橋本裕の日記
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2007年10月01日(月) 格差解消でデフレ脱却

9月29日の朝日新聞朝刊が一面で「年収200万円以下1023万人、民間平均、9年連続減」と報じている。部分的に引用してみよう。

<民間企業で働く会社員やパート労働者の昨年1年間の平均給与は435万円で、前年度に比べて2万円少なく、9年連続で減少したことが国税庁の民間給与実態調査で分かった。

年収300万円以下の人の層は5年前の34.4%から年々増加しており、昨年は全体の38.8%を占めた。年収300万円から1千万円以下の人の割合は一昨年の57.6%から56.3%に減少した。

一方、年収が1000万円を超えた人は、9万5千人増加して224万人となり、格差の広がりを示す結果となった>

 格差が広がり、低所得層がこれ以上拡大すると、家計の支出が抑えられ、消費が冷え込むおそれがでてくる。たしかに石油の高騰や円高といった要因で名目の物価は上昇しているが、そうした特殊要因をのぞくと、いまだに消費者物価は低迷している。

 たとえば全国消費者物価指数(CPI)は前年同月比で8月まで7月連続で下落している。9月24日と25日の産経新聞も、短期だった安倍政権の経済政策の結果をつぎのように報じている。

<安倍内閣が25日総辞職する。安倍晋三首相は「成長なくして財政再建なし」を旗印に、高い経済成長を実現して財政再建を目指す「上げ潮」路線を展開した。だが、成否の鍵を握る名目成長率は下方修正され、“公約”とされた平成18年度中のデフレ脱却はいまだ果たせぬまま幕を降ろす。安倍政権の経済運営の評価は、専門家の間ではおおむね厳しいものとなった>

<8月には23年度の経済見通しを名目3・7%に下方修正し、足元の4〜6月期は名実ともマイナス成長に落ち込んだ。景気拡大は続いているが、物価が継続的に下落する「デフレ脱却宣言」もできないままだ。そもそも成長戦略とデフレ脱却は矛盾した政策だったともいえる。規制緩和は値下げ圧力につながり、財政再建は公的需要の削減となる。ともに短期的には物価下落の方向に作用するからだ>

 なぜデフレが解消されないのか。これについては、中国から安い製品が入ってくるせいだという説をよくきくが、これはデフレ要因としては主なものではない。どうように中国製品を大量に輸入しているアメリカなど他の国でデフレは起こっていない。デフレに陥ったのは世界中で日本だけだった。むしろつい最近までアメリカやヨーロッパは景気の過熱によるインフレを警戒していた。

 規制緩和による競争が激化して、価格崩壊が起こった点は見逃せないが、これも低価格の中国製品の影響よりも、むしろ国内的な要因が大きいのではないか考える。なぜなら個人消費のGDPに占める割合は60%もある。これに対して外需はわずか2%程度に過ぎないからだ。

 企業が合理化を進め、収益があがっているが、一方で労働者の賃金が低下している。これによって購買力が減少し、「ものあまり」が生じてくる。つまりお金が足りなくなり、物が売れなくなるわけだ。今後、格差が拡大すると、日本はますますこうした方向に進むのではないだろうか。そして次のようなサイクルが繰り返されることになる。

(格差を広げる政策)

庶民の収入が減る
  ↓
モノが買えない
  ↓
モノが売れない
  ↓
物価が下がる。企業のリストラや経営破綻。
  ↓
庶民の収入が減る

このサイクル(デフレスパイラル)が働くあいだ、庶民の収入は減り続ける。そして、ますます格差が拡大する。そしてデフレはお金持ちをもっとお金持ちにし、庶民をどんどん貧乏にする。

この悪循環を断ち切るためには、「庶民の収入をふやす政策」を実施すればよい。そのために、これまで政府は金利政策を発動し、公共事業を行ってきた。私はこれも大切だが、やはり累進課税強化などによる格差是正の政策こそ必要ではないかと考えている。この場合は、シナリオはこうなる。

(累進課税を強化など、格差解消)
   ↓
庶民の収入が増える
   ↓
購買力が高まる
   ↓
売り上げが増える
   ↓
(景気が拡大。デフレが克服される)
   ↓
庶民の収入が増える

賃金格差を容認した上で、デフレを脱却することもできないわけではない。アメリカのように戦争をして需要を喚起したり、大減税をしてお金をばら撒いたり、債権を証券化して、低所得層まで高額の借金ができるようにするわけだ。しかし、こうしたアメリカ流の方法はいつか行き詰りまる。

また、少し前の日本のように、無駄な公共投資に巨額の税金をつぎこむのもばかげている。そうした愚かな時代錯誤の政策をやめて、庶民の賃金破壊をこれ以上容認せず、さらに将来に対する不安を取り除き、安心してお金をつかえるような社会環境を整備しなければならない。その意味で年金の問題も重要になる。

それからもうひとつ大切なことは、日本の宝物である1500兆円もの個人金融資産をできるだけ有効に活用することだ。アメリカの国債を買って戦争に加担したり、外国のハゲタカファンドに流れて、企業買収の資金になっているようでは、日本経済に明るい未来はない。

(今日の一首)

 いつのまにサンダル寒い散歩道
歩けばゆれる秋の草花
 


橋本裕 |MAILHomePage

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