SS‐DIARY

2014年03月23日(日) (SS)だってこうしないと食べないから

「塔矢はいい加減に進藤を甘やかすな!」

和谷くんにいきなり怒鳴られて憮然として返す。

「ぼくは彼にいつも歯に衣着せぬ言葉で対峙してきたつもりだ。そんなことを言われるのは心外だ」

実際ぼくは進藤に対して厳しすぎるのではないかと思ってしまうこともあるくらいなのだ。

けれど生ぬるい馴れ合いなどぼくにも彼にも毒にはなっても薬にはならないと解っているので敢えて心を鬼にしているというのに。

「それは碁に関してはな。でもそれ以外は甘甘なんだって!」
「そんなことは無い」
「そう思うんだったら、まずそのみかんの皮を剥いてやるのをすぐ止めろ」

キレ気味に再び怒鳴られて思わず自分の手元を見たぼくは、納得出来ないと思いつつ顔が赤く染まるのを止められなかった。


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アキラの隣には『あたりまえ』の顔でみかん待ちをしているヒカルがいます。



2014年03月21日(金) (SS)愛ってヤツは


迂闊にも寝過ごして昼近くに目を覚ました。

まだぼんやりしている頭でリビングに行くとちょうど進藤が出掛けようとしている所で、ああそういえば今日は指導碁が入っていたのだっけと思い出す。

「あ、起きたんだ。食欲あるか? あるならベーグルサンド作っておいたから食って」

コーヒーもポットに入れてあるからと言いながらにこにことぼくの側に寄って来る。

「なんだ? さっさと行けばいいだろう」

「いや、寝起きのおまえっていつもより更に綺麗で可愛いなって思ってさ」

ホントおれって幸せ者だとぼくを抱きしめてキスをした。

「…時間、遅れるぞ」

「冷たいなあ。まあでも続きは帰って来てからってことで」

今日は何もせずにゆっくり家で休んでいろよと慌ただしく更に二、三度キスをしてから進藤は家を出て行った。

(まったく朝から騒々しい)

思ってから、そうだもう『朝』では無いのだと苦笑した。

「それでも、毎日顔を突き合わせているのに綺麗だの可愛いだの」

彼の目はどうかしているのではないかとしみじみと思った。

それでも食事を作っていってくれたことは素直に有り難く、目覚ましを兼ねて食べさせて貰おうかなとテーブルに着いた。

そこではっと昨夜は風呂に入っていないことを思い出し手を洗うために洗面所に行った。

まだ半分眠りながら手を洗い、顔を上げてぎょっとする。

「…嘘つきめ」

鏡に映るぼくの顔は綺麗どころか疲労が色濃く滲んでいて非道い有様だったのだ。

目の下にはクマがあるし、髪は有り得ない寝癖になっているし、何より表情が最悪でやぶにらみのようになっていた。

それを見て進藤はあんなに嬉しそうに『綺麗だ』『可愛い』と言い放ったのだ。

「まったく…」

魂を削る棋聖戦の後取材などを受けて帰ったのが昨日の夜で、勝ちはしたもののぼくは体力的にも精神的にも限界で、進藤とろくに話もしないまま沈むようにベッドに伏せて眠ってしまった。

そして今の今まで寝汚く眠っていたというわけなのだが、ここまで非道い面相になっているとは自分では思いもしなかった。

「こんな顔…鬼でも逃げる」

それでも綺麗だと言える彼は天性の嘘つきか本当に目がどうかしているんだろう。

にっこりと笑う嬉しそうな顔。

容赦無い程強い愛情の籠もった温かい腕。

何よりキスはとろける程に甘かった。


鏡の中の自分の非道い顔を見つめながら、ぼくは彼の目がどうかしていて本当に良かったと思ったのだった。



2014年03月19日(水) (SS)NTR


朝からむっつりと進藤が機嫌が悪い。

「キミ、何が気に入らないのか知らないけど、そんな顔をされるとこっちも不愉快だ」

何で怒っているのか言ってくれないかと尋ねたら、ものすごく長い時間逡巡した後ぼそっと「寝取られた」と言った。

「は? 誰が」
「おまえが夢ん中で他のオトコとヤッてた」
「なんだくだらない。夢なんかのせいでぼくはキミに八つ当たられていたのか」

鬱陶しいからさっさと忘れろと言うのに恨めしそうにぼくを見る。

「そんなこと言うけど、すっげえショックだったんだから! 帰って来て寝室入ったらおまえが知らないオトコとベッドに居てさあ―」

「でもそれは夢だ。現実にはそんなことは絶対に起こらないんだからさっさと忘れて機嫌を直せ」

そうでないならぼくの方が、いい加減キミの態度にキレそうなんだけどと言ってやったらさすがに慌てた。

「わかったよ、わかったってば! もう言わないけど、でもマジで本当にすごえショックだったんだって!」

あれは心の破壊力半端無いよとまだ懲りずにぶつぶつ言っているので軽く足で蹴ってやった。

「まったく―」

そんなシチュエーションならぼくだって夢の中で嫌という程見ているとため息混じりに言ってやったら「え? それどんな?」「相手オトコ? オンナ?」と興味津々尋ねて来るので今度は加減せず本気の蹴りを入れたのだった。

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アキラ的には自分の方がよりヒカルを好きだと思っています。


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