SS‐DIARY

2016年08月28日(日) (SS)ぼく馬鹿


8月も残り少なくなったある日、カレンダーを眺めていた進藤が、唐突に「あっ」と言って立ち上がった。

かけてある壁に近寄り、指で日にちを辿るようにしてから振り返る。


「今度の週末、おれもおまえも休みじゃん。やった!」


嬉しそうにはしゃぐ声を聞きながら、ぼくは憂鬱な気持ちになった。

特に何をしたというわけでは無いけれど今月は出費がかさみ、少し家計を引き締めたいと思っていた所だったからだ。


「悪いけど、どこにも行かないよ。遊びに行くお金なんか無いから」


曖昧に言っても効かないので、少々きつめに真顔で言う。


「折角の休みだけど、ぼく達に出来ることは精々一日中家でゴロゴロしていることくらいだね」


言い過ぎたかな? と思ったけれど、進藤は少し驚いた顔をしてから次にぱあっと満面の笑みを浮かべた。


「……天国かよ!」


冗談では無く、心底喜んでいるような様子に、逆にぼくの方が驚いてしまった。

ああ、彼がぼくバカで本当に良かった。


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基本、ヒカルはアキラと一緒に居られればそれで幸せなタイプです。



2016年08月21日(日) (SS)DEAD OR ALIVE


えげつない話だけど、正直二週間もSEXしていないとヤリたくてたまらない。

本当は一週間だってキツいし、3日だってもぞもぞするけれど、出来ない時は仕方が無いので一人で抜いて我慢する。

でもここの所は矢鱈目ったら忙しく、毎日疲れ果てていたので抜く気力も無く爆睡していた。

それでも溜まるモノは着実に溜まって行くわけで、その日は爆発寸前という感じだった。


「あーっ、くっそ!」


ヤリてぇとは、さすがに口に出しては言えないけれど、心の中では優に百回以上繰り返していた。

なのに肝心の恋人はと言えば、遠く離れた人混みの中でお上品に笑っていてこちらを振り向きもしない。



そもそもは二週間前喧嘩したのが始まりだった。

久しぶりの逢瀬だったのにも関わらず、検討からマジな喧嘩にもつれ込み、そのまま怒り心頭で女王様はおれのマンションから帰って行ってしまったのだ。

喧嘩はいつものことだし、喧嘩したら平気で二週間から一ヶ月会わないことも普通だ。

でもその間、自己処理すらしなかったというのは初めてで、おれは体がキツくてたまらなかった。


(でも、だからってゴメンナサイっておれの方から謝るのは癪だし)


ヤリたいので許して下さいでは塔矢の怒りも解けないだろう。

そんなこんなでもやもやの真っ最中だというのに、今日は棋戦のスポンサー主催のパーティーなんかに駆り出されているわけで、ああもう早く帰って寝たいもとい抜きたいという気分で一杯で、仕事だというのに愛想を振りまく気にもなれないでいた。

すると、そこにふいに声をかけられたのだ。


「こんにちは。進藤さん……ですよね」


振り向いた先に居たのはおれでも知っている人気女優で、カクテルグラスを持ちながらにっこりとおれに笑いかけた。


「こんばんは、じゃないんですか?」


芸能界ではどうか知らないけれど、今は夜で昼じゃ無い。


「あら、ごめんなさい。習慣になってしまっているものだから。ちょっと今、連れが仕事の電話で会場を抜けていて暇しているのよ。お話ししても構わないかしら」

「どうぞ別に。でもおれ、ウィットに富んだ会話ってヤツとか出来ねーですよ」

「そんなの。私だってしたこと無いわ」


テレビや映画でよく見かけるその顔は、間近で見てもかなりな美人で、喋ってみると意外にも気さくで感じが良かった。




「へえ、女優さんでもユニクロ着るんだ。おれはてっきり海外ブランドしか着ないんだと思ってた」

「失礼ね。そりゃ、今日みたいなパーティーには気張った物を着るけれど、普段家に居る時にグッチやシャネルなんて着ているわけ無いでしょう」

「ふうん、じゃあもしかして百均なんかも行ったりする?」

「行きます。まったく人をなんだと思っているの? セリアで雑貨を良く買うし、食器は大体ニトリで買ってるわよ」

「いや、ニトリは百均じゃ無いし」


他愛も無いと言えば他愛も無い会話を続けながら、おれは気がついたら彼女の上から下から舐め回すように眺めてしまっていた。


(結構着やせするタイプ? でも腰はマジですげえ細い)
(足首細いし、こういうタイプってあそこの締まりもイイんだよなあ)


もし心の中を覗かれたら手に持っているクラッチバッグでぶん殴られそうだったけれど、結構あけすけなことを考えていた。

この女と寝たらスッキリ出来るんだけどなあと。もちろん冗談半分だが。

と、唐突に彼女がおれの耳元に顔を寄せ、内緒話のように囁いた。


「ね、もしこの後暇なら上に行かない?」

「上?」

「そう。実は昨日からこのホテルに泊まっていて、今夜も一泊する予定なのよ」


吹きかけられる息は甘く湿っている。

ついさっきまではごく普通に喋っていたのに、今はがらりと雰囲気が変わり、目つきが濡れたようになっている。

女優ってすげえなあと素直に思った。


「……連れのヒトがいるんじゃ無かったんデスか?」


ごくりと唾を飲み込みながら、それでも辛うじて問い返す。


「そんなの、嘘に決まってるじゃない。あなたと話すきっかけが欲しかったのよ」


しなだれかかられ、日干し状態だったおれの全身に震えが走る。


「パーティーの最初から、いいなあと思っていたのよ。あなた、すごくセクシーだもの」


ああ、マズイ、絶対マズイ。

断れと全力で理性が言うけれど、本能が抗いがたく彼女を受け入れようとしている。

相手は女優だし、おれを誘っているのはその場限りの相手が欲しいからなんだろう。

恋愛の噂の絶えないヒトだし、たぶん後腐れは絶対に無い。

そう値踏みして、頷きかけたその時に、いきなり横から伸びて来た手がおれのネクタイをぎゅっと握り、そのまま引き絞るようにして後ろに持ち上げた。


「っ」


ぐえっと絞め殺された蛙のような声を上げるおれに、氷のように冷たい言葉が突き刺さる。


「キミ、相手を間違えているぞ」


振り返るまでも無い、塔矢だ。


「何? あなた」


驚く彼女を一瞥して、ネクタイを締め上げ続けながら吐き捨てる。


「この男には既に決まった相手が居るので獲物なら他で探していただけませんか?」


そして相手の返事も待たずにおれを会場から引きずり出した。


げぇっ、げほっと離された途端におれは体を二つに折って咳き込んでしまった。


「なに……しやがる。殺す気か」

「別にそうしても良かったんだけどね」


塔矢は冷ややかで、触れれば一瞬で切れそうなくらいに鋭利だった。

怒っている。

一目見て解るくらい塔矢は本気で怒っていた。


「まったく、キミはケダモノか? 据え膳どころか出来れば誰でも良いんだろうが!」

「うるせえ、おまえのせいだろうが、ずっとツンケンしやがって」

「だからって誘われれば誰とでもほいほい寝るのか、最低だな」


そして塔矢は再びおれのネクタイを握ると、今度は自分の方に寄せるようにして強く引いた。

ぐっと顔を近づけた状態で睨み付けながら冷ややかに息を吐く。


「……感謝しろ。もしさっきの女に付いて行っていたらキミとは縁を切るつもりだった」


永久に金輪際、キミという存在をぼくの中から抹消するつもりだったよと言われておれは目を見開いた。


「だったらそのまま見過ごせば良かったじゃん。こんなケダモノ野郎、居ない方がおまえは清々するんじゃないのか」


言った途端、ネクタイを引く力がぐっと強くなった。


「まったくだ。そう出来ない自分が不甲斐ないよ」


そうしてから目を眇めて言う。


「ぼくも上に部屋を取って来た。だからさっさと付いて来い」

「え?」


相変わらずの絞め殺される一歩手前状態で、おれは顔を歪めながら塔矢に聞いた。


「意味、わかんねーん…、だけど」

「わかるようにしてやろうか?」


ぎゅうっと喉にネクタイが食い込んで、おれは息が出来なくなった。


「抱かれてやるって言っているんだ。グダグダ言わずに言うとおりにしろ」


締められる、その力の強さはそのまま塔矢のおれへの怒りでおれへの愛だ。

おれを見るその目は、軽蔑と冷淡が入り交じった暗い炎のようだったけれど、おれの下半身には間違いなく効いた。


「行、く」


よしとは言わなかったけれど、ネクタイを引き絞る力が少し緩む。


「本当に……キミは最低だな」


張り詰めたおれのズボンの前に目をやりながら、眉を顰めて唾棄するように言う。

どうしてこんなキミを愛しているのか自分で自分が解らないと。

けれどネクタイは決して離さないまま、塔矢はおれを乱暴にエレベーターホールまで引きずって行ったのだった。


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『どんなに怒っていても、ヒカルが他の誰かと寝るのは絶対許せないアキラ』が今回の話のハイライトです。



2016年08月13日(土) (SS)虎と龍


喧嘩した時を除いて、大抵ベッドに入っても二人ともすぐに眠らない。


「それでさー、最近本田さんがすげえコアなオカルトものにはまっててさ」

「映像? それとも小説?」

「小説…になるのかな。ネットで連載してるらしいんだけど、結構えぐい描写が多くて。ちょっと見せてもらったけど、おれはああいうの苦手」

「ふうん」


その日あったことや、見たこと、聞いたこと。

もちろん寝る前にも話は沢山しているけれど、ベッドの中では少しとろりとして気怠い雰囲気でぽつぽつと話す。


「そういえば小説で思い出したけど、この前緒方さんの部屋に行ったら見慣れない装丁の文庫本があって、なんだろうと思ったらラノベだったんだ」

「え? マジで? 嘘!」

「聞いたら間違って買ったんだって言ってたけど、何をどう間違えたらあんな派手な装丁の本を買うんだか。緒方さんこの前恋人と別れたばかりだから、暇を持て余してるんだなあって可哀想になったよ」

「もしおれと別れたら、お前もラノベ読んじゃったりするの?」

「唐突だなあ」


ヒカルの問いにアキラは苦笑したように笑い、それからいきなり手を伸ばすと、ヒカルの腹を掌で強く叩いた。


「わっ、痛っ」

「ラノベを読むかどうかは解らないけれどね、怠惰に生活してこの腹が掴めるようになったら、キミとの仲を考えるかもしれないね」


だから精々油断するなよと更にもう一度叩いてアキラが言う。


「痛っ、痛いって! くそ、やったな」


がばっと起き上がり、ヒカルがアキラに馬乗りになる。


「おまえの弱点なんて嫌って程知ってるんだからな」

「へえ?」

「脇腹とか」


言いながらすっと指で肌を撫でる。途端にびくっとアキラが震えた。


「足の付け根の所とか」

「ちょっ…止めろ」

「それからうなじも結構弱いよなあ」


顔を伏せ、うなじには細かく舌を這わせる。

耐えるようなアキラの声に満足そうにヒカルが笑いをこぼした。

いつもなら、このまま行為に移ることも多い。けれどこの日はヒカルはそうはせずに、舐めるのを止めると体を離した。


「……しないのか?」


アキラが問うように言う。


「おまえがしたいなら、おれはいつでもしたい」

「ケダモノめ」

「でも今日はおまえ疲れてんだろ。だからいいよ、見逃してやる」


ちゅっとついばむように唇にキスをして、それからアキラの体から降りるとまた大人しく隣に横たわった。


「明日な。明日させて」

「キミの方が疲れていなければね。キミ、明日は埼玉のイベントに行くんだろう」

「北海道でも博多でも疲れねーよ、その後にご褒美が待ってるなら」

「バカ」


小さく笑い合い、それからどちらからともなく探って手を握った。


「おやすみ」

「ん、おやすみ」

「好きだよ」

「おれも、愛してる」


そして程無く手を繋いだまま、二人とも安らかな息をし始めた。


世界中の誰も知らない。

虎と龍がこうして毎晩、じゃれ合い、睦み合っていることを。


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仲良し一番!



2016年08月12日(金) (SS)夏と冊子と金魚と塔矢


暑い最中、緒方先生に呼び出されて、一体なんだと思ったら記者室に連れ込まれ、後援会の会報の発送を手伝うことを命じられた。


「えー? これ本来は事務の仕事じゃないんデスか?」


山のようなチラシと会報、封筒を見てうんざりしながら文句を言うとじろりと睨みかえされた。


「会報担当の野本さんが盲腸で入院したんだ。佐々木さんは娘さんが里帰り出産で休暇を取っているし、久本さんは腱鞘炎で封入作業が出来ん。小林さんは法事で、友部さんは親戚の結婚式だ」


なんかもう、日本棋院の事務方全滅なんじゃないかと思うくらいの惨状ぶりにさすがにおれもそれ以上文句を言う気になれなかった。


「……でも、それにしたっておれじゃなくても他に幾らでも暇なヤツいるでしょうに」

「おまえだけじゃなくアキラもちゃんと呼んでいるだろうが、ぶつくさ言わずに作業しろ」

「そうだよ進藤、緒方さんはこう見えていざと言う時に呼びつけられる友達も後輩もいないんだから、ぼくらぐらい手伝ってあげないと」


先に来ていて黙々と印刷物をまとめていた塔矢が、顔を上げてにっこりと言う。


「ねえ? 緒方さん」

「そんなわけがあるか! 芦原だって呼べば来る」

「だけど芦原さんに断られちゃったから仕方無くぼく達を呼んだんですよね。お昼と夜ご飯、楽しみにしていますから」


聞けば芦原さんは今日は恋人とねずみの国でデートなのだと言う。


「そりゃそっちに行くな、絶対」

「だろう? なのに結構恨みがましくさっきまで口説いてたんだよ、緒方さん」


くすくすと塔矢が笑うのに、緒方先生は憮然とした顔つきで煙草を咥えた。


「あ、この部屋禁煙ですから」


すかさず飛んだ注意に緒方先生の眉が深く寄る。


「は? そんなこと初めて聞いたが」

「他の日は知りませんが今日は禁煙です。こんなに紙が一杯ある所で煙草を吸って火事になったらどうするんですか」


塔矢は塔矢で徹夜明けの所を呼び出されたとかでめっぽう機嫌が悪い。

まあ、そういうおれも昨日まで遠方に行っていて、やっと休めると思った所だったのだが。


「……取りあえず昼は焼肉だな」


ため息をついてチラシに手を伸ばしたおれに塔矢が頷く。


「靖国通りのイタリアンでもいいんじゃないか?」

「あー、あれな? でも昼からニンニク臭くなるのはなんだから、いっそ鰻でもいいんじゃないか?」

「いいね。坂を下った少し先にある店だろう」

「そーそー、桑原先生があそこ美味いって言ってたからさー」


チラシと冊子と振込用紙を重ねて封筒に入れる。それを一番端に居る緒方先生の前に置いた。


「お願いします」

「それはどっちだ。鰻か? それとも封をしろということか?」


期せずしておれと塔矢の声が重なる。


「「両方」」


顔を見合わせて、おれと塔矢はくくっと笑った。


「まったく……ろくでも無いガキ共だ」

「それでもこうして呼ばれれば来るし、ちゃんとお手伝いもするんですから、どうかそれに相応しく可愛がってやってください」

「そうだよ! 大体緒方先生、この前本因坊のタイトル獲ったばっかで財布潤ってるじゃんか!」

「アキラには寿司、進藤はそうだな、交差点の所の店のラーメンでも食っておけ」

「わ、ひでえ!」


嘘とも本気ともつかないやり取りをしながら、それでも昼頃には作業は半分ほどが終わっていた。


「……もうすぐ昼か。メシに行くか?」


緒方先生が時計を見て促すのにおれは速攻で頷いて手を止める。


「塔矢、メシだって」

「ちょっと待って、きりの良い所までやってしまうから」


塔矢は一番最初、数ページの冊子をホチキスで留める作業をしている。


「……そういえばさ、おれずっと気になってたんだけど、どうしておまえホチキスを留める場所がバラバラなん?」

「別にそんなことは無いけど」

「えー? でも結構揃って無いって言うか、ズレてるって言うか」


言いながら塔矢の手元を見る。

ちょうど塔矢はホチキスを留めようとしている所で、その手が最初に針を定めた場所から迷うように位置を動かしたのを見て気がついた。


「……もしかして、金魚を避けてる?」


パチンと小気味良い音をたてた後、ホチキスを持った塔矢の手が止まった。

実は冊子の表紙の紙には透かしのように金魚の柄が入っていて、ランダムなので決まった場所で留めようとすると希に金魚の真上に針が刺さることになる。

どうやら塔矢はそれが嫌で避けて留めていたようなのだ。


「ほう、カワイイことをしているじゃないか」

「違います!」

「じゃあバラバラな場所で留めずに上下二�僂僚蠅覗管�留めろ、見苦しいだろうが」


さっきの仕返しか、緒方先生はにやりと笑うと塔矢に言った。


「別に金魚の柄を気にしているのでなければ普通に出来ることだと思うが?」

「出来ますよ、もちろん」


頬を赤く染めながら塔矢は言われた通りの場所に針を定める。でもそれはやはり金魚の真上に当たり、塔矢の指が明らかに躊躇った。


「本物ならともかく、絵で描かれた金魚が可哀想だとは、随分センチメンタルな所があるな」

「違うって言っているじゃないですか!」


からかわれていると解っている塔矢は怒り心頭で、でもやはり金魚に針は打ち込めない。


「あー、別にいいじゃん?」

「何が!」


キッとおれを睨み付ける塔矢におれは言った。


「別に針の位置がバラバラでもそんなの受け取った人にはわかんないし、誰も気にしないと思うから好きなように留めろよ」

「そんなことを言って! 本当はキミもバカにしているくせに」

「いや、してない」


くってかかる塔矢におれは至極真面目な顔を作って言った。


「バカになんかして無いし、からかってもいねーよ。むしろ可愛さ百倍で惚れ直したから!」

「なっ……」


そして緒方先生にも釘を刺す。


「つーことなんで、緒方先生もそれ以上塔矢のこと虐めないで。もしこれ以上虐めるようなら、おれ昼飯食ったら帰りますからね」


しんと部屋の中が静かになる。


「…それでも昼は食って行くのか」


しばらくしてぽつりと言って、緒方先生が笑った。


「本当にろくでも無いガキだな。でもまあ……」


ちらりと塔矢を見て、それからまたおれを見る。


「ここで一人脱落されても困るからな、今日はこれくらいで許してやる」

「ぼくが帰る可能性もあるんですからね」

「それはもっと困るな」


困るから取りあえず昼飯を食いに行こう。鰻でも寿司でもなんでも好きな物を奢ってやると、それで不穏な空気は洗い流された。


何にするか色々揉めて、何故か蕎麦になった昼食の後、再び作業を開始して目出度く夕方までには作業は全て終了した。

もちろん封入した冊子のホチキスはみんな違う。

きちんと几帳面に金魚を外されて留められていたのだった。


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ということで恒例の置き土産SSでしたー。

今回の新刊を作りながら思いついて書いた話です。

それでは!


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