橋本裕の日記
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2005年12月03日(土) やさしい株の話

 昨日に続いて、株の話である。昨日はホテルで友人に昼食をおごってもらったが、ちなみに昨日一日の友人のキャピタル・ゲインは約30万円だということだった。食事をしながら、いろいろと質問をしてみた。

「毎朝、新聞を読んで株高をチェックするのか」
「携帯で見ればわかる。今直ぐにでもわかる」
「便利になったものだね」

 株の売買も携帯でできる。現在の個人投資家の売買の9割近くはネット取引だというから、15年前のバブル頃と比べると、株取引はさらにパワーアップしている。しかも、居ながらにしてどこからでも株式市場にアクセスできるだけではない。以前と比べると、手数料が1/10になっているという。

 たとえば15年前であれば、100万円買えば、1万円以上は手数料として証券会社に収めなければならなかった。これが今はネット取引だと千円以下で済む。しかも株式に対する配当も以前と比べてよくなった。0金利状態が続くなかで、銀行預金の利息を上回る株の配当を手にすることも可能になった。

 さらに、税制上の優遇措置がある。預金に対する課税率が20%なのに対して、配当金や株高によるキャピタルゲインに対する課税率は半分の10%である。こうしたことが背景になって、2003年末に100万口座を越えたインターネット専業証券大手5社の口座数は、すでに250万口座を超えているという。その大半が個人投資家なわけだ。

 売買代金でみると、外国人のシェアが約5割だが、日本人個人投資家のシェアも4割に達しようとしている。つまり株取引の9割近くが外国人と日本の個人投資家でしめられているわけだ。バブルのころは企業が主役であったのと比べると様変わりしている。

 もちろん、だれもが個人投資家になれるわけではない。現在の日本は生活保護世帯が100万世帯を越え、預金0円の世帯も昨年度で23%になっている。リストラによる雇用不安や臨時雇用が増える中で、株式に投資できる余裕のある階層はしだいに減少している。

 リストラによって、会社は業績を回復し、株価を上げた。しかし、リストラされた人々はこの株高の恩恵を受けることはできない。外人投資家や日本の裕福な人々が高額のキャピタルゲインで潤う中で、所得格差はますます広がっていく。こうして日本は確実にアメリカ型の株主優先社会に近づいている。

 これが小泉首相がいう「構造改革」によってもたらされる社会である。こうした経済強者優先の競争社会がどんな未来をもたらすか、アメリカの現状をみればよい。しかし野党までがお金に目がくらみ、こぞって「改革競争」に躍起となっているのだから、もはやこの流れを押しとどめることはできそうにない。

 それではどうしたらこうしたアメリカ標準のグローバル社会で「負け犬」にならないで済むか。それは現在の私の人生の反対を行くことである。つまり第一に子供を作らないことである。そうすればあえて持ち家をもたなくてもすむ。

 夫婦共稼ぎでお金を貯めて、生活を切りつめ、すべてを株式に投資する。こうして出来る限りの力を費やしてキャピタル・ゲインを稼ぐのである。と、ここまで書いてきて、何だか馬鹿らしくなった。ふと、万葉集の憶良の歌を思い出した。

 瓜はめば 子供思はゆ
 栗はめば ましてしのはゆ
 いづくより 来たりしものぞ
 目なかひに もとなかかりて
 安寝しなさぬ             (巻5−802)

 しろがねも 黄金も玉も 何せむに
 優される宝 子にしかめやも   (巻5−803)

 おりしも今日は毎年恒例の「万葉の旅」の日である。金欠病の私のために、今年は犬山や明治村を旅することになった。論語に「朋あり遠方より来る、また楽しからずや」とある。私にとって人生の最高の楽しみは、心の通い合う友人と楽しく歓談することである。


橋本裕 |MAILHomePage

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