橋本裕の日記
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昨日、長野県のMさんからメールをいただいた。Mさんは以前この日記で紹介したように、長野県上田市に住んで見える小学校の先生である。小学校教育の問題点や現状について、私はM先生からいろいろと教えていただいている。
<分数だったら,エジプトで洪水で畑が見えなくなって,そんな所から分数ができたのかなあ?何かいい導入のアイデアは無いかなあ?図形に色をぬったりする活動で,あ,こうして分数ってできたんだなんて方法があるのかな?面白いお話をしたり,測量ごっこ的にしたり,すればいいかも・・う〜んそんな知識も方法もないし,分からない。
大体分数って発生経過やそれが今どう数学に生きているかもよく知らない。 時間も無い,明日はもう入らないと,何々?第一時,「はしたの大きさを考えよう」か,1mの2等分したのは2分の一と教え,次の時間は,書き方と分子,分母,という言葉を教え,分数といいますか。帯分数,仮分数も教えて7時間で終わり,まあ四年生は簡単な所だし,自分でもつまらないような気分だけど,教科書どおりに指導書にそってやればいいか。単位分数って何かな?よくわからないけどまあいいや。 ほかの授業や行事もあって忙しいしこのへんで思考停止。>
M先生は私と同年輩の経験豊かな先生である。それでも、分数をどう教えたらよいか、いろいろ試行錯誤され、悩んでみえるという。いちおう私は数学科の教師だが、小学校での教育実践経験はない。おこがましいとは思ったが、あえてこんなメールをお返しした。
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M様、日記を読んでくださり、ていねいな感想までいただいて、とてもうれしく思っています。
<私の住んでいる上田市は,映画の撮影地として,使ってもらおうと努めていますが,この映画も市の広報に「ロケ地,市営球場,千曲川河川敷グランド,浦里郵便局,市内スーパー」と出ていました。背景の雰囲気はどうでしたか?>
この映画は妻が先に見たのですが、背景の自然がとても美しいと言って感激していました、私もそう思います。ロケ地は長野県だとは聞いていましたが、M先生のお近くとは知りませんでした。とてもいい雰囲気ですね。この映画の大きな魅力になっていると思いました。
フィンランド・メソッドについて、さっそく本を買って読まれたとか、私の日記も参考になったようで、よかったと思っています。教科書の方は書店においてなかったので見ることができなかったのですが、もし数学の教科書が出版されたら、購入して読んでみたいと思っています。
分数の教え方ですが、私は何か具体的な操作をとおして、分数というものを子供たちに実感させる(体験させる)ことが重要ではないかと思っています。そうした意味で、もし、私が分数を教えるとしたら、「折紙」を使ってみようかと思っています。
正方形の折紙を4枚ほど各自に用意させて、まず、一枚を机の上に広げさせます。(残りは机の中) 「面積を4倍にして下さい」と言えば、生徒は4枚の折紙を机の上に並べるでしょう。 「それでは、その4倍にしたものの半分にして下さい」 と言えば、生徒は2枚を並べるでしょう。
「4の半分は2ですね。それではその2を半分にして下さい」 そうすると、生徒は机の上に一枚の折紙を置くはずです。 「2の半分は1ですね。それでは、これまでのことを式であらわしてみましよう」 先生は黒板に式を書きます。
(1)1×4=4(1に4を掛けると4) (2)4÷2=2(4を2で割ると2) (3)2÷2=1(2を2で割ると1)
これだけ、準備運動をしておいて、 「それでは、その一枚を折って半分にして下さい」 といいます。ここで生徒は二つに折って、長方形や三角形をつくるにちがいありません。
「半分にできましたか。さて、それでは1の半分はいくつかな」 と質問します。実はそんな数はないわけです。そこで、1/2という数(分数)を考える訳です。
1÷2=1/2
どうように、折紙を使えば1/3,1/4などの分数も導入できますし、
1/2+1/2=1
などの分数の足し算や引き算、かけ算も導入できると思います。また折紙を使った授業は、教師が生徒のとりくみを一目で俯瞰できますし、子どもも手を動かし、視覚で数を実感できるので楽しいのではないかと思います。
以上は、私がもし小学校で分数を教えるのなら、こんな授業をしてみたいというサンプルです。M先生もすでに折紙で分数を教えることをなさっているかも知れませんが、なにかの参考にと思って書いてみました。
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M先生からは、折り返し、「教科書の案よりずっと,子どもも,教える私たちもやる気が出てくるような気がします。先生の方法でやってみます。本当にありがとうございました」というメールをいただいた。M先生の授業が成功し、子供たちが分数を好きになってくれることを、心からお祈りしています。
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