橋本裕の日記
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| 2006年01月29日(日) |
我が息子、ホリエモン |
昨年9月の衆議員総選挙で、小泉首相や自民党の幹部はホリエモン(堀江貴文)を応援した。小泉首相は昨年8月16日に、「新しい時代の息吹というかな、若い感覚をこれからの日本の経営に与えてくれるんじゃないか。何か新しい雰囲気をじますね」とホリエモンにラブコールを送っている。
武部勤幹事長は選挙カーの上でホリエモンと並び、「わが弟、わが息子」と連呼した。そして、「若い感覚をこれからの日本の経営に与えてくれる。反発もあるけど、時代の変革だ」ともちあげた。こうした映像や発言が茶の間に流れ、ホリエモンはこの選挙を通して、社会的な信用をも獲得した。
小泉改革の抵抗勢力のボスである亀井静香候補への刺客として、広島で立候補し、惜しくも敗れたが、これによってさらに彼の人気は高まり、ライブドアは株価を上げた。また、自民党はホリエモン人気にあやかり、若い世代や都市部でも支持を増やし、選挙では圧勝した。
選挙後も武部勤幹事長は「党の運営にアイデアを提供していただきたい」とホリエモンに要請し、その蜜月ぶりを世間に印象づけた。ところが、ホリエモンが逮捕されると、小泉首相も武部幹事長も、その蜜月ぶりは棚に上げて、「自民党は公認したわけではない」と掌を返したように冷たい。最近になって、ようやく二人とも反省の弁を口にするようになったが、これも自己保身の心が透けている。
ホリエモンが逮捕されたのは23日の夕方だったが、その日の朝、福岡県の警察署にホリエモンの父親(チチエモン、堀江奉文)が、「息子が死ぬかもしれない」と駆け込んできたという。ホリエモンから死をほのめかす電話があったらしい。
その数日前の19日にはホリエモンに近かった元ライブドア幹部の野口英昭氏が、沖縄のホテルで自殺している。この自殺には東京地検特捜部の検事も不審を持っているといわれるが、遺書もなく、手首の他に首や腹などを切り、血塗れになりながら自分で非常ベルを押すなど、不可解な部分がある。株の不正取引に使われた投資組合に、闇の勢力が係わっていたという情報もある。こうした勢力により、口をふさがれた可能性も否定できない。
チチエモンの脳裏にはこうした事件のことも浮かんだに違いない。東京地検が異例の速さでその日のうちにホリエモンを逮捕し、身柄を拘束した背景には、このチチエモンの行動もあるいは影響していたかもしれない。地検特捜部にとって一番恐れていることは、ホリエモンの身に何か起きて、真相がわからなくなることだからだ。
ホリエモンがいなくなり、捜査が行き詰まれば、これを歓迎する人は政界や財界にも多いのではないか。武部幹事長はかっての「息子」のことをどう思っているのだろうか。その身を案じたことがあるのだろうか。
ホリエモンは時代の寵児であり、マスコミが作りだしたあたらしい英雄だった。小泉首相も彼を持ち上げることで、自らの改革の成果をほこった。こうした世間の風潮が、ホリエモンという鬼子を生みだしたことを、私たちは忘れてはならない。
チチエモンは「無一物になれば、帰ってくればいい。一からやり直せばいいんだから」と語っているという。やはり実の親の子を思う気持は深いのだろう。ホリエモンはまだ若干33歳だ。チチエモンがいうように、人生をやり直すことは十分可能だ。
何も絶望することはない。これを機会に、静かな環境の中で自分を見つめてほしい。自己を深く掘り下げれば、そこに必ず希望の泉が見つかるはずだ。そして、この逆境から立ち上がって、今度は「株式価時価総額世界一」ではなく、もう少し別の美しい夢を、若い世代に語りかけてほしい。
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