橋本裕の日記
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| 2006年01月22日(日) |
ライブドア・ショック |
先週の16日(月)に、堀江貴文が率いるライブドアとその関連企業が、証券取引法違反疑惑で強制捜査を受けた。おりしも17日には耐震偽装疑惑でヒューザーの小嶋社長が国会に証人喚問されることになっていて、世間やマスコミの目はこちらに鋭くそそがれていた。
しかし、ライブドアへの強制捜査で、マスコミも世間の目も一斉にこちらに向いた。衝撃から、株式市場は大荒れになった。売り注文が殺到し、18日(水)には、とうとう東証のシステムがダウンして、売買全面停止になった。世界の株式市場でもまれなことである。
堀江さんは10年ほど前に、資本金600万円で起業した。みるまに頭角をあらわし、ライブドアの株式時価総額は7000億円を越え、グループ企業全体をあわせると、1兆円をこえるのではないかといわれた。
ホリエモンはこの資金力にものを言わせて、プロ野球球団やニッポン放送を買収しようとした。また小泉首相や堀部自民党幹事長にも目をかけられて、9月に行われた衆議院選挙では、自民党の支援をうけて広島6区から出馬し、郵政造反組の亀井静香さんを相手に善戦した。
「金で買えないものはない」と言い放ち、「10年後には資本金をさらに100倍にして世界一の企業になる」と豪語する堀江さんに、「お金がすべてではない」と反発する人もいたが、マスコミは彼を「風雲児」としてもちあげた。マスコミに露出し続けた彼は、やがてホリエモンの愛称で親しまれるようになり、とくに若い世代を中心に人気が高かった。
ホリエモンが10年間で600万円の会社を1兆円にまで大きくしたのは、1990年頃からアメリカを中心に本格化したM&A(企業買収)という手法を、いち早く日本に取り入れ、自らの経営戦略としたからである。
英紙ファイナンシャル・タイムズは18日の社説で「日本の伝統的な商習慣に挑戦する手法を具体化した。日本にあらたな息吹をもたらした」と評価している。こうした評価は日本の市場関係者や経営者のなかにもあった。実際、彼は去年の暮れに経団連のメンバーに迎えられ、名実とも成功した日本の経営者として経済界トップのおすみつきまでもらっている。
ホリエモンもこうした政界、財界トップのあとおしを受けて、昨年度は絶好調だった。彼は自分の腹心で片腕である宮内亮治氏との最近の共著「世界一になるキャッシュフォロー経営」のなかでこう書いている。
<すべてはシンプルでスケールの大きな目標である『時価総額・世界一』を実現するためです。それ以外の、哲学も美学も欲も余計なモノは、経営者としての堀江貴文にはありません>
しかしホリエモンには成功した六本木ヒルズ族としての華々しい経歴の背後に、さまざまな黒いうわさがあった。株をしていた私の知人もすでに数ヶ月前から、インターネットの掲示板でホリエモンの犯罪行為を告発する文章を読んだと言っている。
また、私が最近読んだ公認会計士の人のプログでも、すでに1年以上も前にホリエモンの錬金術の秘密を暴露し、その詐術的で犯罪的な手法を克明に説明しているものがある。しかし、こうした情報はついにマスメディアに取り上げられることはなかった。
多くの人々は彼が自分の会社を大きくするために、決算を粉飾し、また偽りの情報を流して株価を操作していたとは気付かなかった。そして個人投資家の多くは株価の上昇を喜び、ホリエモンの成功に、自らの夢をかさねていたわけだ。
私もそうした個人投資家のはしくれだった。掲示板に掲載した「橋本裕超初心株日記(1)を自戒の意味も込めて、ここに引用しておこう。
−−−超初心株日記(1) 2006/01/18 −−−
ライブドアのホリエモン、大ピンチですね。まあ、あなんな奴、どうでもいいやと書きたいところですが、なんと、この橋本裕も大ピンチ、というのは少し大袈裟ですが、実は、ホリエモンのライブドアの株を持っているのです。(泣き)
知人にすすめられるまま、先週のある日、680円で100株購入してしまいました。
680円×100株=6万8千円
一昨日の月曜日、ライブドアの株は700円でした。 「すごいね。一週間もしないうちに2000円ももうけちゃったぜ」 というと、妻は「そんな株、はやく売りなさいよ」と、不安顔。 「いやいや、まだまだ上がるよ。もう100株ほど買おうかな」 と、思案しましたが、これはどうにか思いとどまりました。
以前、自分で書いた文章を思い出したのです。「利益だけではなく、社会的に有意義な投資をしたい」とたしか書いたはずです。それが株投資をしはじめた、第一号がよりにもよってあのホリエモンのライブドアの株を買うとは、しかも「もうかるから」という友人の一言がきっかけになったとは、まさしく魔がさしたとしかいえません。
いやいや、こんなことではいけないと、ここはかろうじて心理的にブレーキがかかりました。おかげで、火傷が大きくならなくてよかったわけです。
ちなみに、私はスターバックスの株も持っています。これは56400円で1株だけ購入しました。一昨日の段階で、これが1000円ほど値上がりしていまいした。ライブドアと合わせると12万4千円ほど投資して、3000円もうけたわけで、一週間で2.4パーセントの利益ということになります。しかし、その後、思わぬ展開がまっていました。これはたいへんいい勉強になりましたね。(痛い)
なお、株注文は松井証券を使いました。私はここに50万円入金しました。ところが松井証券の場合、手数料が無料なのは10万円までです。多くの企業の単元株が100株なので、投資の対象が限られます。スターバックを買ったのも単元が1株だったからです。
イートレードも去年の暮れに松井証券と同様に申し込んだのですが、こちらは私のミスがあったりして、いまだに使える状態になっていません。もたもたしている内に、思わぬ出来事になり、最近では私の株投資熱もほとんど冷却状態です。
しかし、これにこりず、これからもネット株をぼちぼち続けようと思っています。先輩方の貴重なアドバイスに、これからはよく耳をかたむけたいと、おもいきり反省している今日この頃です。 −−−−−−−−−−−−−−−−
今回のライブドア・ショックは日本経済の将来を考えると決してマイナスばかりではない。ここから大切な教訓をくみとることがでるからだ。それは世の中でもっとも大切なものは、「信用」だということだ。そしてこれはそう簡単にお金で買えるものではない。ライブドア・ショックをバネにして、私たちが今一度正気を取り戻すことができれば、日本の経済と社会は失墜した信用を回復することは可能だろう。
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