思考過多の記録
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2002年07月13日(土) エアコンを切ろう、テンポを落とそう

 このところ暑い日が続いている。まだまだ夏本番というには甘い感じもあるが、それでも梅雨寒に慣れた体には少々きつい。こうなると、まとまったことなどそうそう考えられない。考えることが癖となっている僕なので、何も考えないでいられる体ではないけれど、それでも思考がなかなか深まっていかないのを感じる。、あっちこっちへ飛んだかと思えば、突き詰めもせずにおざなりの結論に着地する。また、昨日、一昨日に考えていたことをぐるぐる考え続け、その度に同じ結論に達する。「試行錯誤」ならぬ「思考錯誤」な状態が続いている。



 こうなると、熱帯地域にある国々の人達のテンポが我々と違っているというのも、実感として分かる。そして、何故北半球に所謂「先進国」が集中しているのかも、そのあたりから何となく想像がつく。この国の夏の何倍もの暑さが日常となっている国々では、いかに人々の体が我々以上に暑さ慣れしているといっても、おそらくある程度以上は労働密度を上げられないのだ。そういう国々では、ゆっくりしたテンポで動き、考えるしかない。もし「先進国」並みの勢いで行動したとしたら、熱射病か脱水症状でやられるのが落ちである。また、短時間に思考を働かせ、深化させるという作業を行える程の集中力が出せない。もしそうしたことをやろうとするなら、かなり強力なエアコンを1日中付けっぱなしにしなければならないだろう。けれど、そもそもそこまでしてあくせく働かなければならない理由はないと、多分かの国々の住人達は思っているのではないだろうか。



 今回のワールドカップで、カメルーン代表チームが予定より何日も遅れて、しかも真夜中に到着したという「事件」があった。大切な試合があるというのに、何日もパリに足止めされたり(一説によれば、選手に支払う‘ボーナス’の交渉が未決着だったからだという)、飛行許可を取っていなかったとかで何回も他の国の空港に寄ったりと、殆ど日本では考えられないテンポだった。けれど、選手達はそれで特にイライラしたりしたりした形跡もない。おそらくあの国と僕達の国とでは、「体感」時間の単位が違うのではないだろうか。「暑いカメルーン、そんなに急いでどこへ行く」という感じだろうか。
 まあ、最近ではフランスのとある駅に設置された「世界最速」の動く歩道で、転倒者が続出したために僅か数ヶ月で閉鎖になったという「事件」があったくらいなので、ヨーロッパあたりでも人々のテンポは徐々に落ちてきているのかも知れない。



 本来は歩かなくてもすむことを目的に設置された動く歩道の上を、僕達は歩いたり、時には走ったりさえしている。その気力、そのパワーがこれまでのこの国の繁栄を支えてきた。しかし、それもそろそろどん詰まりに来つつあると多くの人々が気付き始めている。
 折しも地球は温暖化している。年間の平均気温は上昇するばかりだ。マラリアを媒介する蚊の北限が沖縄や九州あたりまで上がってくるのも時間の問題だという。ならば、この国に暮らす僕達も、熱帯の国々のテンポに近付いていくいいチャンスかも知れない。エアコンをガンガン利かせたオフィスの中で働くだけ働き、心身共に消耗させられた挙げ句に過労死するような生き方より、暑さに見合うテンポでゆっくりと生き長らえていく方がよっぽどましではないだろうか。



 これからますます暑くなる。そうなると、こんな陳腐な文章すら考えられないようになるだろう。ぐったりしていられればいいのだが、僕の性分としては、エアコンのスイッチを入れてもなお考え続けたいと思ってしまうだろう。
 南の国の人々の心境に達するには、僕もまだまだ「先進国貧乏性」が抜け切れていないようである。


hajime |MAILHomePage

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