SS‐DIARY

2013年03月15日(金) (SS)ホワイトデーアフター


ホワイトデーの翌朝、手合いのために身支度をしていると体のあちこちに赤い印が散っていることに気がついた。

(あんなに痕はつけるなって言ったのに)

普段はそれなりに守っている進藤だが、夕べはそれを綺麗に忘れてしまったらしい。

念のためにと洗面所の鏡で確認してみると首筋など隠しようも無い場所にも、はっきりキスマークだと解るものがついていてムッとした。


「進藤っ!」

今日一日、目ざとく見つけた何人に、にやにやと笑いながら尋ねられるんだろうかとうんざりした気持ちになったぼくは、取りあえずひとこと言ってやろうと進藤を探した。

ちょうど寝室から出て来た所だった彼はぼくが何か言うよりも先にトイレに入ってしまったので、出て来ざまに叱ってやろうと待ち受けていると、すぐにドアの向こうで悲鳴があがった。

「うわっ、痛っ、イテテテテテ」

何事かと驚いているとドアが開き、進藤が苦笑いを浮かべて出て来た。

「どうしたんだ、今のは何だ?」
「いや、おまえ昨日大サービスで口でしてくれたじゃん?」

甚だ朝に向かない内容だけれど事実であるので仕方無い。

「…それが?」
「あれ、すっごく気持ち良かったんだけど、興奮して歯ぁ立てるから傷になっちゃってさ」

染みて染みてびっくりしたと笑われてぼくは真っ赤になった。

「今日一日、気をつけないとダメだなこれ」

そうしてから改めてぼくを見つめて言った。

「で、何? なんかおれに用事があったんじゃねーの?」
「いや……別に」

なんでも無いと口の中でつぶやきながら、叱られるべきは彼ではなく自分の方であったことをぼくは一人で深く恥じ入ったのだった。


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