思考過多の記録
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2002年04月06日(土) 更年期障害としての人間

 ある健康番組で更年期障害を取り上げていた。僕は、更年期障害については、名前くらいは知っていても詳しいメカニズムについては全くの無知だった。その番組の解説によれば、更年期障害の原因は女性ホルモンの急激な減少により、自律神経が失調して起こるものだそうである。
 そればかりか女性ホルモンの減少は、生理を止めるのは勿論のこと、骨密度の低下や肌の皮膚の老化を招くのだという。男性ホルモンの低下にも、ほぼ同様の効果があるのだろうか。



 このことは、僕達に冷徹な事実を教えている。女性ホルモンの分泌が盛んになるのは、当然生殖と出産という生物としての「女」としての働きを助長するものだ。思春期から壮年期に至る時期は、男性にとっても女性にとっても出産・子育てという生物として一番の大仕事をするための大切な時期だ。
 体力的にもピークを迎えるし、体も変わっていく。それは、まずもって生殖のパートナーである異性を惹きつけるという目的のためである。「女」がより「女」らしく、男がより「男」らしい特徴を備える。そして、より高い能力を持つ子孫を残すためのパートナーが自分に寄ってくるように、おそらくその個体の一生の中で最も魅力的な体になるのだ。



 時は過ぎ、実際に妊娠・出産を経て何年もが過ぎると、生物としての大仕事を終えたその個体は、殆どその種にとっての役割を終えた存在となる。子孫をそれ以上生むことができない個体に対して、それをベストな状態で維持するためのエネルギーを費やす必要はもはやないのだ。ましてや、そんな個体に異性を惹きつける魅力など(生物学的には)不必要である。
 かくして、女性ホルモンを作り出していた臓器は、その活動を弱めていく。その結果、その個体は急速に「女」としての機能を低下させ、「女」から遠ざかっていく。体は変調を来し、それがそのまま「老化」へとつながっていくのだ。
 この事情はおそらく男性でも大同小異である。



 つまり、新たな子孫を残せなくなったところで、人間は「生物」としての役割を終えるようにできているのだ。そういう機能が僕達のDNAに予めプログラムされているのである。
 子供を作り、生んだ後の人間は、ただひたすら朽ち果てていくだけの存在になるのだ。肌は二度と若い頃の瑞々しさと弾力を取り戻すことはない。
 何人といえど、この宿命から逃れることはできない。



 本当に非情な事実である。
 しかし、生物としての人が、新たな子孫を残すことを第一の目的に設計されているのだとすれば、その時期の前後の人生とはいったい何なのだろうか。また、子供を産むこと以外の人生のオプションの意義とは、いったい何なのか。
 「人はパンのみに生きるにあらず」という言葉がある。しかし、パンがなければ生きられない。子供を作り、産み、育てることに最適化された体を持って、「生物」的要素以外の部分を進化させてきた人間とは、それ自体がバランスの崩れた更年期障害のような存在なのだと、僕には思われる。


hajime |MAILHomePage

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