6匹目の兎<日進月歩でゴー!!>*R-15*

2005年12月28日(水)   サイアクナアナタ

今年最後の更新が、短文だけでは、なにやらサミシイ(笑)
ということで。
長文(お色気含む)をアップ。

原作ベース。
笑いを織り交ぜつつ、お色気。
でも、成分としては、お色気のほうが多いかも。(珍しい!)


Yコさんの萌え絵(inガチンコ絵茶)に、触発されて書いた文。
書き始めたのが、夏。
書き上がったのが、真冬。

・・・・・・・・・・どれだけ、難産なんだよ・・・orz (遅筆ココに極まれり)

思いまするに。
意識してお色気を文に含ませた話だったから、書き上がるのに時間がかかったのではなかろうか、と。(自己分析)

しかし、とんだ羞恥プレイかもしれない・・・・(´Д`;)
グォー!!!という感じで(どんな感じだよ?)、自分で読み返せません。
ええ、ええ。
これは、自分的には、かなりお色気文なのでネ・・・・(遠い目)


*どんな絵なのかは、Yコさんの絵日記(12月10日)をご覧アレ〜☆
(と、Yコさんにも羞恥プレイを強要するという非道を今年最後にする極悪人なのであった^^)





























戦闘の汚れと疲れを熱いシャワーで洗い流し、清潔なタオルで身体を濡らす水滴を拭い取る。
それでやっと、気分が落ち着いた。
ロッカーに濡れたタオルを放りこんで下着を穿くと、視界の端を濡れた巨体を隠すこともせずに義眼の男がズカズカやってくるのが見えた。
この男に、デリカシーという言葉は存在しない。
トグサは、それを無視し、着替えを続行しようとした。
が。
「あのさ」
「なんだ?」
「この手は何なのか、訊いてもいいか?」
腰を触る大きな手の感触に、引き攣りながら、肩越しに背後を見遣った。
そこには、ニヤニヤ笑いのデリカシーの欠片もないバトーがいて。
「ん?」
とぼけたように、首を傾げていた。
「ん?じゃねぇよ」
「まぁ、細かいことは気にすんな」
「するよ!しねえ方が可笑しいだろ??」
「いちいちウルサイねえ、お前は」
温度の低い手の平が腹の方に這ってくるのに、トグサは苛々とその手を剥ぎ取ろうとした。
しかし、生身が易々とサイボーグの力に敵うわけも無く。
バトーの手は簡単に、鍛えられ引き締まったトグサの腹に辿り着いた。
もう一方の手は、そのまま腰から胸へ、そしてトグサの首筋を撫でる。
「あんたがいちいち変なちょっかい出すからだろ!!!」
気が付けば。
トグサは裸の大男に抱き込まれていた。
ひんやりとした義体の感触が、晒したままの背から浸透してくるのに肌が粟立つ。
「ふざけてないで、さっさと着替えろ!」
それを振り払う為に大声を出したが、
「減るもんじゃねえんだから、イイジャン。触るくらい」
バトーには、全然、キカなかった。
「・・・・・・ッ」
「大体、お前がエロイ身体してるのが悪いんだぜ?」
「言うに事欠いて、俺のせいか・・・・・・この変態サイボーグ」
「ひでえ言われ様だなー」
カラカラと癪に障るバトーの笑い声がする。
「あんた、否定するけど、ホントはそういう趣味なんじゃねえの?!」
苛立ちを隠さず、嫌味ったらしい言葉を口にしても、当人はニヤニヤ笑うだけだ。
「んー?俺、女好きだけどね」
「じゃあ、この手は何だ?この手は!!女好きのする事かっ?!」
トグサは、諦めずにバトーの手を剥ごうと足掻く。
しかし無遠慮な手の持ち主はそれを気にも留めずに腹を撫で、まだ湿っている茶色の髪に頬を寄せた。
「まぁ、男とヤったこともあるにはあるが。それは、頼まれたからヤったってだけで。そっちの趣味はねえよ」
「・・・・・・・・・・・・」
トグサは後ろを返り見ることが出来ないことに歯噛みしながら、正面にある自分のロッカーを疑わしい視線で睨みつけた。
バトーの言葉が続く。
「ただ」
「・・・・・・・・・・・・」
「お前は、別かもな」
嫌な予感は電脳を横切って、
「お前のことは、抱きたいと思うからよ」
そんな言葉になって、バトーの口から発せられ、トグサの耳に届いた。
一瞬で、頭が真っ白になる。
「なッ、なんッ・・・・・・??」
「何でかはわかんねえ」
「その・・・その自発的な意思はなんなんだよ・・・ッ」
フリーズした脳を何とか再起動させ、バトーの腕から逃れようとトグサはもがいたが、やっぱり逃げ出すことは叶わなかった。
「だから、解んねえって言ってんだろ?」
「・・・・・・・・・」
「ん?いや待て。よーく考えてみると。やっぱ、お前の身体がエロイから悪いんじゃねえのか?」
「人のせいにすんなーーーーーーー!!!!」
「この腰がなーソソルんだよな〜〜」
「ぎゃーーーーーーーーーーー触るな撫でるなッ!?そ、れから、押し付けるなーーーーーーーー」
「むっふっふ」
下半身を押し付けられた事と、一向に止める気配のない事に、いつものセクハラが冗談を通り越し、その遠くに本気が見えたような気がして。
身の危険を感じたトグサは、なりふり構わず叫んだ。
「た・・・助けて少佐ーーーーーーーーーーーッ!!??」
電通に乗せて、最強の女に助けを求める。
が、それを背後のバトーが斬って捨てた。
「あいつに助けを求めても無駄だぞー?同僚のプライベートには無干渉の放任主義だからなー」
その声はさも愉しげで。
「本部内でこれって許されるのかよ?少佐ーーーーーーーーーーーーーーーッ」
しかし、バトーの言う通り、女の反応は一切無かった。
一応、バトーも回線をオープンにしたまま、暫し待ってみたが、やはり反応は無く。
それを確認したバトーは、ニタリと口の端を引き上げた。
「怒鳴り込んで来ないとこみると、許容範囲だな。よしよし」
「───────」
「ま、それにあいつに性的境界線は意味ねぇしな。トグサ、知ってるか?少佐に女のセックスフレンドがごそっといるって」
突然、上司のプライベートを聞かされ、トグサの脳は固まった。
「・・・・・・・・・・・・ぇ」
「まぁ、なんだ。この際、試しにヤッてみるってのもありだろ?どうよ、優しくシテやるぜ〜」
そこにきて、トグサはやっと我に返った。
危うく、丸め込まれるところだ。
「何がありなんだよ!?ふざ、ふざ・・・ふざけるのもいい加減にしろっ!俺には妻も子供もいるんだーーーーーーーー」
「かてぇこというなよ、トグサ。家庭人だからって、愉しんじゃいけないってこたぁねえだろ?アダルトソフトとかヴァーチャルセックスだと思えばイイじゃん。あとは、そうだな・・・ちょっと過激な電脳セックスとか?」
どういう言葉を羅列されても、どれもこれも承服しかねるトグサは、バトーの腕の中で必死にもがいた。
その必死の抵抗に、いつもの”からかい”で済ませようと思っていたバトーの気が変わっていく。
慌てふためくトグサをそのままに、何もしないではつまらない、という思考が浮かんだ。
「冗談キツイぜ、バトー・・・!!」
「イイ気持ちにさせてやるって!」
「だ・だ・誰がヤルかーーーーーーーーーーーーーッ」
「まぁまぁ、ヤってみなきゃ、解んないでしょーが」
より一層、逃げ出そう足掻くトグサを抱き締め、腹に這わせた手をそのまま下腹部へと滑らす。
引き締まった腹筋を撫で、更に手を這わせるとひくりとトグサの身体が強張るのが解った。

いつもなら、ここで止めてやるが、今日は止めない。

布地の上から、バトーの大きな手がトグサのモノに触れた。
そして、いやらしいぐらいにゆっくりと、太い手指が愛撫を始める。
「・・・ッ」
ぴくりとトグサの身体が身じろぎ、逃げようと抗う。
「・・・・・・マジで、冗談はよせって!」
その声には、少しの恐怖が混じっていて。
バトーは、自分の中にある獣じみた思考のスイッチが入ったことに気付いた。
「まぁまぁ、百聞は一見に如かずって言うダロ?」
「フザけんなッ・・・!」
トグサの身体を戒めるもう一方の腕の力を強め、更に愛撫を深くしていく。
形をなぞる様に動かすと、それは熱と硬さが増していった。
バトーの大きな手がトグサのモノを弄る度に。
「ぁ・・・・・・く」
声に甘い響きが混じるのをバトーは聴き逃さなかった。
快楽に掠れるその声に、自然、口許に笑みが浮かんだ。
「濡れてきたぜ?」
男という生き物は刺激には弱い。頭でどれだけ拒否しようと、身体は反応するものだ。
バトーの様なサイボーグなら、その性欲も殺してしまうことが出来る仕組みになっているが、生身のトグサはそうはいかない。
与えられる強制的な快楽の為に抵抗の力は薄れ、バトーの腕の中におさまり始めた。
「自分でヤるより、気持ちイイだろ?」
耳元で、囁くように言葉をかけるとトグサが羞恥に息を飲んだのが伝わってきた。
肌が羞恥で熱を持つ。
普段、生意気な新米の震える様は、予想以上に愉しかった。
「や、めろ・・・・・・嫌だ、バト、ォ」
トグサは、絡めとられていく思考と身体に、小さな悲鳴をあげる。
その声。
それに、愉悦が信号となって電脳を支配していくのがバトーには解った。
久々に感じるその感覚を愉しむ。
「──────────」
なんて、可愛いんだろうか、この生身は。
慌てふためいたり、子供のように突っ掛かってきては怒る。
バトーはそれが面白くて、からかうような言葉をいつだって用意していた。
「ん、ぁ・・・っ」
こんなことをしたいと思うのも、その延長線上にあるのかもしれない。
───────もしくは、何か、別の意味も?
そんな思考に辿り着いたバトーは、トグサを愛撫する手を止めてしまった。

別の意味。
それは、なんだろう?

その、バトーの強引な手が離れた瞬間。
生まれた一瞬の隙を突いて、トグサは痺れる身体に鞭打って、利き腕でもある右の肘をバトーの脇腹に叩き込んだ。
たいした威力ではなかったが、拘束する腕が弛み、自分を捻じ伏せようとしていた巨体も離れる。
トグサは更に振り向きざま、顎を狙い拳を突き上げた。
バトーのように脳が多少なりとも残っているサイボーグであれば、脳への打撃は有効なのだ。
「お?」
それをバトーは軽々と避け、ニヤリと笑った。
初歩の護身術。しかし、対サイボーグでも通用する実践向きの動き。
バトー自身がトグサに教えた動きだ。
無機の義眼と有機のトグサの目がぶつかる。
快楽の海に溺れかけ、潤んだ茶の目がバトーを睨みつけてきた。
しかし、その視線は直ぐに逸らされ。
トグサは少しよろめきながら、そのままふらつく足で、シャワーブースに逃げ込んでしまった。
さすがに、廊下には逃げ出せない。
自分の身を守る盾にはなり得ないが、閉ざされた空間に逃げ込めたトグサは安堵の息を吐いた。
身の内で燻る熱は、湧き上がる怒りに融けて消えていく。
へたりこんだまま、見えない敵に怒鳴る。
「このエロサイボーグ!!ゴーカン魔ッ!!!!!」
すると、ブースに取り付けられた背丈の低いドアの上から、敵が顔を出した。
にやにや笑いのままのバトーは、座り込んでいるトグサを見て、
「おいおいー悪かった悪かった、お嬢ちゃん」
そう言って更に笑みを深くした。
そんなバトーにトグサは怒りに震えながら怒鳴り、
「お嬢ちゃんじゃねえ!!俺は、三十代の立派なおっさんだッ!!!!」
歯を食いしばり、歯軋りが聞こえてきそうなほど、口許を歪めた。
「プッ」
バトーは ≪・・・・・・立派なおっさん?あれで??≫ 笑いを堪えることが出来なかった。
トグサの啖呵と表情に大爆笑するバトーの笑い声は、当然ながら火に油を注ぐ。
シャワールーム全体に、笑い声を掻き消すトグサの叫びが響き渡った。
「これ以上なんかしやがったら、俺のマテバが火を吹くからな!!」
逆毛を立てた猫だな。
わぁわぁ騒ぐトグサに、バトーはそんなことを思った。
(今度は口に出さず、心の中でだけ呟いたのは、思いやりのようなものである)
「覚えとけッ」
肩を上下させながら、トグサはバトーに人差し指を突きつけた。
「まったく、ウブなお嬢ちゃんはちゃんとした手順を踏まないとご不満らしい」
それに、バトーは肩を竦め、わざとらしく首を横に振って見せた。
「ゥッ・・・・・・誰が手順踏んでもヤるもんかーーーーー!!!!」
からかいに反応し、上気していくトグサの頬に、ニヤリと笑みが漏れる。
「それにしても。お前、身体だけじゃなくて、声もエロイぞ?この俺様が危うく、声だけでイきそうになった」
「────────」
そんなバトーの言葉に、トグサは唇を噛みしめ、
「うう・・・・少佐が駄目なら・・・・・・助けてくれ、イシカワーー」
攻殻機動隊の中でも古株の髭面の男の名を呼んだ。
瞬時に個別回線が開き、トグサの声が飛んでいく。
「犯されるーーーーっ」
よもや、こんなことを同僚に叫ぼうとは。
情けない。
トグサは涙目で、バトーを睨みつけた。
『こら、バトー。ヤり過ぎだぞ』
少しのタイムラグで、呆れを含んだ男の声が二人の電脳に流れ込んでくる。
トグサの言葉で何が起きたかを正確に察知したイシカワは溜息と共にバトーをたしなめた。
『いいかげんにしねえか』
「あ、なんだよ、オジィ!邪魔すんな!」
それにバトーは抵抗しようとしたが、ドスの利いたイシカワの声に。
『ウチには階級は存在しない。が、年功序列ってもんがねえワケでもねえ。俺様にタテつくとどうなるか、思い知るか?』
「・・・・・・チェ。はいはい、解りましたよ〜」
バトーは仏頂面で、おざなりに返事をした。
『返事は一回だ。軍時代に徹底的に教えただろうが』
「Yes,dad」
『───解りゃいいのさ、クソガキ』
イシカワは、バトーの言い様に憎々しげに鼻を鳴らす。それから、助けを求めてきたトグサにきつく助言した。
それは、さながら。
世間知らずな娘に説教をする父親の心境だ。
『トグサ、こいつにヤられたくなきゃ、油断も隙も見せるな。いいな?』
「うん。解った・・・痛いほど解った・・・・・・」
ぐったりとしたトグサのその声に。
『本当にイタイ目に合う前に、理解しろよ。所帯持ち』
捨て台詞を残して、イシカワの回線は切れた。

耳に痛過ぎる古株の男の助言にトグサは唇を噛みしめ、情けなさに肩を落とす。
そして、バトーはといえば。
説教に懲りた様子もなく、ヘコむトグサをニヤニヤと眺める始末であった。


最悪だ。


トグサは、心の内で一言、力なく呟いた。


-----------------------------------------------




イシカワからトグサへの回線が閉じられた、それと同時。
『まったく、お嬢ちゃんをからかって遊ぶんじゃねぇよ』
バトーの電脳には、イシカワの暗号通信が届いていた。
その言葉にバトーは何故か反射的に言い返してしまう。
『本気だっつったら?』
本気。
本気?
何に、本気だというのか。
自分が吐き出した言葉に、バトーは首を傾げる。
『───だったら、ちゃんとした手順を踏め。でも、言っとくが、奴は所帯持ちだぞ?』
そんなバトーの心の動きを察したのか、イシカワは少し間を置いてから、言葉を続けた。
『手に入りゃしねえ』
背を押す様に見えて、クギをぐっさりと刺すことも忘れなかったイシカワであったが、この助言が無駄になることも、長年の経験で解っていた。
そして。
バトーはといえば、イシカワと話すことで、形のなかったモノの姿が見えてくる様に感じていた。
このカンジが何なのか、本当は解っている。
不思議な心持で、バトーは。
『今更、それを言うかよ?』
笑いと共にその言葉を口にした。
『・・・・・・仕様のねえ餓鬼が』
イシカワの溜息がうっそりとバトーの電脳に響く。
『マッタク。お前らは、ほんとに手間がかかる。少佐は乱交。てめぇは同僚相手の不倫希望ときたもんだ』
付き合いも長く、私生活の部分でも知られたところの多いイシカワのぼやきに、バトーはニヤリと笑った。
『手間が掛かるほど、可愛いモンだろう?』
それには速攻で、答えが返ってくる。
『こんな馬鹿息子と放蕩娘はいらん』
その言葉を最後に、回線は切れた。
(次に邪魔される時は、トグサが本気で嫌がったときだな)
バトーがそんなことを脳内で呟くと、見計らったかのように閉じた回線が再び開いた。
『言い忘れた。同意がなけりゃ、最後までヤろうとヤるまいと強姦だからな、バトー?そんなことするような馬鹿には育てたつもりはねえぞ』
イシカワの親父じみた言葉に、バトーの口許に苦笑が浮かぶ。
『解ったな?』
『へいへい』
『返事は一回だ』
『はいよ、解ってるっての』
今度はバトーの方が先に、回線を切った。




-------------------------------------------

END



2005年12月27日(火)   BT30題「28) 激生」

BT30題。
SACベースで、短文。

ほんとに短いです。
まさに、短文の名に相応しい短さ(笑)

会話と、ほんの少しの情景?というんでしょうか。
それだけで、お話にしました。

ちょっと変わった作りになったわけですが。
でも、自分、こういう書き方も好きだったりします。
たくさん想像してもらう為に、余白の部分をわざと作るみたいな・・・。

そんな感じが。

・・・・・・どんな感じダヨ?
(すみません、ナニ言ってるのか、わからんくなってきました・・・orz)

























「あ、これ。あんたが任務中に良く飲んでる缶ビール」
「任務中に良くって、お前・・・四六時中、飲んでるみたいに言うなよ。たまにしか、飲んでねぇだろが」
「ほんと、ビールって新製品出るペース早いよな」
「──無視か」


セーフハウス。
リビング。
テレビモニタ。
コマーシャル。


「でも、激生って・・・・・・」
「スゲェ主張だなー」
「すげぇ微妙の間違いじゃない?」
「分かり易くていいじゃねえか」


犬印の缶ビール。
冬の新製品。
達筆な二文字。
その商品名。



「激生・・・か」
「───────」
「そういや、お前も激生・・・」
「言うと思った」


数十秒のコマーシャル。
続く深夜のニュース。
暫しの沈黙。
空になった缶ビール。








END



2005年12月24日(土)   ふりつもる

季節感を味わうのも大切です。
それっぽいお話を書いてみましたよ。

せっかくだから。

・・・・・・・・。

〆(。。;;)・・・三三(ノД`)ノ コッパズカシィーーーー





























それは言葉だろうか。
それとも、感情?
心だろうか?


鈍色の空から降る、この白い雪のように。
降り。
積もり。

ふりつもる。

静かに、確かに。
見えない何かが、心に。



何故だか、それをとても大切に思うのだ。










「おい、そこの生身」
背後からの、不機嫌な声。
義眼の大男の聞き慣れた低音に、トグサはいつもの調子で応えを返した。
「やぁ、サイボーグの旦那。何か用?」
「用がなきゃ、相棒に声をかけちゃいけねえのか」
即座に言われた言葉に、小さく吹き出す。
どんな表情で言ったか、容易に想像できた。
振り返ることもせず、そのままの姿勢で更に口を開く。
「いや、あんたならどんな話でも相手になるよ。偉大な先輩でもあるからね」
「・・・可愛くねえこと言いやがる。ったく、頭に雪積もらせて、震えてる奴がいう台詞かっつーの」
本部ビルの屋上で夜景を眺めながら待機時間を過ごしていたトグサを、同じく待機命令が出ていたバトーが連れ戻しに来たようだ。

新浜に、珍しい雪が降って、一段と寒さが増したからだろう。

昨夜から降り続く雪は、薄っすらと都心部を染め上げ、その色を濃くしている。
生身のトグサが風邪をひいたら、と思ったバトーらしい行動だった。
ずかずかとやってきた男は、トグサの隣に立つと乱暴に頭に積もっていた雪を払い落とす。
「このクソ寒いのに、何やってたんだ、お前は?」
バトーの呆れた声に肩を竦め、
「完全防備で、季節感を味わってたのさ」
黒のコートにマフラー、分厚い手袋を身につけたトグサは、さらりと返した。
濃茶のジャケットの前を開けっ放しで、平気な顔をしている相棒は、それに少しだけ笑みを浮かべる。
「さっき、日付が変わったから・・・今日はもう、クリスマスだろ?しかも、珍しい雪が降って、ホワイトクリスマスときた」
トグサはふざけたようにそう言い、傍らのバトーの義眼を見上げた。
その口許は、笑い出したいのか、微かに震えている。
「待機中とはいえ、ロマンティックな夜じゃないか?折角だし、味わっておかないとなーなんてネ」
黙って話を聞いていたバトーからも、似たような笑みが返ってきた。
「折角のシチュエーションも、待機中じゃなぁ。しかし、所帯持ちは、考えも甘ったるいねえ〜」
フェンスに寄り掛かって笑うバトーに、
「外見に反して9課一ロマンティストのあんたほど、甘いことを言ったつもりはないけど?」
首を傾げてみせる。
「お前は、ほんとに可愛くないことを・・・・・・」
と、苦虫を噛み潰したようなカオになった義眼の大男に、トグサは今度は我慢することなく大声で笑い出した。

バトーの大きな手が伸び、また雪が積もりだしたトグサの頭を乱暴に掻き混ぜる。
いつもなら、その手を振り払い、文句の一つも言うところだが。

トグサはそれをしなかった。









雪は静かに降り続いている。





END



2005年12月16日(金)   BT30題「5) 所帯持ち +2)QRSプラグ」

BT30題。
原作ベース。
お色気文。

生意気トグを怒らせるのは、とても楽しいことだと気付いた今日この頃。
バトーさんは、どんどんセクハラ親父化してますか? ←訊クコトカー!

こういうお笑い系なノリが大好きなので(笑)
ものっそ楽しんで書きました。
いやぁ〜セクハラって楽しいナァ〜♪(問題発言というより変態発言)

しかしだ。
・・・・シャワールームで二人とも全裸。
こうきたら、もう少し、色気がある文が書けてもいいはずなんだが・・・なぁ・・・・・?
どうしたモンカフェ。(Kんさん風に言ってみる)
























細い針のようなシャワーが疲れた身体を刺す。
埃まみれになった髪を洗い、それから、汗でべたつく身体を洗った。
全身を濡らしてから、シャワーを停止させ、一息つく。
トグサは軽く頭を振り、水滴を飛ばすと、

「─────さっさとシャワー浴びて、こっから出て行け」

濡れて額や頬に張り付く髪を掻き上げながら、背後を睨み付けた。
シャワーを浴びながら感じていた、背中を舐めるように這う視線。
振り向いて確認しなくても、その視線の主が誰であるか、トグサには分かっていた。

やっぱり、この男か。

視線の先に案の定、肩にタオルを掛けたバトーがいて。
自分の入っているシャワーブースの低いドアに両肘をつき、にやにやと笑っている。
義眼と目が合った瞬間。
トグサは思いっきり、嫌そうな表情をして見せた。
それから、苛立ちを隠すこともせずに思い切り声を低くし、怒りをバトーにぶつける。

「野郎の裸が見たいなら、他を当たれ」
「───お前がいるのに、他なんて必要ないね」

ああ言えば、こう言う。
このセクハラじみた会話を何とかしようと色々試みてはみたものの、今のところ、改善はみられない。

というより、むしろエスカレートしている。

元軍属・レンジャー出の大先輩が、刑事アガリの甘ちゃんをからかって遊んでいるんだ、とトグサは思っていたのだが。
何やら、雲行きが怪しい。
大体だ。
所帯持ちの三十代の男を掴まえて、セクハラって・・・?
理解不能で、不安になる。
それと同時に。
義眼の大男の考えが、まったく読めないことに苛立ち、困惑もした。

「・・・・・・もういい。俺が出てく」

深く、考えないほうがいいのかもしれない。
考えて行き着く先には、何やら恐ろしいものが待っているような気がして、トグサはその思考から目を逸らした。

今更だが、腰にタオルを巻き、シャワーブースから出る為に扉を押した。
邪魔するように立っていたバトーごと、ぐいぐいと力任せに押しやり、無理矢理に出る。
一睨みしてからバトーに背を向け歩き出そうとしたが、強引な太い腕に阻まれた。

「ぅわ・・・っ?!」

その腕は背後からトグサを拘束し、逃げ出せないように身体を密着させてくる。

「何すんだよ、はなせっ!!」

トグサが激しくもがくと腰に回されていた腕が一層、力を帯びた。
そして、次の瞬間。
ひんやりとした舌が、トグサの首に刻み付けられたプラグの痕をなぞり始める。

「こっ、の・・・・・・やめろって、バトー!!」

必死に腕を剥ぎ取ろうとしてみたが、逃げようにも逃げられない。
生身の非力さを突きつけられたようで腹立たしさに拍車が掛かる。

どうにもならない力の差に、トグサは歯噛みした。

足掻いても、腰に回されている太い腕はびくともせず、もう一方の腕は、水分を含んだ後ろ髪を掻き上げ、普段隠している部分を露わにさせている。
舌が這う感触は、ツクリモノとは思えないほどに生々しく、トグサの背筋を粟立たせた。
ざわざわと侵食するように自分の身体を伝う感覚。
しかしトグサはそれを振り払うように、

「────所帯持ちを、ナメンなよ!!!」

叫びながら、バトーの足の甲を思いっきり踏みつけた。
バトーは痛みを遮断することが出来る義体の持ち主だが、通常では、感覚器官を切っていない。
それを知っての攻撃であったが、たいして痛そうじゃない声が返ってきただけの不発に終わった。

「おいて」

しかし、バトーが手を離したので、トグサは速攻でその腕の中から逃げ出す。
それから、ニヤニヤ笑いながら見下ろしてくる義眼を真っ直ぐに睨みつけ、バトーの右頬を思いっきり力強く握った拳で殴りつけた。

「いい加減にしろ!馬鹿ッ!!」
「トグサ、グーで殴るなよ、グーで」
「五月蝿い!それだけで済ませてやったんだ、感謝しろ!」
「ほんと、お前は可愛くないねぇ〜」

バトーが口を尖らせて、肩を竦める。それにトグサは口許を引き攣らせ、

「あんたは一番奥のブースに入れッ!そんで、俺に近づくんじゃねえ!!!」

と怒鳴り、もう一回、シャワー浴びる!そう捨て台詞を吐き出した。
退路を確保する為に、直ぐに逃げ出せるドアに近いブースに入る。
そんなトグサに、バトーは右頬を擦りながら、大声で笑い出す始末だ。

その笑い声の腹の立つことったらない。
トグサは苛々と腰のタオルを外すと背後のドアにかけた。
視界に、まだニヤニヤとこちらを見ているバトーが入る。
目が合う。

からかいにしては、性質が悪い。
本気だとしたら、フザケ過ぎる。
何にしても。
そこを考えてしまったら負けのような気がして、トグサはやっぱり、そこから思考を逸らした。

「解ったのかよ?!」
「へいへい〜〜」

全然、解っていないようなその返事と表情に。
トグサは視線を外し、シャワーの蛇口を捻ると、大声で怒鳴った。

「あんた、ほんとに最悪だぜ、大先輩!!!」

流れ落ちてくるお湯に頭を突っ込み、首筋を洗い流す。
そこに、バトーの笑い含みの言葉が聴こえた。

「嫌いじゃないだろ?」

その何やら自信に満ちた物言いに、トグサはシャワーから身を引くと、思いっきり叫んだ。

「だいっっ嫌いだねっ!!!!!!!」

また、バトーの腹の底からの笑いが響き渡った。







END



2005年12月13日(火)   11のお題 「偶然と言う名の悪魔」

これにて。

「ある二名で11のお題」完遂でございます!

お付き合い下さいまして、ありがとうございました。

しかし、長かった・・・此処までの道程・・・(TДT)
1本目をあげたのが、1月。
最後が、12月。
って・・・・長いはずだよ・・・ほぼ、1年かかってるんだもの・・・・・・・・・orz

うう、なにはともあれ。
11本、書き上げられてよかった。
なんだか、凄い達成感です(笑)


そんな中。
最後の話が、こんな感じでどうなんだろうか?と思ってみたり。
び・・・微妙ーー^^;






























”偶然と言う名の悪魔”というのがいるとすれば。

こんなカタチをしているに違いない。
バトーは、自分の太腿に上半身を乗せて眠っている存在に視線を落とした。
そこには、半裸のトグサが、安らかな寝息をたてて眠っている。
その視界の端に。
取り落とした空の缶ビールと脱ぎ捨てられた水色のジャケット、黒いTシャツが割り込む。
ソファに背を預けたバトーは、まんじりとそれらを眺め、それから大きな溜息を吐いた。


性質が悪いにも、ホドがある。


その呟きは、誰に聞かれる事もなく、バトーの電脳の中に消えた。



──────────────────



「おい、トグサ。もう、そのへんで止めとけ」
バトーはそう言いながら、トグサの手にある缶ビールを取り上げた。
フローリングの床に敷かれた毛足の長いラグマットにちんまりと座っているトグサは、あっという間に不機嫌な表情になり、眉間には深く皺が刻みつけられた。
既にそれは空になっていたのだが、”取り上げられた”ことが気に入らなかったとみえる。
「・・・・・・ぅるさぃよ、だんなはぁ」
やや掠れた声が非難の色を滲ませた。
「─────ったく、飲めねぇくせに」
トグサは、酒を全く飲めない”下戸”という訳ではないが、まぁ、強くも無い。
缶ビール二本も飲めば、許容量を超えるという、その程度だ。

今、取り上げた缶で、5本目。

既に、その許容量を完全に超えて、危険な状態である。
トグサの酒は大抵が楽しい酒で、けたけた笑うか子供のように眠ってしまうか、だったが。
今日の酒は、飲んだ時の精神状態の悪さに左右されて、最悪の酒になっていた。
2本目のあたりでは、ぶつぶつと文句を言い絡んできたけれど、今はダンマリ状態に突入している。
任務で、久しぶりにポカをやらかしたのが、相当のダメージだったようだ。(少佐が、無言だったのも、それに拍車をかけたに違いない)
落ち込むその背に、甘い言葉をかけて慰めてやることは簡単だが、バトーはそれをしなかった。
トグサ自身がそれを必要としないと、知っていたから。
だから、黙って傍にいることを選択して、今に至っていたのだ。
───が。
自分の内に沈んで、こちらを見ないトグサのお守をしてるのは。

つまらない。

というか、はっきり言えば、面白くない。
絡んでくるトグサをあしらっていた方が、まだ愉しかった。
子供じみた感情だとは思ったが、ほっとかれるのは、誰だって嫌なものだろう。
バトーは苦笑を浮かべながら、足元でクダを巻いているトグサの頭を乱暴に撫でた。

「ダンマリはつまらんな。まだ、絡まれてる方がマシだったぞ?まぁ、絡むんだったら、もっと色気のある絡みにして欲しいがな」

半ば、冗談。
出来たら、本気のバトーのぼやきに。
酔って頬を上気させ、目を潤ませたトグサは一瞬、きょとんとした。
それから、バトーの義眼を真っ直ぐに見つめると、薄い唇を引き上げた。
ソファでビール片手に、呆れたように自分を見つめる男の膝に、トグサは手を掛ける。

「だったら。シテやるよ、バトー」

柔らかく甘い低音で囁かれた、その言葉に。

「はあっ??」

バトーは、らしくもなく素っ頓狂な声を上げた。
瞬時に、

なんの冗談だ?

困惑もする。
ゴーストハックか、はたまた、ウィルスか・・・?
なんて、ありもしないことを思ったりしてみたが、これはどう考えても酔った上での言動だ。

ざわつく首筋、弾むはずもない鼓動が跳ねたようなその感覚。

そんな感覚は久しぶりで、正直、バトーは慌てた。
らしくないとは思っても、感情はそう反応してしまう。
が、しかし。
この場合、らしくないのはバトーよりも、トグサの方だったのは言うまでもない。
トグサがこんなことを言うなんて、有り得ないのだから。

「ちょ、ちょっと待て。トグサ、もう一回、言ってみろ?」

自分を取り戻す為とトグサを落ち着ける為に、バトーはやや引き攣った声で、問うた。
こういう時こそ、冷静さが必要だろう。
すると、その問いに、トグサは嫣然と微笑んだ。

「シテやる」

聴き間違いではなかった。
いつものトグサではない。
バトーは大きな溜息と共に、目頭を押さえた。

「完全に飛んでやがる」

バトーの言葉なぞ聴こえていないトグサは、完全に酔いの回った状態で、服を脱ぎ始めた。
ジャケットを脱ぎ捨て、Tシャツに手を掛けながら、何やらブツブツ言っている。

「いつも、バトーが好き勝手シてるんだから、俺が好きにシたっていいよな?」
「・・・・・・・・・・トグサ?お前なぁ、自分が何言ってるか、わかってねえだろ??」

Tシャツを脱ごうとするトグサの手を止めようとしたが、振り払われた。
いつもなら、こんな簡単に振り払われてなんぞやらないバトーであるが。
据え膳食わぬは、という先人の言葉が響いたものか、力を緩めるという不覚に繋がったようだった。
トグサは、気にした風もなく、Tシャツの裾を捲り上げている。

「脱ぐなっての」
「・・・わあってる、から、脱いだっていぃんだ!」
「わかってねぇから、脱ぐなって言ってるんだっつの!!!」

バトーの声には必死の色が滲んでいたのだが、酔っ払いは当然、気付きもしない。
何せ、そんなことなどお構いナシな状態なのだから。


なんて、性質の悪い酔い方をしてくれたのか、この生身は・・・・・・。


自分の投げた言葉が発端になった事に、バトーは知らぬふりを決め込んだ。
そして。
目の前のトグサは、妨害する手がなくなって、Tシャツを脱ぎ捨てることに成功していた。

偶然に呟いた本音が、とんでもない事に発展しやがった。
バトーは、焦る自分を何とか押さえつけ、ここは冷静に対処せねばと心に誓う。
が、どうやら酔っ払いは、そんな余裕を与えてくれる気はないようで。
半裸になったトグサは、バトーの膝の上に這い上がり、にんまりと笑った。
そして、困った表情のままのバトーの顔を撫でると、唇を寄せる。

重ねられた、柔らかい生身の唇、その感触。

歯列を割って誘うような、その舌の動きにバトーは、このまま押し倒してしまいたい衝動に駆られた。

トグサからの、甘く熱っぽい口付け。

こんな風に誘われて、手も出さないというのは、逆に失礼のような気になってくるから恐ろしい。
トグサからのキスはこれが初めてなのだ。
だから、欲望に正直な人間になってもいいじゃないかと、バトーはトグサの背に手を回しながら思った。
が。

(こ、このままヤったら、後々何を言われるか・・・・・・)

そのことに思い至り、己に生じた熱を散らすことを選択した。
こんな時、義体がモノをいう。
感情の面では、完全に熱を追い払うことは難しいものだが、肉体的には、完全にそれを消し去ることが出来る。
義体によって与えられる理性が、これほど有り難いものだと思ったことは、未だかつてない。
冷静になった脳で、自分の身体に命令を下す。
トグサの背に回した右手を自分の首筋にあるプラグに伸ばすとそこからコードを引き出した。
そして、そのまま腕の中のトグサの髪を除け、露わになったプラグにそれを差し込む。

「酔っ払いは、もう、大人しく寝てくれ」
「ん・・・・・・ッ」

トグサを眠りへと誘うプログラムを注入し、バトーは大きく溜息を吐いた。
がくりと自分の腕にくず折れた生身の身体をそっとソファに横たえ、その茶色の頭を膝上に抱える。
微かな重みに、苦笑が漏れた。



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そして、バトーは独り、眠れぬ夜を過ごした。
ぐっすりと眠るトグサを見下ろしながら。







END


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武藤なむ