ノート

2002年07月06日(土) 奇跡-いすゞ自動車vs日石三菱-

午後10時をまわった。鳴り物の応援が禁止され,打球音と選手の声が
響き渡る横浜スタジアム。
負けたら,後が無い。(都市対抗に出場できない)
“勝利”をかけて,いすゞ自動車と日石三菱は争っていた。

酒井,巴田の先発で始まったこの試合。先制したのは日石だった。
いすゞも一時は同点に追い付く粘りを見せていたが
再び日石がリードするなど,シーソーゲームな展開。
好投を続けている巴田から,なかなか同点打を打てないでいた。
とうとう回は9回裏。今季限りの廃部で,最後の都市対抗。
いすゞはそんな宿命を背負っていたが,もう,やるしかなかった。

この回先頭の鈴木が出塁。無死1塁でバッターは5番佐伯。
打球はライト方向へぐんぐん伸びる。
好投を続けていた巴田,日石の野手陣皆が打球を追った。
スタンドイン。土壇場で同点に追い付く意地の一発。
さあ!試合が面白くなってきた。

延長に突入した。神奈川県予選2度目の延長戦だった。
先日の東芝とふそうとの戦いは引き分け再試合。
試合が終わったのは夜の11時過ぎ。
白熱した戦いが多かった今年の神奈川予選だとは言うまでもなかった。

延長戦に突入したいすゞvs日石。
いすゞは7回途中から投げている馬場が
日石は巴田にかわり,井深がそれぞれ投げている。
どちらも打たれる気配が無かったと言う。
それもそのはずで,試合は延長15回を迎えた。
15回表,遂に馬場が崩れ日石に貴重な1点が入った。
誰もが,いすゞの負けを覚悟し,点が入ったとしても同点止まりだろうと
思っただろう。または,再試合かなどと呟いた人もいたはずだ。
15回裏,いすゞ最後の攻撃。
日石の投手は,井深にかわり,塩崎。
この塩崎は,重工横浜C戦で同じく中継ぎとして登板していた。
日石は8回に同点に,9回にサヨナラ2ランを放っていた。
もしかしたら・・・そのときのことを思い出していたのかも。
立場は全く逆である。でも,ただ塩崎が3人を,たった3人を抑えれば
いいだけだった。

それとは逆に,いすゞは奇跡を信じていた。
「うまくいけば,佐伯に打順がまわる。そのチャンスだけでも」と。
神様は,奇跡の舞台を用意してくれた。
1死1,2塁,バッターは佐伯である。
遂に佐伯のバットは,4時間40分の死闘に終止符を打った。
サヨナラ3ラン。いすゞは最後の都市対抗切符を手に入れた。
奇跡<常識では理解できないような出来事>という言葉が
相応しい試合のようだった。同じ打者が同じような場面で本塁打を。
何より,都市対抗出場をかけた場面で
このような戦いを見せてくれた,両チームに感謝したい。
10日から始まる関東予選,ぜひとも日石には頑張ってほしい。

純粋に野球が好きならば,こんな試合を
1度はナマで見てみたいと思う。
本当の野球ファンならば,こういう試合を期待する。

H E
日:001 101 010 000 001|5 11 2
い:000 020 002 000 003|7 11 2


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