橋本裕の日記
DiaryINDEX|past|will
4人クラスは楽しかったが、授業の内容では一番負担が大きかった。マンツーマン・クラスの場合は他に生徒がいないので伸び伸びできるし、8人クラスの場合は他の7人の生徒の陰に隠れて息抜きができる。しかし、4人クラスでは手抜きがむつかしい。
4人クラスでは、先生がテープを数回聞かせ、メモを取らせて、一人ずつその内容を述べさせる。この段階で私はほとんどテープの英語が理解できなかった。テープの英語は実際に放送されたニュースの断片であったり、インタビューの一部だったが、ネイティブの英語のスピードについて行けないのである。
これは私だけではなく、他の生徒も同じだったが、とくに私の成績は最悪だった。コリーン先生に質問されても、「I have no idea.」と答えるしかない。英語の壁がこんなに高く険しいものだとは知らなかった。そして絶望的な気分になった。
このあとコリーン先生はテープの内容を書いた英文を配ってくれる。それを見ながら、再びテープを聴く。これもただ聞くだけではなく、ところどころに空欄があるので、そこに適当な単語や文章を書き入れなければならない。
これがまたむつかしい。私の場合、空欄はほとんど空欄のままに放置された。聞き取れない上に、たとえ聞き取れてもスペルがわからない。スピードが速いので英文の意味を考えている時間もない。「出来ましたか」と先生に聞かれて、私は「パーフェクト」とやけくそで答えるしかなかった。
このあと、先生が黒板に空欄にあてはまる英文を書いてくれる。各自自分で答え合わせをするのだが、私の場合はただ空欄に書き込むだけの作業になる。空欄が埋まったところで、少し時間が与えられて、意味を考えながら英文を精読することになる。
分からない単語が10個はあるので、それを前の黒板にすべて書き出す。4人が黒板に書き終えたところで、先生が重複部分を削って整理し、一人当たり3語か4語ほどを割り当てる。割り当てられた単語について各自が辞書で調べ、その結果を前に出てわかりやすく他の3人に解説する。このとき必ず自分で作った例文を示さなければならない。
こうしたことがすべて終わった後、もう一度英文を精読する。そして英文が回収され、ふたたび一人ずつ、その内容について知り得たことを話さなければならない。私はこの段階でも「I have no idea.」に近いことが多かった。しかし、他の3人の発言から、大方の意味が浮かんでくる。こうして4人が力を合わせることで、どうにか文章の読解が可能になる。
しかしこれで最後ではない。再び英文が各自に返され、今度はそれを一人ずつ前に出て、なるべく自然な英語で感情を込めて読み上げなければならない。意味が把握できていないと、これがなかなか難しいのである。
こうしてリスニング、ライテング、リーディング、スピーキングが毎時間の授業で鍛えられる。不思議なことに、これをくりかえしているうちに、すこしずつだがききとれる英語のフレーズが多くなって空欄が埋まるようになる。文章の読解力も向上し、スピーキングに感情が籠もるようになると、授業が少しずつたのしくなってくる。
私の場合は2週間しか授業に参加できなかったが、これを1ケ月続ければかなりの成果が得られるのではないだろうか。実際、3ヶ月近く続けてきたジェリーの英語スキルは私たち3人を圧倒していた。
私の滞在も残り少なくなった頃、4人が英文の朗読を終えた後、コリーン先生がオーラルの成績をつけてくれた。私の成績は「A」だった。ジェリーの成績は「Aプラス」である。そして他の二人の成績を見ると「Aマイナス」になっていた。コリーンの授業を一日も休まずにがんばってよかったと思った。
|