本日の稽古中、あたくしは見てはならないものを見てしまったような気分になった。別に、更衣室で全裸になられようが、同じ女性同士ならどうってことないし、誰かが大失敗したり、ストレッチの時に余りに身体が硬くて悲鳴をあげている子のことも所詮は笑って済ませられる程度のことだ。悟朗さんが、稽古が始まる前にやっと宣言をした。今日の稽古の終わりに、「絶対に」キャスティングを発表する・・・・と。それを聞いて、疑心暗鬼・・・・というか半信半疑なところも無きにしも非ずだったけれど、とりあえず、本日から1時間伸びた稽古のその終わりには、自分の位置が確定する。あたくしや古橋パパは互いに、「やっとですねぇ〜」 なんて言って笑っていたけれど、そればかりではない人が、近くにいることを気付いてしまったのだ。先週、本当は機械ゲールがやりたかったと零していたトモコさん・・・・。あたくしは丁度そのトモコさんの隣にいて、多分今日もやらされるであろう、女官長のくだりを、台本で目で追っていた時のことであった。彼女は熱心に機械ゲールのソロ曲のスコアを凝視しているのであった。奇しくも本日、機械ゲール候補の多田ちゃんはお休みで、多分、トモコさんは、最後の最後、一縷の望みをかけて、スコアを熱心に読んでいたのかもしれない。多田ちゃんのいるところでは、「多分、多田ちゃんが機械ゲールだねぇ・・・・。」と、あたくしもそれっぽく話をするんだけど、今日ばかりはそれが出来なかった。こんなにも熱心にひとつの役に拘って、諦めずに、いつ振られてもいいようにと、音の一つ一つを追っているトモコさんに対して、そんなことはたとえ決定事項であっても冗談であっても、言ってはならないような気がしたのだ。・・・・諦めていない人がここにいる。それは絶対に侵してはならない領域のようで、あたくしは一所懸命にスコアと向き合っているトモコさんに対して、彼女がそれをやめるまで声をかけられなかった。あたくしだって、できるものならナイチンゲールをやってみたかった。しかし、ユキちゃんの美声とあたくしの声は比べるのもおこがましい。だからせめて、今までずっとアルトしかやってこなかったのを返上して、ソプラノパートに挑戦してやろう! くらいの決心しか出来なかった。しなやかに踊ることも要求されるナイチンゲールは、大学の授業やカルチャースクールで自分の身体を叩き起こす程度にしかやってこなかったレベルのあたくしのダンスと、今尚、本気でダンスが中心に生活が回っているユキちゃんとは根本的に違う。だから・・・・諦めた。ただ、誰よりも美しく立ち、誰よりも美しくお辞儀のできる存在にはなろう。女官長という役を充てられ始めてから、あたくしの目標はそこに定まった。宮中の女性だから、日本舞踊チックなお辞儀の方が良かろうと、少し膝を折って美しくしなやかな形をなるべく追及しよう・・・・そうでもしないことには弱いあたくしは自分に自分が潰されてしまう。潰されてしまわないように、努力をしよう。それがあたくしの目標・・・・。さて。多田ちゃんの他に、ユキちゃんとカオリちゃんもお休み。全員、せりふの合間に歌があったり、進行上、歌のみの大事な役の候補者だ。で、そんな中、本日代打でカオリちゃんがいつもやっているクイおばさんの役も充てられた。いつも宮中の女官をやっているので、お上品に丁寧にというのがとりあえずの最低条件だが、民間人(下々のモノドモ(爆))はやっぱりやっていて楽しいな、と思う。それに、いつもは歌えない歌(シャオメイという少女と歌う)も歌わせてもらって、キャスティングが決まっていないこの最後の日に、いい記念となった。カオリちゃんとあたくしが、当初、クイおばさんの候補だったのだ。結局今日まで、この二人しかクイおばさんを演っていない。この期に及んで、あたくしを指名しなくてもせりふや歌の差込は、声楽の先生や演出家が何とでもするところを、あたくしを指名したというコトは、あたくしの行く末、宮中の女官長以外に、民間人の長であるクイおばさんの両方が「できる」存在であると見做されていると、あたくしは確信した。光栄なことだ。宮中、大人たちばかりのシーンの合間、子供たちの合流もあって、一瞬、稽古場の人口密度がやたらと増加した。最初は「森の動物たち」という台本にもない役を充てられて、不服そうな顔をしていた子たちもそれぞれに、リスやうさぎ、仔鹿などといった具体的な役割を振られたのか、結構楽しそうに動き回っていた。中でも「仔鹿」の役をやる少女たちは、どうやらバレエをやっている子らしく、とても身軽に「ぴょ〜ん、ぴょ〜ん」とグランジュテして、まるで本物の仔鹿のように捌けていく様が余りにも可愛らしくて思わず嘆声を漏らした。傍にいた高校生たちと、「ライオンキングみたいよね♪」 などと感心していたのだ。いつものメンバーはいつもの役を充てられ、これが多分最終決定考なのだろうと、誰もが覚悟して、本日の稽古は臨んでいた。付けられる演出もかなり具体的になってきた。ただひとり、トモコさんは別で・・・・。彼女だけは、虎視眈々と当初の目的、機械ゲールのことを常に念頭に置いているようだった。だからあたくしも何も言わない。せりふも歌も少ない1人の女官と、美しく飾られた機械ゲールの差はやはり大きすぎるのだ。彼女の立ち位置のちょっとしたズレや戻りの遅さも、今日に限っては全て目を瞑ろう。だって、彼女は最後の最後まで諦めていないのだから・・・・。それに水を差すのは、まだ演出が「決定です」といっていない限り、とても失礼なことになる。古橋パパは声がとても美しくハリがあり、大きい。しかも良く通るのが買われたのか、歌のソロパートが増えていった。侍従が足りないこの現状、彼の存在は当初よりかなり大きな役割を担うことになりそうだ。やがて、本日分の稽古も終わり、全てのキャスティングも発表された。それと共に、トモコさんの夢もそこで絶たれた。あたくしが女官長。彼女は女官(一)。悔しかったことだろう・・・・耐え難いことだろう・・・・。しかし彼女は大人だ。来週にはまた笑顔で稽古場に姿を現してくれるに違いない。ナイチンゲールはユキちゃん、機械ゲールは多田ちゃん、そして皇帝は川出ちゃん。クイおばさんはカオリちゃん、侍従長は古橋パパ、イブちゃんは孤児リーダー(笑)シャオメイは涼子ちゃん・・・・主要メンバーはこのように決まった。先週の予想は一つたりともはずれておらず、何でここまで引っ張られたの? 大人チーム( ̄∇ ̄;)みたいな感じも否めないが、子供チームも大人チームも一斉に発表したくてこのような運びになったことは、恨み言を言うべきところではない。ただ・・・・一度だけでいい。↑これから一緒に頑張っていこうね、トモコさん!来週は悟朗さんがお休みらしい。歌とダンスで、17時までかよ・・・・(-。-) ぼそっ かなりキツいなぁ(苦笑)MD持参で、練習用のピアノ伴奏曲をゲットしてこよう。