SS‐DIARY

2018年03月11日(日) (SS)桜ラテ



「お、桜ラテだって、美味しそうじゃん。おれ、これ飲もうかな」


入ろうとしたカフェの入口に貼ってあったポスターを見て進藤が言った。


「なあ、おまえもこれにしろよ」


桜すごく好きじゃんかと言われて眉を寄せる。


「こんな…見るからに甘そうじゃないか。それに桜って言っても味はきっと桜餅みたいなものか、さくらんぼの味だと思うし」


だって桜は花なのだから、香りがあったとしても味があるはずも無い。
その香りだって、きっと花では無く葉の香りだろう。


「じゃあやめとく?」


ゆっくりとガラス戸を開けながら進藤がぼくを振り返った。


「いつも通りカフェラテとかモカとか…」
「誰が飲まないと言った! もちろん飲むに決まっているだろう」


睨みながら言ったら進藤がにやっと笑った。


「うん、そーだよな。おまえいつもそーだもんな」


うっすら色づいたドリンクの上に山のようなホイップクリームと削ったピンクのチョコレート。

激甘なのはわかっているけれど、それでも何故か頼んでしまう。

この季節だけの『限定品』


「似て異なるものだと思っているけど、それでもやっぱり桜だからね」


ぼくは桜が好きなんだよと、つんと顎を上げて言ったら進藤は、「よっく知ってる」と可笑しそうに笑って、ラテの他に桜のロールケーキも二つ注文したのだった。

end


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