橋本裕の日記
DiaryINDEX|past|will
小学生の頃、若狭地方に足掛け5年ほど住んだ。そのうち3年あまりを小浜市で過ごした。小学校の3年生から5年生までである。
その頃父は警察官をして、小浜では警察官の官舎に2年ほど暮らした。官舎といっても粗末な長屋で、そこに4所帯が薄い壁を隔てて、ひとつの大きな家族のように助けあって過ごしていた。
お風呂も一つしかなく、4世帯が輪番で湯を沸かし、当番の家族から順番に入った。自分たちが入り終わると、次の家族に「おさきに失礼しました」と伝えに行く。これは子どもの役割だった。
私の家には隣の潮ちゃんがきた。私より一つ下の快活な少女で、私は彼女とよく遊んだ。年下の癖にどこかお姉さん風を吹かすところがあって、そんなところも彼女の魅力だった。もちろん恋というにはあまりに幼い感情だが、それに近いものを双方に感じていた。
あるとき潮ちゃんと遊んでいて、潮ちゃんが前かがみに物を取ろうとしたことがあった。そのとき風がいたずらをして、彼女のスカートをまくりあげた。私は目の前に彼女の薄い下着につつまれた魅力的なもののかたちを認めた。
そして次の瞬間、自分でも意外な行動に出ていた。そのふっくらと丸みを帯びたふたつの丘のくぼみに、自分の鼻先を犬のように押し当てていた。私を振り返った潮ちゃんは、目を見開いたまま、しばらくは言葉もなかった。
その後、どんなやりとりがあったのか忘れてしまったが、風のいたずらに便乗して出来心でやったことである。それほど叱られた記憶もない。ただ、そういうことがあってから、彼女の私を見る眼が少し変ったようだ。
官舎の狭い五右衛門風呂に一緒に入っていたりしたが、そんなこともなくなった。私の前で平気で着替えをしていた彼女が、スカートの裾を気にするようになった。しかし、私にはそんな彼女が可愛く見えた。
彼女の写真を一枚だけも持っている。私が6年生になってしばらくしたころ、父が警察官をやめて小浜を離れた。その当日に見送りに来てくれた彼女を、私がカメラで撮ったものだ。その写真を眺めるたびに、小浜で彼女と過ごした時間をなつかしく思い出す。
(今日の一首)
幼さにいつも少女とたわむれて ある日気がつくからだの違い
|