橋本裕の日記
DiaryINDEX|past|will
蔵書の整理を始めてもうずいぶんになるが、このところスピードが鈍っている。全体の3分2ほど整理したせいで、かなりすっきりした。残っているのはかなり思い入れの深い蔵書ばかりだから、なかなか捨てる気にならない。
そうしているうちに、月に一度の資源ごみ回収の日が通り過ぎていく。考えてみればこの数ヶ月はただの一冊も整理してない。このままでは「蔵書0運動」が掛け声倒れになりかねない。今年中に大整理をして、書斎に3本残っている本棚を、なんとか2本に減らしたい。そして来年中にはすべての蔵書をなくしたい。
五千冊売って涼しき書斎かな
これは長谷川櫂さんの句である。私の書斎にはそんなに書物は残っていないし、もとより売れる本はないので、この句のようにはいかない。それでもこの句をくちづさむと、なんだかさわやかな気分になる。「涼しき書斎」という語感がよい。
私が初めて本格的な本棚を買ってもらったのは高校生1年生の夏だった。それから書店で文庫本を買い始め、そこに一冊ずつ並べていった。そうして3年間ほどかけて、私の書棚はほぼ文庫本で一杯になった。そのとき感じた充実感は今でも覚えている。
当時の本の一部は今でも残っている。文庫本の背に購入順に番号を記入していたので、よくわかるのだ。たとえば今座ったまま書棚を見てみると、すぐ手の届くところにルソーの「孤独な散歩者の夢想」(新潮文庫)が見える。背表紙の番号は「69」となっている。番号からして、高校二年生の頃に買った本だろう。手にとって調べると、定価は90円だった。
こうした背番号つきの文庫本がまだ書棚に20冊ほど残っている。捨てるに捨てられない愛着のある本ばかりだ。しかしこれを捨てなければ「蔵書0運動」は進まない。来月の資源ごみの日には、まずこの手垢のついたルソーの本を、真っ先に捨てることにしよう。
(今日の一首)
人生の伴侶と慕う書を捨てる その寂しさを誰に語らん
|