| 2019年03月17日(日) |
(SS)Search & Destroy |
指定された待ち合わせ場所に行くと、アキラは俯いて立っていた。
「とう」
やと呼びかけた所で気が付いて顔を上げる。
(般若だな)
怒りに満ちた顔でアキラは足元から何かを拾い上げると、そのままつかつかヒカルの側まで歩いて来る。
「くれてやる」
そしてばしっとその何かをヒカルに叩きつけて足早に去って行った。
「っ痛ぇ」
よりにもよって顔に叩きつけやがってと、ヒカルは頬をさすりながら道路に落ちたそれを拾い上げた。
何度も何度も踏みつけたらしい、完全にひしゃげた洋菓子の箱。
クッキーかマカロンか、それともチョコレートだろうか。
十センチ四方ほどの小さな箱は哀れにも靴跡だらけでぺしゃんこだ。中身が無事であるはずがない。
「だったらくれなきゃいいのになあ」
律儀にお返しをくれようとする。
喧嘩の勃発はいつだっただろうか。
冷戦状態で少なくとも二週間は経つ。
三月十四日に呼び出すくらいだから少しは怒りが収まったのかと思ったら全くそんなことは無かったらしい。
(未だ激しく噴火中か)
もしかしたら律儀なのでは無く、己の怒りを知らしめたかっただけかもしれないが、それでもヒカルは嬉しいと思う。思ってしまう。
「大体、しおらしいあいつなんてあいつじゃねーもんな」
油断したら斬られるくらいの関係がヒカルはスリリングで大好きだ。
「どんな気分でこれ買ったんだか」
想像するだけでぞくぞくする。
そんな自分を変態かもとヒカルは思う。
(それでもいいさ)
たぶん次に会った時、殺し合いのようなセックスを自分とアキラはするだろう。
「それでこそ…だよな」
まったくもって業が深い。
けれどとても幸せだと思いながら、ヒカルは貰った箱を大切に抱え、鼻歌交じりに帰ったのだった。
end
|