このお話は。 Y村さんへ、感謝の気持ちをありったけ込めて、捧げます。
思いがけず頂いた「白チョコを食べるトグサ君」お見舞い絵に。 がっつり、萌え妄想です。 暴走した萌えの産物→「徹夜明け」設定に賛同いただけたので(笑) その方向で一気に書き上げました。
萌えのパワー恐るべし。
Y村さん、本当に素敵な萌え絵をありがとうございました!! 小躍りするほど、嬉しかったです。
萌えには萌えの”等価交換”!
少しでも、これで萌えを返せたらいいなと思っておりますー(笑) どうぞ、お納めくださいませー。
今回のことで。 交流っていいなぁ。 攻殻っていいなぁ。 そんなことを改めて思いました。
優しい人たちに会えて、何たる幸せだろーか(喜)
気付けば、解析室でうたた寝をしてしまっていた。 徹夜続きのせいだった。
室内灯はいつの間に消えたのか。 真っ暗な中に、ブラインドの隙間から零れる外の光。 それは、薄っすらとした淡い光を模って、細く何条も差し込んでいる。 朝が訪れた証。
白だ。
瞼の裏に映る、淡い色。 眠りから覚めたトグサは、その色に何度か瞬きをした。 横になった視界を立て直すと、自分の肩を何かが滑り落ちる感触。 それから、ばさりと足元から乾いた音がする。 視線を落とせば、そこには、見慣れたジャケット。
バトーか。
それで、自分が暗闇の中で安らかに眠れた訳も。 点いていた筈の明かりが消え、温もりが自分を包んでいた訳も。 知ることが出来た。 全ては、義眼の男の仕業だ。
起こしてくれればいいものを。
言葉にせず心の内で呟き、ジャケットを拾い上げると、椅子の背に掛けた。 それから立ち上がり、伸びをしながら窓際へ。 ブラインドを開け放つと白い光が、遮られることなく室内を照らした。 そこにあった優しい闇が消える。 窓の外を暫し眺めてから、トグサはまた椅子に腰を下ろすと、ぐしゃぐしゃになってしまった書類と写真の数々を手早くまとめ────。 ある物に、やっと目が留まった。
キーボードや書類の邪魔にならぬ位置。 眠っていた自分に気付かれない、位置。
そこに置かれた、缶コーヒーと。 白い色の板状のチョコレートに。
間違いなく、義眼の大男の差し入れだろう。 コーヒー依存症のトグサが好んで飲むメーカーの缶コーヒー。 疲れた時には、糖分の補給が必須だから、板チョコ。 解り易すぎるそれらに、トグサの唇が笑みを浮かべた。
無言の気遣い。 無言のいたわり。 その白い感情のなんて温かなことか。
無骨な義眼の大男は、本当に繊細で、優しい。 白い板チョコに手を伸ばし、その包装を破って、一口齧る。 トグサは、口中にひろがった甘みを飲み込んだ。
「あまっ」
少し溶けたチョコは、本当に甘かった。 唇を指で拭い、微かに声に出して笑う。
「ほんと、甘いんだよ。あんたは」
瞼の裏に残るのは。 いつだって、あんたの色の様な気がする。
不意に。 そんな風に思ってしまった自分に。
笑いたいような。 呆れたいような。 泣きたいような。
そんな気分で。 差し込む白い光の中、トグサは深く息を吐いた。
END
2005年10月18日(火) |
BT30題「22) 接続不良」 |
連続更新・第五夜。
BT30題、犬ベース。 トグ語り。 法則通り、やはり、暗い感じに仕上がる罠。
うう、せめて、微糖な感じに仕上げたかった・・・・・・orz
しかし、お笑い→お色気ときて、これって。 私の頭の中は、ほんとにどうなっているのか?(笑)
まるでそれは、薄絹に遮られた世界。
同じ場に立っているにも係わらず、接触することが出来ない。 薄っすらとした一枚の膜が、恐ろしいほど強固な壁となって。
自分と、男を遮っている。
耳に心地好い低音が語る言葉に。 心がないと気付いたのは、いつだったか。 語りかけた言葉が。 届かないと気付いたのは、いつだったか。 感情の揺らぎさえ映さないはずの義眼が。 過去に囚われていると気付いたのは、いつだったか。
もう覚えてはいない。
ただ、不意に気付いたのだ。 投げ掛ければ、言葉は返り。 それに、応じた言葉を返す。
それを繰り返して。
あの男から返る言葉が虚しいと。 自分の返す言葉が空しいと。 そう、気付いた。
男は、此処にいない。
過去という薄絹が、男と現実を隔て。 過去の象徴である女が、男を縛る。 薄絹は、何者をも阻み、厳然とそこに佇む。
それを前に、己はただ、哀しいほどに無力だった。 ただ、現実に立ち、薄絹の向こうに見える男の背を。 見つめるしか出来ない。
いつか、男の義眼が、現実に向くことを。 いつか、男の言葉が、心を取り戻すことを。
祈りながら。
いつか、自分の言葉が、男に届くことを。
願いながら。
「接続不良だな、俺とあの男は」
いつになったら、繋がれるのか。 埒もないことだと思っても。 それでも、考えずにはいられなかった。
あの男のことを。
END
2005年10月17日(月) |
BT30題「26) 眉間のしわ」 |
連続更新・第四夜。
BT30題、SACベース。 昨日の話と対になる短文です。 バトさん文。
えー・・・・・・もう、ごめんなさい・・・・・・・・orz
妄想が暴走の域に達した感がありますね(冷汗) やっぱり、お色気文は、難しいです。 短かかろーが。 長かろうーが。
精進あるのみー。 精進・・・・・・・・・・(凹)
えーん。
生身であるその身体は、どこもかしこも、温かく。 弾む鼓動が、誘うようにリズムを刻む。
縋りつく、その腕。 シーツに散る、茶の髪。
快楽に囚われないよう。 引き結ばれた唇。 愛撫に耐えるように、寄せられる眉間の皺。
この男の無意識は、本当に性質が悪い。
それがどれだけ、獣欲を煽るか。 解っていないのだから。
「お前は、本当に性質が悪い」
汗ばむ頬に張り付いた、茶の髪を払いのけ、口付ける。 瞼を閉じ、浅く息を吐く男の唇が、幽かに言葉を漏らした。
「─────どっちが」
呆れと怒りを含んだような、掠れる声が人工の鼓膜を撫でた。 それは、容易く電脳に侵入し。 薄く開けられた茶の目が、また、底のない欲を刺激するのだ。
どうだ? 誰のせいで、こんな気分になる? お前のせいだろうが。
だから、圧倒的に、お前が悪いのさ。
そんな言葉を飲み込んで、今度は誘うような甘い声を出す唇を塞いだ。
END of All
2005年10月16日(日) |
BT30題「24) ブレス [ breath ]」 |
連続更新・第三夜。
BT30題、SACベース。
短文でお色気。 しかも、続く。 短いのに、続く。
明日は、バトさん文をアプ予定。
・・・・お笑いの次がこれですか。自分の頭がどうなってるのか、かっぽじって見て見隊よ・・・・orz
シャワーヘッドから滴り落ちる水滴。 バスタブの底を打つ音が響く。 篭ったようなその音が、やけに鼓膜を震わせる。
濡れそぼった髪を掻き上げながら、無数の穴の中から生まれ出てくる水滴を見詰めた。
先ほどまでの情交が、瞼の裏を掠めていく。 それだけで、息苦しい。
なんて、性質の悪い男なんだ。
自分を快楽に縛り付ける、あの低音。 抵抗さえ軽々と封じる、あの身体。
忌々しいくらいに。 男に与えられる熱に、惑ってしまう。
息が乱れ、呼吸をすることさえ困難。 ただ。 男に溺れないように、その腕に縋るより、ない。 喘ぐように。 哀願するように。 途切れ途切れに、求めるしか。
この息苦しさと熱から、逃れる術がない。 それなのに。
[お前は、本当に性質が悪い]
男は義眼の奥で笑いながら、そう言うのだ。
ふざけるな。 俺が悪いんじゃない。 あんたが、俺をこうしたんじゃないか。
性質が悪いのは。
「絶対に、あんたの方さ」
そう呟いて。 滴り落ちる水滴を掌に受け、握りつぶした。
T-side END → continued B-side ”26”
2005年10月15日(土) |
BT30題「9) 黄色いスポーツカー」 |
連続更新・第二夜。
BT30題。 原作ベースでバトグサ+少佐。 お笑いの方向で攻めてみました(笑)
はっはっは、楽しいなぁ〜。 もともと。 二次創作もオリジナルも、こんなカンジの話ばっかり書いていたので。 なんだか落ち着きます。 ←落ち着くってナニさー
原作バトさんが乗ってる車がなんなのか、判らなかったのですが。 まぁ、SAC版バトさんが乗ってる黄色いスポーツカーにでも乗せとけーと(笑) そんな感じで突っ走ってみました。
振り返ると、なんだか、トグが可哀想な子になってるわけで。 原トグを書くと必ず、こんな感じになります。 なんでだろうなー?
レトロな黄色いスポーツカー。 その狭い運転席に、でかいガタイを押し込んで、義眼の大男がハンドルを握る様は少し笑える。
この年代物のスポーツカーは、9課の車じゃなく、バトーの愛車だ。 維持するのにも、結構なカネを食う代物だというのに、あの男はこの車がいいらしい。 「なんでこんなの乗ってんの?」 と訊けば。 「こんなのとは、何だ、こんなのとは。お前にはこれの良さが解らんのか?まったく、お子ちゃまだねぇ〜」 と憎たらしい答えが毎回返ってくるくらいの、愛車なのだ。 バトーは大雑把そうな見掛けによらず、緻密な部品の寄せ集めの機械をこよなく愛するサイボーグだったりする。 思考戦車も、スポーツカーも、筋トレグッズも、銃火器類も。 おおよその機械すべて。 皆等しく、愛しいらしい。
そして、その愛の最たるものが、この車というわけだ。(紅い思考戦車もか)
トグサは頬杖をつき、外を眺めた。 自分の愛車の乗り心地にはちと劣るが、この黄色いスポーツカーの乗り心地もなかなかだ。 この主張の激しい黄色のカラーリングさえ何とかなれば、トグサもこの車を気に入っていた。(口ではなんだかんだと文句を言ってはいたけれど)
郊外のモーテルに入った重要参考人の行動確認という、つまらない任務に厭きたトグサは思わず、どうでもいいようなことを考えていた。 集中して見張る、という任務をこなす気が失せていたせいだ。
「人様がお愉しみ中に、こうやって時間を潰すなんざぁ、つまんねえ」
運転席の相棒も、どうやら同じ心境のようで、盛大な溜息と共にそうぼやく。 数分前にも、似たようなことを言って、バトーは口許を歪めていた。 トグサは笑って、それに答える。
「確かに。義眼の大男と車ん中で、モーテルの見張りってのは、つまんないの極みだよな」
にぃーと口の端を引き上げて、バトーを見遣る。 と、ハンドルに両腕をついて顔をこちらに向けていたバトーの視線とぶつかった。 感情を映さないはずの義眼が、何やら不穏な色を浮かべたように見え、嫌な予感が背筋を撫でる。 口は災いの元。 そんな言葉が、トグサの脳裏に浮かんで点滅した。
「カーセックスするには」
バトーはそう言って、ハンドルから身を起こし、クソ意地の悪い笑みを浮かべる。
「この車はちっと、狭いけど」 「・・・・・・・」
素早く身を寄せた男は手馴れた動作で、トグサの座っているシートを倒した。 そして、そのまま、トグサの身体に覆い被さる。 いきなり、仰向けになってしまった自分の体勢に、トグサは息を飲んだ。
「・・・・・!?」 「まぁ、ヤってヤれないことはねぇ」
予想は的中。 自分の上で、いやらしい笑みを浮かべるサイボーグに、臓腑を抉るような罵詈雑言を浴びせたかったが。
「こっ、の、変態サイボーグ・・・・・ッ!!」
こんな言葉しか、出てこなかった。 しかし、この程度の言葉などモノともしないバトーは、トグサの頬をべろりと舐めた。
「ぎゃーーー!?や、やめろーーーーーーーっ!!!」
更に、調子に乗ったバトーに首筋を舐められるに至って、トグサは本気で叫んだ。 防御の要の腕は、自分とバトーの胸の間に拘束され、動かすことも出来ない。 顔を背けて逃げようとするが、もう、こうなるとどうしようもなかった。
「これ以上、やりやがったら、あとでどうなるかっ!」
言葉だけでも、抵抗しておかねば、身の危険は更に深まる。 それを今までの経験で理解してしまっていたトグサは、必死にバトーに言葉をぶつけた。
「判ってんだろーなっ、バトー!?」
すると、そんな二人の間に女の声が響き渡った。 電脳を駆け抜ける、涼やかな声。
『あんた達』
これは、裏口に張り付いているはずの草薙の声だった。 神様、仏様、素子様! トグサは、その助け舟になるであろう声に本気で喜んだが。
『じゃれついてないで、任務に集中しなさいよ』
当然のことながら、トグサが望んだようなものではなかった。 この状況をなんとも思っていない女隊長の発言に、トグサは絶望を感じながら大声で反論した。
「じゃれついてなんて、ない!これが、じゃれついてるレベルかっ!!」 『あたしから視たら、じゃれついてる以外のナニモノでもないわ。暑苦しいったらない』 「・・・・・・・・」
近くにあるIRか。はたまた監視カメラか。 もしくは、バトーの義眼。 大穴なら、自分の目かもしれない。 裏口からこの状況を視ているのだろう草薙のその答えに、トグサの口は塞がれた。 同意の上での行為だと、言われたも同然。 誰が、同意なんてしたよ!!! トグサは、脳内でそう叫んだ。
「───体温調節出来るボディだろーが」
そこに、バトーがぼそりと呟いたが、草薙にぴしりと返される。
『なんか言ったかしら?』 「いいぇえ。何も言っておりませんよ、少佐殿」 『だったら、きちんと監視しなさいよ』 「だって、つまんねえんだよ、この任務ー」
トグサの上で呟かれたバトーのぼやきには、草薙の溜息が返ってきた。 そこには、呆れの色が隠されることなく含まれている。
『つまんないじゃないでしょ、バトー。まったく、あんた達ときたら』 「少佐!俺まで同類にするのはヤメテくれ!!!」
あんた達、と一括りにされたトグサの悲痛な叫びが、黄色いスポーツカー内に響く。 バトーは騒ぐトグサの様子を見下ろしながら、さも楽しげにニヤニヤと笑い出した。
「そんで、何でこれが許されてんだ?!助けはなしなのかよーーー!???」 『見張りの方が重要だもの』
草薙の容赦のない言葉が、トグサの電脳に止めを刺す。
「なんて優しさのない職場なんだーーーーーッ!!!!」
その叫びに、答えは返ってこなかった。 当然ながら。
END
2005年10月14日(金) |
BT30題「17) 義体」 |
連続更新の1本目は、BT30題からスタート。
SACベースで、トグの語り。 この組み合わせは、書くと必ず、甘いカンジになる法則が発動します。
その法則通り。
この文も短いんですが。 やけに恥ずかしい仕上がりになりました。
・・・・・あ、まーーーーーーーーーーーーーいッ!!!!(某お笑い風に)
今、脱兎のごとく逃げ出したい気分です(笑)
一人羞恥プレイ、再びだわー・・・・・orz
義体。
自分を抱き締めてくれるのは。 機械の身体。
それは、哀しいほどに冷たく。 そして、泣きたくなるくらいに温かい。
自分を守るように、何度も盾になってくれたのは、この身体だ。
広い背中。 厚い胸板。 力強い腕。
それがとても愛おしい。
生身とは違う、造り物の身体。 無機と有機の混じる、その器。 けれど、そこに息衝く温かなゴーストが。 自分を柔らかく包んでくれることを知っている。
義体という強靭な殻の中の。 繊細で優しいゴースト。
あんたは時々、義体であることに齟齬を感じているみたいだけれど。 俺は、その義体を愛おしいと想っているよ。 心から。
そう、心から。
そして。 この生身の身体で、あんたのことを守りたいと。 心の底から、想っているよ。
それは、絶対に口に出すことのない、言葉。 これが、己の中に眠るゴーストの、偽りない囁き。
END
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