SS‐DIARY

2018年02月14日(水) (SS)これが今年のバレンタイン



出かける間際、先に靴を履き終えた進藤が、「ん」と顎を上げるとぼくに向かって手を差し出した。

「はい」

ぼくが斜め掛けのカバンを開けて四角い箱を手渡すと、「ん」と満面の笑みになって彼は箱を受け取った。

「さーて、じゃあ行くかあ」

そしてそのままドアを開けようとするので、ぼくは彼のコートを引っ張ると「ん」と先ほどの彼と同じように顎と手を突き出した。

「わかってるよ、わざとだよ。無いわけないじゃん」

進藤は苦笑したように笑うとデイバックを下ろして、中から平たい箱を取り出してぼくに手渡した。

「はい」

ぼくたちが相手から受け取った箱はどちらもきれいにラッピングされている。

「外出た瞬間敵だからなあ」

ため息まじりに進藤が言った。


ぼくたちは今日、天元戦のタイトルをかけて戦うのだ。

「それがわかっているならさっさとよこせ」

くれないつもりかと思ったじゃないかとぼくが軽くにらみつけると進藤はにいっと笑ってぼくの頬にキスをした。

「おまえのそーゆー顔が見たくてさ」

普段あまりおれから欲しがらないじゃんと言うので突き放して舌を出してやった。

「ぼくはいつも欲しがっている。とりあえず今一番キミからもらいたいのは天元の座かな」

「は? やだよ。唯一おまえから三年守りきってんのにそう易々とあげられないね」

「…チョコ、返してもらおうかな」

「だったらおれのやったのも返せよ」

数秒無言でにらみ合い、それから笑う。

「返されても困る。それは結構苦労して選んだものなんだから」

「おれもだよ!女の子にもみくちゃにされながら買ったんだから有難く食えよ」


本当にまったく。

恋人がライバルだというのは、こういう時にすごく面倒くさい。


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