6匹目の兎<日進月歩でゴー!!>*R-15*

2005年04月20日(水)   11のお題 「流し目でちらちら �А(寝困米�」

これにて、本当に終了。
長々とお付き合い、ありがとうございました!!
(あと、ちょこっとだけ、お付き合いいただきますが☆)

えー。
最後に一言。
スン止めで、ごめんなさいでした・・・・・orz

いや。
途中、話を裏仕様にしようかどうか、考えたりもしたんですが(笑)
やっぱり、最初に考えた話の展開で書ききることにしました。
あーでもない、こーでもないと話を練って。
結果。
この話の中で、”トグサ君とバトさん”と裏仕様が結びつかなかったのですなー。
ご容赦・・・orz

裏仕様な展開の話は、後日、また別の話でリベンジということで(笑)


























いつまでたっても、現れない査察官とその補佐官に。
陸自の事務方が一人、様子を見に来たのは、マルキュウサンマルを過ぎた頃で。
更には、朝礼に現れない兵士を探しに来た階級が少し上の兵士一人が。
トグサに与えられた部屋の前で鉢合わせしたのは、天の配剤とでもいうべき、ことだった。

開きっ放しのドア。
そして、そこから見える位置に口も目も開いたまま転がる、電脳錠つきの男。
二人の男は、驚きを隠しきれない顔を見合わせた後。
姿勢を正し、引き攣る声で、中に声をかけた。

「失礼します。査察官、起きていらっしゃいますか?」

何とも、間の抜けた問い掛けではあるが。
これ以上、言いようがない。
というか、何と言えばいいのか。
分かる訳がない。
すると。
部屋の主ではない、声が応えた。

「起きてるさ、俺が、昨夜っからな」

内部から聞えた、ドスの効いた腹に響くような低音に、二人は竦みあがった。
これが、補佐官の声であることを二人は知っていた。
何故、こんな事に??
そう思い、さらにある考えが、ほぼ同時に二人の脳裏をよぎる。
けれど、それはあえて考えないことにした。
すでに、目の前に恐ろしい答えが転がっているというのにだ。
が、それを突きつけようとする、声がする。

「入って来い」
「よ、宜しいんでしょうか?」

事務方が、上擦るような声で聞き返すと、良いって言ってんだろうが!と罵声が響いた。
二人は慌てながらも、いつもの習性で背筋を伸ばし駆け足で中に入った。
壁際に立ち、引き攣る顔を声のほうに向ける。
声の主の、銀色の義眼がそこにあった。
義眼の補佐官は、壁際に立って固まる二人のうち、事務方のほうを見遣ると声をかけた。

「よう。悪かったな、わざわざ迎えに来てもらっちまって」

そして。
そこには、義眼のサイボーグの補佐官に守られるように抱きかかえられた、査察官がいた。
毛布に包まれ、補佐官に身を預けるように眠っている。

「「 ─────────── 」」

二人はその光景に、言葉をなくした。
この光景で、振り払った自分達の考えが、的中していることを知る。
そんな男二人を見る義眼の下の口許は、実は、意地悪そうな笑みを浮かべていただけなのだが。
それを怒りを殺していると見てとった哀れな男達は、背筋に氷のような汗を流した。
そして、補佐官は、もう一人の男に声をかける。

「そっちは、そこに転がってる男の隊の奴か?」
「はいっ!そうであります!!」
「所属部隊名は?」
「新浜駐屯地第一師団思考戦車連隊、所属であります!」

事務方よりも、いっそう、声を上擦らせたのはこの男だろう。
何せ、この事態の原因の男と直接、関わりがあるのだから。

「そうか。じゃあ、そこの目障りな奴を回収してってくれ」
「りょ、了解しました!!」

その男の返事に、査察官が身じろいで、補佐官に頭を摺り寄せた。
それに補佐官が、優しい笑みを浮かべる。

二人は、沈黙を守った。

「それと」
「はい、何でしょうか!?」
「未遂だろうが、何だろうが」

補佐官の声が、また凄みを増す。
「うちの坊ちゃんに手ぇだした落とし前はつけてもらうぜ」
二人は、その言葉に、唾を飲み込んだ。
「師団長に、そう言っとけ」
「了解しました!!!」
敬礼した、二人の手が震えている。

「ああ、それから。昼から施設を廻る。そのつもりでな」
「はいっ!」
「行ってよし」

その言葉に、二人は弾かれたように動き出した。
そして、忘れずに転がっている男を回収する。
両脇に手を差し入れ、引き摺るようにして、部屋を出て行く。

「 「  失 礼 し ま し た ー ー ー ! ! !  」 」
次いで、ドアの閉まる機械音もした。


「くっくっく、気の利いてる奴らだ」
バトーは、堪えきれずに、大声で笑い出した。
これで、平穏な日の出来上がりだ。
明日には大手を振ってここを出、本部に戻る。
バトーはニヤニヤしながら、抱きかかえたトグサをベッドの上に横たえ、強制認識の解除コードを流した。

「起きろ、トグサ」
「─────────」
「トグサ」
「───ん、ぅ」

眉間に皺がより、それから、ゆっくりと目が開いた。
いつもの澄んだ茶の瞳がバトーの義眼を捉え、それから何度か瞬きをした。
トグサは、目を擦り、身体を起こした。
それを見たバトーは、最後にデータをチェックをし、トグサのプラグからコードを引き抜いた。
前髪を乱暴に掻き混ぜてやると、トグサが非難の声をあげる。
「・・・・何すんだよ、旦那」
「ふん、オクスリは抜けきったみたいだな?」
「オクスリ?・・・・・・何のこ、と」
そこまで言って、トグサの顔が恥ずかしいのか悔しいのか、複雑な表情で覆われた。
「っぁあああああ、そうだったぁあーーーーーーー!!!」
頭を抱えて、煩悶する。
「何か、よく覚えてねえけど・・・旦那、ゴメン!!!」
「ふん?」
バトーはにやにや笑いを止めない。
昨夜の出来事を可能な限り、思い出そうとするトグサの顔が、徐々に紅潮していくところを見ると、ログがきっちり残っている場面もあるようだ。
それに、バトーのにやにやが、いっそう深くなる。
「昨夜から今までの、ログ見るかあ?」
「いっ、いい!?見せなくていい・・・!!!」
「何でだ?情報の確認は、怠るべからず、だぜ?」
バトーの意地の悪い笑みに、トグサは首を振り、悲鳴に似た声で。
「見せなくていい・・・!!!!」
叫んだ。








これが、平穏な日の始まりというならば。
たいがいの日が、平穏だろう。




END



2005年04月19日(火)   11のお題 「流し目でちらちら �Α�

えー、やっと、ここまできました。
今回で、終わり。

・・・・・とんだ羞恥プレイだった・・・・・・・・・orz

自分で自分に羞恥プレイ。
何やってんだか(笑)
この話。
書き上げるまでが長かったんで、愛着があるんですが。
やっぱり、なんか、恥ずかしい気持ち。
照れる、といった方が正しいか?(笑)

兎に角。
トグサ君とバトさんに、原作的コスプレさせたので満足。
(黒髪と短髪は、ほんまに萌える)
軍モノも書けたし、満足。
途中で、ぺいっと投げ出さないで、仕上げてよかった〜!(達成感)

内容は、まぁ。
これが、今の自分の精一杯かと(笑)






















「はは、なんか、きもちよ、くなってきた・・・・どーしよう、だんな、あは、はは」
「新手のバッドトリップかよ!?なんだ?あのドラッグ、生身に使うと何かあんのか??」
腕の中で、笑い出したトグサに、バトーは慌てた。
電脳で、自衛軍で出回るドラッグの効果を改めて確認し、草薙から報告された売人達から搾り取った情報も重ね見た。
生身に、特別、キくような作りのドラッグではないが。
そんなのは、使ってみなきゃあ、判らないか。
バトーは、くすくすと笑い続けるトグサの頬を叩いた。
「トグサ、しっかり、しやがれ!!」
ドラッグを打たれた人間に、それは無茶というものであるが、言わずにおれない。
「しっかり、し、てるけ、ど・・・」
トグサは、それに愉しそうに、笑う。
「けど、だんなぁ、おれ・・・なん、か、へん・・・かも?」
上気させた頬で、無邪気に笑いだした相棒に。
バトーは慌てたようにトグサを抱き上げると、ベッドに突っ込んだ。
毛布を掛けて、寝かせることにする。
このドラッグは、水を飲ませて吐かせようとすると、逆効果で。
水を飲んだだけ、効果が長引く。
バトーが軍属だった頃にも、こんなドラッグが流行った。
不意に、最下層に眠っていた記録が、上層部に浮き上がる。
バトーは、いつの時代も同じか、電脳でそう呟き、
「薬でキめても、愉しくなかろうがよ」
と吐き捨てた。
だいたい。昔のドラッグも、今のドラッグも、キめたままセックスするのは危険なのだと相場が決まっている。
深い快楽は、身を滅ぼす。
それは、リアルでもヴァーチャルでも、変わらない事実だ。
もしかすると、危険度は今のほうが増していると言っていいかもしれない。
だからこそ、この依頼が舞い込んだのに違いない。
それなのに。

身内の不祥事は、身内で片付けりゃいい。
白羽の矢が立った9課は、まったく、いい迷惑だ。

バトーは苛々と、トグサの汗ばんだ額にはりついた髪を払ってやった。
自衛軍の奴らは、そんなこと気にせず、セックスになだれ込んだのだろうが。(無理矢理かもしれないけれども)
しかし。
トグサに、そんなことはさせられない。
バトーはベッドの淵に腰掛けると、毛布ごとトグサを抱きかかえ、左膝を立てて支えにした。
トグサは、されるままにバトーの胸にもたれかかっている。
それから、愉しげに笑うトグサの首筋にかかる髪を右手で掻きあげ、QRSプラグを露わにさせると自分のプラグからコードを引き出し、身代り防壁なしでトグサに有線した。
くらり、と多少の酩酊感がバトーの電脳を揺らしたが、義体の機能が直ぐにドラッグを分解し排除してしまった。
「トグサ、眠れ」
強制認識のコードをトグサに流す。
眠らせてしまうのが、一番なのだ。
こういう時は。
肉体を操作する脳の活動を制限し、身体器官への影響を最小限にとどめる。
無理にでも。
「眠れ」
バトーは、トグサにコードを流し続ける。
囁くような軽さから、徐々に、響くように深く。
トグサは、それにぴくりと身じろいだ。
それから、焦点の合っていない目で、バトーを見上げ。
「・・・・・ば、とーは?」
「お前の傍にいるさ。だから、さっさと寝ろ」
「そ、か」
トグサは、薄っすらと笑うとまた、バトーの胸に身体をあずけた。
「あんた、は」
「ん?」
「あった、か、い・・・な」
ゆっくりと瞼が閉じられ、トグサは何者も邪魔をしない深い眠りに落ちていった。
それを確認して、バトーは大きく息を吐き出した。

温かい?そんなはずは無い。
体温設定は通常のままだし。
だいたい、義体の隅々、指先までも冷え切ったような思いがしているというのに。
温かいわけが無い。

バトーは、男に組み敷かれたトグサを視た時の全身を包んだ冷えた怒りを思い出した。
トグサを抱き起こし、その茶の瞳が自分を見た瞬間も、その怒りは消えはしなかった。
それを温かいと感じる、この男の自分へ寄せる信頼に、嬉しいのか、哀しいのか。
複雑すぎて、今は考えることは出来なかった。
トグサの生体反応をチェックして、更に息を吐く。

「まったく、この生身は・・・・・」

他にも、言いたい言葉があったが、言葉にはならず。
トンでもないことに巻き込まれやがる。
とだけ、内心でぼやき、バトーはトグサの髪に顔を埋めた。
自身の奥で、熱が生まれようとするのに気付き、バトーは意識を散らす。
自分が抱く密やかな想いは、胸の底に沈めておかねば。
床に転がる男と同列になりたくはない。
それに、何より、今は。
トグサの回復が最優先だ。
自分の衝動などよりも。
眼の端に流れるトグサの生体データに意識を向けながら、バトーは明日の朝までには、なんとか落ち着くだろうと予測を立てた。
「が、どうすっかな」
バトーは、自由になる右手で、短くなってしまった髪を掻き毟った。
「あの男と開きっ放しのドアはよー」
セキュリティに潜って、ドアは簡単に閉めることは出来るが。
今は、腕の中のトグサで手一杯だ。
他の事をする気が起きない。
次の瞬間。
バトーは、意地の悪い笑みを顔に貼り付けた。
「まあ、いいか。恥ずかしいのは、あの男だし」
それから。
「残り二日が、平穏な日になるしな」
ひとり言を言い、バトーは小さく声を出して笑った。


誰にとっての、平穏か?


トグサにとって、それが平穏かどうかは。
甚だ、疑問ではあるが。
バトーにとっては、最後を飾るに相応しい、平穏な日になるだろう。
ついでに、陸自でのこの一件も、収束に向かうに違いない。

バトーの不穏な企みなど知らず。
トグサはその腕の中で、安心という、深い眠りを貪っていた。










END


ひっぱって、ひっぱって、スン止めの罠。
軍人に襲わせたり、ドラッグ使っても、スン止めの罠。

(ごめんなさい・・・・・orz)
(最初っから、スン止めで話考えてたんです・・・・・・orz)

そして、攻めがヘタレで、受けが天然で強い。
所謂、お姫様と騎士系。
私、こういうの好きなんだ〜。むほ。

オチは次で。
笑いで落すのも好きだ☆


高いハードル、下をくぐって駆け抜けました。
バトさんはへタレだねぇ、とかいつも言ってますが。
もしかして、私が一番へタレだったかもね☆ 
げへっ・・・・・・・・orz(倒)



2005年04月18日(月)   11のお題 「流し目でちらちら �ァ�

とうとう、ここまできた。
一番の妄想暴走地帯。
あああぁぁああぁぁぁぁあ!!!!(頭抱えながら)

「危険です!!危険ですから、下がってください!!!」

と、大声で叫びたい罠発動。

ま。
ここまでアップしといて、今更何を言うて感じですが(笑)
なんというか、恥ずかしい訳でしてね。
はぁ・・・・orz



























目の前を男の姿が横切ろうとした瞬間に、男のこめかみに銃を突きつける。
相手は、軍のサイボーグだ。このくらいの脅しは許される。
もし撃ち込んだとしても、強化義体には軽い火傷を与える程度だろう。
トグサは、相手に最も効果のありそうな、はったりを使うことにした。
撃つ気があると思わせるのは、時間稼ぎには有効だ。
「私に、何か用があるなら、後日話を聞こう」
自分を消して、査察官である役を演じる。
「所属部隊名と名を言え」
答えはない。
「返答は?」
トグサが銃口をよりいっそう押し付けた、その瞬間、男の身体が沈み、足を払われそうになる。
が、トグサは素早く身を引き、逆に男の腕を取って床に捻じ伏せようとした。
しかし、パワーでサイボーグに敵うはずもなく。
あっさりと腕を外されると、反対に床に押し倒された。
「──────っぐ・・・!?」
床にしたたかに背を打ち付け、一瞬息が止まる。
手にしていたマテバも、衝撃に耐えられず、放してしまった。

「生身だってのに、とんだじゃじゃ馬だ」

自分を見下ろす男の、なんとも不快な表情、耳障りの最悪な声。
そして、虫唾の走る目。
この時になって、トグサはやっと気付いた。
バトーはこういう事態を心配していたのか、と。

ここでのバトーの態度。
周りの視線。
この男の目的が、自分達を公安の者と知っての拘束でないことも。

まあ、気付いたところで、どうにもならないのが痛いところだった。
言っといてくれりゃ良いのに、と思ったが。
きっと、笑って取り合おうとはしなかったろうから、同じことか、と。
トグサは、内心で溜息を吐いた。
それから、可笑しくもなる。
まさか、自分がこんな目に合うとは思っていなかった。
だいたい、思うわけがない。

三十代の妻子持ちの男に、こんなことをしたがる男が居ようなぞとは。

抵抗しようと思ってはみたが、身体に力が入らない。
頭が痛みを訴えていた。
どうやら、床に引き倒された時に頭も打ち、軽い脳震盪でも起こしているようだ。
ここまでだな。
これ以上、自分では状況の打開は無理だと諦め、トグサは目を閉じた。
情けないかも知れないが。
生身では、これが精一杯だ。
こうなれば、バトーが来るのを待つだけである。
揺れる頭で、思う。

ああ、そうか
だから、旦那は
あんなに、不自然だったのか
俺が、変に、動揺しないように

トグサは、波立っていた心が落ち着くのを感じた。
状況は深刻そのものだったが。
何故か、心は平静だった。
今までの数日間のバトーの態度の理由が分かったことで、トグサの胸はすとんと落ち着いた。

「余裕だな、あんた」

落ち着き払ったトグサが気に障ったのか、男の声が苛立ちを含んで聞えた。
男の声にトグサは閉じていた目を開ける。
「もしかして、こういう事には慣れてるのか?」
「・・・・・んな、わけあ、るか」
声が出るだけ、良かったとトグサは思った。
黙って、言いなりになるのは癪だ。
「あの、義眼の大男か?」
「・・・・・・は?」
いきなりのその言葉に、トグサは本気で驚いた。

なに、いってんだ、こいつ?
だんなが、なんだって??

「凄いカオして、威嚇してたもんなあ。自分の所有物が人目につくのは我慢ならねえんだろうよ」
「─────────」
「あんたが犯られたら、どんなカオするかねぇ?」
「・・・しる、か」
痛む頭は思考するたびに、ぼやけていくようだった。
この男の言うことは、理解に苦しむ。

だんなが、どんなかおするか?
しらない
おまえのいってるだんなが、おれのしってるだんなとちがうから
だんな
だんなは、しんぱい、するだけだ
ただ、おれをきづかって、しんぱいするだけ・・・

トグサの表情が曇ったのを見て取ったのだろう。
男は下卑た笑いを浮かべて、トグサの解けたネクタイを引き抜くと、両手を拘束した。
それから、男は軍服の上着のポケットを探り、針のない奇妙な形をした注射器のような物を取り出す。
圧力を利用し、針を通さず、薬液を体内に送り込むというものだ。

ああ、やばいな、ほんとに

捜査中に何度も見たものが、目の前に突きつけられて、さすがにトグサも身じろいだ。
そんなトグサの考えを読んだように、男はトグサの顎を押さえつけると、露わになった首筋に注射を打ち込む。
首筋から、何か冷たいものが侵入してくるのが分かった。

どらっぐ、だよな、これ
ああ、まじで、やばい

暫くすると、頭の痛みとは違う、ふわふわとした感覚が全身を包む。
ドラッグを打たれた首筋から、熱が拡がっていく感覚だ。
それだけが、はっきりと解った。
抵抗は出来ないが。
しかし、この状況でも、出来ることはしておきたい。
トグサは、潤んでいく目を男に向けた。
せめて、男の顔を。

この、かお、どこかでみ、たんだ

霞がかかった頭で、トグサは最近の記憶のログを確認しようとした。
しかし、やはり上手くいかない。
時系列がバラバラに、再生される。

昨日、今日、三日前。
一昨日、一時間前、バトーと別れた瞬間。

自由にならない手足のように、思考もトグサの手から、離れていきそうだった。
そして、ぼんやりとした頭に、バトーの心配そうな顔と気配とが思い出され。
心が冷えた。

なさけない、な
あんたに、しんぱい、かけたく、ないのに

その思いが、トグサの胸を穿つ。
調べていたドラッグを身をもって体験するというのは、捜査員として情けない以外の何者でもない。
これでは、新人の頃と変わらない。
少しは、成長できたと。
バトーの相棒として、背中を守れるくらいには。
そう、思っていたのに。
そうじゃなかった?
自分の思いに、トグサの心が悲鳴を上げた。

だから、あんなかおして、たんだな
だん、な

シャツのボタンが引き千切られ、素肌を男の冷たい手が弄る。
トグサは、悪寒に震え、眼を閉じた。

きもちわるい、さむい、はきそうだ

男の手が、自分の肌を這うたびに、奥底に眠る暗いものが引き摺り出されるようだった。
生身であることの限界。
捨てられない、甘さが滲む感情。
護られるばかりの、自分。 
心の弱い部分に沈み込んでいく自分をトグサは止められなかった。
いつもなら、それらを身の内に抱えていても、前を向くことが容易であったのに。
今は、それが恐ろしくて、出来ない。

冷たい男の手が、無遠慮にトグサの下肢に伸びる。
動こうとしてみたが、薬のせいか、上手くいかない。
ベルトが外される音が、やけに電脳に響いて、トグサは耳を塞ぎたくなった。
これ以上、自分の沈んでいく音は聴きたくない。

「い、やだ」

トグサが掠れる声を上げた、その瞬間。

「トグサッ!?」

聞き慣れた、耳に心地よい低音がトグサの電脳を振るわせた。
自分の上に覆いかぶさっていた男が、眼を見開いたまま、動きを止める。
バトーの大きな手が男の頭を鷲掴み、首筋に何かを押し当てているように見えた。
電脳錠だろう。
熱に痺れ、しかし、冷たさに覆われた頭で、事態を理解した。
「・・・だ、んな」
情けなく、震えてしまった声に、被るようにバトーの怒鳴り声が降ってくる。
バトーは、トグサの上から男を剥ぎ取ると、遠くの床に投げ捨てた。
遠くで、鈍いどさりという音が聞えた。
「悪ぃ、遅くなった!」
やはり、バトーの下にも、足止めの要員の男が数人いたようだ。
それらのサイボーグを叩きのめして、全力で駆けてきたのに違いない。
バトーの表情で、トグサにはそれが解った。
「無事だな!?トグサ、ヤられてねえな!??」
力強い腕に、床から引き上げられる。
バトーに抱き起こされて、トグサはその胸に寄りかかることになった。
冷たさが、すうっと消えていく。
嘘のように。
「おい!?」
トグサの手首に巻かれたネクタイを剥ぎ取るように外し、バトーはトグサの頬を叩いた。
「トグサ、返事しやがれ!!!」
「──────い、たいよ・・・だんな・・・」
「うるせえ!大丈夫なんだな?!」
自分を抱きかかえ、心配を顔に貼り付けたようなバトーに、トグサは、笑ってしまった。

ほら、みろ
だんなは、こういう、かおをするのさ
おまえのしらない、やさしい、かおを

トグサは、勝ち誇ったような気持ちで、そう思った。
「だい、じょうぶだ、て」
バトーの義眼を見返す。
すると、バトーの眉間には皺が寄る。
「あんた、が、きてくれた、ろ?」
それに、バトーは口許を歪ませたと思うと、トグサの頭を優しく抱きかかえた。
それから、微かに。
囁くような声が耳に届いた。
「心配させるな、トグサ」
「────────────」
「だから、言ったろうが、知らない奴には隙を見せるなって」
浮遊感の中、トグサはいつものバトーの軽口に応えてみせた。
「・・・きい、て、ねえよ・・・だんな」
「察しろ」
「い、ってくんないと・・・そゆ、ことは」
トグサは何とか震える手を持ち上げ、バトーの温かい腕を叩いた。
「世話のかかる、生身だぜ、ほんとによ」
それで、バトーの緊張が解けたのが分かった。
大きく息を吐くバトーに、トグサはぐったりと寄りかかった。
身体が、熱い。
自分の言う事を聞いてくれない。
さっきまでは、あんなに、冷たくて。
気持ち悪くて、堪らなかったのに。
「だ・・・な」
「何だ?」
「わ、り・・・薬、は打たれ、ちゃった」
やっとの思いでそう言うと。
また、バトーの怒声が耳を震わせた。
「こんの馬鹿!!先にそれを言えーーーーーー!!!!」
「あ、はは・・・す、んませ・・・・・」
この怒鳴り声も、愛おしいのは、なぜだろう?
トグサは、バトーの腕の中で、掠れた笑い声をあげた。



2005年04月17日(日)   11のお題 「流し目でちらちら �ぁ�

連続更新続行中。

だんだん、欲望丸出しになってまいりましたよ。
ここいらへんからが、暴風域ですから。
ご注意あれ!!

続きアップするの、むしょーに恥ずかしいんですが(笑)
「引いてないよ?」
とか、
「萌え」
とか言ってくださるお優しい方々の言葉に励まされ。
勇気を出して、これから先の更新を頑張ろうと心に誓いました。
ええ、ほんとに。

もぅ、褒め殺しダゾ☆
(・・・・・orz ごめんなさい、可笑しいという自覚はあります)
(そっと・・・そっとしといてくださ・・・・orz)

有頂天になった末、調子にノリだしちゃった人の妄想ですが。
もう少し、お付き合いいただけたら、幸いでございます(礼)




















***********************************

『ああ、トグサ。お前、これから夜は出歩くなよ』
『───────何で?』
『それから、むやみに軍属の奴らと接触するな』
『だーかーら、何でだ?!』
『不用意に動いて、撤収前に怪しまれたら、面倒臭ぇことになるからだ』

もっともらしい言葉。
けれど、それがバトーの本心からの言葉でないことをトグサは知っている。

『さっきも言ったけど、何もするつもりはねぇよ───子供じゃねぇっつの』
『そんなのは知ってる』
『──────』
『返事は?』
『・・・・・・・・了解』

知ってるなら、なんでそんなことを言う必要があるんだ。
新人じゃあるまいし。
数分前の会話を思い出して。
トグサは自分に与えられた部屋のベッドに大の字で寝転がったまま、呟いた。
「ったく、何だってんだよ、旦那の奴」
考えれば、考えただけ、腹が立つ。
が。
上着がシワになる、やっとそこに思い至ったトグサは、重い身体を起こした。
きっちりと結われていた髪が、くしゃくしゃになっている。
トグサは鬱陶しそうに、ゴムを外した。
「潜入捜査なんて、今まで何回もやったし。一人でだって、やれてたってのに」
上着を脱ぎながら、子供じゃねぇっての、ともう一度ぼやいた。
明後日、ここを出れば着る事のなくなる上着をベッドの上に放り投げ、トグサはネクタイに手をかけた。
解いたネクタイをそのままに、ベッドの上で思考する。

どうも、此処に来てからのバトーはおかしい。
咽喉もとまで出掛かっている言葉や感情をトグサに知られぬように、散らしてしまっている。
そして、口にのぼる言葉は、薄い膜に覆われているようで。
気に障る。
ただ、自分を気遣っているという点については、いつものバトーに変わりなく。
それは、真っ直ぐに自分の感情に触れてきたが。
(まあ、多少、過ぎる気はしたけれど)

「ま、それも明後日までの辛抱」

自分の思考を占めようとする苛立ちをトグサは頭を振って、散らした。
勢いをつけて立ち上がり、バスルームに向かう。
自分の感情を洗い流すには、これが一番だ、とでもいう様に。
が。
ドアのあたりで微かな音がしたような気がして、トグサは足を止めた。
何の音か解らない。
聞き違いかもしれない。
けれど、トグサは”聴こえた”と思った自分の感覚を信じた。
「?」
こんな夜更けに、ドアの外からの微かな物音。
トグサは、訝しげに眉を寄せるとバトーへの回線を開いた。
バトーかもしれない、という考えが浮かんだからなのだが、その考えは違うだろうなとトグサは瞬時に思った。
背筋がざわつく。
こんな感じは、バトーの気配なら与えない。
『旦那』
一瞬の間をおいて、バトーからの応えが返る。
『どうした、トグサ』
それに、トグサは肉声でやっぱりと呟いた。
『何か、あったか?』
『今、ドアの外に誰かいる』
そう言いながら、素早くベッドに近づき、枕の下に忍ばせたマテバを手に取った。
セーフティを外す。
『おい、トグサ?』
気遣わしげなバトーの低音が、耳を打つ。
トグサはそれに苦笑を浮かべると、
『旦那、俺達のこと、バレたのかもしれない』
ドアからは死角になる場所に身を潜ませ、銃を構えた。
『ちなみに、俺は出歩ったりしてないからな?』
『ちょっ・と、待て!トグサ。そりゃ・・・』
バトーの言葉を遮り、呟くように言う。
『旦那が来るまで、耐えるけど』
バトーの部屋は、ここから離れたところにある。駆けつけるまで、時間が掛かるだろう。
それに、バトーの所へも、人が配置されてる可能性もある。
トグサはいつもの軽い口調で、バトーに話しかけた。
『軍仕様のサイボーグと肉弾戦なんて、生身にゃ大役すぎる。早く、来てくれよ?』
その時、ドアの開く、微かな機械音がした。
気配を殺した足音が、近づいて来る。
トグサは壁に背を押し当て、息を殺し、引き金に指を掛けた。

***********************************



2005年04月16日(土)   11のお題 「流し目でちらちら ��」

えー。
どんどん、可笑しなことになっていってますが。

すみません・・・・・・・orz(土下座)

もう、謝るしかテが無いほど、好き勝手ですね☆うふふ。
わかってます。わかってますとも。
自分がアホウだということは(笑)

まさに、やりたい放題の方向〜。
SAC版のバトさんとトグサ君に、原作風コスプレさしてみたり。
軍に突っ込んでみたり。
少佐を女王様にしてみたり。
楽しいよ!正直、楽しいんだよ!!!(タガ外れ状態継続中)

ま。
楽しいのは自分だけのような気もしますが、仕方ないネ☆
残りは、2・・・3回分でしょーかね?おまけもいれて。
あははははは、まだまだ続きますよ?

お覚悟くださいませ!!

読む人に、覚悟を要求するSSて・・・・どんなんやねん・・・・・orz
















*************************************

トグサとバトーはただひたすら、黙々と。
昼は「表」の建前の査察をこなし、夜は「裏」の捜査に非合法な手段であたった。
そして、潜入して、五日目にもなると。
被害の実態、薬の出処、持ち込んだ者が誰であったか。
ほぼ、突き止めてしまった。
その過程で、女隊長様の求めるものも、手に入れることが出来た。
(もしかしたら、これが久保田本部長からの9課に対する報酬なのかもしれない)
潜入終了まで、二日を残して。
二人は、することがなくなり、手持ち無沙汰になってしまったのだった。

*************************************


任務を期間前に終了させてしまった二人は。
施設を徘徊し、それから、ぼんやりと訓練風景を眺めることが多くなった。
目の前では、陸自の一隊が、戦技訓練をしている。
戦闘に特化した者達の動きは、恐ろしいまでに速く鋭い。
が。
バトーの動きより、雑に、そして遅く見えるのは身内びいきだろうか。
トグサはそれを眺めながら、昔、バトーに散々やられた研修期間のことを思い出していた。
隣りで同じように眺めているバトーは、生身だからとトグサを甘やかしたりはしなかった。
むしろ、生身だったからこそ、厳しかったといえる。
生身である自分が、任務を無事にこなせるように。
自身の身を守り、生き抜けるように。
一歩も二歩も前から、トグサを上の次元へ引き上げようと手を伸ばしてくれた。
バトーという男は、教官に向いてないようにみえて、実は9課の中の誰よりも教官向きの男だった。
トグサは、そう思っている。

『旦那』
『───何だ』
ぼんやりと見ていたトグサだったが、あることに思い至り、口を開いた。
軍のことは、バトーに聞くのが一番である。
『軍で生身って、そんなに珍しいのか?』
軍の仕組みについて、余り詳しくないトグサの素朴な疑問だった。
『・・・は?別に。幹部組にゃ結構の割で生身はいるぞ。まあ、兵士の中に生身がいりゃ珍しかろうがな』
『そうか・・・』
簡潔なバトーのその答えに、トグサは少し考える仕草をした。
そんなトグサを横目に見、すぐに視線を元に戻しつつ、バトーは逆に問い返した。
『何だ、いきなり?』
『いや・・・ずっと思ってたんだけど。ここ来てから、やたら見られてる気がしててさ』
(気付いてはいたのか)
そのトグサの言葉に、バトーは内心で苦笑をもらした。
視線の意味には、気付いていないが、見られているという自覚はあったようだ。
『そんなに生身が珍しいのか、と解釈してたんだけど。違うのか・・・』
トグサは、それとも査察官てのがめずらしいのか?と電脳で呟き、首を傾げている。
バトーは、その呟きを苦笑とともに、否定してやった。
『じゃあ、なんでコイツら、人のこと横目でじろじろ見やがるんだ?』
『・・・・・・』
それは、な。お前にモーションかけてんだよ。
という言葉をバトーはぐっと飲み込んだ。

「流し目でちらちら」が「横目でじろじろ」に見えるらしい。

このトグサには。
バトーは、ぼそりと電脳で呟いた。
『知らぬが仏』
『─────は?』
『何でもねえよ』
聴き取れなかったのかトグサがちらりと見上げてきたが、バトーはそれ以上、その事については何も言わなかった。
『────』
トグサは、何となく訝しげな表情をしていたが、何も言わずに戦技訓練に視線を戻した。
そんなトグサにバトーは言葉を続ける。
『とにかく。後は大人しく日が過ぎるのを待つだけだ』
バトーは、この任務を何事もなく終わらせる事だけを考えていた。
後、少しなのだ。
ここで気を抜いて、何かあったら、たまらない。
『いいな、トグサ。大人しくしてろよ』
『何だよ、それ?』
バトーの言葉に、妙に力がこもっていることに気付いたトグサの声が、途端に刺々しくなった。
『言われなくても、大人しくしてるさ。もう、何もすることねえし!』
不機嫌を隠そうともせず、むっつりとすると、バトーを置き去りに歩き出してしまった。
トグサの背が、凄い勢いで小さくなる。

そんなトグサの後ろ姿をバトーはしばし眺めていたが。
その後を追うべく、踵を返した。
口許に、苦笑を浮かべながら。

信頼しているが心配もしている。

という、バトーの複雑かつ微妙な気持ちは、どうやらトグサには通じないようだった。



2005年04月15日(金)   11のお題 「流し目でちらちら �◆�

今日から、連続更新だ〜♪とかノリノリでアップしようとしたら。
また、弾かれました・・・・・orz
最初から、区切りのいいところまでのアップは、ものの見事に弾かれました。
どうやら、文字数オーバーの模様。
でも、へんなとこで続くのも、なんだなぁと思い。
半分を空いてた14日の日記に放り込んだ次第。
分割で凌ぎましたよ。むほ。

ふぃー、やってくれるぜ☆ ←ばかである

もう、�,鯑匹泙譴進�は。
バトさんのタガが外れる前に、私の妄想のタガが外れたことをご承知でしょうな・・・orz
いや、もう本当に、好き勝手し放題なカンジで(笑)
ずばーんっ!と今まで抑えていたものが、全開に・・・・・・・orz

引かないで・・・・・引かないでくださ・・・・・・(倒)

すいません。
まだまだ、これから先も続きますので、謝っておきます。
ごめんなさい・・・・・orz



























で、今に至る。

先日の一部始終を思い出して、トグサは深く息を吐いた。
昨日今日と、トグサの口から零れ出る溜息の数は、格段に増している。

身に着けたことの無い軍服。
一兵士というよりも、明らかに上部の者の軍服に身を包んだ今のトグサは偽名を使い、偽の肩書きによって任務の遂行にあたっている。
軍に属したことの無いトグサは、任務のことは別にして、軍服を着るということを少しだけ楽しいと思った。
(仲間のほとんどが元・軍属である、ということが影響しているかもしれない)
これまでにも、潜入捜査の為に色々な格好をしたが、これは今回が初めてだったし。
いつものスーツ姿とたいして変わらないが、やはり気持ち的に違う。
なにせ、”軍服”である。
が。
それが思った以上に肩が凝る、重苦しいものだと知るには、数分で事足りて。
すでに、今現在、こんな軍服なぞ脱ぎ捨てたい気持ちで一杯であった。
それに、やや長めの後ろ髪が、きっちりと纏められ結われているのも気にかかる。
首筋が何やら、風通しがよすぎて、心細いし。
更には、目にかかる前髪の色が憂鬱を誘う。
いつもなら、見慣れた茶の髪が目に入るはずだが、今は”黒髪”がチラチラと目に入る。
絶対に面白がっている少佐や他のメンバーに出掛けに捕まり、髪を染められたのだ。
強制的に。
”一週間経てば自然に元の色に戻る”
そんなことを言いながら、逃げる自分の首を締めたのは、こういうことに乗らないと思っていたサイトーだった。
その時の様子が脳裏を過ぎり、眉間が自然と寄ってしまう。
一週間で戻るなんて言葉は、救いになりゃしない。
トグサは、咽喉もとを圧迫するネクタイを弄りながら、また溜息をついた。


黙っていることに飽いて、トグサは暗号通信でバトーに話しかけた。
通信規制を受けていない身分を与えられていることに感謝するのは、こういう時だ。
(暗号通信にしているのは、勿論ここが軍だからである)
『旦那、これ、一週間も続くって…』
言外に”本気かよ?”と言う思いが込められているのを難なく理解したバトーが、すぐさま暗号通信で返してくる。
『マジだ。あの少佐の微笑を忘れたか?』
『───悲しいかな、忘れちゃいないよ、旦那』
『諦めて、任務遂行するしかねえってことだ、相棒』
背後から、幽かな舌打ちが聞こえた。
バトーもこの任務にノりきれず、クサっているらしい。
トグサはちらりと肩越しに振り返り、苦笑でそれに答えた。

その時、自衛軍の兵士が二人に近づいて来た。立ち止まり敬礼をしてくる。
トグサはそれに軽く頭を下げ、バトーは敬礼を返した。
兵士はそれで離れていく。

トグサは、その背を見送り、ふとバトーの姿に目を留めた。
この点については、バトーの方が悲惨な目に合っているといえた。
自分よりもやや簡素な作りの軍服を難なく着こなしたバトーの、長かったはずの銀髪はばっさりと切られ、いかにも軍属でございという短髪にされてしまったのだから。
散々抵抗したが、バトーも最後には、諦めて、大人しくパズに髪を切られていたっけ。
トグサは、その時のバトーを思い出し、内心で笑った。
が。
あまり見慣れない、その姿に。
落ち着かない気持ちが、身をもたげてくる。
トグサは、それを振り払うと、また電通で話しかけた。
『それにしても、何で俺が、コッチの役になったのか・・・』
トグサは、バトーの上官で”査察官”ということになっていた。
バトーは、その補佐役である。
視線を戻し、止めていた足を動かす。
背後から、バトーの足音が追ってきた。
『旦那のが、適役だぜ?明らかに』
『───────』
『元・軍属だし。貫禄あるし』
『───────』
返答は無言。
『・・・旦那?無視するなよ。ここで旦那と話せないと針のムシロだぜ』
黙り込んだバトーに、トグサは情けないほど、心細げな声でそう言った。
それにバトーは、不意に。
『お前、本当に軍育ちじゃねえんだなあ』
呟くように、言った。
軍属であれば、気付くであろう事が、この警察育ちのお坊ちゃんには解らないと見える。
今二人が居る、この軍という空間は特殊な場なのだ。
それ故に、今回の任務内容ようなことも起きる。
が。
任務内容を理解していても、実のところ、それがどういうことか。
トグサは解っていない。
そのことが、バトーには今更ながらよく解った。
『は?』
バトーの答えになっていない答えに、トグサは思わずまた足を止め、後ろをかえりみた。

トグサは感覚の鋭い人間だ。
心の機微も敏感に嗅ぎつける。
が。
何故か、鈍い。
特に、自分に向けられる感情に対しては。
恐ろしいまでに。

何か、一言、言ってやらねえと。
と、バトーは思ったが、いざ言葉にしようとすると上手い文句の一つも浮かんでこない。
いつも、あれだけ軽口の叩きあいが出来てるというのに、だ。
任務であれ何であれ、この「軍」という特殊な場に立った、その瞬間から。
トグサが目をつけられるであろうことは、バトーには解っていた。
(こんな清潔そうなお坊ちゃん、軍属風に言えば”お嬢ちゃん”がいれば、言わずもがなである)
そして。
そんなトグサの補佐役を任された自分が、その「護衛役」を割り当てられたことも解っていた。
解っていたから、自分を補佐役に選んだ草薙に感謝した。
が、反面、腹も立てた。
こうなると予測できない無思慮な女ではないのに、あえて、これを選ぶとは。
しかも、わざわざ目立つように”黒髪”にまでするとは。
バトーは、トグサの染められてしまった髪を見下ろしながら、歯噛みした。

トグサは生身であるが、公安9課の正式なレギュラーだ。
何かあっても、自分の身ぐらい守れる力はある。

全身義体のサイボーグ、軍人相手でも何とかなるような訓練を研修期間中に仕込んでやったのは、バトー本人なのだ。
そうと解っているのに、不安が拭えずにいるのは、何故か。
その不安が、何に起因しているのか。
何もかも、解っているのに。
どうにも出来ない状況に、バトーは、心底苛立っていた。
もう、いっそのこと。

凶暴な狼の群れに、育ちの良さそうな羊がいれば、嫌でも目立つ。
今は、お前も獲物に含まれてんだぞ、と。

怒鳴り散らしてやろうとも思ったが、解るまいし。
故に。
それは思いとどまった。

『ここでは階級が盾になるってことさ』

仕方ないので、バトーはそれだけを口にした。
飢えた狼も、相手が自分よりも階級が上で、将来の幹部になる身分ともなれば。
腹の内にどのような葛藤があろうとも、”節度ある”行動をとる。
それが、軍属の性というものだ。
(その点だけは、トグサの元・職場である警察という組織も、似たり寄ったりだろう)
『???』
解らない、と首を傾げ見上げてくるトグサに、バトーは一瞬、眉間を寄せた。
けれども、次の瞬間には呆れたような苦笑を浮かべた。
『───ま、いい』
『旦那?』
『お前の方が適役だ。今回の役どころの”査察官”てな、軍の中でもエリートの奴らがするもんだ。所謂、政治家でいえば官僚候補だからな。俺みたいな戦闘サイボーグにゃ、無理な役だ』
バトーは顎で「行け」と促しながらいつもの軽口を叩いた。
トグサはそれに従い、歩き出す。
その背に、バトーは言葉を投げた。
『お前みたいな、育ちの良い、お坊ちゃんでないとな』
『・・・それ、褒められてる訳?それとも、貶されてる訳?』
『どっちだと思う?』
それに暫し考え、トグサは振り返ることをせず、答えた。
複雑な表情を浮かべながら。
『──────褒められてると、思っておくよ。かなり、微妙だけど』
先に立って歩いているトグサが、どんな表情でそう言ったかが手に取るように解ったバトーは、にやりと口許を引き上げた。



2005年04月14日(木)   11のお題 「流し目でちらちら � �

とんでも設定なので、裏にアップ。

えと。これ読んで。
「えぇ、おかしくない?」
とか思っても、そっとしておく方向でお願いします・・・orz
おかしいのは本人が一番わかってますので。ええ、本当に。

取り合えず。
書きたいものを無理くり詰め込んだ感の否めん作品に仕上がった。
二ヶ月近く、いやそれ以上、捏ね繰り回して。
この程度・・・・・・・・・orz
あはははは、愉しく書けただけで、もういいさぁあ!!(壊)

だって、SAC版トグで、軍服とかその他諸々やってみたかったんだーーー!!(叫)
SAC版のバトさんでも(以下略ーーーー!!!)

欲望丸出しで、ほんとに、ごめんなさいーーーーっ!!!!orz
(最初から、謝っておく人・笑)






















トグサは足を止めず歩き続けながら、所在無げに辺りを見回した。
陸上自衛軍の訓練施設に査察と称して潜入二日目。
───なのだが。
いまいち、気分がノらない。
それもこれも、この任務の内容のせいだろう。
一歩、後ろを歩くバトーの気配も、トグサと似たり寄ったりだった。
それにトグサは、少しだけ慰められる。
が。
そのことで、今の二人の”立ち位置”を思い出してしまい、小さく息を吐くことになった。
なんとも、落ち着かない。
到底、トグサには馴染めないものであった。
バトーの隣りを歩くか、もしくは、少し後ろを気楽に歩くのが、トグサの常だったのに。
それが、いつもの逆の立ち位置。
バトーが自分を護るように、後ろを就いて歩くのだから。

何度となく、トグサの口から溜息が漏れる。

今回の任務は、何もかもが、万事こんな感じで。
トグサは、今までにない、落ち着かない気分にさせられていた。
潜入の為の偽造された身分やそれに合わせた変装、言動、立ち居振る舞い。
慣れない環境。
擦れ違う軍人達の視線に囁き声、何もかも。
総てが。
気分を逆撫でして、平静とは無縁の状態にある。
バトーの態度も、その内に入るかもしれない。


まるで、知らない男のようだ。


心の内で呟く。
あの少佐の命令が、こんなことになろうとは。

トグサはまた、小さく溜息をついた。


*******************************************


発端は、先日の午後。
荒巻の執務室に呼ばれたトグサとバトーの二人が、草薙から新たな任務内容を聞かされたことに始まる。

草薙の口から語られる任務内容に、二人は顔を見合わせ同時に眉間に皺を寄せると、
「 「 何の冗談で? 」 」
言葉揃えて問い返したくらいの、それほど”微妙な”任務内容だった。
軍絡みの。
しかし、美しき女隊長は、くすくすと笑いながら、
「私は冗談が嫌いだ」
きっぱりそう言った。

荒巻が軍絡みの依頼を受ける時。

それは殆どが、自衛軍の統幕・情報本部の久保田本部長からのものであるとバトーが眉間を寄せて断定したことをトグサはこの時、タイミングよく思い出してしまった。
思い出したからといって、どうなるもんでもないのが、悲しいところだ。
だいたい、間も悪い。
いつもの様に、急を要する案件をいくつも抱えていれば、荒巻もこの依頼を引き受けたりはしなかったろう。
相手が戦友であれ、荒巻は公私混同しない男である。
が。
今現在、9課が抱えるべき案件は一つも無く、実に残念な平穏に満ち満ちていたのである。
おかげで。
荒巻は依頼を引き受け。
然るに。
二人が、この任務に就くことになってしまった訳だ。(しかも、専従)

別に、軍から外部への不正な武器の横流しが発覚したわけでも、軍内部が抱え込んでいる不穏分子の反乱が起こったわけでもない。
軍の上層部の人間が、テロの対象になったわけでもない。
これは、危険の伴う潜入捜査・・・ではなく。
むしろ、ぐっと砕けた気軽な調査のようなもので。
しいていえば、「妻の不倫を疑った夫が素行調査を探偵に依頼する」ような、そんな感覚に近いもので・・・。
ここまで大掛かりに潜入するのが恥ずかしいぐらいの勢いのものである。
せめてもの救いは、単独捜査ではなかったことだろう。
トグサにはバトーがいて、バトーにはトグサがいる。
これは、とてつもない救いと言えた。

任務についての草薙の詳しい説明は次のようなことだった。
最近、陸自の中での「とある事」による密告が増え、管理職(所謂、軍の幹部組)の手を煩わせる事態になっているそうだ。
それは、はっきり言えば。
過度のセクハラ、らしい。
ある意味、強制猥褻的な。
草薙の声が、隠しようも無く笑いに震えているのを聴き取ったのは、トグサだけではなかった。
(口を真一文字に引き結んだバトーも、厳しい表情を崩さない荒巻も、目が間違いなく草薙を見詰めていたのをトグサは見た)

そして、事態は、性的興奮を高めるというドラッグが絡み、著しく。
そう、著しく。
陸自訓練施設及び関連施設内における、風紀を乱しているとのことだった。

「───で?」
草薙の言葉が途切れるのを待って、嫌そうに聞き返したバトーに。
「察しが悪い」
草薙は一刀両断、切って捨てた。
バトーは、苦虫を噛み潰したような表情になり、口を噤んだ。
草薙の言葉は続く。
「お前とトグサで軍に潜入し、実態の調査とドラッグの出所を洗え。軍内部にドラッグを持ち込んだ者が割れれば、そこから糸を手繰り、私達で売人を押さえよう。それから、この事に関係した者のリストを依頼主は御所望だ」

そんなこと、軍の(はっきり言えば)久保田本部長の配下の者がやればいいじゃねえか。
だいたい、何でこんな事に、お偉方の久保田の親父が出て来るんだ?
なんかの陰謀か?
内々に済ませりゃ、恥にもならんのに。
よりによって、9課に丸投げってのは、納得できねぇ。

これ以外にも、色々と言いたいことがバトーの腹の内にはあったが、それをぶちまけはしなかった。
何を言おうが、通らないことは明白。
そんなことは、草薙を見れば一目瞭然だった。
トグサはといえば、最初から反論も異論も唱えるだけ無駄と諦め、大人しくしている。
「 「 ──────── 」 」
「これが軍でのお前達のIDだ。潜入に必要なものは既に用意されている。早速、明日から捜査を開始してくれ」
草薙が放ってよこしたIDをトグサは慌てて受け取り、バトーは握り潰す勢いでわし掴んだ。
「査察という名目だ。思う存分、隅々まで捜査して来い。巧くすれば、私達に有効な何らかの情報を拾えるかもしれない」
「 「 ────────了解 」 」

有無を言わさぬ命令を下してくれた草薙に、反論など出来るはずもなく。
二人は、短く応えたのであった。

多分、いや、確実に。
二人の上に立つ、美しき女隊長様の真の目的は。
依頼された捜査をすることによって得られる、軍に関する「何らかの情報」であることは明白だった。



2005年04月13日(水)   11のお題 「触れない」

これは、だいぶ前に表の方でアップした「触れない」のバトさんバージョンだったりします。
別に、表においてもいいんですが。
なんか、自分がむしょーに恥ずかしかったので(笑)

裏におくことにしました。

えへ・・・裏っぽいのを期待した方、ごめんなさい・・・・・orz
へタレな私・・・。
あれだけ、絵茶コーナーでは裏全開でやっといてね☆
まったく。
腐女子心は微妙なものです。




片想いバトさんは、書いてると楽しい。
いろいろ、恥ずかしいけども(笑)

























触れない。
自分が手に入れられるような、存在ではない。
触れれば。
求めてやまない、心の箍が外れる。








男に、こんなことを想うようになるとは。
しかも、相棒に。
妻も、子も持つ、三十代の男に、だ。

人生ってのは、わからねえ。

バトーは我ながら呆れ、心の中でそう呟いた。
そんな思考を持つようになった自分が、はっきり言えば、可笑しくてたまらない。
が、隠しようもない。
これが心の底に潜む真実というものでもあった。

こうとなっては。
己でも、どうしようもない。
触れたい。
手に入れたい、と。
叫ぶ獣に抗うには、そうとうの力が要ったが。

この距離。
今の、この距離を壊したくない。
その、もう一つの真実を盾に、バトーは、自分自身を律していた。





目の前で昏々と眠り続けるトグサをみて、深い溜息を吐く。
トグサは仮眠室で寝るよりも、共有室のソファに身を横たえ、眠ることが多い。
バトーが、どれほど言っても、この睡眠スタイルは変わらなかった。

この、残酷なまでの無防備さは、どうか?

歯噛みをしたくもなるが、落ち着けと自分に言い聞かせる。
だいたい、ここでトグサを責めるのは、お門違いというものだ。
トグサは知らないのだから。
ここにいる相棒が、自分に対して、特別の感情を抱いているなんてことは。
全く。
露ほども。


わからせて、警戒させるべきか。
と思うが。
トグサに、警戒されるのは、痛い。
とも思う。


任務にも支障が出るだろう。
それは、不本意なことだ。
故に。
まんじりともせずに、トグサの寝顔を眺めることになるのが、常だった。





バトーは、いつものように、もう一つあるソファに腰を下ろした。
暇つぶしにテーブルに投げ出されていた新聞紙を読もうと、バトーが手に取ろうとした瞬間。
ソファが軋んだ。
それに同調するような、身動ぎする音。
ついで、掠れた声がした。
「─────旦那?」
「おう」
ソファから身を起こしたトグサが、目を擦りながら、時間を確認してくる。
それに答えてやりながら、バトーは座ったばかりだが立ち上がった。
「コーヒー、飲むか?」
「・・・悪い。頼む」
トグサはそれに言葉を返し、更に口の端を引き上げて、続けた。
「旦那、どういう風の吹き回し?もしかしたら、今日は雨かも」
「───いらねえのか?」
「いります。お願いします、センパイ!」
寝起きでも憎まれ口を忘れない相棒に、バトーは軽くトグサの頭を小突いた。



コーヒーを手に戻ってくると、トグサはまだ眠いと訴える瞼を必死に持ち上げようと、格闘している最中だった。
乱暴に、目を擦り、額を拳で叩く。
その必死の抵抗に、バトーは呆れた。
往生際の悪い。
「大人しく、仮眠室に行って、寝ちまったらどうだ?こんなとこじゃなくよ」
コーヒーを差し出しながら、忠告するが、トグサはそれを受け取りながらも首を振った。
「いや。止めとく。そんなことしたら、呼び出しがあっても反応できねぇもん」
欠伸を一つ、それから、コーヒーを一口飲む。
そして、まるで子供のように幸せそうな表情をするトグサにバトーは苦笑した。
これが、妻子持ちのカオだろうか。
「あー、目が覚めるー」
「そうかい」
「大先輩の優しさのおかげ」
「なら、もっと感謝しろよ、後輩」
いつもの軽口。
にやっと笑ったトグサは、
「してるよ、いつもね」
そう言って、またコーヒーを美味そうに飲んだ。





何気ない、日常をそこに感じる。
心の底の獣が、なりを潜めるのは、こんな瞬間だ。
それを壊したくないのは、獣も同じか。
欲しいと叫びながら、傷つけることを恐れ、怯む。
ならば。

自制。
叫ぶ獣を飼い馴らし、触れない。
叫びを飲み込み、この距離を保つ。

これが、最善だ。



バトーは、己に言い聞かせた。



2005年04月10日(日) 放置・・・してた訳じゃ、ないんです、よ?・・・・orz

気付いたら、ここ、書いてないことに気付きました(汗)
いや、表でやってる企画の狩りとか(狩った人のお題を妄想したり)、絵茶で捧げたSS、諸々のページを作ってたら・・・。
知らず知らずの内に、ここが放置気味に、なっちゃった?みたいな。

・・・駄目じゃないの・・・・・・・orz

えー。
来週の頭くらいに、ここで更新します。
11のお題のうちの一つを。
やけに長くなったうえに(汗)内容も、まぁ、裏と言えば裏のような。微妙なカンジなので。
こっちで、連載・連続更新しようと思います。

あ、鬼・・・鬼の更新も、止まって・・・・(黙)
今月中には、再開の予定で・・・orz



もう、なー。
書きたいことが溢れかえって、どうしたらいいのか、分かんなくなってきましたよ(笑)
幸せで、楽しいことなんですが。



2005年04月01日(金) 嘘ですから・・・・・・・orz

エイプリルフールだから、嘘言ってみたかったんです・・・orz
正確には。

R指定”かも”しれないものも、掲載(微妙な感じでね★)

です・・・・orz
早々にバレる嘘はつかないように。
自分の首をぎゅっと絞めることになるからね。
うん。


orz(反省)



ま、本当に微妙なR指定になりそうでして・・・・・・。
最初から、言っておきます(笑)
載せる前から、凹むね。
でも、ここ、そのために使うのが目的だったんだ。
ね?(聞くな)
当初の目的をやっと果たす時がきたみたいです。

4月は、がんばります。
色んな意味で(笑)


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武藤なむ