日。

パソコンの電源を入れる。
今日のヒット数を見て、
ブックマーク先を見て、眠るまでごねる。

眠ると決めたら、ふとんで
町田康の『猫にかまけて』。
あんまり面白いので、声を出して笑う。





こういう何の変哲もない毎日が、
一週間続く。
こういう何の変哲もない毎日が、
ただ一週間続くという、
それだけのことを書いているだけでは
あんまりつまらなくて退屈で、
誰も読んでくれなくなるので、
それに諸々をくっつけて書いているのが、
いつもの日記だ、なんて
かっこ付けたことを書くけれど、
日々はそんなに単純じゃない。
上の文章には、コンタクトを外す時間や
洗い物をする時間が入っていないし、
すきなひとのことを考えていることなどは
恥ずかしいので書いていない。
淡々と書くことばかりが真実だとは思わない。
情念ばかりで埋まっているリアリティもあるのだ。
ただ、それも日々だということだ。
それだけ、「だけ」と書くのは意味ありげだが、
何の意味もなく、
そういう日々だということだとか
こういう書き方も、
なんか諦めてるみたいでちがうんだよな。


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