「なあ、おまえエイエンってあると思う?」
いきなり尋ねられて驚いた。それはとても彼が口に出しそうなことでは無かったからだ。
「…それが流行りの冗談か何かならぼくはそういうのは解らないから」 「馬っ鹿、違うよ。言葉のまんま。おまえ、ずーっと続く物とか変わらないものとかあると思う?」 「ぼくは…」
あると思うと答えようとした時、進藤がぼくの言葉を待たずに被せるように言った。
「…無いんだよな、これが」 「え?」
それもまた前向きな彼の口からは出ないような言葉だった。
「永遠の愛とか、変わらないナントカとかみんな結構フツーに口にするけどさ、本当はそんなもんどこにも無いんだ」
らしくない切ない口調と、ここだけはいつも通りのきっぱりと言い切った言葉尻に何故か非道く悲しくなって同時に非道く腹が立った。
「…だったらそう思っているといい」 「塔矢?」
きょとんとしたような顔に投げつけるようにぼくは言った。
「永遠に変わらないもの、ずっと続く物、無くなんか無い」
あるよと言ったぼくの言葉に進藤はすっと目を細めた。
「なんだよその断定口調、おれはそう『知ってる』から言ってんだぞ」 「ぼくも『知っている』から言っている」
ああダメだ。それは言ってはいけないことなのにと思いつつ、もう言葉が止まらない。
「ぼくのキミへの想い。どれだけキミのことを好きか、好きで居続けたか」
それは決して変わることが無いしこれからも永遠に続くよと、言い終わった瞬間もう彼の顔を見ていられなくなって背中を向けた。
「ごめん…悪い、冗談だ」
そして立ち去ろうとするのを進藤の手がぼくを捕まえて言った。
「逃げてんじゃねーぞ、この野郎」 「ぼくは別に…」 「せっかく信じてやろうかと思ったのに、それを一秒で破壊してるんじゃねーよ」
おれもおまえが好きだよ。ずっとずっと好きだったよと、そして無理やり引き戻されて、顔の間近で囁かれた。
「も一回、言ってくんない?」
頼むからおれに永遠を信じさせてくれよと、その瞳の色は信頼する者を失った子どものような寂しさを秘めていたので迷わず言った。
「あるよ」
――永遠はぼくとキミの中にあると。
決して不器用なはずは無いのに、進藤は爪を切るのがあまり上手では無い。
切りすぎて深爪になってしまうこともあれば、余所見をして斜めになってしまっている時もある。
「貸せっ、怖くてとても見ていられない」
あまりにもいい加減に切っているので、我慢出来ずに爪切りを取り上げて代わりに切ってやったこともある。
「わー塔矢、優しいー」
おれ下手だしこれからずっと切って貰おうかなと甘えてくるのには「今回だけだ」とぴしゃりと断ってやったのだけれど。
(思うにあれは注意が他に向いてしまっているからいけないんだ)
テレビが映っていればそちら、窓の外で鳥が羽ばたけばそちら。どうしてそんなに落ち着きが無いのだろうかと思う。
(でも、テレビも何も点いていない時もいい加減に切っているな)
あれは一体何に気を取られていたんだろうとぼんやりと考えながら、飲み終わったカップを流しに持って行こうとした時、ちくりと足の裏に痛みを感じた。
「―っ」
裏返して見てみると、切った爪が刺さっている。
「進藤のだ…」
そういえば昨日来た時にここで足の爪を切っていたっけと思いだし、忌々しくそれを拾い上げる。
「まったく…どうしてこう下手なんだか」
終わった後彼なりに掃除もしていたようなのだけれど、どうやら取りこぼしがあったらしい。
「昨日も別に、テレビも何も点いていなかったじゃないか」
それどころか窓も閉まっていて気を引くような物は何も無かったはずなのに。
「…一体キミはいつも何にそんなに気を取られているんだ」
呟きながらゴミ箱に捨てた時、ふとじっと自分を見ていた彼の瞳を思いだした。
(おまえのことだよ)
空耳のように声が聞こえる。
(おれはいつもおまえに気を取られているんだって)
そんなことにも気がつかなかったのか、バカだなあと言われたような気がしてムッとする。
「それでも―」
キミだってもういい大人なんだから爪くらいちゃんと切れと、ゴミ箱の底に沈む彼の小さな欠片を見詰めながら、ぼくは怒っていいのか笑っていいのか解らない複雑な気持ちで、大きく溜息をついたのだった。
| 2011年07月14日(木) |
333333番キリリク��「じゃん拳をまるで子どものようにする二人」 |
「最初はグーで行くぞ」
「いいとも」
そして一瞬睨み合った後、おれが口を開いてじゃんけんを始めた。
「最初はグー、じゃん、けん―」
ぽんで、おれが出したのはチョキで、塔矢はグーだった。
「ぼくの勝ちだね。じゃあやっぱり」
「いや、一回こっきりで勝ちってのは卑怯だろ、最低でも三回勝負にするべきだ」
「男らしく無いなあ」
「真剣勝負に男らしさもクソもあるか、それともおまえ、最初は勝てても次では勝てる自信が無いのか?」
「失礼な、勝てるよ。こんなものは心理戦と同じなんだから」
「言ったな。だったら文句言わずにもう一回やれよ」
「いいよ、それでぼくの勝ちだったら三回はやらないからね」
「いいとも。それじゃ行くぞ、最初はグー、じゃん、けん―」
次に勝ったのはおれで、塔矢は心底悔しそうな顔になった。
「まぐれで勝ったからって調子に乗られては困るね」
「まぐれはおまえだろ。次もおれが勝つよ」
ところが次はあいこで、あいこのあいこのあいこを繰り返した後に、再び塔矢がパーで勝った。
「勝負はついたね。これで文句は無いだろう。ぼくの勝ちだ」
「いや、待てよ。王座戦だって五番勝負じゃんか、最低でも5回までやれ よ」
「キミは…諦めが悪いって言うか卑怯って言うか」
「おれ達は碁打ちなんだから、それに乗っ取ってやるべきだろう」
「ああ言えばこう言う…」
「嫌ならいいんだぜ? 嫌なら」
「嫌だよ」
「あっ、卑怯、卑怯。そういうの言質を取るって言うんだっけ、なんだっ け」
「違うよ。でも嫌ならいいって言ったのはそっちだ」
だから嫌だと繰り返して言う塔矢を必死で宥める。
「そんなこと言うなよ。碁打ちは碁打ちらしく五番勝負にしようぜ? な?」
「もう…仕方無いな」
しつこく食い下がったら大きく溜息をついて塔矢が折れた。
「本当にもう五回以上はやらないからね」
「いいとも!」
結局、なんのかんのと互いが互いに言いがかりをつけて続けられたじゃんけん勝負は、一時間を過ぎた辺りで迷惑だからと物言いがついた。
「君達ねぇ、子どもじゃないんだから」
「だって、こいつが!」
「だって進藤がっ!」
第二回北斗杯予選会場。
前回と同じく勝ち抜いて代表になったおれと塔矢(それと社)にこれまた同じく引率になった倉田さんが言ったのだった。
『今回おれ面倒だから、大将とかそういうのはお前らで決めて』
おれは絶対大将をやりたかったし、塔矢も今回は譲らないというので公平になるようにじゃんけんで決めることにしたのだが―。
決まらない。幾らやっても決まらないのだ。
「とにかく、そういう大事なことをじゃんけんで決めるってこと自体が、まず間違っているから」
きちんと碁で勝負しなさいと、篠田先生に言われて渋々碁盤を出したおれ達は、でもまだじゃんけんの勝負がついていないのが悔しくて、打ちながらグーだパーだとやっていて、今度こそ本気で泣く程厳しく怒られたのだった。
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333333番のキリ番リクエスト、Jeakiさんから頂いたお題�癸魁屬犬磴鷏�をまるで子どものようにする二人」です。
これを読んだ全ての方が思われたように、上か下かを決める戦いにしようかと思いましたが、あんまりかなーと大将決定戦にしました。
でもこっちの方が案外激しい戦いになるかもです。
| 2011年07月13日(水) |
333333番キリリク�◆屮劵�ルからの着信を全て無視するアキラ」 |
「塔矢くん」
ふいに呼ばれて顔を上げる。
「何か、キミの携帯、震えているみたいだけど」
打っていた相手が「どうぞ」と目で促すのに「いいえ、大丈夫です」と笑顔で答える。
「かけて来ているのは誰かわかっていますので」 「そう?」
声をかけてくれた年配の棋士も、ならばということで去って行った。
月に一度訪れる父に縁のある研究会は、ぼくより年嵩の人が多く、だから携帯はいつもは電源を切っておくのだけれど、今日はマナーモードにするに留めておいた。
「また、震えてるねぇ」
本当に出なくて大丈夫なのとそれから終わるまで何度も気遣うように言われたけれど、ぼくは一度も電話に出なかった。
そしてそれは研究会だけで無く、ここの所毎日続いている半ば日常茶飯事のような出来事でもあったのだ。
「アキラー、アキラの携帯、着信があったみたいだけど」
誘われて行った食事の席、トイレに行って戻って来たら、芦原さんに声をかけられた。
「メールかな? それと二度くらい電話もかかって来ていたみたいだけど」 「そうですか。でも別に出なくてもいいんですよ」 「えー? なんで」
置いていた鞄の中から携帯を取りだして着信を見る。見ている間にもまた電話がかかって来ていて、液晶に映る名前を見ながらぼくは冷笑するように微笑んだ。
「迷惑電話と迷惑メールみたいなものなので」
だから出ない。出ないで放っておくのが一番なのだと。
「だったらどうして着信拒否にしておかないの」
鬱陶しいでしょうと言われるのに笑って答える。
「いいんです。おしおきなんですから」 「おしおき? なんだか不穏だなあ」
けれどそれ以上詮索はさせず、ぼくは携帯を鞄の奥深くに仕舞ってしまった。
着信の名前は進藤ヒカル。
この間からかかって来ている電話とメールのほとんどが彼からのものだった。
(まったく、こんなに頻繁に着信があったら本当に迷惑メールと変わらないじゃないか)
一週間ほど前、ぼくは彼と喧嘩をし、以来仲直りして来ようとかけて来る彼の電話の類を一切拒否し続けている。
というのも喧嘩の原因が、いつもの如く彼の悪い癖、『塔矢に怒られるのが怖いから、女の子に誘われて出かけたのを黙っていた』だったからだ。
それが純然たる仕事絡みだったことは解っている。相手にも恋人がいて、だからおかしなことになるわけが無いことも解っている。
なのにそれをわざわざ隠す所が気にくわないのだ。
『キミは気の遣い所を間違えている』 『だったらその焼き餅妬きの所をまず直せよ』 『ぼくがいつ妬いたって?』
後はもう泥仕合のようにお互いの罵り合いになり、最後はお互い捨て台詞のように非道い言葉を投げ合って別れた。
でも頭が冷えたのは彼の方が先で、家に着く前にはもう謝りの電話がかかって来たけれどぼくは無視した。
ぼくの方は全く頭が冷めていなかったからである。
「大体…そんなことで疑われるような日常を送っているから悪いんじゃないか」
普段から信用させてくれるような、そんな態度でいてくれたらぼくは不安にも何にもならない。
ぼくの方にそんな揉め事は出て来ないのは彼に対して筋を通しているからで、なのにどうして同じことが出来ないのだと、思ってしまうのだ。
「優しいのと優柔不断は違う」
たくさんの着信履歴を眺めながら呟く。
「気遣いと八方美人もまた違う」
言っている間にもまた更にメールが二通届いてぼくは笑ってしまった。
「そうやって謝り続ければいいよ。ぼくはまだ当分はキミを許してなんかあげないんだからね」
ごめん、悪かった、許して、もう二度としない。信用して。
どれだけの言葉が連ねてあるのか見なくても解るような気がしている。
そしてそれが心からの言葉であることもぼくは充分理解していたけれど、それでもまだ電話もメールも受けてやる気持ちにはなれなかった。
「キミは反省が浅いから、しばらくは悶々と苦しめばいい」
その間にぼくも誰かとたまには出かけてみようか?
ことごとく断り続けて来た女性からの誘いを受けてみるのもいいかもしれない。
もちろん仕事関係以外を受けるつもりは無かったけれど、それでも進藤は気が違ったようになるに違い無いのだ。
「ざまをみろ」
少なくとも後千回は着信があるまで許してなんかやらないのだからと、携帯に向かって呟きながら、ぼくはそれをベッドの上に放り投げると、気分転換をするためにシャワーを浴びに行ったのだった。
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333333番のキリ番リクエスト、Jeakiさんから頂いたお題�癸押屮劵�ルからの着信を全て無視するアキラ」です。
同じようなネタをよく書いていますが、すみません。好きなんです(^^; ということで今回これが一番書きやすかったです。
ヒカルが少々可哀想ですが、アキラの言う通り、気の遣い所を間違えているので仕方無いんじゃないかなーと思います。ヒカルスキーの方、すみません。
| 2011年07月12日(火) |
333333番キリリク� 屬�持ち帰り」 |
「じゃあそれでいいんだな」 「ああ、おれが責任持って送って行くから」 「悪い、そんじゃ任せたから」
頭上で交わされている会話が、ずっと遠くからのように聞こえる。
目はぴったりと閉じていて、開こうと思っても開けない。手も足も鉛のように重たくて、動かすことが出来なかった。
「立てるか? おまえ」
声をかけられてようやくぼそりと呟いた。
「…無理」 「しょーがねーな。ちょっと足引きずるかもだけど文句言うなよな」
ぼくに話しかけているのは進藤で、だったら別に心配することは何も無いと思った。彼が一緒なら、絶対に非道いことにはならない。
確かぼくは今日彼に誘われて和谷くん達との飲み会に来ていて、二次会、三次会、四次会まで連れ回されたのだと思った。
かなりセーブして飲んでいたつもりだったけれど、途中から意識が怪しくなり始め、最後カラオケに行った段階でソファに崩れるようにして眠ってしまった…のだと思う。
はっきりしていないのはまだ半分以上意識が眠っているからで、担がれるようにして起こされ、無理矢理歩かされているように思っても、本当にそうなのかどうかは解らない。
「あー、もうおまえ軽いようで結構体しっかりしてるよな」
ぶつぶつと言われた後、いきなりどさっと落とされて驚いたけれど、感触が柔らかかったので、タクシーに乗せられたんだと思った。
「…すまない」
ドアの閉じる音に、ああやっぱりそうなんだと思い、辛うじて最後の理性で礼を言ったら笑ったような気配があった。
「いいよ、おれが飲ませたんだし」
だから責任持って連れて帰るからと、そうかさっきのやり取りは酔いつぶれたぼくをどうするか和谷君達と相談していたんだと今更ながら思った。
「…本当にごめん、タクシー代は後で払うから」 「いいよ、別にそんなん気にするな」
そして後はゆらゆらと心地良く揺られ続けたことだけしか覚えていない。
「塔矢」
呼ばれて目を開いた時、ぼくはベッドに寝かされていて、すぐそばには進藤が立っていた。
「あ…もう家?」 「まあな。っても、おまえんちじゃないけど」
てっきりぼくの家に送ってくれたものだと思っていたのに、ぼくの家にはベッドは無い。じゃあ彼は自分の家に連れて帰ったのだと思った。
「すまない。そんなにぼくは手に終えなかったのか」
さっきより幾分意識がはっきりしていて、改めて周りをよく見る。そしてぎょっとした。
そこは彼の家でも無かったからだ。
明らかに室内の装飾がおかしい。
暗めの間接照明はピンク色に近い色で室内を照らしていて、寝かされているベッドも通常のものよりかなり大きい。
首を巡らせると何故かすぐそばにシャワーブースのようなものが見え、そこがガラス張りなのがどうにも奇妙で違和感があった。
「ここは…」 「えー? んーと、まあ所謂ラブホってヤツ?」
思考が止まった。そしてそこから猛烈な勢いで回り始める。
「ぼくが吐きそうになってタクシーを下ろされた?」 「いや?」 「帰らないと言い張ったとか」 「いんや。おまえ死体みたいに大人しかったよ」 「だったらどうして」
どうしてこんな所に居るのだと、思わず体を起こしてドキリとした。
ぼくは―。
薄い掛け布団の下、寝かされていたぼくの体は何も身につけていなかった。
「進藤?」
恐る恐る尋ねてみると、進藤は悪びれない笑顔でぼくに言った。
「んーとね、おまえには悪いんだけど、お持ち帰りさせて貰った」 「は?」 「おまえ、滅茶苦茶酔っぱらってたじゃん? それで意識も朦朧としていたじゃん? これはもしかしなくてもチャンスかなあって思って」 「…言っていることが解らない」 「解れよ。これでも一応紳士的に何もしないで、おまえが起きるの待っていてやったんだからさ」
おれはおまえのことが好き、ずーっと前から抱きたいと思っていたと面と向かって言われて頭の中が完全に真っ白になった。
「は? それは…つまり…えーと」 「ヤリタイってこと」
にっこりと、どうして進藤はそんなことをそんなに良い笑顔で言えるんだろう。
「まあ、それでもおまえがどーしても絶対、死ぬ程嫌だって言うなら手は出さない」
…つもりでいると補足した。
「どーする?」
尋ねられてもどうするもこうするも返事が出来ない。
「だって…ぼくは…」 「酔っぱらってたおまえに聞いたら『いいよ』って言ったぜ? それからついでにおれのことどう思っているのかもたっぷり聞かせて貰った」
信じられない!
「それで、だったら強姦にはならないからいいかなって結論になったんだけど、それともあれは本気じゃなかったか?」 「そんな…酔った自分が言ったことなんて」 「そう言うと思って携帯で録音しておいたんだけど、なんだったら聞いてみる?」 「いや、いい、絶対聞きたくなんか無い!」 「そ? おまえすっごく可愛かったんだけどなあ」
にこにことぼくを見る進藤は悔しいけれど男前だった。
欲しいものが手に入る。手に入ったも同然の時、人はこんなにも自信に溢れて見えるものなんだろうかとそんなことに変に感心した。
それに対してぼくはどうだ。長年隠して来たことを酔いに任せて白状してしまった挙げ句、こんな窮地に立たされている。
「で、時間はたっぷりあるし、もう少し待ってやってもいいんだけど」
結局おまえはどーするのと、尋ねられてぼくは泣きたいような気持ちで彼を見た。
「どうするって…」 「ああ、じゃあ質問変える。おまえはおれのこと好き? 嫌い?」
ヤッてもいいくらいにおれのことを好きかどうか、素面の今、もう一回おれに教えてよと、ぐっと顔を近づけられて陥落した。
敵うわけがない。
もうぼくが自分のことを好きだと知っていて、拒むわけが無いと信じている相手にどう足掻いたって勝てるわけなんか無いじゃないか。
「好き…だよ」
恥ずかしさに悶死しそうになりながら、小さな声で呟いた。
「ぼくもキミのことをずっと…ずっと好きだった」
だからいい。もういいよと言った瞬間の進藤は、正に太ったネズミを前にした猫の如き顔だった。
してやったり。
これ以上無いくらい満足そうに笑って、「サンキュ」と言った。
そして耳まで赤く染まり、身の置き所無く固まっているぼくの体を突き倒すと、ゆっくりとベッドに上がり、「いただきます」と笑ったのだった。
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333333番のキリ番リクエスト、Jeakiさんから頂いたお題�癸院屬�持ち帰り」です。 候補として三つ頂いたのですが、どれも書きやすかったので全部書かせて頂きました。
説明するまでも無いかと思いますが、ヒカルは最初から潰すつもりで飲ませています。 お持ち帰り前提の飲み会です。結果大成功でアキラは少々気の毒です。でも愛があるからいいよね?
駅から家に帰るまでの道のりの、ちょうど真ん中ほどにぽつんと自動販売機がある。
飲み物はスーパーなどで買った方が安いので滅多に買うことは無いのだけれど、それでも辛抱が足りない進藤は、夏の暑い日など、誘惑に負けて買ってしまう。
「…もう少しで家なのに」 「いいじゃん。あんまり暑いの我慢してると熱中症になっちゃうんだぜ」
だったら炭酸では無く、スポーツドリンクを買えと言いたい所をぐっと我慢して黙って見守る。
それくらいで文句を言うのはいくらなんでも口うるさいと思うからだ。
「ひゃーっ、冷たい」
ガタンと音をたてて落ちて来た缶を進藤は取り出し口から取り出すと、頬に当てて目を細めた。
「ほら、気持ちいいだろ」
言いながらぼくの頬にも当てる。
「それは…そうだけど」
でもやっぱり無駄遣いだと思った時、いきなり自販機が喋った。
『ありがとうございました』 「どういたしまして」
反射的に振り返った進藤がにっこりと良い笑顔で言う。
「これ…前から喋ったっけ?」 「いや、一昨日くらいに新しいのに替って、そしたら喋るようになったんだ」
こんなもんでもお礼言われるとちょっと気分がいいよなと言われて、むっと見る。
「キミは…何にでも愛想がいいんだな」 「なんだよ、自販機にまで焼き餅やくなよ」 「妬いて無い。ただ節操が無いと思っただけだ」
そしてそれ以上突っ込まれるのが嫌なのでさっさと先に行ってしまったけれど、それからも時々進藤が自販機に礼を言うのをぼくは見た。
バカじゃないかと思いつつ、それでも機械にも礼を尽くす彼の優しさを好きだと思った。
(でも、それとこれとは別問題だ)
「いいか、忠告しておくけれど」
ある日、一人での帰り道、ぼくは自販機に立ち寄るとジュースを一本買って、それから機械に囁いた。
「進藤は誰にでも優しいんだ。君にだけ優しいわけでは無いから絶対に誤解しないように」
彼はぼくのものなんだからと、大人気なくぼくは機械に釘を刺した。
「もしいらん愛想を振りまくようならぼくにも考えがあるから」
そのせいなのかどうなのか。
件の自動販売機はそれ以来、人(機械)が変わったように、幾らジュースを買おうとも、ぴたりとお礼を言うことが無くなったのだった。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
jさんすみません。書いてみたら、焼き餅をやくのがアキラの方になってしまいました(^^;似た物カップルってことで!
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