| 2009年09月20日(日) |
(SS)キミの名前【キミにまつわる20題おまけ】 |
「進藤…」
誰も居ない所で一人でぽつりと呟いてみる。
「進藤…ヒカル」
言った瞬間カッと頬が熱くなり、顔が赤く染まったのがわかった。
(練習でこうなんだから)
キミの前でキミの名前を呼ぶことなんてきっと一生出来ないと、ぼくは動悸の止まらない胸を押さえながら大きく溜息をついたのだった。
| 2009年09月07日(月) |
(SS)たった一つの想い貫く難しさの中でぼくは |
真っ白なハンカチを新しく買った。
汚れやすいからと子どもの頃は持たせて貰えず、又、自分で服や小物を選ぶようになってもなんとなく敬遠していた「白」を買ったのは、ただなんとなくそういう気分だったから―としか言えない。
「何? それ買ったんだ」
トイレから出て子どものように進藤が服で手を拭こうとしているのを見て苦笑しつつハンカチを渡すと、見ていないようで結構ぼくのことをよく見ている進藤がすかさず言った。
「うん、今まで使っていた物が古くなって来たから新しいものが欲しくなってね」
昨日、指導碁の帰りに買って来たんだと言ったら「ふうん」と言ってしげしげと見る。
「でもこんな真っ白なヤツ、汚れが目立つんじゃねえ?」 「汚れるようなことをしないから」
別に白でも構わないよとぼくが言うと、進藤は一瞬考えるように目を眇めてそれからいきなりぼくに顔を寄せキスをした。
「―なっ」
何をするんだと押し退けた瞬間に彼の手からハンカチが離れ床に落ちた。
「ほら…」
汚れたじゃんと人の悪い笑顔でぼくを見る進藤をぼくは軽く睨み返した。
「ぼくが汚したんじゃないキミが汚したんだ」 「でも、おれが汚すってわかっていてそんなん買ったんだから」
だからおまえが汚したのと同じなんだよと、理屈にもなっていないような理屈を彼はこねる。
「おれと居ると絶対に汚れるんだから」
だから前みたいに色柄のあるもので我慢していればいいんだと言われてむっとする。
「いいんだよ、白で」 「汚れるのに?」 「それでも…ずっとぼくは『白』を持ちたかったから」
だからこれだけはキミがなんと言っても譲らないよと言ったら進藤は鼻白んだような顔になり、それから一転苦笑した。
「わかった。好きにすればいいじゃん。でもおれ絶対にまた汚すと思うぜ?」
おまえがそうやって意固地になるなら尚更と、軽い口調のくせに表情は深い。
「いいよ、汚されたって」
むしろ汚して欲しくて白を買うのかもしれないとぼくが言ったら進藤は黙って、それから口を尖らせると吐き捨てるように「バーカ」とひとこと言ったのだった。
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中学生くらいのアキラさんが私的には一番理想型です。 色々不自由な物を抱えていて、でも負けん気が強くて不安定で、それが一番しっくりくるのが中学生のあの体だと思うんですよね。
タイトルはガンスリのOP。私内アキラソングです。
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