きまぐれがき
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2005年05月27日(金) まるで異郷の地

ある日。

新国立劇場のある初台から渋谷に出るにも、さっぱり方向がわか
らず、Sちゃんの後をひたすらくっついて行くだけ。

かつて通勤時の乗り換え駅にしていた渋谷も、当時とは見事に変貌
をとげていて、今私はどの辺りを歩いているの?状態。
もう歩きたくない。はやくご飯を食べたい。
ちょうど目の前のエレベターに乗り込んで、「ここは何処?」とSちゃん
に訊ねると、なんとかホテル東急なのだという。

早く早くと、和食のお店でお懐石に舌鼓。
二人とも運ばれてくるお料理にお箸をつけるたびごとに、顔と顔を
見合わせ美味しいねと言い合っていると、なぜか笑いが込み上げ
てきた。

「箱根強羅ホテル」は、井上ひさしの頭の中に詰まっている膨大
な資料の中から練りに練られたホンに仕上がってるねと、観て来
たばかりの舞台の話をしつつ、私は、器の後ろをひっくり返して、
窯とか作者とかを知りたいのを必死でこらえる。
「みっともない!」と一喝されるだけだもんね。

会計の時に「このテーブル、この後、予約が入っているのよね」
なんて、よせばいいのに呟いてしまうと、お店の人があわてて来ら
れて「アチャー。そんなことを係りの者が言ってしまったのですか。
アチャー」というような顔をされて、エレベター前で見送って下さ
る最後までアチャー(>_<)アチャー(>_<)と頭をさげていらした。
あれ?呟いちゃいけないことだったかしら?

東横線で横浜に帰るSちゃんにそのままついて行って、自由ヶ丘で
乗り換えれば実家だよぉ〜、よっぽど行ってしまおうかとも思ったけれ
ど、今は兄家族の家、「よく同じ舞台を何度でも観ることができるわね」
なんて義姉にヒニクを言われるのがわかっているので、やっぱり避け
てしまった。

Sちゃんに半蔵門線の乗り場まで送ってもらって、ホテルにたどり
着いたけれど、路線地図を見ながらじゃないと出歩けない東京。
故郷ともいえない。。と、ちょっと寂しい気持ち。





2005年05月20日(金) あからさまにして下さい

この間の検査で、心臓が悪いことが判明したサーシャは
毎日白い錠剤を呑まなければならず、これを呑ます側と
しては一苦労なのである。

どんなに好きな食べものでくるんで薬の在り処を分からせ
ないようにしても、飲み込む前に舌で見つけてしまうのか、
ご丁寧に薬だけをポイと50cm先にふき飛ばすのだから困
ってしまう。

いつも決まって50cm先にポイ!
なんなのだ。あの50cmは。。

澄ましてふき出す様子が可笑しいと、今日などは見物人に
見守られながらポイ!50cmだもんね。

結局、服用しなければならなかったこの1週間に1錠も呑ん
でないことに。
これではいけないと、さっき心臓の薬と同じような白い錠剤
のビオフェルミンを

「いい、よぉ〜く見てね」

とサーシャの目の前でガチガチガチと前歯でかんで食べてみた。

「あ〜美味しかった」

自分のほっぺをすりすりしながら、サーシャの口にむき出しの
心臓の薬を入れてやると、同じようにガチガチガチと前歯でかん
で飲み込んだ!

なぁ〜んだ、オマエはへんに気を遣われるのがイヤだったんだ。
あからさまでよかったんだね;;




2005年05月12日(木) オスではないのね。なんか感動。

サーシャの耳たぶも肉球も、日頃より熱っぽいような気がしたの
で獣医に抱いて連れて行く。
途中から手足を突っ張って、身体をゆだねようという気もなけれ
ば歩こうともしない体重13キロを、抱くなんていうもんじゃない、
かついで行った。

診察室では、今まで私たちの隣で飼い主のわきの下に頭をうずめ
て下半身をガッタガッタに震えさせていた豆柴が診てもらっている。
緊張とおびえから、さっきとはうって変わって抱いてくれという
サーシャと抱き合って耳をすませていると
「皮膚病。。」「伝染性の。。」
というドクターの声が聞こえてきた。

え、困っちゃうな。
次に同じ診察台に乗ったら、その伝染性の皮膚病とやらがうつら
ない? だって伝染性なんでしょ。。

受付の女性が薬剤室に消えるのを待って、そぉ〜と黙って出てき
ちゃったよ。
また往きと同じように、てこでも歩かない抱かれようとしない
サーシャをかついで、とっとと家へ帰って来てしまった。

この間の検査結果。
13歳 男性。おぉ!!


こちらにお尻を向けているユキちゃんの姿が。。




2005年05月04日(水) おちおち休むこともできません

梅田からタクシーに乗ると、行き先を言い終えるのを待っていた
かのように運転手さんは
「38度線知ってる?」
と訊いてきた。
なんなんだ!どうしたんだ!この人?
個室に二人きり、感じ良くしておかないと恐ろしいことになって
しまうのだろうかと思って
「はい!ソ連が北から攻めてきて、アメリカが南から攻めてきて、
バーンと出合ったところのことでしょうか?」
にっこり笑って答えてみた。

これが間違っていたのか、それからが大変だった。
橋の爆破の話だとか、虐殺の話だとかを延々と訊かせてくれる
のだ。
今度は戦時中の満州でのことらしい。
運転手さんは、その時代にはまだ生まれていなかっただろうとい
う年恰好なのに、見てきたかのように話し、そしてそれらの事件
の首謀者は私だと言わんばかりに憤慨するのだ。

もうにっこりしてはいられない。
話がわからん、相づちをうてない。

運転手さんを落ち着かせるには、私がその頃のことでたった
一つだけ知っている話を訊かせてあげるしかないと思い
「うちのおばあちゃん、甘粕大尉っていう人から青酸カリが入った
宝石箱のようなものを貰ったことがあるんですって」
と言ってみた。

「ほぅ〜」
一瞬、運転席が輝いてもっと聴きたいモードの運転手さんの後姿。
「それっきゃ知りません」
ここはきっぱり終えておく。

「甘粕ね。ラストエンペラーの坂本龍一ね」

やっと映画の話に移ったかと、ほっとしたのもつかの間、
関東軍だとか満州国だとか、自国の歴史についてあやふやであるが
為に、車の中でとうとう私は戦争末期についての歴史授業の生徒と
なってしまった。

なぜこうなっちゃったのかと今考えてみると、あの運転手さんは
客待ちの間中、右翼の街宣車ががなりたてているのを訊かされて、
どうにも納得のいかない部分の鬱憤を街宣車にぶっけたかったの
に、怖くて言いがかりをつけられない。
そんなところに客が乗った。
ははは〜手ごたえのない客で悪かったね;;

☆庭の花々☆

コデマリ。

テラスに絡みついたジャスミン。




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