橋本裕の日記
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2007年10月15日(月) こころの健康術

 最近の精神医療は、心の病気を脳の機能障害と捉え、これを薬物で処理しようという傾向が主流になっている。たしかに私たちの意識は脳にある神経細胞の働きによって生みだされている。意識に障害が生じるのは、脳のはたらきに異常があるからだ。

しかし、脳に生じる物理化学的な変化は、私たちの意識活動の結果でもある。神経細胞の活動と、意識活動はコインの両面のように一体化している。だから私たちの意識は脳の物質的な活動に一方的に依存しているわけではない。

精神の障害を取り除くために、薬物を使って脳をコントロールするのは即効性があるが、薬が切れればまた症状があらわれる。副作用によって他の臓器にも影響が及び、長期的に見ればかえって精神障害を常態化させかねない。

一般に脳の機能障害が原因といわれる外因性の精神障害であっても、内臓疾患の場合と同じく、多くの場合は内因性をはらんでいる。つまり、さまざまな心理的なストレスが原因となって、脳に機能的な変化があらわれ、精神障害が発症する場合が多い。

(心理的なストレス)→(脳の機能障害)→(精神障害)

したがって、精神障害の直接の原因は脳の機能障害かもしれないが、さらにさかのぼれば心理的ストレスにたどりつく。根本的な治療を考えるのならば、このレベルまでさかのぼらなければならない。

しかし、心理的ストレスが恒常的に生じる原因は、その人が体験してきた親子関係や置かれている社会的環境に深く根を下ろしており、これを解きほぐしていくのは容易ではない。またその解決も一朝一夕にできるものでもない。したがってどうしても手軽で即効性のある薬物治療に走ってしまう。

もちろん薬物治療の有効性は認めるが、これにあまりに依存しすぎるのはいけない。薬物によって脳の機能を一時的に回復させながら、あわせて、そうした機能障害をもたらしている根本原因にも眼をむける必要がある。そこから逃避していてはいけない。

 精神的なストレスから自由になるのはむつかしいが、これをある程度軽減することはできないことではない。私の場合は自分のことであまりくよくよしないで、自分の外に広がっている自然や社会に眼を向けることにしている。

風通しのよい広々とした場所に自分を置き、おおらかな視野をもつことが心の健康にとって大切なことはではないかと思っている。こうした意味で、毎朝散歩し日記を書くことは、私のささやかな「心の健康術」である。友人と歓談したり、ぶらりと旅に出るのもいいものだ。

(今日の一首)

 めずらしくワインを飲んで人生に
 乾杯をする妻と二人で

 妻が貰ってきた赤ワインを、妻と二人で飲んだ。久しぶりのワインで、コルク抜きを探し出すまでにかなりかかった。二人でワイングラスを傾けたのは、十年ぶりくらいだろうか。何の記念日でもなかったが、子どもたちを社会人にとして無事に巣立たたせた。「よくやったね」と、お互いの健闘をたたえあった。


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