6匹目の兎<日進月歩でゴー!!>*R-15*

2005年10月20日(木)   白、白、白。

このお話は。
Y村さんへ、感謝の気持ちをありったけ込めて、捧げます。

思いがけず頂いた「白チョコを食べるトグサ君」お見舞い絵に。
がっつり、萌え妄想です。
暴走した萌えの産物→「徹夜明け」設定に賛同いただけたので(笑)
その方向で一気に書き上げました。

萌えのパワー恐るべし。

Y村さん、本当に素敵な萌え絵をありがとうございました!!
小躍りするほど、嬉しかったです。

萌えには萌えの”等価交換”!

少しでも、これで萌えを返せたらいいなと思っておりますー(笑)
どうぞ、お納めくださいませー。


今回のことで。
交流っていいなぁ。
攻殻っていいなぁ。
そんなことを改めて思いました。

優しい人たちに会えて、何たる幸せだろーか(喜)





















気付けば、解析室でうたた寝をしてしまっていた。
徹夜続きのせいだった。

室内灯はいつの間に消えたのか。
真っ暗な中に、ブラインドの隙間から零れる外の光。
それは、薄っすらとした淡い光を模って、細く何条も差し込んでいる。
朝が訪れた証。

白だ。

瞼の裏に映る、淡い色。
眠りから覚めたトグサは、その色に何度か瞬きをした。
横になった視界を立て直すと、自分の肩を何かが滑り落ちる感触。
それから、ばさりと足元から乾いた音がする。
視線を落とせば、そこには、見慣れたジャケット。

バトーか。

それで、自分が暗闇の中で安らかに眠れた訳も。
点いていた筈の明かりが消え、温もりが自分を包んでいた訳も。
知ることが出来た。
全ては、義眼の男の仕業だ。

起こしてくれればいいものを。

言葉にせず心の内で呟き、ジャケットを拾い上げると、椅子の背に掛けた。
それから立ち上がり、伸びをしながら窓際へ。
ブラインドを開け放つと白い光が、遮られることなく室内を照らした。
そこにあった優しい闇が消える。
窓の外を暫し眺めてから、トグサはまた椅子に腰を下ろすと、ぐしゃぐしゃになってしまった書類と写真の数々を手早くまとめ────。
ある物に、やっと目が留まった。

キーボードや書類の邪魔にならぬ位置。
眠っていた自分に気付かれない、位置。

そこに置かれた、缶コーヒーと。
白い色の板状のチョコレートに。

間違いなく、義眼の大男の差し入れだろう。
コーヒー依存症のトグサが好んで飲むメーカーの缶コーヒー。
疲れた時には、糖分の補給が必須だから、板チョコ。
解り易すぎるそれらに、トグサの唇が笑みを浮かべた。

無言の気遣い。
無言のいたわり。
その白い感情のなんて温かなことか。

無骨な義眼の大男は、本当に繊細で、優しい。
白い板チョコに手を伸ばし、その包装を破って、一口齧る。
トグサは、口中にひろがった甘みを飲み込んだ。

「あまっ」

少し溶けたチョコは、本当に甘かった。
唇を指で拭い、微かに声に出して笑う。

「ほんと、甘いんだよ。あんたは」




瞼の裏に残るのは。
いつだって、あんたの色の様な気がする。




不意に。
そんな風に思ってしまった自分に。

笑いたいような。
呆れたいような。
泣きたいような。

そんな気分で。
差し込む白い光の中、トグサは深く息を吐いた。








END



2005年10月18日(火)   BT30題「22) 接続不良」

連続更新・第五夜。

BT30題、犬ベース。
トグ語り。
法則通り、やはり、暗い感じに仕上がる罠。


うう、せめて、微糖な感じに仕上げたかった・・・・・・orz


しかし、お笑い→お色気ときて、これって。
私の頭の中は、ほんとにどうなっているのか?(笑)





























まるでそれは、薄絹に遮られた世界。

同じ場に立っているにも係わらず、接触することが出来ない。
薄っすらとした一枚の膜が、恐ろしいほど強固な壁となって。


自分と、男を遮っている。


耳に心地好い低音が語る言葉に。
心がないと気付いたのは、いつだったか。
語りかけた言葉が。
届かないと気付いたのは、いつだったか。
感情の揺らぎさえ映さないはずの義眼が。
過去に囚われていると気付いたのは、いつだったか。


もう覚えてはいない。


ただ、不意に気付いたのだ。
投げ掛ければ、言葉は返り。
それに、応じた言葉を返す。

それを繰り返して。

あの男から返る言葉が虚しいと。
自分の返す言葉が空しいと。
そう、気付いた。



男は、此処にいない。



過去という薄絹が、男と現実を隔て。
過去の象徴である女が、男を縛る。
薄絹は、何者をも阻み、厳然とそこに佇む。


それを前に、己はただ、哀しいほどに無力だった。
ただ、現実に立ち、薄絹の向こうに見える男の背を。
見つめるしか出来ない。

いつか、男の義眼が、現実に向くことを。
いつか、男の言葉が、心を取り戻すことを。

祈りながら。

いつか、自分の言葉が、男に届くことを。

願いながら。



「接続不良だな、俺とあの男は」



いつになったら、繋がれるのか。
埒もないことだと思っても。
それでも、考えずにはいられなかった。






あの男のことを。









END



2005年10月17日(月)   BT30題「26) 眉間のしわ」 

連続更新・第四夜。

BT30題、SACベース。
昨日の話と対になる短文です。
バトさん文。

えー・・・・・・もう、ごめんなさい・・・・・・・・orz

妄想が暴走の域に達した感がありますね(冷汗)
やっぱり、お色気文は、難しいです。
短かかろーが。
長かろうーが。

精進あるのみー。
精進・・・・・・・・・・(凹)

えーん。
































生身であるその身体は、どこもかしこも、温かく。
弾む鼓動が、誘うようにリズムを刻む。

縋りつく、その腕。
シーツに散る、茶の髪。

快楽に囚われないよう。
引き結ばれた唇。
愛撫に耐えるように、寄せられる眉間の皺。


この男の無意識は、本当に性質が悪い。


それがどれだけ、獣欲を煽るか。
解っていないのだから。


「お前は、本当に性質が悪い」

汗ばむ頬に張り付いた、茶の髪を払いのけ、口付ける。
瞼を閉じ、浅く息を吐く男の唇が、幽かに言葉を漏らした。

「─────どっちが」

呆れと怒りを含んだような、掠れる声が人工の鼓膜を撫でた。
それは、容易く電脳に侵入し。
薄く開けられた茶の目が、また、底のない欲を刺激するのだ。

どうだ?
誰のせいで、こんな気分になる?
お前のせいだろうが。


だから、圧倒的に、お前が悪いのさ。


そんな言葉を飲み込んで、今度は誘うような甘い声を出す唇を塞いだ。








END of All



2005年10月16日(日)   BT30題「24) ブレス [ breath ]」

連続更新・第三夜。

BT30題、SACベース。

短文でお色気。
しかも、続く。
短いのに、続く。

明日は、バトさん文をアプ予定。

・・・・お笑いの次がこれですか。自分の頭がどうなってるのか、かっぽじって見て見隊よ・・・・orz






























シャワーヘッドから滴り落ちる水滴。
バスタブの底を打つ音が響く。
篭ったようなその音が、やけに鼓膜を震わせる。

濡れそぼった髪を掻き上げながら、無数の穴の中から生まれ出てくる水滴を見詰めた。

先ほどまでの情交が、瞼の裏を掠めていく。
それだけで、息苦しい。


なんて、性質の悪い男なんだ。


自分を快楽に縛り付ける、あの低音。
抵抗さえ軽々と封じる、あの身体。

忌々しいくらいに。
男に与えられる熱に、惑ってしまう。

息が乱れ、呼吸をすることさえ困難。
ただ。
男に溺れないように、その腕に縋るより、ない。
喘ぐように。
哀願するように。
途切れ途切れに、求めるしか。

この息苦しさと熱から、逃れる術がない。
それなのに。


[お前は、本当に性質が悪い]


男は義眼の奥で笑いながら、そう言うのだ。

ふざけるな。
俺が悪いんじゃない。
あんたが、俺をこうしたんじゃないか。


性質が悪いのは。


「絶対に、あんたの方さ」

そう呟いて。
滴り落ちる水滴を掌に受け、握りつぶした。











T-side END → continued B-side ”26”



2005年10月15日(土)   BT30題「9) 黄色いスポーツカー」

連続更新・第二夜。

BT30題。
原作ベースでバトグサ+少佐。
お笑いの方向で攻めてみました(笑)

はっはっは、楽しいなぁ〜。
もともと。
二次創作もオリジナルも、こんなカンジの話ばっかり書いていたので。
なんだか落ち着きます。 ←落ち着くってナニさー


原作バトさんが乗ってる車がなんなのか、判らなかったのですが。
まぁ、SAC版バトさんが乗ってる黄色いスポーツカーにでも乗せとけーと(笑)
そんな感じで突っ走ってみました。

振り返ると、なんだか、トグが可哀想な子になってるわけで。
原トグを書くと必ず、こんな感じになります。
なんでだろうなー?
































レトロな黄色いスポーツカー。
その狭い運転席に、でかいガタイを押し込んで、義眼の大男がハンドルを握る様は少し笑える。





この年代物のスポーツカーは、9課の車じゃなく、バトーの愛車だ。
維持するのにも、結構なカネを食う代物だというのに、あの男はこの車がいいらしい。
「なんでこんなの乗ってんの?」
と訊けば。
「こんなのとは、何だ、こんなのとは。お前にはこれの良さが解らんのか?まったく、お子ちゃまだねぇ〜」
と憎たらしい答えが毎回返ってくるくらいの、愛車なのだ。
バトーは大雑把そうな見掛けによらず、緻密な部品の寄せ集めの機械をこよなく愛するサイボーグだったりする。
思考戦車も、スポーツカーも、筋トレグッズも、銃火器類も。
おおよその機械すべて。
皆等しく、愛しいらしい。

そして、その愛の最たるものが、この車というわけだ。(紅い思考戦車もか)



トグサは頬杖をつき、外を眺めた。
自分の愛車の乗り心地にはちと劣るが、この黄色いスポーツカーの乗り心地もなかなかだ。
この主張の激しい黄色のカラーリングさえ何とかなれば、トグサもこの車を気に入っていた。(口ではなんだかんだと文句を言ってはいたけれど)



郊外のモーテルに入った重要参考人の行動確認という、つまらない任務に厭きたトグサは思わず、どうでもいいようなことを考えていた。
集中して見張る、という任務をこなす気が失せていたせいだ。

「人様がお愉しみ中に、こうやって時間を潰すなんざぁ、つまんねえ」

運転席の相棒も、どうやら同じ心境のようで、盛大な溜息と共にそうぼやく。
数分前にも、似たようなことを言って、バトーは口許を歪めていた。
トグサは笑って、それに答える。

「確かに。義眼の大男と車ん中で、モーテルの見張りってのは、つまんないの極みだよな」

にぃーと口の端を引き上げて、バトーを見遣る。
と、ハンドルに両腕をついて顔をこちらに向けていたバトーの視線とぶつかった。
感情を映さないはずの義眼が、何やら不穏な色を浮かべたように見え、嫌な予感が背筋を撫でる。
口は災いの元。
そんな言葉が、トグサの脳裏に浮かんで点滅した。

「カーセックスするには」

バトーはそう言って、ハンドルから身を起こし、クソ意地の悪い笑みを浮かべる。

「この車はちっと、狭いけど」
「・・・・・・・」

素早く身を寄せた男は手馴れた動作で、トグサの座っているシートを倒した。
そして、そのまま、トグサの身体に覆い被さる。
いきなり、仰向けになってしまった自分の体勢に、トグサは息を飲んだ。

「・・・・・!?」
「まぁ、ヤってヤれないことはねぇ」

予想は的中。
自分の上で、いやらしい笑みを浮かべるサイボーグに、臓腑を抉るような罵詈雑言を浴びせたかったが。

「こっ、の、変態サイボーグ・・・・・ッ!!」

こんな言葉しか、出てこなかった。
しかし、この程度の言葉などモノともしないバトーは、トグサの頬をべろりと舐めた。

「ぎゃーーー!?や、やめろーーーーーーーっ!!!」

更に、調子に乗ったバトーに首筋を舐められるに至って、トグサは本気で叫んだ。
防御の要の腕は、自分とバトーの胸の間に拘束され、動かすことも出来ない。
顔を背けて逃げようとするが、もう、こうなるとどうしようもなかった。

「これ以上、やりやがったら、あとでどうなるかっ!」

言葉だけでも、抵抗しておかねば、身の危険は更に深まる。
それを今までの経験で理解してしまっていたトグサは、必死にバトーに言葉をぶつけた。

「判ってんだろーなっ、バトー!?」

すると、そんな二人の間に女の声が響き渡った。
電脳を駆け抜ける、涼やかな声。

『あんた達』

これは、裏口に張り付いているはずの草薙の声だった。
神様、仏様、素子様!
トグサは、その助け舟になるであろう声に本気で喜んだが。

『じゃれついてないで、任務に集中しなさいよ』

当然のことながら、トグサが望んだようなものではなかった。
この状況をなんとも思っていない女隊長の発言に、トグサは絶望を感じながら大声で反論した。

「じゃれついてなんて、ない!これが、じゃれついてるレベルかっ!!」
『あたしから視たら、じゃれついてる以外のナニモノでもないわ。暑苦しいったらない』
「・・・・・・・・」

近くにあるIRか。はたまた監視カメラか。
もしくは、バトーの義眼。
大穴なら、自分の目かもしれない。
裏口からこの状況を視ているのだろう草薙のその答えに、トグサの口は塞がれた。
同意の上での行為だと、言われたも同然。
誰が、同意なんてしたよ!!!
トグサは、脳内でそう叫んだ。

「───体温調節出来るボディだろーが」

そこに、バトーがぼそりと呟いたが、草薙にぴしりと返される。

『なんか言ったかしら?』
「いいぇえ。何も言っておりませんよ、少佐殿」
『だったら、きちんと監視しなさいよ』
「だって、つまんねえんだよ、この任務ー」

トグサの上で呟かれたバトーのぼやきには、草薙の溜息が返ってきた。
そこには、呆れの色が隠されることなく含まれている。

『つまんないじゃないでしょ、バトー。まったく、あんた達ときたら』
「少佐!俺まで同類にするのはヤメテくれ!!!」

あんた達、と一括りにされたトグサの悲痛な叫びが、黄色いスポーツカー内に響く。
バトーは騒ぐトグサの様子を見下ろしながら、さも楽しげにニヤニヤと笑い出した。

「そんで、何でこれが許されてんだ?!助けはなしなのかよーーー!???」
『見張りの方が重要だもの』

草薙の容赦のない言葉が、トグサの電脳に止めを刺す。


「なんて優しさのない職場なんだーーーーーッ!!!!」


その叫びに、答えは返ってこなかった。
当然ながら。






END



2005年10月14日(金)   BT30題「17) 義体」

連続更新の1本目は、BT30題からスタート。

SACベースで、トグの語り。
この組み合わせは、書くと必ず、甘いカンジになる法則が発動します。

その法則通り。

この文も短いんですが。
やけに恥ずかしい仕上がりになりました。

・・・・・あ、まーーーーーーーーーーーーーいッ!!!!(某お笑い風に)


今、脱兎のごとく逃げ出したい気分です(笑)

一人羞恥プレイ、再びだわー・・・・・orz

























義体。

自分を抱き締めてくれるのは。
機械の身体。

それは、哀しいほどに冷たく。
そして、泣きたくなるくらいに温かい。




自分を守るように、何度も盾になってくれたのは、この身体だ。

広い背中。
厚い胸板。
力強い腕。

それがとても愛おしい。

生身とは違う、造り物の身体。
無機と有機の混じる、その器。
けれど、そこに息衝く温かなゴーストが。
自分を柔らかく包んでくれることを知っている。

義体という強靭な殻の中の。
繊細で優しいゴースト。

あんたは時々、義体であることに齟齬を感じているみたいだけれど。
俺は、その義体を愛おしいと想っているよ。
心から。


そう、心から。


そして。
この生身の身体で、あんたのことを守りたいと。
心の底から、想っているよ。






それは、絶対に口に出すことのない、言葉。
これが、己の中に眠るゴーストの、偽りない囁き。








END


 < 過去  INDEX  未来 >


武藤なむ