SS‐DIARY

2019年02月09日(土) (SS)こんな雪の日


見なくてもわかる、これは雪だとヒカルは思った。

空気の冷たさと独特の静けさ、何より昨日の天気予報が今日は雪だと言っていたのだ。


(今日はもう絶対外に出ねえ)

そう思い二度寝を決めようとしたのに、ヒカルは先に起きていたアキラに揺り起こされることになった。


「起きろ進藤、牛乳が無い」

「は?」

「パンも無いしハムも卵も何も無い」

「なんで」


昨日買っておかねーんだよ、今日雪だって知ってただろうと言う言葉を寸でで飲み込む。

知っていたのは自分も同じで、なのにまあ大丈夫だろうと面倒臭さもあって買い物せずに帰ったのだから。

アキラと二人の同居生活、家事の負担は平等だ。


「だったら米でいいんじゃね? おれ、ごはんですよがあればそれでいいし」

「米も無い。ちょうど切れてる。それにぼくはどうしてもホットミルクが飲みたい気分なんだ」


だから起きて買い物に行こうと容赦なく揺さぶられてヒカルはため息をついてアキラを見た。


「…どうしてもホットミルクじゃなくちゃダメなん?」

「ダメだ」

「カフェラテでもいいならコンビニに行くけど」

「え?」

「めっちゃ寒いし、雪だし、コンビニの入れたてのカフェラテならおれも飲みたい」

「…ならそれでもいい」


にこっとアキラが笑った。


「ラテならミルク分多いしね」

「だったら決まりだな、ちょっと待ってろよ」


そしてヒカルは震えながら即効で着替え、暖かい装備で二人して近所のコンビニに行った。

買い物は後にしてまずは二人でカフェラテを頼み、イートインのコーナーで並んで座ってのんびり飲む。


(寒いし、雪だし、絶対出たくなんかなかったけど)


こんなふうにアキラと二人で降る雪を眺めながら熱いカフェラテを飲むのはいいなと思った。


「そうだ、今日はおでんにしよう」


ラテを飲みながらアキラが言う。


「それ昼? 夜?」

「どちらでも。帰ったらキミきっと寝るんだろう?」

「んー、いや、それはおまえ次第かな」


ニッと笑うとアキラの頬が薄く染まる。


「ぼくは…どっちでもいいよ」

「だったらとりあえず大量に仕入れていくか」


ということで、朝食のミルクやパン、ハムなどの他に優に二食分はあるおでんを買ってヒカルはアキラと仲良く雪の道を帰ったのだった。



2019年02月04日(月) (SS)意外とアキラも言う時は言う


クリスマスや誕生日、すぐ先にあるバレンタインに比べて恋愛要素の低い節分は印象が薄く忘れやすい。

少なくともヒカルにとってはそうだった。

だからごく普通にアキラと買い物に行って、スーパーで山盛りに並べられている恵方巻を見て初めて思いだしたというわけだ。


「そういえばそうだったな」


アキラも意識に無かったらしく感心したように恵方巻とその隣に並べてある豆を見つめている。


「どうする? 男二人で豆まきもなんだし恵方巻でも買って行って食う?」


そうすれば夕食のメニューはそれで決まりだ。

けれどアキラは少し考えた後に首を横に振った。


「一食にしては高すぎる。それに恵方巻ならもう食べたし」

「え?食ってないだろ」

「食べたよ夕べ。間違いなく十二時は過ぎていたから節分に食べたことになるんじゃないのかな」


キミもぼくもと言われてヒカルははてと考えた。そしてやがてはっと気が付いて顔を手で覆う。


「あ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

「それとも食べていなかったかな? あれはぼくの気のせいだったか」

「いや、食った! 確かに食った! 美味しく食べさせていただきましたっ!」


恥ずかしさのあまりアキラの顔を正視できず。それでもなんとか絞り出すように言う。

「あれでもう充分デスっ!」

「だったら豆だけ買って帰ろうか。「男二人の豆まき」になるけど」


ぶんぶんとヒカルが首を縦に勢いよく振る。


「豆撒きたい。おれ、今めっちゃ豆撒きたい気分」

「そうか、じゃあ豆を買って帰ろう」


そして夕食は無難にアジフライと野菜炒めとみそ汁になった。

デザート?は豆でお互い歳の分を食べ、それで完了したはずなのに、何故かその後やはり縁起物だからとアキラが言い出して、結局二人は『恵方巻』を再び食べることになったのだった。


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