橋本裕の日記
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2005年10月08日(土) What makes you happy ?

 ジェニーに「What makes you happy ?」と質問されて、私は「your smile」と答えた。これはこれで立派な答えだと思うのだが、もちろん、ジェニーは納得しなかった。ジェニーは2週間の授業のなかで、繰り返しこのテーマを持ち出した。

 あるときは「幸福とは何か」にかんするエッセーを読まされた。そのエッセーによると、幸福には三種類のものがあるのだという。第一の幸福は「欲望を満たすことによって得られる幸福」である。この種の人々にとっては、自らの所有欲や支配欲を満たすことが人生の目標になる。

 第二の幸福は、「欲望から自由になることによって得られる幸福」である。所有欲や支配欲を捨て、自らのエゴを捨てることによって魂の平安を売る。これは宗教的な意味での幸福だろう。

 第三の幸福は「他者を愛することによって得られる幸福」である。人と人とが心を通わせ合い、助け合って生きていくなかで得られるささやかな満足感だ。ジェニーも私も結局、この三番目の「素朴にして優雅」な幸福が理想ではないかと考えた。また本当の宗教の境地はこれに近いのではないかということになった。

 ジェニーはカソリックの敬虔な信者である。私が聖書は好きでよく読むというと、「聖書のどこがいいのか」と聞いてきた。そこで私はヨハネ伝8章32節にある「You shall know the truth and truth shall make you free.」という言葉を上げた。

 もちろんジェニーもこの言葉を知っていたが、「説明して欲しい」と言われて、私は何とかブロークンな英語でこれを説明した。真理に従うと言うことは、自然の摂理に従うと言うことである。現代の私たちは自らの欲望を肥大化させ、この自然の摂理から遠く離れてしまったのではないだろうかと疑問を述べた。

 それから私は「神はわれの中にある」というパウロの言葉を引いて、これは仏教の「すべての生きとし生けるものは仏性を持っている」という仏教の思想に通じると言った。そしてそれはまた、すべての存在の中に「神」を見いだす「神道」の多神教の世界にも通じている。

 こうした話を始めると私の弁舌はとまらなくなる。ジェニーが私の英語をどれほど理解したかは分からないが、いつも微笑みをたたえて、私の話に耳を傾けてくれた。私はあらためて、「Your smile makes me happy」と、ジェニーに感謝しないではいられなかった。


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