橋本裕の日記
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2006年01月24日(火) フィンランド・メソッドのすすめ

 最近「図解フィンランド・メソッド入門」という本を、例の如く書店で得意の速読術を生かして、立ち読みした。著者の北川達夫さんは、もとフインランドの日本大使館に勤務していた外交官だという。

 彼はフィンランドの教育のすばらしさを日本に紹介したいということで外務省を辞めて、現在は小中学生に英語や国語を教えるかたわら、教育研究家として執筆活動をしている。日本の教育に欠けているのは、グローバル・コミュニケーション力ではないかという。

<それは、相手がどこのだれであろうと、自分の言いたいことを理解させる能力。そして、相手がどこのだれであろうと、その言うことを理解する能力です>

 このグローバル・コミュニケーション力を高めるためにフィンランドでは、以下の4つの「力」を小学生から養成している。

 発想力 ・・・ 言いたいことは何か
 論理力 ・・・ 筋は通っているか
 表現力 ・・・ 相手に伝わる言い方か
 批判的思考力 ・・・ 改善と見直し

<フィンランドの小学校教育では自分の「意見」に「理由」を説明することを求められます。「この本面白かったです」と言うと、すかさず「ミクシ?(どうして?)」と聞かれます。その「ミクシ?」に答えることで「論理の回路」が作られていきます>

 フィンランドの教室で、先生や生徒がいつも口にする言葉は、「ミクシ? どうして、あなたはそう考えるのか」ということだそうだ。北川さんはこんな具体例をあげている。

A「携帯電話は絶対便利だよ」(意見の提示)
B「どうして?」(根拠の問いかけ)
A「だって、いつでも、どこからでも掛けられるからね」(根拠の提示)
B「しかし、いつ、どこででも電話にでなければならないとなると、つらいこともあるね」(根拠に対する反論)

 ここで大切なのは、頭ごなしに相手の意見を否定しないことだ。批判はその意見の根拠に対して行われる必要がある。これによって建設的な議論が可能になる。

 フィンランド・メソッドでは必ず、意見を言う場合は根拠を示す。そうしないと、「ミクシ?」と問いかけられる。こうした訓練を小学生のことから積み重ねる。そして、フィンランド・メソッドでは、議論を実りあるものにするために、つぎの「禁止則」を設けている。

(1)怒ったり、泣いたり、感情的にならない。
(2)相手の発言を遮らない。
(3)根拠のはっきりしない主張をあいてに押しつけない。
(4)相手の主張を根拠を示さずに頭から否定しない。
(5)議論の腰をおるような発言をしない

  などだが、基本は「自分本位にならず、相手の立場に立って考える」ことができるかどうかだ。グループ討論の場合は、班長がいてこの規則に外れると「違反です」と相手にはっきり告げるそうだ。

 この他にも有益なフィンランド・メソッドが書いてある。しっかりとした理念に裏打ちされ、すぐにでも実践できるものばかりだ。教育ナンバーワン大国といわれるフィンランドの知恵を、教育に携わっている人ばかりではなく、一般の人も学んでみてはどうだろう。


橋本裕 |MAILHomePage

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