橋本裕の日記
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2006年01月07日(土) 小食は愛の行為

 昨日の朝日新聞によると、日本人に肥満が多くなっているようだ。小学生でもこの10年間にかなり肥満が進んでいるという。これは過食や偏食、それに運動不足が原因だそうだ。小学生のうちから成人病になる人もいるという。

 肥満とまではいかなくても、体重を減らしたい人はかなりいるだろう。しかしダイエットはなかなかむつかしい。とくにお正月はご馳走が食卓に並ぶから、どうしても箸がでてしまう。私も毎年正月になると、2キロほど太っていた。そして一旦脂肪がついたら最後、これを落とすのはなかなかむつかしい。

 毎年こうした悩みを抱えていたが、今年は正月中も1日2食を心がけたおかげで、体重の増加はなかった。私の理想体重である60キロをなんとか維持している。なんとかと書いたのは、体重計の針をよく見てみると、3,4百グラムは右に振れているからだ。

 これはミカンや干し柿、あるいは饅頭などの間食をしたからだろう。間食はしないことにしていたが、今年は青春切符も買わず、旅もしなかった。家の中にごろごろしていると、つい暇に任せて家においてあるものを余計に口に運んでしまう。

 去年の今頃は、私は70キロ近い体重があった。どのズボンも腰回りがきつく、それに高血圧に悩まされ、「何とか体重を減らさなければ」とあせっていたが、凡夫のかなしさで、自分の食欲には勝てなかった。

 ダイエットに成功したのは、職場が変わり、ストレスが少なくなったせいもあるが、それよりA先生に出会ったことも大きい。定時制は給食があるのだが、A先生だけは職員室にいつも残っている。不思議に思って訊くと、「私は1日2食でやっていますから」という。

「お腹は空かないですか」
「最初は空きましたが、今は平気ですよ。体調はとてもいいです」
「家ではしっかり食べているのですか」
「家でも腹八分目ですね。基本的に菜食です。1食しかたべないこともあります」
「それで栄養は大丈夫ですか」 
「大丈夫です。最近は風邪も引きません」

 A先生は私よりも年上の58歳の英語科の先生だが、生徒会の顧問をやり、教員のなかでも一番忙しく働いている。しかも柔道部の顧問をしていて、授業が終わった後、武道場で生徒を相手に汗を流す。去年の夏には生徒を全国大会にも連れていっている。先日、体育館でバトミントンをしたときも、私は彼に完敗した。

 すぐ身近に、こうした実例があるのは心強い。そこで学校が夏期休暇に入ると同時に、私も1ケ月ほど試みに「1日2食」をつらぬいた。そうしたら、毎日のように体重が減りだして、1ヶ月で4キロほど減った。

 これに気をよくした私は、学校が始まってからも「1日2食」を貫いた。そうしたら、ますます加速度的に体重が減り、血圧もほとんど正常値になった。と、ここまではすべて順調だったのだが、思いがけない視力障害に見舞われ、一時は入院騒ぎになった。

 A先生はそんな私をみて、一冊の本を貸してくれた。甲田光雄博士の「小食が健康の原点」(たま出版)である。そこに専門家の立場から、小食の理念と実践がわかりやすく書かれていた。ただ単純に1食抜けばよいというものではないのだ。さらに、断食したときに現れる身体症状もくわしく書いてある。

<Oさんが最初断食に入ったとき、蕁麻疹が断食中、身体全身に出て、しかも猛烈な痒みで夜間一睡もできないくらいでした。これは断食の反応症状ですが、断食中に免疫機能なども活発になる結果として、皮膚面に、その現象として症状が現れたものと思います>

 じつは私も食事を減らし始めた頃、蕁麻疹が下半身に現れた。そんなに痒くはないのだが、風呂に入るたびに足に紫色にひろがったシミをみるのは不気味だった。さいわい数日のうちにこれは消えたが、もし事前にこの本を読んでいたら、これも一過性の「断食症状」だとわかり、不安にはならなかっただろう。

 なお、視力障害の謎も、この本を読んで解けた。高血圧は脳に必要な血液や栄養を送るために心臓ががんばっている証拠である。これをむりに薬で下げると、脳に充分な血液がいかなくなる。私の場合はダイエットで血圧が正常まで下がっていたのに、習慣で降圧剤を飲み続けたのがいけなかった。

 ちなみに日本人の4割近くが高血圧だという。降圧剤に使われる医療費もばかにならないらしい。薬代は現在9兆円だというが、今後、これが倍増していくという予想もある。多くの人が小食を実行すれば、現在30兆円を超えている医療費も抑制されるだろう。

 小食は健康によいがそれだけではない。過食を慎むということは、資源を大切にするという生き方につながる。地球には過剰の栄養で病気になる人が何億人もいて、一方で飢餓のために命を奪われていく人が何千万人もいる。「小食は自己と人類に対する愛の行為である」ということを教えてくれたA先生を、私は今では「お師匠さん」と呼んでいる。


橋本裕 |MAILHomePage

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